(6166)株式会社中村超硬 特殊精密機器事業が牽引 増収増益

2022/07/14

 

 

 

井上 誠 社長

株式会社中村超硬(6166)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

機械(製造業)

代表取締役社長

井上 誠

所在地

大阪府堺市西区鶴田町27-27

決算月

3月末日

HP

http://www.nakamura-gp.co.jp

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

572円

11,020,900株

6,304百万円

-38.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

0.00円

4.54円

126.0倍

74.98円

7.6倍

*株価は6/28終値。各数値は22年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

4,809

-4,193

-4,263

-9,721

-1,911.28

0.00

2020年3月(実)

2,797

-578

-716

-600

-73.16

0.00

2021年3月(実)

3,806

167

181

7

0.75

0.00

2022年3月(実)

4,038

311

338

-257

-23.97

0.00

2023年3月(予)

3,700

240

230

50

4.54

0.00

*単位:百万円、円。今期予想は会社側公表。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

株式会社中村超硬の2022年3月期決算概要等をお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2. 2022年3月期決算概要
3. 2023年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 22年3月期の売上高は前期比6.1%増の40億38百万円。特殊精密機器事業が牽引。営業利益は同85.9%増の3億11百万円。電子材料スライス周辺事業、マテリアルサイエンス事業が損失計上も、特殊精密機器事業、化学繊維用紡糸ノズル事業が大幅な増益。当期純利益は2億57百万円の損失。マテリアルサイエンス事業で進めているナノサイズゼオライトのパイロットプラントに係る減損損失として4億16百万円を計上した。

     

  • 23年3月期の売上高は前期比8.4%減の37億円、営業利益は同23.0%減の2億40百万円の予想。特殊精密機器事業は堅調、化学繊維用紡糸ノズル事業は減収。電子材料スライス周辺事業、マテリアルサイエンス事業は大幅増収を見込む。

     

  • 特殊精密機器事業では、厳しい事業環境を予想しているが、既存顧客に対する営業活動を強化するとともに、特定商社を通じた自動車産業分野での耐摩工具関連分野の売上拡大を目指す。化学繊維用紡糸ノズル事業では、不織布製造装置や不織布関連ノズル等の受注は一定水準まで低下しており、安定受注の確保を図る。前期より受注活動を進めていた風力発電用ブレード向け炭素繊維用紡糸ノズルの受注は好調に推移しており、今期も売上拡大を目指す。

     

  • 電子材料スライス周辺事業では、半導体向けダイヤモンドワイヤを正式採用する企業が増えてきており、今期についてもその傾向は継続すると見ている。また、ダイヤモンドワイヤ製造装置「PHX-01」販売についても、現時点において複数社と協議を続けており、契約締結に向け注力する。マテリアルサイエンス事業では、ナノサイズゼオライトについては、開発ステージからエンドユーザでの評価ステージに移行している顧客における本格的な販売を目指す。引き続き様々な分野の企業に対しサンプル提供を行い、早期事業化に向け注力する。

     

  • 成長戦略として、特殊精密機器事業と化学繊維用紡糸ノズル事業による「既存事業の安定的な拡大」をベースに、電子材料スライス周辺事業とマテリアルサイエンス事業において「新規事業開発の事業化」を進め、事業規模および収益の拡大を目指している。

     

  • マテリアルサイエンス事業で進めているナノサイズゼオライトのパイロットプラントに係る減損損失として4億16百万円を計上したが、総投資額とほぼ同額であり、このプラントに関してさらに減損損失が発生する可能性は現時点ではほぼない。水準はまだ低いものの、連結ベースでは営業利益、経常利益は黒字が定着したようで、市場の信頼を回復するためにもまずは早期の単体の損失脱出を期待したい。「新型ダイヤモンドワイヤ製造装置:PHX-01」及び、太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ製造技術を活かした化合物半導体、窒化ケイ素、サファイア向けダイヤモンドワイヤの販売についての進捗に注目していきたい。

1.会社概要

特殊精密部品や工具の開発・製造・販売を行う特殊精密機器事業、化学繊維用紡糸ノズル及び周辺部品、不織布製造装置、不織布関連ノズル等の設計・製造・販売を行う化学繊維用紡糸ノズル事業、シリコンウエハの製造工程で使用されるダイヤモンドワイヤ製造装置の開発・販売、半導体向けダイヤモンドワイヤの開発・販売を行う電子材料スライス周辺事業、ナノサイズゼオライトを用いた製品の開発・販売を行うマテリアルサイエンス事業を展開。

 

ウエハ(※1)
電子材料の塊(インゴット)から目的に応じて薄くスライスされた板状の機能部品。シリコン、サファイア、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)など、用途に応じて様々な材質がある。ICチップや太陽電池に多く用いられるのがシリコンウエハ。

 

【1-1 沿革】

1954年10月大阪府堺市においてミシン用の小ネジを作る会社として創業した「中村鉄工所」が前身。
1970年12月に超硬合金を用いた切削工具、耐摩工具である超硬工具を主に取り扱う「株式会社中村超硬」を設立した。1988年には超硬工具からダイヤモンドへ主材料を転換し、1993年にはダイヤモンドノズル(※1)の開発・製造・販売を開始。IT産業の製造革新の下支えとなり業容は大きく拡大した。ITバブル崩壊後の2004年にはエネルギー産業をターゲットとしてダイヤモンドワイヤの研究開発をスタートさせ、2010年には販売を開始。ダイヤモンドワイヤの製造販売だけでなく、スライス事業も手掛けてリーマンショックの苦境を乗り越え、2015年6月、東証マザーズ市場に上場した。2022年4月、市場再編に伴い東証グロース市場に移行。
中国市場において最先端技術を武器にダイヤモンドワイヤの極細線化を進め市場をリードしてきたが、ダイヤモンドワイヤ市場における急速な価格下落の影響を受け業績が悪化。2019年11月、太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ生産事業から撤退した。
今後は、ダイヤモンドワイヤ製造技術の高さを活かして、ダイヤモンドワイヤ製造装置及び半導体向けダイヤモンドワイヤ開発・販売に注力する。

 

ダイヤモンドノズル(※1)
先端に焼結ダイヤモンドを使用したノズル。電子部品をプリント基板に装着したりする際に用いられる。ダイヤモンドを使用する事がノズルの長寿命化や電子部品の保持能力、画像認識への有効性の向上、実装率向上につながっている。

 

【1-2経営理念】

全員営業、全員製造、全員参加の経営をもってものづくりのエキスパート集団となり夢ある未来をともに育てる。

①お客様、協力会社との共栄のために

②従業員とその家族の幸せのために

③社会と地球環境への貢献のために

 

【1-3 事業内容】

1.セグメント
同社の事業は特殊精密機器事業、化学繊維用紡糸ノズル事業、電子材料スライス周辺事業、マテリアルサイエンス事業の4セグメントで構成されている。

 

(1)特殊精密機器事業
(概要)
「耐摩耗部品(超硬合金やダイヤモンド等、高硬度材料を用いた実装機用ノズル、耐摩耗治工具等)」および、「実装機用ノズル(電子部品吸着ノズル)」の開発・製造・販売を行っている。

 

耐摩耗部品は硬脆材料の超精密加工技術を基盤に、焼結ダイヤモンド(PCD)や超硬合金、セラミックスなど高硬度材料
を用いた耐摩耗性の高い長寿命部品で、ベアリング加工などに用いられる。
実装機用ノズルとは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル家電に使われているプリント基板に電子部品を装着する実装機の吸着ノズルのこと。摩耗しやすい先端部分に焼結ダイヤモンドやセラミックスを用いて耐久性や実装率を向上させている。

 

(市場環境)
耐摩耗部品が使用される工作機械市場は、足元は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により前年比7-8割程度まで縮小したが、今後スマートフォンや自動車需要、設備投資需要と共に回復が見込まれている。
実装機関連市場は、5G普及やリモートワークの拡大等ライフスタイルの変化が需要を押し上げ、今後の成長が見込まれる。

 

(強み・特徴)
実装機の吸着ノズルの先端に焼結ダイヤモンド(PCD)を用いることで耐久性のみならず実装率を向上させている。特に同業他社と比較すると、極小サイズでも高い実装率を実現しており、強力な競争優位性となっている。
精密加工技術及び多種多様な加工設備を有し生産能力が高いこと、焼結ダイヤモンド(PCD)の精密加工技術を保有し、多品種小ロット生産に対応可能であること、同社のサプライチェーンにより一貫した対応が可能であること、地場企業のみならず全国の大手企業からの受注に対応していることなども同事業の特徴である。

 

(2)化学繊維用紡糸ノズル事業
主に、化学繊維用紡糸ノズル及び周辺部品および、不織布製造装置、不織布関連ノズル等の設計・製造・販売を行っている。
同事業を担う子会社日本ノズル株式会社は、1928年に創業して以来、化学繊維用(レイヨン製造用)ノズルを国産化し、化学繊維の紡糸ノズル専業メーカーとして事業展開してきた。紡糸ノズルは、不織布、炭素繊維などの製造において繊維の品質を決定づける基幹部品。その製造にあたっては微細加工(孔(あな)あけ加工、パンチング加工)及び工具・冶具の製造に関して繊細な技術が必要となるが、同社では、長年にわたり同事業に特化してきたことにより多くの技術的蓄積を有し、市場のニーズに対応している。

 

(市場環境)
不織布は、足元は新型コロナウイルス感染症拡大の影響による医療用途での需要、中長期的には建設、自動車用途での需要拡大により成長が予想される。
炭素繊維は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により航空機需要が大幅に減少した一方で、医療向けや風力発電向け等新たな需要拡大もあり、今後の成長が見込まれる。

 

(強み・特徴)
「メルトブローン不織布製造に関する高い技術力」「高機能繊維用ノズルに関する高い対応力」「工具内製による高精密加工技術」など、化学繊維用紡糸ノズル専業メーカーとしての技術力が高く評価され、業界トップクラスのシェアを有している。
特に、全てのノズルが製造可能であることから、たばこフィルター等の特定分野では寡占的シェアを確保している。

 

(3)電子材料スライス周辺事業
生産技術の優位性を活かして半導体向けダイヤモンドワイヤおよび、ダイヤモンドワイヤ製造装置の開発・製造・販売を行っている。

 

◎ダイヤモンドワイヤとは?
ダイヤモンドワイヤは、半導体の基盤となるウエハの製造工程のうち、スライス加工工程において使用される。
ウエハ一枚分の大きさに合わせてシリコンインゴットを薄くスライスする際に用いる工具が「ダイヤモンドワイヤ」。細いピアノ線にダイヤモンドの粒を強く固定した髪の毛より細い糸状の切断工具である。
スライス加工機で、短い間隔で並べられたダイヤモンドワイヤが高速回転するガイドローラーによって走行し、インゴットをスライスしていく。

 

(同社資料より)

 

◎シリコンウエハのスライス方法
シリコンウエハのスライス方法には、主として「遊離砥粒方式」とダイヤモンドワイヤを用いた「固定砥粒方式」の2種類がある。

 

方式

遊離砥粒方式

固定砥粒方式

仕組み

砥粒のついていないワイヤ(ピアノ線)にSiC(炭化ケイ素)砥粒を含む加工液(油)を供給しながらスライスする。

ダイヤモンド砥粒がワイヤ(ピアノ線)に強固に固定されており、ワイヤの走行によりダイヤモンド砥粒が直接的にシリコンを削る。

特長など

加工液に含まれるSiC砥粒がワイヤの走行とともに回転しながらシリコンを削りスライス加工する。このため、砥粒がワイヤ自体も削ることになり、ワイヤも消耗する。

 

*切れ味が鋭く、遊離砥粒方式と比べて加工速度が向上する。

*ワイヤの使用量が少なくなり、産業廃棄物が減少し環境に優しい。

*加工液は水を使用するため、コストと環境負荷の低減にもつながる。

*ダイヤモンド砥粒がワイヤ自体を削ることがないため、従来の遊離砥粒方式よりワイヤそのものを細くすることができ、カーフロス(※)を低減し切り出せるウエハの枚数を増やすことが可能。

 

カーフロス(※)
切断溝幅(切り代)のこと。カーフロスは材料のロスとなるため、製造コスト低減のためできるだけ小さくする必要がある。

 

「加工速度の向上」「低いランニングコスト」「カーフロスの低減」「ワイヤ使用量の削減による環境負荷軽減」といった点から、ダイヤモンドワイヤを用いた「固定砥粒方式」への転換が進み、需要も増大している。
1つのインゴットから製造できるシリコンウエハの枚数を増大させることは、生産性の向上、原価低減の観点からウエハメーカーにとっては重要なポイントであるため、細線化に対するウエハメーカーの需要は高い。

 

(同社HPより)

 

◎新型ダイヤモンドワイヤ製造装置「PHX-01」
半導体用途のスライス工程においても固定砥粒方式(ダイヤモンドワイヤ) への転換が進みつつあるものの、SiC、窒化ケイ素は難削性が高く、大径ダイヤが必要だが、従来技術ではダイヤが凝集してしまい、均一に大径ダイヤを固定することができないという点が課題であった。
これに対し、同社では砥粒の凝集を解消し、大径ダイヤ砥粒を安定的かつ強固・均一に固定する独自の砥粒分散技術を新たに開発した。
この同社独自のオンリーワン技術を搭載したのが、新型ダイヤモンドワイヤ製造装置「PHX-01」である。

 

2021年3月より商談を開始した同製品は、超コンパクト構造(他社製装置では大きさが30メートル程度物のものもあるのに対し、同製品は5-6メートル)であることに加え独自の砥粒分散技術によりダイヤ砥粒やメッキ液の使用量を極小化でき、コスト面で大きな優位性をもたらす。
また、同装置はダイヤモンドワイヤを4列同時に生産可能で、生産速度は40メートル/分。業界最小線径である30マイクロメートル(μm)に対応可能である。
加えて、高精度CCDカメラ等を使用して4列すべてのワイヤを検査し、メッキ槽内のダイヤ濃度やダイヤ砥粒付着状態を常時監視しており、ダイヤ砥粒数を自動制御し最適化を図る(適切な砥粒数を投入)ほか、無人長距離生産を実現している。

 

こうした「加工速度の向上」「コスト低減効果」を大きな優位性として、太陽光発電シリコンウエハ、半導体用シリコンウエハ、パワー半導体シリコンウエハ向けに、これまでの中国市場に限らず、インド、米国、欧州、日本、韓国、東アジアなどグローバルな事業展開を目指している。

 

 

 

(同社資料より)

 

 

 

 

(4)マテリアルサイエンス事業
シリカ(二酸化ケイ素)とアルミナ(酸化アルミニウム)を主成分とし、無数の穴を持つ多孔質構造が特長で、1gでテニスコート1面分以上という大きな表面積を持つ物質であるナノサイズゼオライトおよびそれを利用した製品の開発・販売に取り組んでいる。

 

(ゼオライト、ナノサイズゼオライトとは?)
ゼオライトは、その特長から、「吸着」、「イオン交換」、「触媒」といった機能を持っており、一般的にはミクロンサイズの粒子が流通しているが、粒子径をナノサイズ化することにより、飛躍的にこれらの基本性能が向上し、新たな用途への展開が期待できる。
ただし、これまでのナノ粒子製造手法では製造コストが高く、具体的な市場評価が進んでいなかった。
そうした中、同社では、東京大学が保有する「粉砕・再結晶化」技術を活用して、ゼオライトのナノ粒子化のための革新的プロセスの開発に着手した結果、低コストで粒子数が通常のゼオライトと重量が同じ場合、百万倍になる「ナノサイズゼオライト」の製造に成功した。(この「粉砕・再結晶化プロセス」は特許取得済み。)

 

「ナノサイズゼオライト」は吸着速度やイオン交換速度が大幅に向上するほか、沈降速度が低下するなど機能性が上昇。これに伴い用途も大きく拡大する。

 

(用途例)
①高機能透明フィルム
フィルムにナノサイズゼオライトを添加すると、透明性を保ったまま内部の水分やガスを吸着し品質をキープすることができる。高機能透明フィルムとして薬包材や電子基板の封止剤に用いられる。
大手メーカーにおいて開発ステージから事業化ステージへ移行し、エンドユーザーへのサンプル供給がスタートしている。

 

②抗菌・抗ウイルス機能付き透明コーティング剤
少ない添加量においてコーティング表面で効果的に抗菌・抗ウイルス機能を発現したことに加え、コーティング面の平滑とコーティング層の透明・薄型化を実現したため、知的財産としての技術確立を目指している。
複数のコーティング剤と金属イオンの組み合わせで実証試験中である。サンプル出荷量も増加傾向にある。

 

③接着剤・塗料の吸湿用添加剤
ナノサイズゼオライトを接着剤・塗料に均一に拡散させて混錬する技術を獲得した。また、水分の影響により内部発生するガスも吸着できる条件を開発した。
この技術開発により、水の侵入を防ぐとともに内部で発生した水やガスを吸着することで、使用期限の延長(長寿命化)や高品質化(高強度・高品位)が可能となる。
高機能透明フィルム同様、大手化学メーカー等において開発ステージから事業化ステージへ移行し、エンドユーザーへのサンプル供給がスタートした。

 

➃メーカー・商社と連携したBtoC商品への採用拡大
発熱反応、ガス吸着、徐放性(ナノサイズゼオライトに吸着させた有効成分を徐々に放出すること)といった特性を活かし、パック・クレンジング・マッサージジェル、石鹸・シャンプー、入浴剤・芳香スプレーなどBtoC商品への採用拡大をメーカーや商社と連携して進めていく。

 

(今後の方針)
これまでの開発過程で、「樹脂材料に混ぜる際の凝集発生」「生産プロセス中におけるナノサイズゼオライトの吸着能力低下」といった課題が浮かび上がっていたが、表面処理の最適化を実現することで樹脂材料への添加性を大幅に改善することができた。これにより、透明性・吸湿性・脱臭性が大幅に向上。透明吸湿フィルム・透明吸湿コーティング・透明脱臭フィルムにおけるエンドユーザの評価は大きく高まり、事業化へ向け前進したと同社では考えている。
今後も、積極的なPR活動、市場の早期創出、低コスト中量生産体制の確立などに努める。

 

2.研究開発
「先端技術分野におけるモノづくりの課題解決を目指す」ことを開発ポリシーとし、「産官学連携による技術開発・新規事業の創出」「ものづくりに対するチャレンジ精神」「泥臭い現場技術の重視」を特長としている。

 

【1-4 成長戦略】

特殊精密機器事業と化学繊維用紡糸ノズル事業による「既存事業の安定的な拡大」をベースに、電子材料スライス周辺事業とマテリアルサイエンス事業において「新規事業開発の事業化」を進め、事業規模および収益の拡大を目指す。

 

既存事業の安定的な拡大

特殊精密機器事業

*サプライチェーン変革に伴う当社の総合的な対応力による優位性を活かした販売強化

*コロナ後の世界的な経済の回復基調にある市場環境を背景にした販売強化

化学繊維用紡糸ノズル事業

*炭素繊維市場の拡大に伴う紡糸ノズルの販売拡大

*不織布製造装置の販売強化、機能性不織布の市場開拓

新規事業開発の事業化

電子材料スライス周辺事業

*半導体向けダイヤモンドワイヤの販売

*新たなダイヤモンドワイヤ製造装置の販売

 

保有技術を生かした事業展開により新たな収益モデルを構築する。

マテリアルサイエンス事業

*開発ステージから事業ステージに移行している顧客における本格的な販売を目指す

*パイロットプラントでの量産検証

 

量産化・事業化をスタートし、新たな収益の柱として期待

 

(同社資料より)

2.2022年3月期決算概要

(1)連結業績概要

 

21/3期

構成比

22/3期

構成比

前期比

予想比

売上高

3,806

100.0%

4,038

100.0%

+6.1%

-1.5%

売上総利益

1,208

31.8%

1,261

31.2%

+4.4%

販管費

1,041

27.4%

950

23.5%

-8.7%

営業利益

167

4.4%

311

7.7%

+85.9%

+55.8%

経常利益

181

4.8%

338

8.4%

+85.9%

+69.2%

当期純利益

7

0.2%

-257

単位:百万円。予想比は21年11月公表の業績予想に対する増減。

 

増収増益
売上高は前期比6.1%増の40億38百万円。特殊精密機器事業が牽引。
営業利益は同85.9%増の3億11百万円。電子材料スライス周辺事業、マテリアルサイエンス事業が損失計上も、特殊精密機器事業、化学繊維用紡糸ノズル事業が大幅な増益。
当期純利益は2億57百万円の損失。マテリアルサイエンス事業で進めているナノサイズゼオライトのパイロットプラントに係る減損損失として4億16百万円を計上した。

 

(2)セグメント別動向

 

21/3期

22/3期

前期比

予想比

売上高

 

 

 

 

特殊精密機器事業

768

922

+20.0%

-1.8%

化学繊維用紡糸ノズル事業

3,023

3,003

-0.7%

+0.1%

電子材料スライス周辺事業

5

69

+1271.2%

-50.1%

マテリアルサイエンス事業

8

42

+412.6%

+110.6%

合計

3,806

4,038

+6.1%

-1.5%

営業利益

 

 

 

 

特殊精密機器事業

42

115

+173.3%

化学繊維用紡糸ノズル事業

644

678

+5.3%

電子材料スライス周辺事業

-410

-383

マテリアルサイエンス事業

-155

-142

調整

46

43

-6.5%

合計

167

311

85.9%

 

*単位:百万円。売上は外部顧客への売上高。

 

<特殊精密機器事業>
増収・増益
耐摩工具関連分野については自動車関連産業の回復が遅れたことにより厳しい受注環境となったものの、産業機械向け実装機用ノズルの売上は「5G」関連分野が市場をけん引していることなどから好調に推移。
製造現場における製造コスト削減や経費削減を徹底した。

 

<化学繊維用紡糸ノズル事業>
減収・増益
前期から継続するマスク需要の高まりにより不織布製造装置や不織布関連ノズル等の売上が引き続き堅調に推移した。風力発電用ブレード向けノズルは好調。
不織布製造装置案件は順調に検収が進んだほか、製造現場における製造コスト削減や経費削減を徹底した。

 

<電子材料スライス周辺事業>
増収・損失幅縮小
半導体向けダイヤモンドワイヤは一部顧客においてサンプル提供から量産採用に進んだものの、売上高は少額に留まっておいる。
新型ダイヤモンドワイヤ製造装置の販売については、中国大手ダイヤモンドワイヤメーカーと成約に至り、その対価の一部を計上した。新たな顧客獲得のためのサンプル出荷を継続しており、複数顧客との商談を進めている。

 

江蘇三超社に対するダイヤモンドワイヤ生産設備の譲渡等の案件については、2021年11月17日付で江蘇三超社よりシンガポール国際仲裁センターに対し仲裁の申立てが行われ、中村超硬としても同年12月1日付で江蘇三超社に対し残対価の支払いを求める申立てを行っている。今後、シンガポール国際仲裁センターでの仲裁において自社の正当性を主張していく考えだ。

 

<マテリアルサイエンス事業>
増収・損失幅縮小
ナノサイズゼオライトについて、一部顧客において開発ステージからエンドユーザでの評価ステージへ移行したものの、売上高はサンプル提供に留まった。パイロットプラントについては、2022年3月末までに設置を完了しており、これに係る山全社からの受託収入を計上した。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

21年3月末

22年3月末

増減

 

21年3月末

22年3月末

増減

流動資産

4,760

4,614

-146

流動負債

3,157

2,029

-1,128

 現預金

3,027

2,931

-95

 仕入債務

625

564

-60

 売上債権

680

467

-212

 短期借入金

1,308

304

-1,004

 たな卸資産

775

751

-24

固定負債

2,348

3,005

+656

固定遺産

1,261

1,260

-0

 長期借入金

1,825

2,474

+649

 有形固定資産

1,214

1,216

+1

負債合計

5,506

5,034

-471

 無形固定資産

9

9

-0

純資産

515

840

+324

 投資その他の資産

37

34

-2

負債純資産計

6,021

5,874

-147

資産合計

6,021

5,874

-147

借入金合計

3,133

2,779

-354

*単位:百万円。有利子負債にはリース債務を含む。

 

売上債権の減少などで資産合計は前期末比1億円減少し58億円。仕入債務、借入金の減少等で負債合計は前期末比4億円減少の50億円。純資産は資金調達による資本金、資本準備金の増加で同3億円増加し8億円。有利子負債は同3億円減少し27億円。自己資本比率は前期末より5.8%上昇し14.1%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/3期

22/3期

増減

営業CF

530

175

-355

投資CF

161

-520

-681

フリーCF

692

-344

-1,037

財務CF

-1,466

228

1,695

現金及び現金同等物

3,027

2,931

-95

単位:百万円

 

営業CFのプラス幅は縮小。フリーCFはマイナスに転じた。
キャッシュポジションはほぼ変わらず。

 

3.2023年3月期業績予想

(1)連結業績予想

 

22/3期

構成比

23/3期(予)

構成比

前期比

売上高

4,038

100.0%

3,700

100.0%

-8.4%

営業利益

311

7.7%

240

6.5%

-23.0%

経常利益

338

8.4%

230

6.2%

-32.0%

当期純利益

-257

50

1.4%

単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

減収減益を予想
売上高は前期比8.4%減の37億円、営業利益は同23.0%減の2億40百万円の予想。
特殊精密機器事業は堅調、化学繊維用紡糸ノズル事業は減収。電子材料スライス周辺事業、マテリアルサイエンス事業は大幅増収を見込む。

 

(2)各事業の取組み

*売上高見込み

 

22/3期

23/3期(予)

前期比

特殊精密機器事業

922

950

+2.9%

化学繊維用紡糸ノズル事業

3,003

2,400

-20.1%

電子材料スライス周辺事業

69

250

+258.0%

マテリアルサイエンス事業

42

100

+137.4%

*単位:百万円

 

①特殊精密機器事業
増収。
耐摩工具関連分野については、世界的な半導体不足の影響を受け、22年3月期第3四半期以降厳しい受注環境となり、今期についても当面の間は厳しい事業環境が継続するものと見ている。
産業機械向け実装機用ノズル分野においても、半導体不足や原材料の高騰などの影響により、厳しい事業環境を予想している。
今期は、既存顧客に対する営業活動を強化するとともに、特定商社を通じた自動車産業分野での耐摩工具関連分野の売上拡大を目指す。
同事業は廃業が増加しているため、サプライチェーン変革による新たな需要が生まれている。同社は少数となりつつある供給者としてこうした需要を取り込んでいく。

 

②化学繊維用紡糸ノズル事業
減収。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的なマスク需要の高まりから、前期より不織布製造装置や不織布関連ノズル等の売上が好調に推移してきたが、前期末の時点において受注は一定水準まで低下しており、安定受注の確保を図る。
ただ、前期より受注活動を進めていた風力発電用ブレード向け炭素繊維用紡糸ノズルの受注は好調に推移しており、今期も売上拡大を目指す。
加えて、医療用途における不織布製造装置案件の商談が始まっており、確実な成約を目指すほか、新工場稼働に向け大型部品加工関連市場の開拓を図る。

 

③電子材料スライス周辺事業
増収。
前期中に開発した半導体向けダイヤモンドワイヤを正式採用する企業が増えてきており、今期についてもその傾向は継続すると見ている。また、ダイヤモンドワイヤ製造装置「PHX-01」販売についても、現時点において複数社と協議を続けており、契約締結に向け注力する。
ダイヤモンドワイヤ製造コストを理論限界値まで極小化することを目指すほか、パワー半導体用ウエハ(SiC、窒化ケイ素)市場にオンリーワン製品を展開する。

 

太陽電池はこれまで中国が世界の全生産の約9割を占めるという状況であったが、チャイナリスクへの対応などで中国以外での生産も拡大している。半導体についても、アメリカや日本でも自国での大型工場建設案件が浮上している。こうしたサプライチェーンの大変革が好機と捉え、中国以外の市場開拓にも取り組んでいく。

 

➃マテリアルサイエンス事業
増収。
ナノサイズゼオライトについては、開発ステージからエンドユーザでの評価ステージに移行している顧客における本格的な販売を目指す。引き続き様々な分野の企業に対しサンプル提供を行い、早期事業化に向け注力する。
前期導入したナノサイズゼオライトのパイロットプラントに係る山全社からの受託収入を今期も見込んでいる。

 

4.今後の注目点

マテリアルサイエンス事業で進めているナノサイズゼオライトのパイロットプラントに係る減損損失として4億16百万円を計上したが、総投資額とほぼ同額であり、このプラントに関してさらに減損損失が発生する可能性は現時点ではほぼない。
水準はまだ低いものの、連結ベースでは営業利益、経常利益は黒字が定着したようで、市場の信頼を回復するためにもまずは早期の単体の損失脱出を期待したい。「新型ダイヤモンドワイヤ製造装置:PHX-01」及び、太陽光発電向けダイヤモンドワイヤ製造技術を活かした化合物半導体、窒化ケイ素、サファイア向けダイヤモンドワイヤの販売についての進捗に注目していきたい。

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

10名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2022年6月29日

 

<基本的な考え方>
当社は、「お客様」「取引先」「株主」「社員」「社会」という全てのステークホルダーから「価値ある企業」として支持され続けるために、企業価値・株主価値の最大化に努めるとともに、経営の透明性・公正性の確保、社会的な責任を果たしていくことが重要であると認識し、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
「当社は、グロース上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております」と記載している。

 

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