ベルシステム24ホールディングス(6183) 売上・利益ともに上場以降最高記録

2023/05/18
 

野田 俊介 社長

株式会社ベルシステム24ホールディングス(6183)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

サービス業

代表者

野田 俊介

所在地

東京都港区虎ノ門四丁目1番1号トラストタワー6階

決算月

2月

HP

https://www.bell24.co.jp/ja/index.html

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,382円

73,715,734株

101,875百万円

15.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

60.00円

4.3%

119.63円

11.6倍

873.05円

1.6倍

*株価は4/19終値。各数値は23年2月期決算短信より。

 

連結業績推移(IFRS)

決算期

売上収益

営業利益

税前利益

当期利益

EPS

DPS

2019年2月

121,113

8,580

7,944

5,397

73.37

36.00

2020年2月

126,663

11,105

10,534

7,006

95.29

42.00

2021年2月

135,735

11,799

11,305

7,252

98.64

42.00

2022年2月

146,479

13,234

13,463

8,943

121.65

54.00

2023年2月

156,054

14,917

14,157

9,330

126.82

60.00

2024年2月(予)

157,000

13,800

13,400

8,800

119.63

60.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。以下同様。

 

 

(株)ベルシステム24ホールディングスの2023年2月期決算概要などをご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年2月期決算概要
3.2024年2月期業績予想
4.中期経営計画2025
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23年2月期の売上収益は前期比6.5%増の1,560億円。基礎業務は同4.0%増。人材・教育関連業務では、中途斡旋関連の業務が増加。非対面関連業務では、デリバリー関連業務や保険金の問い合わせ業務が牽引し、着実に増加。キャッシュレス決済関連業務では、クレジットカード関連業務も着実に増加した。コロナ関連業務は主にワクチン業務の拡大により同26.1%と大きく伸長。営業利益は同12.7%増の149億円。増収により売上総利益は同5.6%増加した一方、販管費は人件費、広告宣伝費、ITシステム費用を中心に同4.0%増加したが、前年度に子会社の減損損失を計上したことの反動もあり2桁の増益。売上・利益とも予想を上回り、2015年度の上場以降の最高を更新した。 
  • 24年2月期の売上収益は前期比0.6%増の1,570億円の予想。基礎業務が大幅に増加する一方、コロナ等国策関連業務の減少を見込んでいる。営業利益は同7.5%減の138億円の予想。高収益のコロナ関連業務の減少により売上総利益が減少。新会計システムの導入・運用費用や新規連結子会社の販管費増加等コスト増も見込んでいる。配当は前期と同じく60.00円/株を予定。予想配当性向は50.2%。配当性向50%を基本方針に、今後も着実な増配の実現を目指す。 
  • 新たに、「中期経営計画 2025」を発表した。「人材:総力4万人の最大活躍」「型化:データ活用の高度化」「共創:NEW BPO領域開拓」の3つを重点施策としている。最終2026年2月期「売上収益1,800億円、営業利益165億円、税引後利益110億円」を目標として掲げている。ROEは14.4%、配当性向は50%を目指す。 
  • 中期経営計画2022の最終年度となった2023年2月期は、順調な期中の進捗で、売上収益、営業利益とも計画を上回っての着地となった。在宅コンタクトセンター席数は目標の4,000席には及ばなかったが、3,000席を達成。重点3施策を着実に推進したことで、数値目標の達成はもちろんのこと、次の成長へ向けた基盤構築も進んだようだ。 
  • 新中期経営計画でも、「人材の活用・活性化」「先端テクノロジーの導入」「パートナーシップの拡大・深化」という方向性に概ね変化は無いようだが、ベンチャー伴走、HRテック、ヘルスケアを始めとして、今後の成長が予見される領域におけるBPOビジネスの確立を目指す「新領域 “NEW BPO”」の進捗が大いに注目される。今期、売上収益は横這い、高収益のコロナ関連業務の減少と販管費増で減益予想ではあるが、来期以降の売上•利益の伸長を期待したい。 

1.会社概要

持株会社である同社と子会社5社でグループを形成。コンタクトセンターアウトソーシングを中心とするCRM事業、テクノロジーサービス及びコンサルティングサービスを主たる事業とする。子会社は、コンタクトセンター運営及びその付帯業務の株式会社ベルシステム24、ITサービスデスクやBPO(Business Process Outsourcing)等のCTCファーストコンタクト株式会社(出資比率51%)、障がい者の雇用促進を目的とする特例子会社の株式会社ベル・ソレイユ、ベトナムでコンタクトセンター事業を展開するBELLSYSTEM24 VIETNAM Inc.(出資比率80.0%)等。
伊藤忠商事(株)が同社議決権の40.7%を有し、同社を持分法適用関連会社としている。生活消費関連分野を中心とする非資源分野に注力している伊藤忠商事(株)グループにおいて、コールセンター事業を手掛ける同社は「企業と消費者の接点」としての役割を担っている。2014年10月の資本提携以降、様々な連携を進めており、伊藤忠商事グループと取引は順調に拡大している(伊藤忠商事グループとの取引は、他のクライアント企業と同様の取引条件で行っており、今後も同様の方針)。

 

【企業理念】

我々の使命
イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える

 

我々の行動理念
・ 我々は一人ひとりが常に新たな挑戦を続け、楽しく、安心して働ける、人に優しい職場(コミュニティー)を作ります。
・ 我々は企業としての社会的責任を果たし、持続的で健全な成長を目指します。
・ 我々がつくり出した価値を社会に還元し、美しい未来づくりに貢献します。

 

1-1 事業内容

事業は、報告セグメントであるCRM事業とその他に分かれ、CRM事業が連結売上高の90%以上を占めている。

 

セグメント別売上

 

23/2期

CRM事業

155,158

その他

896

連結売上収益

156,054

*単位:百万円

 

CRM事業
主に(株)ベルシステム24及びCTCファーストコンタクト(株)の事業領域である。電話を主なコミュニケーションチャネルとする従来型のインバウンド・アウトバウンドコールの業務に加え、Webやソーシャルメディア等のIT技術を駆使した様々なサービスを、クライアント企業へ提供している。売上の90数%を継続業務が占めるストック型のビジネスで、キャンペーン対応や選挙関連等のスポット業務が残り数%。また、ソフトバンク向け(BBコール業務)の売上が全体の10数%(継続業務)を占めている。業務は、次の4業務に分ける事ができる。

 

①クライアント企業のカスタマーサポート業務(主にクライアント企業の商品・サービスに関する質問に対応する業務)
②クライアント企業のセールスサポート業務(主にクライアント企業の商品・サービスの販促をサポートする業務)
③クライアント企業のテクニカルサポート業務(主にクライアント企業のIT製品の操作方法等に関する質問に対応する業務)
④BPO業務(主にクライアント企業のWeb制作、データ入力作業等を請け負う業務)

 

 

1-2 ESG

(1)取組み
企業理念や重要課題およびESG を踏まえ、社会課題解決のための活動を実施している。

 

E *「気候変動に対する方針」の制定

*カーボンニュートラルを目指して目標を公表

S *女性活躍

•女性管理職比率の引き上げ

•「2022 J Win ダイバーシティ・アワード」におけるアドバンス部門の準大賞を受賞

*多様性への取り組み

•「障がい者の運営によるカフェ」を福岡のセンター内に開設

•LGBTQへの取り組みを評価する「PRIDE指標」の最高位「ゴールド」を3年連続受賞

*地域での取り組み、雇用創出

*「人権方針」の改訂

G *改正CGCへの対応(TCFD等)

*ビジネスモデルの進化による人的資本強化

*「贈収賄・腐敗防止に関する基本方針」の改定

*「パーソナルデータ指針」の制定

 

「気候変動に対する方針」「人権方針」「贈収賄・腐敗防止に関する基本方針」「パーソナルデータ指針」については各担当取締役を選任した。

 

「2022 J Win ダイバーシティ・アワード」の大賞は該当なしであったため、同じく準大賞を受賞した日本IBMとともに実質トップである。コンタクトセンター業界初の受賞となった。

 

(2)トピックス
2022年4月、ESGのグローバル基準を満たす日本企業を対象とした株価指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選定された。
グローバルインデックスプロバイダーであるFTSE Russellにより構築された「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」は、各セクターにおいて相対的に、環境、社会、ガバナンス(ESG)の対応に優れた日本企業のパフオーマンスを反映するインデックスで、セクター・ニュートラルとなるよう設計されている。
また、日本の公的年金積立金を管理・運営する年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)も、ESG投資の運用にあたっての投資判断基準の一つとして採用している。

 

2.2023年2月期決算概要

2-1 連結業績

 

22/2期

構成比

23/2期

構成比

前期比

予想比

売上収益

146,479

100.0%

156,054

100.0%

+6.5%

+5.4%

売上総利益

30,257

20.7%

31,962

20.5%

+5.6%

販管費

16,571

11.3%

17,231

11.0%

+4.0%

営業利益

13,234

9.0%

14,917

9.6%

+12.7%

+6.5%

税引前利益

13,463

9.2%

14,157

9.1%

+5.2%

+1.8%

当期利益

8,943

6.1%

9,330

6.0%

+4.3%

+1.4%

*単位:百万円。

 

増収増益、売上・利益ともに2015年度の上場以降の最高を記録
売上収益は前期比6.5%増の1,560億円。
基礎業務は同4.0%増。人材・教育関連業務では、コロナ禍が落ち着く中での採用活動が下期に一段と活発化し、中途斡旋関連の業務が増加。非対面関連業務では、 Eコマース関連業務において、前年度に比べて一部で対面販売に戻る動きもあり影響を受けたが、今年度はデリバリー関連業務や保険金の問い合わせ業務が牽引し、着実に増加。キャッシュレス決済関連業務では、今年度上期まで減少していたQRコード決済関連業務が下期に増加に転じたことに加え、クレジットカード関連業務も着実に増加した。
コロナ関連業務は主にワクチン業務の拡大により同26.1%と大きく伸長。
営業利益は同12.7%増の149億円。増収により売上総利益は同5.6%増加した一方、販管費は人件費、広告宣伝費、ITシステム費用を中心に同4.0%増加したが、前年度に子会社の減損損失を計上したことの反動もあり2桁の増益。
売上・利益とも予想を上回り、2015年度の上場以降の最高を更新した。

 

◎売上収益内訳

 

22/2期

23/2期

前期比

予想比

売上収益

1,464.8

1,560.5

+6.5%

+5.4%

 基礎業務

1,279.2

1,330.5

+4.0%

0.0%

 コロナ関連業務

175.4

221.1

+26.1%

+57.9%

 その他

10.2

9.0

-11.8%

0.0%

*単位:億円

 

 

2-2 セグメント別動向

 

22/2期

23/2期

前期比

売上収益

146,479

156,054

+6.5%

 CRM事業

145,465

155,158

+6.7%

 その他の事業

1,014

896

-11.6%

税引前当期利益

13,463

14,157

+5.2%

 CRM事業

13,626

13,900

+2.0%

 その他の事業

-163

257

*単位:百万円

 

(1)CRM事業
先行き不透明な経済状況が続いているものの、社会インフラとしてのスポット需要及び前期から業務開始した既存継続案件の売上が拡大した他、伊藤忠商事(株)及び、凸版印刷(株)との協業強化によるシナジー案件も堅調に推移したこと等で増収。
増収による利益の伸長に加え、収益改善活動による効果等もあり、増益となった。

 

(2)その他事業
コンテンツ販売収入が減少した。前期は子会社(株)ポッケののれんについて減損損失を計上したことから、税引前利益は赤字となったが、今期は黒字転換した。

 

2-3 事業トピックス

(1)業種別売上収益

 

22/2期

23/2期

前期比

サービス業

366.6

407.2

+11.1%

運輸・通信

329.7

334.5

+1.5%

卸売・小売業

195.1

186.8

-4.3%

金融・保険業

206.1

224.7

+9.0%

製造業

158.8

181.6

+14.4%

電気・ガス・水道等

34.3

36.9

+7.6%

その他

37.3

42.2

+13.1%

連結売上収益

1,464.8

1,560.5

+6.5%

*単位:億円
*業種別売上収益は㈱ベルシステム24単体の売上収益上位300社が対象

 

「サービス業」は、人材・教育関連業務、Eコマース等の業務拡大を中心に増収。
「金融・保険業」は、保険関連、キャッシュレス決済関連の業務拡大等により増収。
「製造業」、「その他」は、主にコロナ関連業務の拡大により増収。

 

(2)伊藤忠シナジー
前期比12.1%の増収。主にキャッシュレス決済関連業務、非対面関連業務の増加によるもの。

(同社資料より)

 

(3)拠点ブースの状況
2023年2月末の国内拠点は39拠点、ブース数は約19,800席で、前年度末比約900席の増加となった。

(同社資料より)

 

2-4 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

◎財政状態

 

22年2月

23年2月

増減

 

22年2月

23年2月

増減

流動資産

28,809

30,673

+1,864

流動負債

67,403

46,238

-21,165

 現預金

6,196

6,998

+802

 営業債務

6,691

7,634

+943

 営業債権

21,181

21,232

+51

 借入金

37,481

16,600

-20,881

非流動資産

149,503

145,577

-3,926

非流動負債

51,420

65,101

+13,681

 有形固定資産

40,067

37,007

-3,060

 長期借入金

21,971

38,221

+16,250

 のれん

94,900

94,900

0

負債合計

118,823

111,339

-7,484

資産合計

178,312

176,250

-2,062

資本合計

59,489

64,911

+5,422

       

 自己資本(※)

58,986

64,224

+5,238

       

借入金合計

59,452

54,821

-4,631

*単位:百万円。自己資本は親会社の所有者に帰属する持分合計。

 

 

 

有形固定資産の減少などで資産合計は前期末比20億円減少。借入金の減少などで負債合計は同74億円減少。利益剰余金の増加などで資本合計は同54億円増加。自己資本比率は前期末から3.3ポイント上昇し、36.4%。

 

◎キャッシュ・フロー

 

22/2期

23/2期

増減

営業CF

16,278

18,172

+1,894

投資CF

-2,431

-1,803

+628

フリーCF

13,847

16,369

+2,522

財務CF

-13,181

-15,583

-2,402

現金・現金同等物期末残高

6,196

6,998

+802

* 単位:百万円

 

 

税引前当期利益の増加などで営業CF、フリーCFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2024年2月期業績予想

3-1 連結業績予想

 

23/2期

構成比

24/2期(予)

構成比

前期比

売上収益

156,054

100.0%

157,000

100.0%

+0.6%

営業利益

14,917

9.6%

13,800

8.8%

-7.5%

税引前利益

14,157

9.1%

13,400

8.5%

-5.3%

当期利益

9,330

6.0%

8,800

5.6%

-5.7%

*単位:百万円。

 

増収減益を予想
売上収益は前期比0.6%増の1,570億円の予想。基礎業務が大幅に増加する一方、コロナ等国策関連業務の減少を見込んでいる。
営業利益は同7.5%減の138億円の予想。高収益のコロナ関連業務の減少により売上総利益が減少。新会計システムの導入・運用費用や新規連結子会社の販管費増加等コスト増も見込んでいる。
配当は前期と同じく60.00円/株を予定。予想配当性向は50.2%。配当性向50%を基本方針に、今後も着実な増配の実現を目指している。

 

◎売上の内訳

 

23/2期

24/2期(予)

前期比

売上収益

1,560.5

1,570.0

+0.6%

  基礎業務

1,330.5

1,451.0

+9.1%

  コロナ関連業務

221.1

110.0

-50.2%

その他

9.0

9.0

+0.0%

*単位:億円

 

基礎業務は、コロナ禍が落ち着く中、企業からのアウトソース需要が以前の水準に戻ることが見込まれると共に、3月より新たに連結子会社となったBELLSYSTEM24 VIETNAMの売上も加わり増収の予想。
コロナ等国策関連業務は、コロナ関連業務の大幅な減少を見込むものの、物価高対策等の経済対策に関連した業務の取り込みを想定している。

 

4.中期経営計画2025

新たに、「中期経営計画 2025」を発表した。

 

4-1 前中計の振り返り

23年2月期で終了した中期経営計画2022の重点3施策の成果・実績は以下のようなものであった。

 

(1)定性面
①社員3万人の戦力最大化
在宅コンタクトセンター席数は目標の4,000席には及ばなかったが、3,000席を達成した。
J-win(女性活躍)アワード大賞、PRIDE指標(LGBTQ) “ゴールド”を獲得したほか、キャリアマップ整備とカリキュラム構築を進め、働きやすさや働き甲斐のある職場環境づくりを進めた。
3万人のデータを駆使した人的資本の強化に取り組んだ。

 

②音声データ活用によるDX推進
音声周辺の多面的認識ソリューションの標準装備を進めた。
音声応対データ・感情解析を活用した「DXダイレクトセンター」を開始した。
チャットbot・ボイスbotによる自動化を拡大した。

 

③信頼と共創のパートナー成長(パートナーとの連携)
凸版印刷(株)との戦略的パートナー提携を強化した。
(株)レイヤーズ・コンサルティングと人事・経理BPOを提供する「Horizon One」を設立した。
(株)ブレインパッド及びベルフェイス(株)との提携、海外での事業基盤拡大を推進した。

 

(2)定量面
売上収益、営業利益、営業利益率、ROE、Net DER、全て計画値を上回った。
営業利益は2桁成長となった。

(同社資料より)

4-2 中期経営計画 2025

(1)概要
新中期経営計画は、「NEW BPO ~すべての“その声”を、ふかめる、つなげる、ひろげる」とのテーマを掲げている。

 

アフターコロナにおいて、社会では「経済活動の正常化とそれに伴う労働市場の逼迫」「複合リスクから生じる先行きが不透明な様々な経営課題の発生」「テクノロジーの進化や、顧客接点の複雑化によるマーケティングニーズの高まり」といった状況変化が生まれている。
また、市場においては「人材不足による人件費上昇、顧客対応自動化の動き」「様々な経営課題の中、攻め・守り双方の領域で効果的なBPO需要の増加」「テクノロジー活用によるマーケティングと、活躍できる高度人材の確保の必要性」といった変化やニーズの高まりが予測される。

 

そうした事業環境の下、同社は、社会、企業、生活者を含めたすべての声(ニーズ)に耳を傾け、それを経営判断に関わる価値に変え、最適なアクションに導くプロセスの型化とデータ活用により新たなBPOを顧客に提供することを目指している。
NEWは、「Next、Engage、Widen」の意味でもある。

 

(2)重点施策
「人材:総力4万人の最大活躍」「型化:データ活用の高度化」「共創: BPO領域開拓」の3つを重点施策としている。

 

重点施策

概要・テーマ

1.人材 成長機会の仕組み化と働く環境の次世代化

*完全在宅オペレーションへの進化と拡張

*JOBマッチングによる個の能力最大化

*全方位に多様で柔軟な働き方改革の促進

2.型化 顧客ニーズにこたえるCX業務の深化と拡張

*音声データの技術追求と分析による成果向上

*生活者ニーズを掴むデータ連携の高度化

*自動化と人財のハイブリッド運用の追求

3.共創 相互補完と運用力で新BPO領域の創出

*大規模/安定稼働ニーズの高いBPO領域発掘

*CX(※)進化のためのマーケティングBPO確立

*新技術適用での次世代BPO業務のR&D推進

※CX:Customer eXperience、顧客体験

 

「1.人材」「2.型化」を「ふかめ」、前中計から取り組んでいるパートナーとの連携に「つなげ」、「3.共創」によって新たなBPO領域の開拓を目指す(ひろげる)。

(同社資料より)

 

①人材:総力4万人の最大活躍
◎完全在宅の推進
場所や時間の制約を超えて「お互い」が多様性と効率化を最適にする職場を構築する。
外出不要・ライフワークの充実が可能な持続可能な働き方を確立することで、優秀な人材の確保や人手不足の解消を図り、センターの効率化を進める。
在宅席数を前期末の3,000席から、完全在宅を含む10,000席への増席を目指す。

 

◎適正と仕事のマッチング強化
それに向け、AIを活用した人材データ分析やアプリ開発事業等を展開する(株)DUMSCOと協業し、長期勤続人材の採用および定着を目的に、同社内に蓄積するHR領域のデータを用いたAI予測モデルの活用と、新たに全社統一した採用基準・プロセスを組み合わせた「業務マッチング型採用モデル」を構築し、全社規模での運用を開始した。
これにより、応募者に最適かつ幅広い業務での活躍の場を提供するとともに、採用プロセスを効率化することで、採用後の研修などアフターフォローのさらなる充実や離職防止の強化を図ることができると同社では考えている。
(株)DUMSCOは、人材のパフォーマンスを最大化するAI設計と運用の先駆的企業で、ベルシステム24ホールディングスはDUMSCO社の株式10.0%を取得している。

 

②型化:CX業務の深化
◎CX業務の目指す姿
CX業務をデータ活用で高度化し、新たな価値提供を実現する。
4万人の社員が働く喜びを実感し、誰もが活躍できる仕組みを構築し、生活者・クライアント双方の声をデータ化。
生活者に対しては顧客体験向上に向け多様なニーズにマッチした対応を行い、クライアントに対しては事業成長への貢献のため、業務プロセスの最適化を提供する。

 

◎2つの新たな深化
既存のコンタクトセンター業務における音声データ活用の高度化に加え、IT利活用、経営支援につながる業務改善へとCXを2つの面から深化させる。
1つは、ITを利活用し、CX領域でのシステム活用を“型化”。 顧客反応に最適化したIT導入によるデジタルCXコンサルを提供する。
もう1つは、CX活用での業績改善を“型化“。顧客業務の改善で数字に直接貢献するDXダイレクトセンターにより経営支援を行う。

 

◎自動化と人のハイブリッド運用
人手不足に伴う数々の自動化テクノロジーの普及に伴い、人特有のホスピタリティー溢れる価値提供への評価・期待がさらに高まるため、自動化と人のハイブリッド運用で顧客が感動するCXを実現することが重要と考えている。

 

③共創:新領域開拓の探求
◎新領域 “NEW BPO”
ベンチャー伴走、HRテックを始めとして、今後の成長が予見される領域におけるBPOビジネスの確立を目指している。

(同社資料より)

 

◎VOC(※)が活きるマーケティングBPO
凸版印刷(株)を始めとした各パートナーとの共創により、生活者との良好な関係性を維持するCXコミュニケーションを創出する。
全ての顧客チャネルで“程よいPUSH”と“価値向上”を高度なCX応対とIT運用力で実現する。成果が持続する“双方向マーケティング”モデルを構築する。

 

※VOC: Voice Of Customer、顧客の声

 

(3)定量目標

(同社資料より)

 

2026年2月期「売上収益1,800億円、営業利益165億円、税引後利益110億円」を目標として掲げている。
ROEは14.4%、配当性向は50%を目指す。

 

(4)人的資本戦略
持続的に発展していくため、働く『人』と『環境』へ人的資本の積極投資を行い、“プロフェッショナル”が集う、“働きがい”のある企業を実現する。
具体的には、キャリアマップによる成長促進を図るために、RE-Skilling、UP-Skillingを浸透させるとともに、20以上の職種設定、豊富なキャリアパス、戦略的育成・配置を実施する。
また、最大活躍を支える人事制度の進化を図り、デジタル等人材確保に向けた報酬制度の見直し、契約社員の無期雇用化促進に取り組む。
D&I(Diversity & Inclusion)や健康経営を更に推進する。

 

(5)サステナビリティ
マテリアリティを特定し、2025年の目標を掲げている。
気候変動に関しては、GHG排出量は、2019年対比で30%削減を目指す。
人的資本強化については、研修投資を現状から10%増加させ、売上対比0.33%にするほか、役員の女性比率10%以上、管理職の女性比率20%以上を目標としている。

(同社資料より)

 

5.今後の注目点

中期経営計画2022の最終年度となった2023年2月期は、順調な期中の進捗で、売上収益、営業利益とも計画を上回っての着地となった。
在宅コンタクトセンター席数は目標の4,000席には及ばなかったが、3,000席を達成。重点3施策を着実に推進したことで、数値目標の達成はもちろんのこと、次の成長へ向けた基盤構築も進んだようだ。
新中期経営計画でも、「人材の活用・活性化」「先端テクノロジーの導入」「パートナーシップの拡大・深化」という方向性に概ね変化は無いようだが、ベンチャー伴走、HRテック、ヘルスケアを始めとして、今後の成長が予見される領域におけるBPOビジネスの確立を目指す「新領域 “NEW BPO”」の進捗が大いに注目される。
今期、売上収益は横這い、高収益のコロナ関連業務の減少と販管費増で減益予想ではあるが、来期以降の売上・利益の伸長を期待したい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役設置会社
取締役 9名、うち社外5名
監査役 3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年5月27日)
基本的な考え方
当社は、株主をはじめ、クライアント、取引先、従業員等の当社および当社のグループ会社(これらを総称して、以下「当社グループ」といいます。)を取り巻く全てのステークホルダーと良好な関係を構築するとともに、その信頼を得ることが企業価値の最大化に不可欠であり、そのためにはコーポレート・ガバナンスの充実が重要な経営課題の一つであるとの認識のもと、経営の効率化を図りつつ、透明性と健全性を確保した企業運営に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
2021年6月の改訂後のコードに基づき記載しています。

 

【補充原則4-1-3 最高経営責任者等の後継者計画の適切な監督】
取締役会は、最高経営責任者である代表取締役を兼務する社長執行役員の後継者の計画を定めておりませんが、ステークホルダーが最高経営責任者に期待する役割の重要性を認識しております。
「指名委員会」は、候補者が経営判断能力、経営者としての胆力、多角的な視野と先見性等の「取締役選解任基準」に定める「代表取締役候補者の選定基準」に合致しているかを含めて総合的に判断し、取締役会へ提案しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4 政策保有株式】
純投資目的以外の投資を行う際は、投資対象会社との業務提携、情報共有等を通じて当社グループの事業における相乗効果が期待されるか否かによって投資の是非を判断することとし、縮減するか否かについても同様に相乗効果が期待されるかによって判断することを基本方針としております。さらに、個別の銘柄につき、経済合理性の観点から、配当の有無や業績不振の銘柄については、今後の業績の推移、回復可能性を検討し資本効率向上の観点からも縮減を含めた保有の是非を毎年検討いたします。
なお、当社が保有している上場会社の政策保有株式、1銘柄(貸借対照表計上額19百万円)について、取締役会において継続保有の是非を検証した結果、継続して保有することにいたしました。
また、政策保有株式に係る議決権の行使に関しては個別議案ごとに、投資先企業の中長期的な企業価値向上や株主還元向上につながるか、当社の投資目的である相乗効果が最大限発揮され、当社グループの企業価値向上に寄与するかどうかなどを総合的に判断し、行使することを基本方針としております。

 

【補充原則2-4-1 中核人材の登用等における多様性の確保】
(1)多様性の確保
当社は、企業理念に基づき、従業員の多様性を尊重し、あらゆる属性の人材が生き生きと働くことができる環境の整備、柔軟な人事制度の構築、自律的な成長をサポートする教育機会提供などの取り組みを積極的に行っております。
(2)女性
当社は、女性活躍推進を積極的に行っており、外部団体による各種表彰、及び外部認証を受けるなど実績が認められております。今後も働く環境の整備、経験蓄積機会の提供、自律的なキャリア形成支援を継続的に行い、各階層のパイプライン形成・各種女性比率向上に向けた活動をすすめ、将来的に経営の意思決定にかかわる女性社員を増やしていきます。
≪女性管理職比率目標:厚労省 女性活躍推進データーベース≫
「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」参照
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/detail?id=11012

(3)外国人採用
当社は、国籍を問わない多国籍な人材採用を進めており、正規・非正規問わず、約170名が在籍し、国内外問わずに活躍しております。当社の主たる事業ドメインは国内となりますが、今後の海外事業展開状況にあわせ、国籍・性別等にとらわれず能力・成果に応じた管理職登用を進めてまいります。
(4)中途採用
当社は、事業における即戦力の確保のため、積極的に中途採用(契約社員から正規雇用への転換含む)を行っており、在籍の約75%、管理職においては約80%を中途採用者が占め、各階層・ポストにて活躍をしております。今後も中途採用を積極的に活用し、一層の多様性拡大に取り組んでまいります。

 

【補充原則3-1-3 サステナビリティについての取組み等】
2020年10月7日に開示した中期経営計画においては、企業理念や重要課題、注力施策を踏まえ、社会的取組課題、及びその課題に対する2022年度末時点の達成イメージを開示しております。
また、人的資本への投資については、有期雇用を無期雇用に転換することで優秀な人材の確保を進めているほか、就業前に特別なトレーニングの場を提供することにより、必要なスキルを前もって習得することが可能となり、安心して長く働いて行けるようにサポートすることで、人的資本強化に努めております。
知的財産への投資については、中期経営計画においてDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を掲げており、AIやシステム等に対する戦略的な投資を行っております。
気候変動に係るリスク及び収益機会は、自社の事業活動や収益等に与える影響が小さく、加えて事業活動による環境への負荷も小さいと想定しております。
今後は、現状把握と共にTCFDのフレームワークに沿ったシナリオ分析を踏まえ、リスクや機会を特定し、気候変動問題に起因する当社への事業影響やリスクを評価した上で目標値等の設定を進めていきます。また、施策の企画や実行に関するガバナンスの仕組みを強化していくと共に、中長期の戦略やロードマップに適宜反映を行っていきます。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、以下の方針に則り、当社が相当と認める範囲及び方法で株主との間で建設的な対話を行います。
(1) IRを管掌する取締役を指名し、かかる取締役が株主との対話全般を統括します。
(2) IR管掌取締役のもと、IR部門を設置し、これを中心に経営企画部門、経理・財務部門その他の関連部門と適切に情報交換を行い、有機的に連携します。
(3) 株主との対話の手段を充実させるため、第2四半期及び通期の決算発表時において、決算説明会を実施します。
(4) 対話において把握された株主の意見等については、IR管掌取締役や関連部門に随時報告するとともに、必要に応じて取締役会に共有します。
(5) 対話にあたっては、情報伝達行為や取引推奨行為の禁止、インサイダー情報の再伝達を制限するための必要な措置を定めたインサイダー取引防止規程に従って対応します。

 

 

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