アズ企画設計(3490) 増収増益予想 確実な業績達成と配当の実施を期待

2023/10/26
 

 

松本 俊人 社長

株式会社アズ企画設計(3490)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

不動産業

代表者

松本 俊人

所在地

東京都千代田区丸の内1丁目6番2号 新丸の内センタービル17階

決算月

2月

HP

https://www.azplan.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,164円

1,110,000株

2,402百万円

40.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

672.20円

3.2倍

1,540.18円

1.4倍

*株価は10/10終値。発行済株式数、DPS、EPSは24年2月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2020年2月

5,509

86

48

13

13.90

0.00

2021年2月

7,544

43

1

10

10.92

0.00

2022年2月

9,592

359

303

-526

-553.41

0.00

2023年2月

9,374

495

349

493

515.35

0.00

2024年2月(予)

11,892

648

503

666

672.20

未定

*予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

 

(株)アズ企画設計の2024年2月期第2四半期決算概要、2024年2月期業績予想、松本社長へのインタビューなどをご紹介致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年2月期第2四半期決算概要
3.2024年2月期業績予想
4.中期経営計画と成長戦略
5.松本社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2024年2月期第2四半期の売上高は前年同期比72.8%増の24億78百万円。主力の不動産販売事業の販売件数は5件とほぼ計画通り。3事業とも増収。営業利益は同1億22百万円の損失で、前年同期の2億62百万円の損失から縮小。増収効果に加え、販管費の抑制が貢献した。当期純利益は1億48百万円の黒字を計上(前期は2億17百万円の損失)。東北のホテル譲渡に伴う固定資産売却益4億52百万円を特別利益に計上した。
  • 中期経営計画の最終年度となる2024年2月期の業績予想に変更は無い。売上高は前期比26.9%増の118億92百万円、営業利益は同31.0%増の6億48百万円と2桁の増収増益を予想。不動産販売事業の拡充による成長を見込むほか、管理受託の獲得を引き続き進め、周辺業務の売上・利益を確保することで、賃貸事業・管理事業のストック収入も拡大させる。売上高の進捗率は20%だが、仕入も順調であり、下期の販売増を見込んでいる。
  • 24年2月期の配当予想は現時点では未定。ただ、これまでは自己資本比率30%以上で配当を検討するとしていたが、より多くの投資家に同社への投資魅力を訴求することを目的に、配当の実施について、より機動的に検討することとした。
  • 松本 俊人社長に、足元の状況、中期経営計画の進捗、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「株主や投資家の皆様が期待しているのは配当であると考えています。これまでは財務基盤の拡充を図るため、当面は内部留保充実を優先することを基本方針とし、自己資本比率30%以上で配当を検討するとしてきましたが、より多くの投資家の皆様に当社への投資の魅力を感じていただくため、今期24年2月期より、配当の実施については、業績に基づきより機動的に検討することといたしました。お約束した業績予想をしっかりと達成することで、皆様に喜んでいただけるよう努めますので、是非ご期待ください」とのことだ。
  • 同社の不動産販売事業では上期に仕入れを行い、下期に販売する営業スタイルであるため、売上高が下期に偏重する傾向が強い。今期も上期の売上高進捗率は20%となっているが、販売用不動産在庫が過去最高水準まで積み上がっている中、販売の準備が済んでいる物件も多く、第3四半期以降に販売は順調に進むと会社側は見込んでいる。確実な業績予想の達成と配当の実施を期待したい。 

     

1.会社概要

一都三県を中心に、収益不動産を取得し、リノベーションによるバリューアップやリーシング(賃貸募集)を行い、不動産投資家へ再販する不動産販売事業が柱。埼玉県川口市で賃貸・管理事業からスタートしており、その経験からリーシングを中心としたバリューアップを得意とし、賃貸・管理事業を併営している。

 

【1-1上場までの沿革】

学生時代から起業精神が旺盛で、なおかつ周りの人々を元気にしたいと常に思っていた松本俊人氏(現株式会社アズ企画設計代表取締役社長)は、父親が所有する不動産の管理を手伝い、「トラブル物件」の対応に関わったことから、不動産業に興味を抱くようになる。
不動産会社に就職後、バブル崩壊から2年ほど経った頃、景気は不況の真っ只中であったが、そんな街を「元気」にしたいという強い想いのもと、1993年5月、1989年に設立していた会社を、株式会社アズ企画設計へ社名変更し、不動産の売買、賃貸、管理等を開始する。
当初は自宅を本社として売買仲介をメインに行っていたが、その後賃貸管理を視野に入れて東川口に店舗を構え、賃貸や売買のみならず、貸しコンテナ事業やビジネスホテル事業など多岐に渡る事業展開で規模を拡大する。
中でも、好不況の波が大きい不動産業界において「資金回転の速さ=リスクの低減」を重視して、収益不動産を取得後、リノベーションによるバリューアップやリーシングを行い不動産投資家へ再販する不動産販売事業に注力する。
また、当時は不動産会社としては珍しかったオリジナルキャラクター「ハウスくん」をはじめいくつかのキャラクターを商標登録し、地域情報誌「ハウスくん通信」を発行するなど、ユニークな経営戦略で地域密着型ビジネスを展開する。
2015年3月に事業規模拡大に伴い東京支社を開設(2020年に東京支社を東京本社とし、本社を本店に変更)。不動産販売事業の急成長を背景に、2018年3月、東証JASDAQ(スタンダード)市場に上場した。
2022年4月に市場再編に伴い、東証スタンダード市場に移行した。2023年8月、更なる成長に向け、東京本社を千代田区丸の内に移転した。

 

【1-2 理念】

以下の企業理念、行動規範を掲げている。
社名の「アズ」には、「A」から「Z」まで世の中の幅広くあらゆるニーズに対応できる会社に.なりたいという想いが込められている。

 

企業理念

「空室のない元気な街を創る」

行動規範

Vision

私達は法令を遵守し使命感を持って社会の発展に貢献します。

 

Mission

私達はアイデアと自由な発想で商品・サービスを生み出し、夢や喜びを提供する魅力ある企業を目指します。

 

Value

私達は常に感謝の気持ちを大切にし、迅速かつ柔軟な対応をもって快適な環境を追求します。

 

Member

私達は、社員を大切にして、個々が成長できる企業を創ります。

 

【1-3 事業内容】

主に東京、埼玉、千葉、神奈川エリアを中心として、「不動産販売事業」「不動産賃貸事業」「不動産管理事業」を展開している。
各事業内の区分として「領域」という名称を用いている。

 

 

(1)不動産販売事業
◎収益不動産売買領域
入居率の低下や賃料水準の低下等が発生し、収益の改善を要する中古不動産を取得し、同社が保有時にリノベーション(主に間取り変更を伴う内装工事)、リーシング(賃貸募集活動)、物件管理状況の改善等を通じて不動産としての収益改善を行い、不動産投資家へ販売している。
物件エリアの市場環境調査や周辺対抗物件調査、物件及び物件の管理状況の把握を行った上で、リノベーションやリーシングによる具体的な収益改善プランを作成・実行している。
エリアや価格帯を加味した資産性についての目利き力をベースに、再販時に投資家がどのような目線であればその物件に投資したくなるかというストーリーを取得前に構築し、判断を下している。

 

また、開発用地を取得し、賃貸ニーズに合致するような不動産を建設・リーシングすることでバリューアップを施し、収益不動産として販売もしている。

 

これらを速やかに実行することで、販売用不動産の保有期間の短縮化を図り、リスク低減に努めている。
従来「ビジネスホテル再生販売領域」としていた領域については重要性が乏しくなったため、22年2月期より「収益不動産売買領域」に統合した。

 

(同社資料より)

 

(2)不動産賃貸事業
① 不動産賃貸領域
リニューアルにより高収益が見込める中古不動産を不動産オーナーより借り上げ、施設利用者へ転貸している。
同社が不動産賃貸事業及び不動産管理事業で培ってきたリーシングやリノベーションの手法により、賃貸物件の稼働率向上や賃料水準の改善を図り、オーナーは同社の一括借り上げにより安定した賃料収入を得ることができる。
同社においては、上記借り上げ不動産からの賃料収入や不動産販売事業において取得した販売用不動産の売却までの期間に得られる賃料収入が同領域の収益になる。収益改善や稼働率向上に伴う収入増も見込むことができる。
良質な不動産の増加で街の賑わいがつくれるため、地域社会への貢献にもつながると考えている。

 

② 空間再生領域
長期不稼働になっている建物や遊休地を保有する不動産所有者に対し、有効活用を提案し、不動産所有者から未利用建物又は土地を賃借し、再生利用している。
店舗、事務所、倉庫等の不稼働の事業用建物は、造作を加えて内部を区切り、収納スペースや事業スペースとして施設利用者に提供している。
遊休地については、貸コンテナの設置、コインパーキングや月極駐車場、一括貸し地等として施設利用者に提供している。

 

③ 宿泊事業領域
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく住宅宿泊事業として、同社が不動産物件を賃借し、運営会社協力のもと宿泊サービスを提供する民泊施設の運営を行っている。
東日本大震災を機に東北地方への貢献などを目的に運営していたビジネスホテルは、一定の貢献ができたため次の展開として、コールセンターや、高校寮として再活用をしている。

 

(同社資料より)

 

(3)不動産管理事業
① 不動産管理仲介領域
同社から不動産物件を購入した顧客や、その他の不動産所有者に対して所有不動産における建物管理、入居者管理、賃貸借契約管理等のサービスを提供している。
不動産所有者と入居者の賃貸仲介も行っている。
入居者には「快適な暮らし」を、オーナーには不動産賃貸経営の「安心経営」を提供している。

 

② 建築リフォーム領域
賃貸不動産物件や一般家庭に対して大規模な修繕工事やリノベーション、リフォーム、クリーニング、原状回復工事等のサービスを提供している。

 

③ 不動産管理付帯領域
賃貸仲介等から生じる鍵等の付帯商品販売を通じた収益や、少額短期保険の代理店手数料等を計上している。

 

【1-4 特長・強み】

同社の主要な強みは「リーシングを中心としたバリューアップ」と「収益不動産の回転の速さ」である。

 

(1)リーシングを中心としたバリューアップ
賃貸・管理からスタートした強みを活かし、収益不動産を取得後直ちにリノベーションなどを行うことで賃貸収入の引き上げを図り、リーシングにより満室稼働にすることでバリューアップを実現している。

 

(2)収益不動産の回転の速さ
収益不動産の平均保有期間は23年2月期で148日(販売件数24件)。回転が速いためリスクが少なく、金融機関も貸金実行の判断がしやすい。
また、急激な金融情勢の悪化の際にも、影響を最小限に抑えることができる。

 

収益不動産の平均保有日数は低下傾向にあり、直近3期の平均は164日。販売件数は着実に増加している。

 

このスピードの源泉は、『仕入 – 商品化 – 販売』 までの業務サイクルを同一社員が主担当者として行うワンストップの営業スタイルである。
競合他社では仕入担当や商品化担当、賃貸担当、販売担当など、業務が専業化していることが多いのに対し、同社ではワンストップで対応しているため、担当者は販売を念頭に置いた仕入を実施するため良質な仕入が可能である。
加えて、「仕入~販売」が1担当者の中で完結しているため、仕入後の動きを事前に想定して取り組むことができ、スピード感を持って商品化(リノベーションや大規模修繕、リーシング)を実行することが可能である。
また、チームのフォローがあるものの、新卒社員にも徹底して全行程を任せるため、社員の成長速度が早いという効能も生み出している。
毎期実績を積み上げる過程で、スピードは着実に上昇している。

 

◎事例1(千代田区神田岩本町)
14フロアすべてが空室の新築オフィスビルを取得した。コロナ禍で需要が低下していた都心のオフィス賃貸であったにも関わらず、約3ヶ月のリーシングで満室稼働となった。

 

◎事例2(世田谷区深沢)
12室すべてが空室の物件を取得後、全室リノベーション工事を実施した。賃貸募集から約1.5ヶ月で全室の入居者が決まり、満室稼働となった。月額の賃貸収入は工事前の1.67倍と、大幅なバリューアップを実現した。

 

【1-5 株主還元】

これまでは財務基盤の拡充を図るため、当面は内部留保充実を優先することを基本方針とし、自己資本比率30%以上で配当を検討するとしていたが、より多くの投資家に同社への投資魅力を訴求することを目的に、24年2月期より、配当の実施について、業績に基づきより機動的に検討することとした。

 

同社のビジネスモデルにおいては、業績の安定化・発展を目指す上で、翌期の在庫確保を優先させる必要があり、自己資本が潤沢になるまでは一時的に期末の自己資本比率が低下すると考えられる。
一方で、翌期在庫を確保できていれば、業績は安定的に伸ばすことができると想定しており、上場から5年が経過し、配当を本格的に検討するステージであるという認識から今回の方針変更となった。

 

また、より多くの投資家に同社への投資魅力を訴求することを目的に、23年2月期より、株主優待制度の内容を変更した。
これまではポイント制度による優待商品との交換であったが、QUOカードの贈呈とした。
贈呈回数は、これまでの毎期末1回(2月末)から、年2回(8月末、2月末)に増加。
100株以上保有の株主は額面3,000円のQUOカードを8月末、2月末に合計6,000円受け取ることができる。
同社試算によれば、23年8月末時点での100株保有時の想定優待利回りは、約2.64%である。

 

【1-6 サステナビリティ】

2021年11月、同社では以下のようなサステナビリティ基本方針を策定。様々な取り組みを進めている。

 

サステナビリティ基本方針 私たちアズ企画設計は、「空室のない元気な街を創る」という企業理念のもと、すべてのステークホルダーに配慮し事業活動を行うことによって、持続的な成長の実現を目指します。また、自らの持続的な成長とともに、持続可能な社会の実現に貢献するために、以下の課題に取り組み、企業価値の向上を目指して参ります。

 

◎不動産事業を通じた取り組み

住みやすい居住空間づくり

 

●賃貸物件のリノベーション

リフォーム(原状回復工事)・リノベーション(性能向上を含む大規模工事)・コンバージョン(用途変換工事)を行い物件の価値を最大化することにより、住みやすい住環境つくりを目指します。また、「リノベーション」を行う際は、環境に優しい資材を採用することを目指し環境保護にも力を入れております。

 

住み続けられるまちづくり

 

●レジデンスやビルのリノベーション

経年劣化したレジやビルを当社で買取り、外装や内装をリノベーションし、付加価値をつけて売却を行っております。新築をする場合は劣化した建物を撤去するために多大な産業廃棄物を放出しますが、建物を再生させることにより環境負荷を低減させます。また、中古不動産の寿命を延長し、地域社会の発展に貢献します。

 

不動産の再生活用

 

●遊休地や空き家、空きビルのリノベーション

稼働率の低下している不動産や空き家をはじめとした遊休不動産などに、新たな価値を付与して時代のニーズにあった優良不動産として再生させることで、地域社会の発展に貢献します。

 

 

◎社会への取り組み

多様性の尊重と調和
 

●不動産エージェント制度の導入

多様なバックグランドの人材がポテンシャルを最大限に発揮して働ける環境を整備しております。そのひとつとして、不動産営業を志すすべての方に労働の機会を創出するため、不動産エージェント制度を導入しました。エージェント制度の社会的認知度を向上させることを目指します。

 

生涯学習の促進

 

●資格支援制度

不動産業に役立つ資格取得を目指す従業員に向けて、教育の場の提供、経済的支援を行っております。

 

健康と安全

 

●健康企業宣言

従業員が心身ともに安心して健康的に働くことができる職場環境を目指しております。

※健康企業を目指して、企業全体で健康づくりに取り組んだ結果、「健康優良企業」として認定されました。

 

地域との共生

 

●地元サッカー団体への支援

地元サッカーチームを支援し、地域のスポーツ文化振興とその先にある心身ともに健康的な未来を目指します。

 

●地域情報誌「ハウスくん通信」の発行

不動産情報に特化した地域情報誌を3か月に1回発行しております。地域情報誌として無料で配布し、地域の皆様への有用な情報発信を行っております。

 

 

 

◎環境への取り組み

環境への負担を軽減

 

●ゼロカーボン電力の導入

秩父新電力株式会社よりCO2 フリー電気である『ちちぶゼロカーボン電力』を導入することで継続供給CO2の排出を削減し、地球温暖化問題に取り組みます。

 

●ペーパーレス活動

iPad支給や各種電子化によって書類の不要な印刷を防ぐことで森林を守ります。

 

●環境にやさしい機器の導入

社用車や複合機はCO2 排出量削減可能な製品を優先に採用しております。

 

 

◎事業を支えるガバナンス・コンプライアンス

●持続可能な成長を実現するガバナンス体制の維持・強化

あらゆる法令、規程を遵守し、人権を尊重するとともに、高い倫理観に則った誠実かつ公正な企業活動を遂行します。ステークホルダーの皆様との健全かつ正常な関係を構築するとともに、公正な競争、企業情報の適切な開示等、社会の一員としての責任を果たします。

 

 

 

2.2024年2月期第2四半期決算概要

【2-1 業績概要】

23/2期2Q

構成比

24/2期2Q

構成比

前年同期比

売上高

1,434

100.0%

2,478

100.0%

+72.8%

売上総利益

232

16.2%

373

15.1%

+60.4%

販管費

495

34.5%

495

20.0%

+0.1%

営業利益

-262

-122

経常利益

-318

-239

当期純利益

-217

148

6.0%

*単位:百万円。

 

増収、損失縮小
売上高は前年同期比72.8%増の24億78百万円。主力の不動産販売事業の販売件数は5件とほぼ計画通り。3事業とも増収。
営業利益は同1億22百万円の損失で、前年同期の2億62百万円の損失から縮小。増収効果に加え、販管費がほぼ前年同期並みとなった。
当期純利益は1億48百万円の黒字を計上(前期は2億17百万円の損失)。東北のホテル譲渡に伴う固定資産売却益4億52百万円を特別利益に計上した。

 

【2-2 セグメント別動向】

23/2期2Q

構成比

24/2期2Q

構成比

前年同期比

売上高

不動産販売事業

1,097

76.5%

2,067

83.4%

+88.4%

不動産賃貸事業

227

15.9%

296

12.0%

+30.0%

不動産管理事業

108

7.6%

114

4.6%

+5.3%

売上高合計

1,434

100.0%

2,478

100.0%

+72.8%

セグメント利益

不動産販売事業

-173

-28

不動産賃貸事業

-18

20

6.9%

不動産管理事業

21

19.6%

29

25.4%

+36.3%

調整

-91

-144

セグメント利益合計

-262

-122

*単位:百万円。セグメント利益の構成比は売上高利益率。

 

(1)不動産売買事業
前年同期比88.4%増収、セグメント損失は前年同期の1億73百万円から28百万円に縮小。
販売件数は5件とほぼ計画通り。仕入において租税公課負担の生じない事業用不動産やプレミアムマンションの仕入が多く、一時的な租税公課負担も前年同期比で軽減した。

 

◎在庫
販売と並行して引き続き仕入も進めたため23年8月末の販売用不動産在庫残高は81億37百万円と過去最高を記録。
今後の販売に繋げるための仕入れが進んでいる。
一方で商品化準備が進んでいる物件も多く、第3四半期以降の販売増を見込んでいる。

 

(同社資料より)

 

◎平均販売金額、取引件数
販売件数は前年同期の3件から5件へ拡大した。平均販売金額は前年同期とほぼ同じく4.1億円と高水準を維持。
現在の保有物件を順調に販売すると前期の平均販売金額を上回る見込みである。
現在保有している収益不動産の多くは、コロナ禍でも安定的な取引ができていた一棟の居住用不動産に偏っており、種別の多様化は引き続き課題と認識している。
オフィスビルや店舗ビルなど事業用不動産にも積極的に取組み、「大型化」「多様化」を更に進める考えだ。

(同社資料より)

 

(2)不動産賃貸事業
前年同期比30.0%増収、セグメント利益は20百万円に黒字転換(前年同期は18百万円の損失)。収益性が大きく改善した。
収益不動産の保有中に発生する「収益不動産賃収」が、前年同期よりも保有物件を多く確保したため、大きく貢献した。
但し、収益不動産賃収は販売事業の内容に影響されるため、フロー収益のような性質がある。
民泊は、2022年10月の新型コロナウイルスに関する水際対策の緩和以降、ADR(客室平均単価)が大幅に向上し、収益に貢献している。

 

(3)不動産管理事業
前年同期比5.3%増収、セグメント利益は同36.3%増益。
管理受託戸数の増加に伴い、管理手数料だけでなく、周辺業務でも売上を確保している。
営業部門側では、販売事業で販売した物件の管理受託増加と、それぞれの案件での管理手数料単価の向上という量と質の両方を向上させるべく取組みを進めている。

 

【2-3】

財政状態とキャッシュ・フロー

◎財政状態

23年2月

23年8月

増減

23年2月

23年8月

増減

流動資産

8,294

11,232

+2,937

流動負債

2,566

5,615

+3,048

現預金

3,559

2,917

-642

短期有利子負債

1,439

4,969

+3,530

販売用不動産

4,545

8,137

+3,591

固定負債

5,032

4,543

-489

固定資産

778

802

+23

長期有利子負債

4,913

4,364

-548

有形固定資産

488

513

+25

負債合計

7,599

10,158

+2,559

無形固定資産

3

2

-0

純資産

1,474

1,876

+401

投資その他の資産

287

285

-1

利益剰余金

973

1,121

+148

資産合計

9,073

12,035

+2,961

負債純資産合計

9,073

12,035

+2,961

*単位:百万円。販売用不動産は仕掛販売用不動産を含む。

 

販売用不動産の増加などで資産合計は前期末比29億円増加の120億円。販売用不動産在庫は期末としては過去最高水準を確保している。
長短有利子負債の増加(前期末比29億円増)などで負債合計は同25億円増加の101億円。
新株予約権の行使による資本金・資本準備金の増加、利益剰余金の増加で純資産は同4億円増加の18億円。
自己資本比率は前期末比0.7%低下の15.6%。

 

◎キャッシュ・フロー

23/2期2Q

24/2期2Q

増減

営業CF

-5,004

-3,720

+1,284

投資CF

-121

-511

-390

フリーCF

-5,126

-4,231

+894

財務CF

4,696

3,211

-1,484

現金同等物残高

1,702

2,007

+305

*単位:百万円。

 

税引前四半期純利益の計上(前年同期は損失を計上)、棚卸資産増加額の減少などで営業CF及びフリーCFのマイナス幅は縮小した。
キャッシュ・ポジションは上昇した。

 

【2-4 トピックス】

◎東京本社の移転:交流強化による業績拡大を目指す
23年8月、東京本社をそれまでの東京都千代田区神田から千代田区丸の内の「新丸の内センタービルディング」に移転した。

 

同社は、「出会いが人をつくる」という想いのもと、これまでも不動産業界関係者の情報交換会『アズサロン』を月に2回開催するなど、出会いの場を作り出してきたが、これまで以上に交流の場を増やし、提供したいと考えていた。
一方で、更なる業績拡大を目指して採用も活発に行い社員数が増加する中、1フロアを2フロアに増床することで対応してきたが、社内連携による業務が煩雑となっていた。こうした状況の下、以下の目的を設定し、本社を移転した。

 

①多くの方に来ていただけるオフィスづくりで、社外の方とのコミュニケーションを活性化させ、業績拡大を目指す。
②社員同士のコミュニケーションを活性化させ、相互理解を深めることで会社が一体となり、事業成長を目指す。

 

移転に際しては、既存什器の再利用・寄付、FSC®認証(※)家具の導入、最小限の造作の実施など、持続可能な社会づくりへの貢献のためSDGsを意識した移転方法を企画・実施した。

 

※FSC®認証製品
FSC®(森林管理協議会)が運用する認証制度において、適切に管理された森林で産出され、さらに製品化の段階でも認証を受けた工場で加工・管理された製品を指す。健全な森林の育成を支援するとともに、無秩序な森林伐採や違法伐採などを抑制する役割を担っている。

3.2024年2月期業績予想

【業績予想】

23/2期

構成比

24/2期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

9,374

100.0%

11,892

100.0%

+26.9%

20.8%

営業利益

495

5.3%

648

5.4%

+31.0%

経常利益

349

3.7%

503

4.2%

+44.4%

当期純利益

493

5.3%

666

5.6%

+35.1%

22.2%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

業績予想に変更なし、2桁の増収増益を予想
業績予想に変更は無い。中期経営計画の最終年度となる今期、売上高は前期比26.9%増の118億92百万円、営業利益は同31.0%増の6億48百万円と2桁の増収増益を予想している。
売上高の進捗率は20%だが、仕入、商品化への準備も順調であり、下期の販売増を見込んでいる。

 

*不動産販売事業
販売用不動産在庫の積み上げが進んだことから前期の減収減益から増収増益に転じる見込み。
大型物件の取扱いと取扱い商品の多様化を営業戦略として進めつつ、不動産開発事業、プレミアムマンション事業など、新たな取組みの拡大も見込むことで、販売事業全体としての拡充を進める。

 

*不動産賃貸事業
東北ホテルの売却で改善する見込みの収益を維持する。

 

*不動産管理事業
管理受託の獲得による賃貸管理手数料の拡充とその周辺収益の確保を進める。

 

配当予想は未定だが、1. 会社概要 【1-5株主還元】で触れたように、これまでは自己資本比率30%以上で配当を検討するとしていたが、より多くの投資家に同社への投資魅力を訴求することを目的に、配当の実施について、より機動的に検討することとした。

 

4.中期経営計画と成長戦略

2024年2月期を最終年度とする中期経営計画を推進中である。

22年2月期 売上高・営業利益・経常利益は計画達成。当期純利益は減損損失計上で未達。
23年2月期 売上高は未達も、利益率向上に伴い、営業利益・経常利益・当期純利益は達成。
24年2月期 売上高118億円、営業利益6.4億円、経常利益5.0億円を計画。

 

【4-1】

中期経営計画達成に向けた成長戦略

(1)不動産販売事業の営業戦略
売上拡大に向け「価格帯の向上」と「商品種別の多様化」に取組んでいる。

 

*価格帯の向上
融資の付きやすい属性の投資家への販売を目指すため、取扱いの中心を3億円以上のレジデンスにすると同時に、10~20億円規模の収益不動産の取扱いも拡充している。
22年2月期、23年2月期で販売した収益不動産は5億円以上の物件が約4割に増加しており、10億円以上の収益不動産の販売にも成功している。
但し、商品種類を増やすこと、販売時期の偏りを避けることを目的として、従来取扱ってきた価格帯が小さく回転の早い収益不動産(区分マンション、区分オフィス、店舗など)も引き続き取扱いを進める。

 

価格帯向上に向け、事業エリアとしては東京都心部、特に都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)における取り組みを増やしている。

 

*商品種別の多様化
投資家からの様々なニーズに応えるため、取扱うアセットタイプを増やしている。
22年2月期、23年2月期で販売した収益不動産は従来通りレジデンスが多いものの、区分やビルの割合も増加している。

 

 

 

(同社資料より)

 

レジデンスの取組みについても、直近数年で特徴のある物件の取扱いも増やしており、レジデンスの中でも取扱いの幅が広がっている。

事例1 防音レジデンス 高い防音(遮音・吸音)性能を持つ防音レジデンスを“AZ Music”の名称で販売している。楽器だけでなく、近年職業としても広まる配信にも有効で人気を集めている。

 

(例)板橋区大和町プロジェクト

「不動産開発事業」(後述)として、23年7月に竣工。部屋同士の間の壁を厚くすることや、扉を 2 重にすること、窓を 3 重にすることなどにより、全居室において高い遮音性能を実現している。

事例2 IoTレジデンス あらゆるモノがインターネットに繋がっており、スマートフォンやAIスピーカーなどから家電などの電化製品などを動かすことができるレジデンスで、”AZ Smart”の名称で販売を進めていく。

 

(例)世田谷区世田谷の新築一棟収益不動産

23年10月に世田谷区世田谷の新築一棟収益不動産を取得。外出先でエアコンの起動や温度調整、インターホンの来客対応も操作できる利便性の高さが特徴。

事例3 デザイナーズ 有名デザイナーによるデザイナーズ物件で、付加価値が期待できる
事例4 家具家電付き物件 家具家電が備え付けとなっており、単身者などに人気。

 

(2)新たな取り組み
更なる収益拡大に向け、新たに「不動産開発事業」「プレミアムマンション事業」「区分マンション事業」「不動産特定共同事業」「不動産エージェント制度」に取り組んでいる。
「不動産開発事業」は居住用・事業用を問わない1棟新築不動産の増加に、また、「プレミアムマンション事業」は区分かつ居住用の増加による「商品種別の多様化」に資するため、成長の柱と位置づけ、重点的に取り組んでいく。

 

(同社資料より)

 

①不動産開発事業
開発用地を購入し、建設する建物の企画段階から同社で行う新しいスキーム。一定の時間を要するものの、将来の在庫を用意できるため翌期以降の不動産販売事業の売上の一部に目途が立つほか、ファイナンスが付きやすいというメリットもある。
現在は、世田谷区用賀プロジェクト、板橋区大和町プロジェクト、台東区東上野プロジェクト、板橋区本町プロジェクトの合計4案件が進行中。一部案件は今期後半の販売を見込んでいる。

(同社資料より)

 

②プレミアムマンション事業
需要が高い都心の高級感あるマンションの1区画を取得し、バリューアップ後に販売するスキームであるプレミアムマンション販売事業に取組んでいる。

 

リノベーションの企画力やリーシングの技術などのバリューアップ面での強みや、これらを短期間で実行できるスピード面での強みなど、同社がこれまで培ってきた強みを活かせる事業と考え着手した。

 

これまでは1棟の収益不動産を取得し、バリューアップ後に不動産投資家を対象に販売していたが、プレミアムマンション事業ではマンションの1室をバリューアップし、主として実需向けに販売する点で、これまでとは異なるビジネスモデルとなる。
2021年12月に取得した第1号案件(新宿区二十騎町)、22年5月に取得した第2号案件(豊島区駒込)とも販売済で、順調な立ち上がりである。
今期は「荒川区西日暮里」「新宿区南榎町」「千代田区九段北(2室)」を取得して販売を開始している。3案件の販売を進めつつ、並行して仕入営業力の強化を進めており、別案件の取得を目指している。

 

③区分マンション事業
更なる「商品種別の多様化」に向け、比較的高額な「プレミアムマンション」からの横展開により、一般的な価格帯の「区分マンション事業」への取り組みを開始した。

 

(同社資料より)

 

23年9月29日に港区白金台において1号案件を取得しており、事業は順調に立ち上がり始めている。

 

既にこれまで手掛けてきた1棟オフィスビル、店舗ビルに加え、今回の区分マンションの経験・実績を横展開し、区分オフィス、区分店舗など、さらに商品バリエーションを豊富にすべく取り組みを進めていく。
また、プレミアムマンション・区分マンションにおいては、賃貸中の区分マンションの取扱い(※)についての研究・検討も開始している。
※空室物件を購入し、保有期間中にバリューアップを行った後に販売するスキームの場合、管理費・修繕積立金などのコストが増加するため、在庫リスクを抑えることのできる賃貸中物件を保有し、賃借人の契約が満了となった段階でバリューアップを行う事業。

 

④不動産特定共同事業
不動産特定共同事業法(不特法)に基づく匿名組合組成に向け、不動産小口化商品の販売を開始した。
不動産小口化商品は、投資家にとっては「優良物件への投資が可能」「少額から出資が可能」「オンラインで申し込みから契約が可能」といったメリットがある。
同社にとっては、一般投資家との関係創出の機会であり、資金調達方法の多様化というメリットもある。

 

第1号案件の運用は完了し、4月末に償還を完了したのち、23年8月には第2号案件の募集を実施した。募集金額3,000万円に対して6,888万円(達成率229%)の応募があり運用中である。引き続き不動産投資型クラウドファンディングに対する需要は大きい。

 

(同社資料より)

 

⑤不動産エージェント制度
2020年9月より取組んできた不動産エージェント制度も徐々に取引件数が増加している。
同制度は、同社が業務委託契約を締結したフリーランスの営業職である不動産エージェントが自身のネットワークにいる投資家などに物件販売の紹介を行い、成約した際には手数料をシェアするというもの。
米国の有力不動産エージェント会社であるケラー・ウイリアムズ社の日本法人ケラー・ウイリアムズ・ジャパン(KWJ)と業務提携した同社が、ケラー・ウイリアムズ・アズ(KWAZ)を開設・運営している。
KWAZはケラー・ウイリアムズのブランド、システム、教育プログラム等により不動産エージェントを支援するほか、同社の不動産ノウハウ、目利きなどの経験知、契約業務等で彼らをサポートする。

 

不動産以外の業界出身者も不動産エージェントとして募集することで、同社では従来持ちえなかった情報ルートで新たなビジネスを創出している。23年8月時点で建築士、社労士、行政書士、IFA、自営業者(リフォーム会社、マッサージ店など)、不動産オーナー、主婦など約40名がエージェントとして活動している。

 

事業が軌道に乗り出したこともあり、同社では子会社アズプランを設立し、売上増やエージェントの採用拡大を目指している。
加えて、東京本社への移転もエージェントの採用に大きく寄与すると考えている。
今後は賃貸紹介、売買仲介だけでなく、同社の収益不動産の取得・販売の仲介等も進めていく。

 

 

(同社資料より)

 

(3)その他の取り組み
①資金調達手段の多様化
資金需要が旺盛な不動産販売事業を主要な事業とする中で、新たな資金調達の手段としてクラウドファンディングを、機動的かつ安定的な資金調達手段としてコミットメントライン契約・当座貸越契約を、それぞれ企画・実行した。

 

前者では、Fintertech社の運営するFunvestにおいて22年1月に国内企業 第1号案件として資金調達を行って以来5回、バンカーズ社の運営するBankersにおいては22年6月に上場企業として初めて資金調達を行って以来こちらも5回の資金調達を実施している。
クラウドファンディングについては今後も積極的に取組み、資金調達を進めるとともにPRの一環として、一般投資家に対する認知度向上に努める。

 

後者では、現在までに4行の地銀・信用金庫とコミットメントライン契約や当座貸越契約を締結している。
他の金融機関とも同様に、機動的かつ安定的な資金調達を実施する取組みを進める。

 

②IT投資
不動産賃貸・管理事業では、オーナーや入居者・使用者の利便性向上の観点からオンラインに移行するニーズが高く、同社も業務における作業量の削減が見込めるため、積極導入を進めている。

 

2022年5月には、賃貸借契約をオンラインで可能とする法整備も行われ、業界としても強い潮流となっている。
同社では、作業量削減による人員配置の効率化、営業活動増加による管理受託戸数の増加などを見込んでいる。

 

2021年3月 ベースとなる管理システムを、自社開発から導入実績の多いパッケージソフト「i-SP」へ入替えた。
2021年12月 Park Direct を導入し、駐車場関連業務をオンライン化した。
2022年2月 ITANDI BB+シリーズの一部を選択して導入し、居住・事業用管理物件を対象に、内見予約、入居申込、物件確認などの賃貸募集業務をオンライン化した。
2023年2月 クラウドサインを導入し、新規契約および更新時の契約書類の締結をオンライン化した。
2023年10月 賃貸管理事業における電話の自動振り分け・自動音声受付システム「smarep」を導入した。

 

引き続き、業務効率やユーザー満足度の向上を目指してIT投資を進める。

 

③新株予約権の発行
調達資金を活用した中期経営計画の達成と流動性の向上を通じた株価上昇により、東証スタンダード市場の上場維持基準「流通株式時価総額10億円以上」を達成することを目的として、2023年3月に第3回、第4回の新株予約権を発行した。

 

(概要)

第3回新株予約権

第4回新株予約権

調達金額

約2.6億円

約1.4億円

行使価額

1,640円

1,800円

株式数

157,500株

77,500株

資金使途 不動産開発事業・プレミアムマンション事業用資金 M&Aまたは戦略的提携関連資金
行使期間

23年3月27日~26年3月27日

*行使価額は固定されており、同社が転換権を行使した場合を除き、修正されない。
*同社が必要と判断した場合には、取締役会決議により行使価額修正型への転換が可能だが、行使価額修正型に転換した場合でも、下限行使価額 
が1,000円に設定されている。
*対象株式数は235,000株で固定されており、株価の変動等により潜在株式数が変動することはない。

 

それぞれ、発行日時点株価と同等、または発行日時点株価よりも高い水準で行使価額を設定した。行使価格を固定することで目標とする株価に達するまでは行使されない目標設定型のスキームであり、既存株主の保有価値を可能な限り毀損させない仕組みとした。

 

その後の順調な株価推移により、第3回新株予約権は23年9月4日付けで行使が完了した。
第4回新株予約権については、10月5日時点での累計行使比率は38.71%となっている。

 

④IR・PR活動の拡充
適切な情報をタイムリーかつ積極的に公表することが企業価値の向上に資すると考えており、株主・投資家を始めとしたステークホルダーの理解促進のため、IR・PR活動の強化に取り組んでいる。

 

開示に関しては、量の増加(開示件数増加など)、質の改善(開示資料の改善・拡充など)に努めている。
発信ツールも、様々なツールを使用してチャネルを拡充している。
このほか、個人投資家向け情報発信力の強化を図っている。

 

⑤東北ホテルについて
東北ホテルについては、震災から10年が経過し、各施設が当初の役割を果たした一方で、同社は各施設の再活用による地域活性化への貢献を図り、以下のような取り組みを進めた。
解体・移設の実績、経験を今後のビジネスに活かしていきたいと考えている。

 

(1)旧:アイルーム南三陸
1階部分をコールセンターとして転用し、地元雇用創出への貢献を図っている。
2・3階部分は南三陸町の地域活性への取組みに協力し、宮城県南三陸高校の全国募集開始を後押しする形で、学生寮として移転させる工事を実施し、2023年2月竣工した。
地域に役立つ方法で建物を転用すると同時に、需要により収益の発生する物件に変更した。

 

(2)旧:アイルーム高田竹駒・釜石鵜住居・大槌
復興支援という目的は一定程度達成したため、22年2月期に減損処理を行い、22年11月に保有資産の資金化による財務基盤の強化を図るために地元の事業会社と譲渡契約を締結。23年5月時点で解体・移設・引渡しは完了している。
譲渡に係る会計処理については、約4.5億円の特別利益を2024年2月期上期に計上した。

 

【4-2 数値目標】

中期経営計画では、売上高は毎年約10億円、当期純利益は毎年約1億円の成長を見込んでいる。最終2024年2月期は「売上高118億92百万円、営業利益6億48百万円、当期純利益6億66百万円」を目標としている。

 

 

5.松本社長に聞く

1.現在の事業環境について
金利が上昇傾向にありますが、販売、営業面で、現時点では大きな変化は感じておらず、安定的に推移していると考えています。
一般的に不動産業界では金利上昇に伴い、金融機関からの融資が厳しくなり経営に支障が出るというケースが見られますが、現時点では同業他社でそうした例は出ていません。

 

一方で、建設会社においては、資材高や人件費高騰の影響で、納期が遅れるなどして倒産に至る案件も出始めているのは気になるところです。
当社としても、新築案件などは選定する建設会社の状況を注意深く見ていく必要があると考えています。

 

2.本社移転について
今年8月に東京本社を神田から丸の内に移転しました。
当社は、「出会いが人をつくる」という想いのもと、これまでも不動産業界関係者の情報交換会『アズサロン』を月に2回開催するなど、出会いの場を作り出してきましたが、より利便性の高い丸の内に本社を移したこと、スペースを大きく拡張したこと、アズサロンを月2回開催から週1回開催にしたことなどから、来客数が大凡倍増しました。
本社移転により持ち込まれる案件数、金融機関からの情報量拡大と、当社の強みであるスピードの着実な上昇が相まって、仕入における競争優位性は着実に強化されています。

 

加えて、社内コミュニケーションが今まで以上に活性化しているほか、不動産エージェントを始めとした即戦力人材の採用増など、当社の人的資本強化にもつながるものと期待しています。

 

3.24年2月期上期決算について
不動産販売事業、不動産賃貸事業、不動産管理事業ともに増収増益となりました。

 

不動産販売事業について販売件数は5件でした。前年同期比増ですので悪くないのですが、もう少し伸ばしたかったと感じています。
ただ仕入は順調に進んでいますので、第3四半期、第4四半期、来期にかけ営業は順調に進んでいくと考えています。

 

当社の重点戦略の一つである「価格帯の向上」については、プロ投資家であるファンドやREITへのアプローチ強化や、都内3区に加え、周辺の新宿、渋谷、台東などでの大型案件の取り扱い拡大に取り組んでいます。
前者に関しては、REITなどの経験豊富な社員の採用など、体制構築を進めています。
後者に関しては来客数や情報量の増大など、本社移転効果が十分期待できると考えています。

 

「商品種別の多様化」については、順調に立ち上がっている比較的高額な「プレミアムマンション事業」の横展開として、一般的な価格帯の「区分マンション事業」への取り組みも開始しました。
まだスタートしたばかりですので、同業他社ほどは仕入及び販売スタッフはおりませんが、経験者を採用することができていますので、しっかりと事業として確立していきます。

 

他にも、付加価値向上による販売価格の引き上げや他社との差別化を図るため、防音性能を備えた防音レジデンス「AZ Music」、あらゆるモノがインターネットに繋がっており、スマートフォンやAIスピーカーなどから家電などの電化製品などを動かすことができるIoTレジデンス「AZ Smart」など、ラインアップ拡充にも努めています。

 

不動産管理事業では、管理戸数の増大とともに、管理手数料の単価上昇を目指しています。
当社は埼玉県川口市で創業したという経緯から、埼玉県のオーナー様の管理戸数が多いのですが、管理手数料単価は都心の方が高い傾向にあります。そのため、都心の販売用不動産売却後の管理受託に努め、今後は都心の物件数増加による単価上昇を図る考えです。

 

4.24年2月期業績予想について
通期予想に対する上期実績の進捗率は、売上高で2割程度ですが、当社は例年下期の売上が大半を占めており、今期も仕入や竣工の状況などから、下期の販売が増加すると見込んでおり、通期予想を十分に達成するものと考えています。

 

5.株主・投資家へのメッセージ
株主や投資家の皆様が期待しているのは配当であると考えています。
これまでは財務基盤の拡充を図るため、内部留保充実を優先することを基本方針とし、自己資本比率30%以上で配当を検討するとしてきましたが、より多くの投資家の皆様に当社に対する投資の魅力を感じていただくため、今期24年2月期より、配当の実施については、業績に基づきより機動的に検討することといたしました。
お約束した業績予想をしっかりと達成することで、皆様に喜んでいただけるよう努めますので、是非ご期待ください。

 

6.今後の注目点

同社の不動産販売事業では上期に仕入れを行い、下期に販売する営業スタイルであるため、売上高が下期に偏重する傾向が強い。今期も上期の売上高進捗率は20%となっているが、販売用不動産在庫が過去最高水準まで積み上がっている中、販売の準備が済んでいる物件も多く、第3四半期以降に販売は順調に進むと会社側は見込んでいる。
確実な業績予想の達成と配当の実施を期待したい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 9名、うち社外4名(独立役員4名)
監査等委員 4名、うち社外4名(独立役員4名)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2023年7月19日)
基本的な考え方
当社は、社会的責任を自覚しコンプライアンスを徹底し、会社業務の執行の公平性、透明性及び効率性を確保することで、社会から信頼を得る企業として、全てのステークホルダーから評価いただけることをコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方としております。この目的を永続的に高い再現性を持って実現し続けるために、コーポレート・ガバナンス体制を確立、強化し、有効に機能させることが不可欠であると認識し、今後も成長のステージに沿った見直しを図り「ディスクロージャー(情報開示)」及び「コンプライアンス体制」の強化を図っていく所存であります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
【補充原則2-4①】
当社としては、多様性の確保に関する重要性は認識しております。但し、当社の考え方にマッチした人材が活躍することこそが重要だと考えており、そのような人材を女性・外国人・中途採用者等の垣根を超えて活用しております。
一方で、人材活用の方針に沿って測定可能な数値目標を持ってしまうとかえって柔軟な人材活用ができないとも考えており、当社としては敢えて目標等の作成・開示はしておりません。

 

【補充原則3-1②】
当社は、海外投資家の比率が低いため、英語での情報開示・提供を行っておりません。一方で、将来的な株主構成の変化に向けて英語での情報開示・提供の重要性は認識しており、引き続き検討してまいります。

 

【補充原則3-1③】
当社は、ESGやSDGsへの取組みが重要な経営課題と認識しております。当社は「サステナビリティ基本方針」を策定し、持続可能な社会の実現に貢献するため様々な課題に取組んでおり、その内容を当社ホームページに掲載しています。
また今後、当社の経営戦略及び経営課題の整合性も意識しつつ、人的資本や知的財産への投資等について開示を行うことを検討してまいります。

 

【補充原則4-2②】
当社取締役会は、中長期的な企業価値向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて「サステナビリティ基本方針」を策定しております。
一方で、人的資本・知的財産への経営資源配分や事業ポートフォリオに関する戦略については、今後検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4.政策保有株式】
当社は現時点において、いわゆる政策保有株式として上場株式を保有しておりません。

 

【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、適時かつ公正な情報開示を行うこと、正確な情報を分かりやすく表現すること、開示情報の充実を図ることをIR活動の基本方針とし、本方針に基づいたIR活動を実施することで、株主・投資家の皆さまとの信頼関係を醸成し、企業価値の最大化を図ってまいりたいと考えております。
(1)株主・投資家との対話につきましては、管理部IR担当が窓口として対応し、代表取締役社長が統括しております。また、対話の方法につきましては、年2回の決算説明会を行っています。
(2)当社の事業内容に対する理解促進のため、当社ホームページ上にIR情報の発信を行っております。
(3)対話において掌握した株主や投資家の意見などは、取締役会にて報告する等、適切にフィードバックを行っており、関係部署へのフィードバックも合わせて行い、情報の共有・活用に努めています。

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