フェローテックホールディングス(6890) 中長期施策の取組みに注目

2023/12/28

賀 賢漢 社長

株式会社フェローテックホールディングス(6890)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

電気機器(製造業)

代表者

賀 賢漢

所在地

東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル

決算月

3月

HP

https://www.ferrotec.co.jp/

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,656円

46,984,362株

124,790百万円

18.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

100.00円

3.8%

319.07円

8.3倍

4,255.40円

0.62倍

*株価は12/13終値。発行済株式数((自己株式控除後)、DPS、EPS、BPSは2024年3月期第2四半期決算短信より。ROEは前期実績。

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

89,478

8,782

8,060

2,845

76.90

24.00

2020年3月(実)

81,613

6,012

4,263

1,784

48.12

24.00

2021年3月(実)

91,312

9,640

8,227

8,280

222.93

30.00

2022年3月(実)

133,821

22,600

25,994

26,659

668.06

50.00

2023年3月(実)

210,810

35,042

42,448

29,702

644.81

105.00

2024年3月(予)

220,000

27,000

28,000

15,000

319.07

100.00

*予想は会社予想。単位:百万円、円。21年3月期の配当には記念配当4.00円/株を含む。22年3月期の配当には特別配当9.00円/株を含む。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

 

(株)フェローテックホールディングスの2024年3月期第2四半期決算概要、2024年3月期業績予想などについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年3月期第2四半期決算概要
3.2024年3月期業績予想
4.中期経営計画のアップデート
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 24/3期第2四半期は、前年同期比8.2%増収、同23.6%営業減益で着地した。期初に掲げた上期会社計画に対する達成率は、売上高100.5%、営業利益86.9%。半導体産業を中心にエレクトロニクス産業は需要調整局面となっており、需要の低迷が続いている。このような環境下、同社は売上段階では半導体等装置関連事業の減収を電子デバイス事業および新規連結化による増収効果でカバーしたものの、売上総利益段階では減益となった。足下の環境は芳しくないものの、中長期見通しは不変であることから、増産投資や研究開発強化施策を引き続き行ったため、営業利益は期初計画に対し未達となった。 
  • 同社は、上期実績に鑑み24/3期通期会社計画を減額修正した。売上高2,200億円は不変ながら、製品・顧客需要動向に鑑みセールスミックスは組み替えている。中期見通しについては不変であることから、将来に向けた増産投資・研究開発強化施策は引き続き積極的に行うため(投資額は期初計画通りの969億円)、利益計画は引き下げられた(期初計画比:営業利益55億円減、経常利益20億円減、当期純利益30億円減)。減価償却費は前期実績126億18百万円から174億円に増加する前提(期初計画通り)。想定期中平均為替レートは、米ドル:期初計画130円から140円(前期実績132.08円)、中国人民元:同19.00円から19.72円(同19.50円)。一株配当は100.00円を予定(上期50.00円、下期50.00円)。 
  • 中期経営計画において成長を徹底的に追求する姿勢に変更はない。26/3期には売上高が3,600億円に到達する計画(23/3期〜26/3期CAGR+19.5%)は今回変更されていない。25/3期および26/3期に市況が回復してくるとの見通しに変更がないことも決算報告の中で伝えられた。グローバル生産体制の拡充は計画通りに進めており、半導体セクターの需要が回復すれば計画達成は十分に可能となるだろう。半導体装置関連事業では、グローバル生産体制の拡充、自動化等を着実に進めていることから、需要回復時に急速な売上拡大も可能と同社は考えている。 
  • 2021年末から半導体市況は悪化傾向にあり、今期も在庫調整が続くとの前提は変わっていない。在庫調整の遅れなどから短期見通しは引き下げられたものの、25~26年には半導体市況も再度拡大基調に転じるという見通しに変更がない点に注意を払いたい。中長期では、グリーンエネルギー化の流れが変わることも考えにくい。同社はその意思を強く持ち、目先に惑わされない積極的な投資姿勢を今期も貫いている。今上期にしっかりと資金調達ができたことも、経営戦略をサポートすることに役立っている。一方、闇雲に投資するだけでなく、投資機会と財務状況の適切なバランスを確保した上でキャピタルアロケーション戦略を立てるなど、資本市場へ向き合う姿勢も評価すべきだろう。同社の株式価値は、短期的にはマクロ環境に左右されるだろうが、中長期ではバリュエーション向上に繋がる施策に積極的に取り組んでいる点に着目したい。 

1.会社概要

半導体やFPD製造装置等の部品、半導体の生産工程で使われる消耗部材やウエーハ、更には装置の部品洗浄等を手掛ける半導体等装置関連事業と、冷熱素子「サーモモジュール」を核とする電子デバイス事業の二本柱で事業展開しており、傘下に子会社等86社を擁する(連結子会社73社、持分法適用非連結子会社及び関連会社13社)。
1980年、NASAのスペースプログラムから生まれた磁性流体を応用した真空技術製品や冷熱素子として用途が広がっているサーモモジュール等、独自技術を核にした企業として誕生。創業から43年にわたって培われてきた多様な技術は、エレクトロニクス、自動車、次世代エネルギー等、様々な産業分野で応用されている。また、トランスナショナルカンパニーとして、日本、欧米、中国、アジアに展開し、マーケティング、開発、製造、販売、そしてマネジメントと、それぞれの国・地域の強みを活かした経営も同社の特徴。2017年4月、持株会社体制へ移行した。2022年4月、市場再編に伴い、東証スタンダード市場に移行。

 

【組織力強化・持続的発展へ向けた基本的な考えと重点方針】
同社グループは、顧客、株主、従業員、取引先、地域社会などステークホルダーに向け、成長する企業であり続けること、企業活動において、法令遵守、社会秩序、国際ルールなど、社会的良識をもって行動することで、信頼される企業を目指している。

 

企業価値向上のための取り組み 各事業子会社の経営自立化を推進、経営資源の再配分
品質を第一とした意識の徹底 顧客に喜ばれる設計・製品品質の徹底、社内外へのサービス品質の向上
コーポレート・ガバナンスの強化 内部統制・関係会社管理の徹底、リスクマネージメント・コンプライアンス強化

 

【1-1 事業セグメント】

事業は、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シール、石英製品、セラミックス製品等の「半導体等装置関連事業」、サーモモジュールが中心の「電子デバイス事業」、及び報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、シリコン結晶や太陽電池ウエーハ、ソーブレード、工作機械、表面処理、業務用洗濯機等の「その他」に分かれる

 

半導体等装置関連事業
半導体、FPD、LED、太陽電池等の製造装置部品である真空シール、デバイスの製造工程に使われる消耗品である石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、石英坩堝。この他、シリコンウエーハ加工や製造装置洗浄等も手掛け、エンジニアリング・サービスをトータルに提供している。

 

主力製品で世界シェアNo.1の真空シールは、製造装置内部へのガスやチリ等の侵入を防ぎつつ、回転運動を装置内部に伝える機能部品で、上記の製造装置に不可欠。真空シールの内部には創業からのコア技術である磁性流体(磁石に反応する液体)シールが使われている。ただ、いずれの分野も設備投資の波が大きいため、比較的需要が安定した搬送用機器や精密ロボット等、一般産業分野での営業を強化しており、真空シールを組み込んだ真空チャンバーやゲートバルブ等(共に真空関連の装置で使われる)の受託製造にも力を入れている。
一方、石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、及び石英坩堝は共に半導体の製造工程に欠かせない消耗品。石英製品は半導体製造の際の高温作業に耐え、半導体を活性ガスとの化学変化から守る高純度のシリカガラス製品。材料や加工技術を核とするセラミックス製品は国内外の半導体製造装置メーカーを主な顧客とし、半導体検査治具用マシナブルセラミックスと半導体製造装置等の部品として使われるファインセラミックスが二本柱。CVD-SiC製品は「CVD法(Chemical Vapor Deposition法:化学気相蒸着法)」(シリコンと炭素を含むガスから作る)で製造されたSiC製品の事。現在、半導体製造装置の構造部品として供給しているが、航空・宇宙(タービン、ミラー)、自動車(パワー半導体)、エネルギー(原子力関連)、IT(半導体製造装置用部品)等への展開に向け研究開発を進めている。
シリコンウエーハ加工では、6インチ(口径)と8インチに加え、21年3月期からは12インチの売上計上が始まった。
製造装置洗浄では中国で過半を超えるトップシェアを有する。

(同社資料より)

 

電子デバイス事業
事業の核となっているのは対象物を瞬時に高い精度で温めたり、冷やしたりできる冷熱素子「サーモモジュール」である。
サーモモジュールは自動車用温調シートを中心に、半導体製造装置でのウエーハ温調、遺伝子検査装置、光通信、家電製品、およびその応用製品のパワー半導体用基板等、利用範囲は広く、世界シェアNo.1。高性能材料を使用した新製品開発や自動化ライン導入によるコスト削減と品質向上により、新規の需要開拓や更なる用途拡大に取り組んでいる。
この他、スマホのリニアバイブレーションモーターや4Kテレビや自動車のスピーカー、高音質ヘッドフォン等で新たな用途開発が進んでいる磁性流体も世界シェアトップである。
更に、2023年3月期第2四半期より連結子会社に加わった(株)大泉製作所の温度センサも同事業に追加された。

 

その他

(同社資料より)

 

2.2024年3月期第2四半期決算概要

【2-1 連結業績】

 

23/3期2Q

(累計)

構成比

24/3期2Q

(累計)

構成比

前年同期比

予想比

売上高

97,505

100.0%

105,494

100.0%

+8.2%

+0.5%

売上総利益

34,538

35.4%

34,311

32.5%

-0.7%

販管費

17,476

17.9%

21,276

20.2%

+21.7%

営業利益

17,061

17.5%

13,035

12.4%

-23.6%

-13.1%

経常利益

23,554

24.2%

15,217

14.4%

-35.4%

+12.7%

四半期純利益

15,979

16.4%

8,390

8.0%

-47.5%

-1.3%

* 単位:百万円

 

半導体産業を中心に需要調整局面が続く
24/3期2Qは、売上高が前年同期比8.2%増の105,494百万円、営業利益が同23.6減の13,035百万円となった。
エレクトロニクス産業は半導体産業が需要調整局面となっていることに加え、2022年の旺盛な需要からの反動もあり、半導体製造装置の需要は低迷が続いている。このような環境下、同社は製造装置向け真空部品や受託加工、及び半導体製造プロセス向けの各種マテリアル製品が、欧米顧客を中心に伸び悩んだ。一方、パワー半導体や太陽光パネルの市場は比較的堅調に推移し、CVD-SiC製品や石英坩堝の出荷が伸びたことで、全体では増収で着地した。期初上期会社計画(売上高1,050億円、営業利益150億円)に対し、売上高は過達となったものの、販管費増により営業利益の達成率は87%にとどまった。これは増産投資や研究開発強化施策に伴い販管費が想定以上に増加したことが背景にある。
営業利益は前年同期比4,026百万円減となったことに対し、経常利益は同8,337百万円減となった。これは、前年同期に比して為替差益が縮小したことおよびウエーハ事業での持分法投資損失が発生したことが主要因。当期純利益は同7,589百万円減。非支配持分利益が増加したものの、持分変動利益の剥落、投資有価証券評価損の計上等によって、減益幅が拡大した。期中平均為替レートは米ドル136.54円(前年同期124.52円)、中国人民元19.55円(同19.13円)。
足下の事業環境が厳しいことは事前から承知の上で将来に向けた投資を行っていることから、短期的に前年同期比減益となっていることを殊更ネガティブ視する必要はないだろう。足下業績に鑑み、今期会社計画は下方修正されているが、製品および顧客の需要動向から短期的な売上回復が見込みにくいこと、増産投資や研究開発強化施策に伴い販管費が想定以上に増加したことを織り込んだものである。25年以降回復基調を強めていくとの見通しは不変であり、あくまでも中長期目線で同社のファンダメンタルズを考えるべきだろう。

 

 

 

【2-2 セグメント別動向】

セグメント別売上高・利益

 

23/3期2Q

(累計)

構成比・利益率

24/3期2Q

(累計)

構成比・利益率

前年同期比

半導体等装置関連

63,791

65.4%

60,257

57.1%

-5.5%

電子デバイス

23,073

23.7%

32,840

31.1%

+42.3%

その他

10,640

10.9%

12,396

11.8%

+16.5%

連結売上高

97,505

100.0%

105,494

100.0%

+8.2%

半導体等装置関連

11,707

18.4%

7,788

12.9%

-33.5%

電子デバイス

5,325

23.1%

6,080

18.5%

+14.2%

その他

398

3.7%

-179

-1.4%

調整額

-369

-654

連結営業利益

17,061

17.5%

13,035

12.4%

-23.6%

* 単位:百万円

 

(1)半導体等装置関連事業
半導体等装置関連事業の売上高は前年同期比5.5%減の60,257百万円、営業利益は同33.5%減の7,788百万円となった。セグメント利益率は同5.5ポイント低下の12.9%。
半導体全体の需要が在庫調整局面にあることから、半導体製造装置の需要も低迷。特に欧米顧客が厳しい状況になっている。半導体製造プロセスに使用される各種マテリアル製品のうち、石英製品・セラミック製品・シリコンパーツについては、顧客側の在庫積み上がりもあり、欧米向け受注が減少。一方CVD-SiC製品については、底堅い受注が継続したうえ、岡山工場の増産により増収を維持した。石英坩堝は引き続き太陽光パネル製造メーカー向けの出荷が伸長した。

 

(2)電子デバイス事業
電子デバイス事業の売上高は前年同期比42.3%増の32,840百万円、営業利益は同14.2%増の6,080百万円となった。セグメント利益率は同4.6ポイント低下の18.5%。
パワー半導体用基板が引き続き成長ドライバーとなっている。サーモモジュールは通信機器向けおよび医療検査機器向けの受注一服から減収となっているものの、DCB基板の販売が産業機械向け等で順調だったうえ、自動車・EV等向けのAMB基板も中国のEV車載向け出荷が堅調に推移した。なお、前2Q(7‐9月)より連結化した大泉製作所のセンサ売上、利益が当該セグメントに計上されている点に留意を要する。

 

(3)その他事業
その他事業(ソーブレード、工作機械、太陽電池用シリコン製品等の事業)の売上高は前年同期比16.5%増の12,396百万円、営業利益は179百万円の赤字に転じた。工作機械の出荷が減少したものの、前2Q(7‐9月)より連結化した東洋刃物の売上計上により、増収となった。

 

【2-3 財政状態】

◎財政状態

 

23年3月

23年9月

増減

 

23年3月

23年9月

増減

流動資産

215,341

246,956

+31,615

流動負債

111,294

112,569

+1,275

現預金

103,115

120,052

+16,937

仕入債務

43,896

39,687

-4,209

売上債権

53,276

58,172

+4,896

短期有利子負債

36,203

42,289

+6,086

たな卸資産

49,177

57,365

+8,188

固定負債

49,697

92,172

+42,475

固定資産

195,306

229,619

+34,313

長期有利子負債

30,515

71,145

+40,630

有形固定資産

139,610

171,219

+31,609

負債合計

160,991

204,741

+43,750

無形固定資産

6,949

6,658

-291

純資産

249,656

271,834

+22,178

投資その他の資産

48,745

51,741

+2,996

利益剰余金

69,656

75,466

+5,810

資産合計

410,648

476,576

+65,928

負債純資産合計

410,648

476,576

+65,928

*単位:百万円

 

資産合計は前期末比659億円増の4,765億円に増加。現預金増加(同169億円増)および有形固定資産増加(同316億円増)が主要因。売上増加に伴い、売上債権・棚卸資産が増加したほか、資金調達を実施したことが流動資産を増加させた。有形固定資産は各事業での積極投資によって増加している。主な増加は、Ferrotec Manufacturing Malaysia+51億円、常山 セラミック・シリコンパーツ+57億円、四川 パワー基板+38億円、銀川FTNC石英坩堝等+46億円。
負債合計は同437億円増の2,047億円となった。23年6月に28年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(社債額面金額合計250億円)を発行したことに加え、長期借入金も同190億円増加した。純資産は、利益剰余金が同58億円増となったことに加え、為替換算調整勘定が同99億円増、非支配株主持分が同59億円増となったことを背景に、同221億円増の2,718億円となった。
自己資本比率は前期末比2.7ポイント低下の42.0%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

23/3期2Q

24/3期2Q

増減

営業キャッシュ・フロー

20,988

6,789

-14,199

投資キャッシュ・フロー

-28,783

-29,101

-318

フリー・キャッシュ・フロー

-7,795

-22,312

-14,517

財務キャッシュ・フロー

32,461

41,659

+9,198

現金及び現金同等物期末残高

83,770

119,666

+35,896

* 単位:百万円

 

税金等調整前四半期純利益、仕入債務、その他の減少等により営業CFのプラス幅は縮小。加え投資CFは積極的な有形固定資産取得等を継続させたためマイナス幅が拡大し、結果フリー・キャッシュ・フローのマイナス幅は拡大した。それに呼応する形で転換社債型新株予約権付社債の発行、長期借入の実行を行ったため、財務CFは大幅に増加した。期末のCF残高は前年同期比35,896百万円の119,666百万円。

 

3.2024年3月期業績予想

【3-1 連結業績】

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

売上高

210,810

100.0%

220,000

100.0%

+4.4%

営業利益

35,042

16.6%

27,000

12.3%

-22.9%

経常利益

42,448

20.1%

28,000

12.7%

-34.0%

当期純利益

29,702

14.1%

15,000

6.8%

-49.5%

* 単位:百万円

 

セールスミックスの見通し変更に鑑み、通期会社計画を修正
同社は、上期実績に鑑み2024年3月期通期会社計画を減額修正した。売上高2,200億円は不変ながら、製品・顧客需要動向に鑑みセールスミックスは組み替えている。中期見通しについては不変であることから、将来に向けた増産投資・研究開発強化施策は引き続き積極的に行っているため(投資額は期初計画通りの969億円)、利益計画は引き下げられた(期初計画比:営業利益55億円減、経常利益20億円減、当期純利益30億円減)。減価償却費は前期実績126億18百万円から174億円に増加する前提(期初計画通り)。想定期中平均為替レートは、米ドル:期初計画130円から140円(前期実績132.08円)、中国人民元:同19.00円から19.72円(同19.50円)。
一株配当は100.00円を予定(上期50.00円、下期50.00円)。

 

【3-2 セグメント別動向】

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

半導体等装置関連

132,194

62.7%

126,677

57.6%

-4.2%

電子デバイス

53,024

25.2%

68,009

30.9%

+28.3%

その他

25,590

12.1%

25,315

11.5%

-1.1%

連結売上高

210,810

100.0%

220,000

100.0%

+4.4%

* 単位:百万円

 

期初計画に対し、半導体製造装置関連事業売上を1,617百万円、その他売上を1,095百万円増額した一方、電子デバイス事業売上を 2,711百万円減額した。

 

(1)半導体等装置関連事業

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

真空シール・金属加工

27,976

21.2%

24,046

19.0%

-14.0%

石英製品

28,837

21.8%

27,252

21.5%

-5.5%

シリコンパーツ

17,542

13.3%

14,310

11.3%

-18.4%

セラミックス

27,194

20.6%

23,361

18.4%

-14.1%

CVD-SiC

4,812

3.6%

6,239

4.9%

+29.7%

EBガン・LED蒸着装置

8,036

6.1%

6,069

4.8%

-24.5%

ウエーハ加工

236

0.2%

129

0.1%

-45.3%

再生ウエーハ

1,501

1.1%

1,730

1.4%

+15.3%

装置部品洗浄

12,170

9.2%

11,451

9.0%

-5.9%

石英坩堝

3,891

2.9%

12,091

9.5%

+210.7%

半導体等装置関連事業売上高

132,194

100.0%

126,677

100.0%

-4.2%

* 単位:百万円。

 

石英坩堝、真空シールを中心に見通しを減額したものの、石英製品、セラミック製品の見通し増額により、全体では期初計画比1,617百万円増の126,677百万円に修正された。

 

(2)電子デバイス事業

 

23/3期

構成比

24/3期(予)

構成比

前期比

サーモモジュール

23,266

43.9%

21,233

31.2%

-8.7%

パワー半導体基板

20,011

37.7%

34,584

50.9%

+72.8%

磁性流体・その他

936

1.8%

910

1.3%

-2.8%

センサ(大泉製作所)

8,811

16.6%

11,282

16.6%

+28.0%

電子デバイス事業売上高

53,024

100.0%

68,009

100.0%

+28.3%

* 単位:百万円

 

すべての製品において、期初計画から減額修正した。特にパワー半導体、センサ(大泉製作所)のマイナス幅が大きくなっている。

 

 

4.中期経営計画のアップデート(前回掲載から変更なし、再掲)

(24/3期会社計画見直しに伴う中期経営計画の見直しは未発表)

 

【4-1 中期経営計画の基本方針】

成長を徹底的に追求する基本方針は不変。

事業成長

➣成長の徹底追及、積極投資を継続

既存事業の競争力強化・シェアアップに加え、非半導体事業の強化を推進

➣「車載センサー」を新設・戦略的に強化

➣製品開発やM&A等により、事業・製品の多様化を加速

グローバル生産体制の強化

➣マレーシア拠点の早期稼働

➣石川工場、熊本工場の立ち上げ、「日本回帰」を推進

経営基盤の強化

➣品質管理の強化を継続

➣デジタル化・自動化・AI化・見える化を継続推進

➣人材強化の継続

財務・株主還元

➣投資機会と財務の適切なバランス確保、当期利益重視・ROIC管理強化を継続

➣収益増強により株主還元を増加させていく基本方針、配当性向20%を意識

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

【4-2】

アップデート後の中期経営計画KPI

(同社資料より、インベストメントブリッジ作成)

 

26/3期には売上高が3,600億円に到達する計画(23/3期〜26/3期CAGR+19.5%)だが、その内訳は、半導体装置関連事業が1,321億94百万円から2,356億円、電子デバイス事業が530億24百万円から933億90百万円、その他事業が255億90百万円から310億10百万円に伸長する計画。
同社は、グローバル生産体制の拡充は着実に進展していることから、半導体セクターの需要が回復すれば計画達成は十分に可能と考えている。半導体装置関連事業では、グローバル生産体制の拡充、自動化等を着実に進めていることから、需要回復時に急速な売上拡大も可能と同社は考えている。電子デバイス事業では、パワー半導体基板の四川工場設立による増産体制を着実に進めており、2024年には生産が本格化する見通しである。

 

【4-3 カテゴリー別】

<半導体マテリアル>
23/3期は前期比52.0%増収、24/3期見通しは同14.0%減収。
半導体市場は、デジタル投資、EV需要拡大等を背景に、23/3期は堅調に推移した。しかし、WFE(Wafer Fab Equipment)半導体前工程製造装置市場は24/3期において調整局面となる見方が大勢を占めていることもあり、短期的には弱含む前提。中長期では市場の成長が続くとの見通しは不変であることから、同社は26/3期以降の市況拡大を見越し、各製品の生産能力拡大を継続する計画。具体的には、石英:マレーシア及び熊本に新工場建設、セラミックス:マレーシア及び石川に新工場建設、CVD-SiC:岡山及び常山で設備増強、シリコンは常山で設備増強、を予定。

 

<石英坩堝>
23/3期は前期比85.3%増収、24/3期も同4.1倍と大幅増収見通し。
太陽電池市場の導入量拡大に加え、ウエーハサイズの大口径化に対応した石英坩堝の大口径化のトレンドが顕著になっていることから、銀川工場での生産能力増強投資に取り組んでいる。

 

<サーモモジュール>
23/3期は前期比31.9%増収、24/3期は同8.2%減収を想定。
5G通信機器用途、PCRなどバイオ装置用途、半導体分野において、24/3期はピークアウトが顕在化することを前提にしている。ただし、25/3期からは再び増収に転じるとの見通し。
新製品の冷却チラーは、サーモモジュール(ペルチェ)方式、コンプレッサー方式を複数モデルラインアップし、半導体分野、工作機械、医療装置分野での拡販に取り組む計画。

 

<パワー半導体絶縁基板>
23/3期は前期比2.4倍の増収、24/3期は同80.0%増収を計画。
23年6月に中国四川省内江に新工場が竣工したほか、東台工場の生産能力拡大によって、増収が継続する見通し。上海東台工場の月産能力は、DCB基板:110万枚から160万枚、AMB基板:20万枚から45万枚へと拡大する計画。世界的な消費電力抑制気運から、DCB基板への需要はさらに拡大していくものと同社は考えている。

 

【4-4】

主な工場新設・生産能力増強の状況

(同社資料より)

 

◎株主還元
『持続的な収益増強により株主還元を増加させていく基本方針は不変だが、配当の決定に際して、「配当性向20%」を意識して、財務・投資機会等とのバランスを考慮して判断する』との配当政策を掲げている。その考えに則り、23/3期の一株配当は105円(配当性向16.3%)とした。24/3期は100円(配当性向31.3%)を計画している。中期的には配当性向を30%まで引き上げていきたいとの考えも示している。

 

◎長期業績目標
長期ビジョンとして掲げている31/3期売上高5,000億円、当期純利益500億円という数値目標に変更はない。

 

5.今後の注目点

2021年末から半導体市況は悪化傾向にあり、今期も在庫調整が続くとの前提は変わっていない。足下では在庫調整の遅れなどから短期見通しは引き下げられたものの、25~26年には半導体市況も再度拡大基調に転じるという見通しに変更がない点に注意を払いたい。中長期では、グリーンエネルギーの流れが変わることも考えにくい。同社はその意思を強く持ち、目先に惑わされない積極的な投資姿勢を今期も貫いている。今上期にしっかりと資金調達ができたことも、経営戦略をサポートすることに役立っている。一方、闇雲に投資するだけでなく、投資機会と財務状況の適切なバランスを確保した上でキャピタルアロケーション戦略を立てるなど、資本市場へ向き合う姿勢も評価すべきだろう。同社の株式価値は、短期的にはマクロ環境に左右されるだろうが、中長期ではバリュエーション向上に繋がる施策に積極的に取り組んでいる点に着目したい。

 

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

9名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2023年10月4日)
<基本的な考え方>
当社グループは、「顧客に満足を」、「地球にやさしさを」、「社会に夢と活力を」を企業理念とし、行動規範として、「グローバルな視点のもと、常に国際社会と調和を図り、地域社会その他私たちに関係する世界の人々の生活に貢献できる製品とサービスを提供する企業として、各国の法令を遵守することはもちろん、確固とした企業倫理と社会的良識を持って、誠実に行動すること。」、「新エネルギー産業およびエレクトロニクス産業を中心に高品質な製品やサービスを提案し、コスト競争力のある製品やサービスを提供することにより、お客様から信頼されて、満足を頂くこと。」、「地球環境に配慮した活動を積極的に推進することを経営上の重要課題の一つとして、最新の環境規制要求への適応を順次進め、新エネルギー産業で活用できる素材・製品などを開発し、地球環境問題の解決に貢献すること。」、「コア技術を活用したものづくりを通して社会に貢献し、顧客、株主、社員、取引先、地域社会などステークホルダーの方々が成長する楽しみを持てる企業であり続け、企業活動にあたり法令遵守、社会秩序、国際ルールなど社会的良識をもって行動すること。」を掲げています。

 

当社はこれらの企業理念と行動規範に従い、環境保全活動とグループガバナンスを積極的に推進するとともに、ステークホルダーの皆様にとって「成長する楽しみが持てる企業」であり続けることに努めております。また、半導体用マテリアル製品をはじめとする新素材及び生産技術の開発に注力し、品質を第一に考えて顧客満足の向上を追求する旨の「品質理念」を掲げ、生産の自動化、デジタル化、標準化を進めております。世界での市場シェアを高め、安定的な収益体質の企業集団を形成することを経営の基本方針としております。

 

以上の企業理念、行動規範、経営の基本方針を踏まえて、企業価値を高め、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会などステークホルダーに信頼され支持される企業となるべく、経営の健全性を重視し、併せて、経営環境の急激な変化にも迅速かつ的確に対応できる経営体制を確立することが重要であると考えております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない主な理由>

 

 <補充原則2-4①: 中核人材の登用等における多様性の確保>
当社グループは、人的資本の基本方針として、組織・人材について2つの大きな方針のもとグループを運営しております。 1つは、従業員のあらゆる属性に関係なく、一人ひとりが志をもって自律的に行動し、働きがいを持つことができる会社・組織とすること。もう1つは、マネジメントを現地化し、迅速な意思決定と、地域の特性にあわせたビジネス及び組織運営を行うことです。  グローバルに企業規模が拡大する中、人材と組織の抜本的な強化を図り、中長期的な企業価値の向上に向け、幅広いスキルと経験を持つ女性・外国人・中途採用者を積極的に採用しております。また、女性・外国人・中途採用者の高いスキル、当社グループ以外で培われた貴重な経験等を総合的に勘案・評価し、管理職への登用も積極的に行っております。 しかしながら、中長期的視点に立った女性・外国人・中途採用者の管理職への登用含めた人材育成方針及び社内環境整備方針、並びにそれら の進捗や達成状況について、併せて開示できるまでに至っておりません。今後、グローバルな企業規模の拡大に応じた中長期的な企業価値の向上に資するべく、人的資本に関する基本方針のもと、人材育成及び社内環境方針を設定し実施状況を開示できるよう鋭意検討を進めてまいります。

 

<補充原則3-1③: サステナビリティについての取組み、人的資本や知的財産への投資等経営戦略の開示>当社では、「顧客に満足を、地球にやさしさを、社会に夢と活力を」の企業理念の下、中長期的な企業価値向上に向け、ESG(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)が非常に重要であるとの認識から、2021年にマテリアリティ及びサステナビリティ基本方針を策定しました。今後は、ESGを推進するための組織体制の整備、社内啓蒙、定量目標の設定を進めてまいります。また、人的資本や知的財産への投資等については、日本の子会社では若手の幹部への積極登用や組織のフラット化を推進しております。また、中国の子会社では半導体関係の研究院の設置や博士クラス人材の採用強化、優秀な特許出願者があった場合には、表彰や報奨金の付与等を適宜実施するなどにより知的財産への投資に積極的に取り組んでおります。今後は、設定した定量目標のモニタリングを行い、取組み状況をホームページやIR資料等で公開してまいります。

 

<補充原則4-2①: 客観性・透明性のある経営陣の報酬の報酬制度> 当社は、取締役会の諮問委員会として社外取締役が過半数を占める報酬委員会を設置し、取締役の月額報酬、業績連動報酬など、取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定方針に沿って審議、決定し、取締役会へ報告しております。社外役員が委員の過半数となる報酬委員会を設置することにより、持続的な成長に向け、譲渡制限付株式報酬の導入など中長期的な報酬割合の設定や、固定報酬と変動報酬の目標割合を設定しております。取締役会から取締役の個人別の報酬等の額の決定を一任された代表取締役社長は、報酬委員会を招集の上、諮問し、当該答申内容を尊重して決定することとしております。 しかしながら、連結報酬における現金報酬と自社株報酬との割合の適切な設定までには至っておらず、報酬委員会に適宜陪席する外部専門家の意見を参考にしながら、報酬委員会を中心として適切な役員報酬制度を鋭意検討してまいります。

 

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>

 

<原則2-3:社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題> 半導体の製造プロセスは環境負荷が大きく、これを解決することが業界全体の課題となっております。当社では、ノン・フロンの温調デバイスであるサーモモジュールや消費電力削減に有効な「パワー半導体基板」、「磁性流体」等の製品販売並びに日本及び中国の工場における太陽光パネルを用いたクリーンエネルギーでの発電等、事業を通じて環境汚染に配慮した温室効果ガス低減に貢献しております。2023年3月「サステナビリ ティ委員会」を当社執行役員会傘下の委員会として設置し、サステナビリティへの取り組みの状況確認、検討、審議を行い、取締役会等で適宜に報告することでサステナビリティの全社的な検討・推進を行います。その他、コロナ禍の中で経済的に困窮する大学生が増加している中、当社は 将来社会に貢献し得る有為な人材の育成に寄与すべく工学系の学生に奨学金を給付している公益財団法人山村章奨学財団を支援しております。
<原則2-4:女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保>社内に異なる経験や価値観が存在することは、特に当社のようなグローバルに展開している経営環境下においては、会社の持続的な成長を確保する強みであると考え、現地子会社のマネジメントは現地に任せる方針の下、女性を含めた多様性の確保に努めております。

 

 

<補充原則4-11①:取締役会全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方>当社の取締役会は、業務執行の監督と重要な意思決定には、多様な視点と経験、及び多様で高度なスキルを持った取締役の構成が必要であると考えております。また監査役についても、取締役会に出席し、必要に応じて意見を述べる義務があり、取締役と同様に多様性と高いスキルが必要であると考えております。社外役員については、取締役会による監督と監査役による監査という二重のチェック機能を果たすため、法定の社外監査役に加え、取締役会での議決権を持つ社外取締役が必要であり、ともに高い独立性を有することが重要であると考えております。さらに、独立社外取締役は他社での経営経験を有する人物の選任を意識し、取締役会全体として必要とする知識・経験・能力等のバランスを考慮して選任し、スキルの網羅性を確保しております。各取締役・監査役の知識・経験・能力等を一覧化したスキル・マトリックスは、当社ホームページhttps://www.ferrotec.co.jp/esg/sdgs.phpに掲載しております。

 

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