(3135)株式会社マーケットエンタープライズ 販管費の増加を吸収できず減益

2021/09/17
 

小林 泰士 社長

株式会社マーケットエンタープライズ(3135)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

小売業(商業)

代表者

小林 泰士

所在地

東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル

決算月

6月

HP

https://www.marketenterprise.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

850円

5,295,300株

4,501百万円

-2.8%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00

-83.10円

271.50円

3.1倍

*株価は9/1終値。各数値は21年6月期決算短信より。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2017年6月(実)

5,630

-7

4

-19

-3.80

0.00

2018年6月(実)

6,333

96

94

31

6.28

0.00

2019年6月(実)

8,472

452

455

203

39.87

0.00

2020年6月(実)

10,904

655

664

291

55.90

0.00

2021年6月(実)

10,875

54

32

-40

-7.63

0.00

2022年6月(予)

12,000

-400

-405

-440

-83.10

0.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

(株)マーケットエンタープライズの2021年6月期決算概要、中期経営計画などをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年6月期決算概要
3.2022年6月期業績予想
4.中期経営計画
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 21/6月期の売上高は前期比0.3%減の108億75百万円。全セグメント減収。営業利益は同91.7%減の54百万円。減収により売上総利益も減少した一方、ベトナム拠点開設や農機具越境ECの体制構築など先行投資も含めた販管費の増加を吸収できなかった。全セグメント減益。 
  • 21年5月14日に、期初予想を下方修正している。重点強化施策として注力してきた農機具分野で世界的な海運コンテナ需給の逼迫を背景に輸出遅延が多発する等、売上高が当初想定を下回ったほか、「おいくら」分野は、収益拡大に向けて人員増やシステム投資などの先行投資を行ったが、収益化が当初想定よりも遅延した。また、メディア事業、モバイル通信事業とも、売上高が当初想定を下回った。 
  • 22年6月期は、売上高は前期比10.3%増の120億円、営業利益は4億円の損失計上を予想。モバイル通信事業において将来収益獲得のための新規回線獲得増加により一時的に粗利率は悪化する。また、主力事業の個人向けリユースを成長方向に回帰させていくことに加え、農機具を中心としたマシナリーおよび「おいくら」の成長を加速させるフェーズに入り積極的な先行投資を実施するため、広告宣伝費、人件費など販管費が増加する。 
  • 今期を初年度とする3か年の中期経営計画を公表した。業績目標として「最終年度2024年6月期 売上高 200億円(21年6月期比 84%増)、営業利益12億円(同22.1倍)。営業利益は25年6月期も合わせて合計25億円以上」を掲げた。東京証券取引所の新市場区分『プライム』の新規上場基準を意識したもの。現状では、「流通株式の時価総額100億円以上」の達成が難しいと判断し、まずは強固な収益基盤の構築が必要と考えている。 
  • ネット型リユース事業では、主力事業の個人向けリユースにおいて成長方向への回帰を目指し、依頼・買取の両面での強化を図る。そのための基盤を整備する。マシナリー及びおいくらは成長を加速させる。メディア事業では、既存メディアの成長に加え、事業譲受で獲得した4メディアを本格的に強化。SEOに大きく左右されない体制を構築する。モバイル通信事業では、ショット型である販売奨励金収入中心から、ストック型である回線料収入中心のモデルにシフト。既存の回線契約により発生が見込まれる将来の通信料収入等の収益である「将来収益」の積み上げに注力する。 
  • 今期は24年6月期の計画「売上高200億円、営業利益12億円」達成のための基盤づくりの期となる。個人向けリユースの成長回帰、マシナリーの成長加速、おいくらの基盤整備と、投資が先行するため営業損失を見込んでいるが、中計で示している各カテゴリーにおける施策の進捗を見守りたい。 
  • 一方、通期では減収減益であったが、四半期ベースでは第4四半期(4-6月)は前期比増収だった。各事業、各カテゴリーのトップランの推移には短期的にも注目していきたい。 

1.会社概要

リユースを核とした持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、様々な事業を展開している。最適化商社とは、
多様化する消費行動や様々な消費スタイルに対し、個々人、そして一部の商品・サービスにおいては法人にまでその枠を広げ、
インターネットを通じて、最適な選択肢を提供できる会社と同社は定義している。なお、マーケットエンタープライズという社名の由来は、市場(マーケット)と冒険的創出(エンタープライズ)。「市場を創出していく会社を築き上げたい」という創業時の思いが込められている。
事業は、ネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業の3事業に分かれ、ネット型リユース事業は、リユースを中心に、全国のリサイクルショップと消費者をつなぐリユースプラットフォーム「おいくら」も手掛ける。メディア事業は、リユース関連、通信関連、消費関連等、消費者にとって関心の高い分野にフォーカスしており、通信事業は連結子会社(株)MEモバイルがWiMAX(高速無線通信サービス)サービス「カシモWiMAX」を展開している。グループは同社と連結子会社(株)MEモバイル、(株)MEトレーディング、(株)UMM、MARKETENTERPRISE VIETNAM CO.,LTD.の5社。
2021年2月、東京証券取引所マザーズ市場から東京証券取引所市場第一部へ市場変更された。

 

経営の指針と3つの取り組み
国連が示すSDGsの17の目標を経営の指針としており、この指針の下で次の3つの取組みを進めている。1つはリユースによる循環型文化の推進。創業以来展開しているネット型リユース事業による商品の買い取りと再販売を通して持続可能な社会の実現に貢献していく(SDGs17の目標の「12」に関わる取り組み)。2つ目は、リユースを通じて日本に眠っている製品の国内外を問わない循環。農機具、建設機器、医療機器等、国内では使用されなくなった商品やリユースされ難いものを、海外で活躍する販路を通じて循環させ持続可能な社会の実現に貢献していく(「2」、「3」、「6」、「12」が関わる取り組み)。3つ目は、同社がこれまで培ってきたノウハウやリソースを活用したDX推進支援による中小企業の成長支援である(「8」に関わる取り組み)。

 

1-1事業概要

①ネット型リユース事業
(概要)
買取・販売共にマルチチャネル対応のため、幅広いニーズに応える事ができ、農機具・建機・医療機器といった事業者を中心とした法人向けのサービスも展開している。

 

ビジネスフロー

(同社資料より)

 

商品ジャンル毎30種の買取専門サイトを用意し、月間で約4万件に及ぶ買取依頼に対してコンタクトセンターで事前査定を行い、買取価格や買取方法を提案する。出張(自社の物流網を用いた顧客宅への訪問買取)、宅配(同社が宅配キットを用意)、店頭(リユースセンターへの持ち込み)の3つの買取方法が用意されており、いずれの場合も過去のオークションの落札価格や価格比較データを取り込んだ自社データベースを活用し、顧客に迅速に買取金額を伝える「事前査定」を実施している。このため、顧客は安心してサービスを利用できる。

 

買い取った商品は全国10カ所に展開するリユースセンターで管理し、販売は、「ヤフオク!」、「Amazon」、「楽天」といった主要ECマーケットプレイスや自社ECサイト「ReRe(リリ)」に同時出品している。商品在庫を一元管理するシステムを自社開発しているため、どこかのサイトで売れると自動的に他サイトの在庫が消し込まれる。このように、複数サイトに同時に出品して販売できるため、商品回転率が高い点も同社の強みとなっている。また、販路の多様化が進んでいるため、買取が伸びれば売上の拡大に繋がる仕組みを構築している。

 

こうした、完全自社開発の統合基幹業務システムをベースにして、一気通貫で高品質なリユースサービスを提供できる体制を確立している点は同社の大きな強みである。
現在は既存の個人向けリユースが売り上げの過半を占めるが、近年ではマシナリー(農機具)の業績が急成長している。加えて、全国のリサイクルショップや買取専門店、質屋などと、「物を売りたい」一般の消費者をつなぐ集客支援マッチングプラットフォーム「おいくら」を将来業績をけん引する事業として構築するために育成中である。

 

(同社資料より)

 

②メディア事業
賢い消費者への情報提供を目的に消費者の関心の高い分野のメディアを保有しており、広告掲載企業への送客により広告収入を得ている他、連結子会社(株)MEモバイルへ送客し同社サービスで顧客化している。

(同社資料より)

 

③モバイル通信事業
連結子会社(株)MEモバイルが中古スマホと格安SIMを組み合わせたMVNOサービス「カシモ」及びWiMAXサービス「カシモWiMAX」を展開している。
21年4月から「WiMAX5G」と取り扱いを開始した。収益モデルは回線販売に伴う販売奨励金収入と、累積販売回線数に伴う回線料収入。既存の回線契約により発生が見込まれる将来の通信料収入などの収益である「将来収益」の拡大を目指している。

 

2.2021年6月期決算概要

【2-1 連結業績】

 

20/6期

構成比

21/6期

構成比

前期比

期初予想

修正予想

売上高

10,904

100.0%

10,875

100.0%

-0.3%

13,500

10,910

売上総利益

4,241

38.9%

3,879

35.7%

-8.5%

販管費

3,586

32.9%

3,825

35.2%

+6.7%

営業利益

655

6.0%

54

0.5%

-91.7%

730

68

経常利益

664

6.1%

32

0.3%

-95.1%

733

41

当期純利益

291

2.7%

-40

360

-40

* 単位:百万円。期初予想は予想レンジの下限。

 

減収減益
売上高は前期比0.3%減の108億75百万円。全セグメント減収。
営業利益は同91.7%減の54百万円。減収により売上総利益も減少した一方、ベトナム拠点開設や農機具越境ECの体制構築など先行投資も含めた販管費の増加を吸収できなかった。全セグメント減益。
21年5月14日に、期初予想を下方修正している。

 

(修正理由)
*ネット型リユース事業
不透明な外部環境を勘案し、商品買取のためのインターネット広告運用効率化に主眼を置いた事業展開を行ったことから、既存取扱商材については堅調に推移した。一方、重点強化施策として注力してきた農機具分野においては、世界的な海運コンテナ需給の逼迫を背景に輸出遅延が多発する等、売上高が当初想定を下回った。また、同様に注力していた「おいくら」分野は、収益拡大に向けて人員増やシステム投資などの先行投資を行ったが、収益化が当初想定よりも遅延した。

 

*メディア事業
第3四半期(1‐3月)に回復を見込んでいた収益性の高いキーワードにおける検索順位が引き続き低位にとどまり、売上高が当初想定を下回った。

 

*モバイル通信事業
大手通信企業の低価格通信プラン発表による通信市場の競争が激化したことに加え、自社通信メディアからの送客数減少により新規回線契約の獲得が減少したため、売上高が当初想定を下回った。

 

 

四半期ベースでも前年同期比減収減益だが、前期比では増収、営業損失幅縮小。

【2-2 セグメント別動向】

 

20/6期

構成比

21/6期

構成比

前期比

ネット型リユース事業

6,702

61.5%

6,580

60.5%

-1.8%

メディア事業

696

6.4%

519

4.8%

-25.5%

モバイル通信事業

3,873

35.5%

3,866

35.6%

-0.2%

セグメント内消去

-368

-89

連結売上高

10,904

100.0%

10,875

100.0%

-0.3%

ネット型リユース事業

547

8.2%

534

8.1%

-2.4%

メディア事業

481

69.1%

231

44.6%

-51.9%

モバイル通信事業

390

10.1%

137

3.6%

-64.7%

調整

-763

-849

連結営業利益

655

6.0%

54

0.5%

-91.7%

*単位:百万円。利益の構成比は売上高利益率。

 

ネット型リユース事業
減収減益。
売上高は前期比1.8%減の65億80百万円、セグメント利益は同2.4%減の5億34百万円。
第4四半期(21年4-6月)にかけて個人向けリユース及び農機具分野の越境EC売上高は回復を見せたものの、利益面における費用対効果を意識した広告運用により、既存取扱商品の中で利益率が高い商品に絞り込んだことで取扱総量が低下した。また、農機具分野及び「おいくら」分野を中心に将来の収益拡大に向けた人員拡充やシステム投資などの先行投資を行った。広告宣伝費の費用対効果を重視した買取を展開したため個人向け売上高は同8.1%減少。注力中の農機具建機領域は同52.2%の増収。「おいくら」は法改正に伴う同社規約改定による加盟店基準強化で加盟店数が一時的に減少したことで固定報酬が減少し、同9.6%の減収。

 

メディア事業
減収減益。
売上高は前期比25.5%減の5億19百万円、営業利益は同51.9%減の2億31百万円。
収益性の高いキーワードにおける検索順位が低位にとどまったため、通信に関するメディアにおける自社サービスへの送客収入が同71.6%減少。一方で外部顧客向け売上高は同12.8%増加した。直近で急拡大した同事業における今後の収益体制強化のために人員を拡充している。

 

モバイル通信事業
減収減益。
売上高は前期比0.2%減の38億66百万円、営業利益は同64.7%減の1億37百万円。
第1回目の緊急事態宣言(20年4、5月)に伴う通信環境整備の需要が一巡したこと、大手通信企業の低価格通信プラン発表による通信市場の競争が激化したことに加え、メディア事業において展開している自社通信メディアからの送客数減少により新規回線契約の獲得が減少した。2021年4月より5G に対応した通信サービスの提供を開始している。
20年6月期第4四半期(20年4-6月)を中心に獲得した新規回線契約による保有回線数の増加があったため通信料収入は同46.9%増と大きく増加したものの、当期の新規回線獲得数減少に伴い利益率の高い販売奨励金収入が同55.3%減少した。

 

 

四半期ベースでは、第4四半期のネット型リユース事業は前年同期比、前四半期比とも増収増益。

 

【2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)】

財政状態

 

20年6月

21年6月

増減

 

20年6月

21年6月

増減

流動資産

3,068

2,530

-538

流動負債

1,506

1,155

-350

現預金

1,255

1,469

+213

仕入債務

370

308

-62

売上債権

1,283

581

-702

短期有利子負債

479

440

-39

固定資産

954

931

-23

固定負債

891

653

-238

有形固定資産

358

360

+1

長期有利子負債

881

635

-246

無形固定資産

313

236

-77

負債合計

2,397

1,808

-589

投資その他の資産

281

334

+53

純資産

1,625

1,653

+27

資産合計

4,023

3,461

-561

負債純資産合計

4,023

3,461

-561

* 単位:百万円。有利子負債にはリース債務を含む。

 

現預金増、売上債権減で資産合計は前期末比5億61百万円減少し34億61百万円。
借入金、未払法人税等の減少で負債合計は同5億89百万円減少の18億8百万円。
利益剰余金が減少した一方、為替換算調整勘定のマイナス幅が縮小し純資産は同27百万円増加の16億53百万円。
自己資本比率は前期末より5.7ポイント上昇し41.5%となった。

 

キャッシュ・フロー

 

20/6期

21/6期

前期比

営業キャッシュ・フロー(A)

-64

595

+659

投資キャッシュ・フロー(B)

-602

-76

+526

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

-667

518

+1,186

財務キャッシュ・フロー

760

-306

-1,066

現金及び現金同等物期末残高

1,255

1,469

+213

* 単位:百万円

 

売上債権の減少等で営業CF、フリーCFともプラスに転じた。キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2022年6月期業績予想

【連結業績予想】

 

21/6期 実績

構成比

22/6期 予想

構成比

前期比

売上高

10,875

100.0%

12,000

100.0%

+10.3%

営業利益

54

0.5%

-400

経常利益

32

0.3%

-405

親会社株主帰属利益

-40

-440

* 単位:百万円

 

増収も損失計上予想
売上高は前期比10.3%増の120億円、営業利益は4億円の損失計上を予想。
モバイル通信事業において将来収益獲得のための新規回線獲得増加により一時的に粗利率は悪化する。
また、主力事業の個人向けリユースを成長方向に回帰させていくことに加え、農機具を中心としたマシナリーおよび「おいくら」の成長を加速させるフェーズに入り積極的な先行投資を実施するため、広告宣伝費、人件費など販管費が増加する。

 

4.中期経営計画

今期を初年度とする中期経営計画を公表した。

 

【4-1 ゴール・位置づけ】

業績目標として「最終年度2024年6月期 売上高 200億円(21年6月期比 84%増)、営業利益12億円(同22.1倍)。25年6月期も合わせて合計25億円以上」を掲げた。

 

東京証券取引所の新市場区分『プライム』の新規上場基準を意識したもの。
現状では、「流通株式の時価総額100億円以上」の達成が難しいと判断し、まずは強固な収益基盤の構築が必要と考えており、今期からの3年間は投資を行って、その後の収益獲得に向けた道筋を作る。

 

上場後の各フェーズにおける今回の中期経営計画の位置づけは以下の通りである。

 

(同社資料より)

 

フェーズ

期間

概要

上場後第1次投資期 2016年6月期~2018年6月期 新規事業であるマシナリー メディア モバイルを拡大フェーズ入りさせるために投資を実施
第1次収穫期

 

2019年6月期~2020年6月期 *マシナリー メディア モバイルの寄与により収益拡大

*事業譲受によりMEトレーディングやおいくらなどの次の成長の基盤を取得

第2次投資期

(今中期経営計画期)

2022年6月期~2024年6月期 *主力事業の個人向けリユースを成長方向に回帰

*マシナリー及びおいくらは成長を加速

第2次収穫期 2025年6月期以降 リユースの継続的成長に加えおいくら及びモバイルのストック収益を中心に 持続的な収益拡大を目指す。

リユース事業においては、個人向けリユース、マシナリー、「おいくら」全てが売上・利益成長期に入る。

 

【4-2 戦略】

こうした課題を克服するために各事業において以下のような成長戦略を実行する。

 

(1)ネット型リユース事業成長戦略
主力事業の個人向けリユースを成長方向に回帰。マシナリー及びおいくらは成長を加速させる。

 

(同社資料より)

 

①個人向けリユース成長戦略
(外部環境)
環境問題に対する意識の高まり、SDGsについての認知度・理解浸透などを背景に、リユース市場は今後も順調に拡大する見通しである。
また、経済産業省によれば、過去1年間に不要となった製品の推定価値は7兆6,254億円。そのうち、ネットオークションやリユースショップを通じ顕在化しているリユース市場は約2兆2,000億円であり、その差分である年間約5兆5,000億円は保管され積みあがっていく。そうした結果、現在日本全国で37兆円、国民一人当たり約28万円が隠れ資産として退蔵されているという。
潜在市場は膨大であり 需要喚起のために規模拡大を図ることが重要と同社では認識している。

 

(現状)
収益性重視の買取依頼獲得の方針により21年6月期の依頼数は32万件程度に抑制した。
出張買取人員の不足や対応できない商品分野の問題から、依頼件数のうち対応できた件数は約2割の6.3万件にとどまった。
それに伴い売上高はほぼ横這いで推移している。

 

(成長戦略)
収益性重視から事業規模拡大にシフトする。依頼・買取基盤強化に注力し、買取金額の向上及び売上増加に繋げる。

 

◎依頼
依頼獲得手法の多様化及び分野の拡大により集客増加を図る、
具体的には、「集客対象キーワードの拡大」「自社SEOメディアの積極活用」「買取分野の拡大」などである。

 

また、依頼数増加に向け、富裕層向け商材(ブランド、貴金属、着物、古銭など)に進出する。買取依頼数NO.1というアドバンテージに加え、既に全国に買取拠点を有しており、目の前にいる潜在顧客を開拓する。

 

これらの施策により、依頼数を年平均20%ペースで増加させる。

 

(同社資料より)

 

◎買取
出張買取拠点を中心とした拠点数増加、取扱商材及び顧客ターゲットの拡大、出張買取人員及び出張車両などリソースの拡充などにより、買取能力の増強を図る。
買取率を前期の20%から25%まで引き上げる。

 

(同社資料より)

 

(計画)
こうした依頼・買取両面の強化戦略により個人向けリユースでは、今期以降、年平均20%以上の売上成長を目指す。
最終24年6月期売上高100億円を計画している。

 

(同社資料より)

 

②マシナリー成長戦略
(外部環境)
日本の農業就業者数は減少傾向にあることに加え、高年齢化も進み中古農機具の買取需要は堅調に増加するものと見込んでいる。
2020年の農業機械国内市場はコロナの影響で前年比減少したが、農業機械化の政府支援を背景に今後は回復する見通しである。

 

自動車の国内市場は約10兆円でうち中古車の比率は32%である。農業機械の国内市場は約3,200億円で、自動車同様の中古市場比率と仮定すると中古農機具の潜在市場は1,000億円程度と推定される。

 

(現状)
前述のように2017年6月期から取り扱いを始めたマシナリーは、5年間でCAGRプラス131.1%と順調に拡大してきたが、前期売上高は10.6億円。
上記推定市場規模および前期から急拡大している越境ECを通じた海外市場を考慮すると、拡大余地は極めて大きい。

 

(成長戦略)
新規拠点投資を実施。買取能力強化に注力し、越境ECを中心に更なる拡大を図る。

 

◎買取
北関東リユースセンターを設置し東日本のコア拠点とするほか、Web経由集客を引き続き実施する。また、全国の農機具買取販売店へのパートナー開拓を強化。加えて、現在2拠点の買取拠点を3か年中に4拠点まで拡充する。

 

東日本の農機具買取・越境EC向け出荷機能を強化するため、茨城県結城市に北関東リユースセンターを設置。同センターの敷地面積は、従来の栃木県小山市のセンターの2.5倍。西日本をカバーする鳥取も合わせると、敷地面積は1.4倍に拡大する。

 

◎販売
従来のヤフオクでの販売に加えて自社マーケットプレイス(UMM、Used Machine Market)への出品も強化する。
また、パートナーによる越境EC用コンテナの代理バンニング拠点を拡充する。
(バンニングとは、手作業やフォークリフトによって輸出貨物をコンテナに詰め込む作業のこと)

 

 

(計画)
海外の農業機械化ニーズも高いため、国内のみでなく海外需要も取り込む。越境ECを中心にさらなる拡大を図り、最終24年6月期売上高30億円を計画している。

 

(同社資料より)

 

③「おいくら」成長戦略
(現状)
前述のようなリユースの巨大な潜在市場開拓に向け、「おいくら」では、これまでは、「基盤強化」と「自社サービスの連携」を図る「STEP1」が完了し、「認知度・顧客接点の向上」と「アライアンスの強化」を図る「STEP2」に進む予定であったが、成長のためには事業基盤整備をさらに強化する必要があると判断。
「顧客接点の向上」「顧客基盤の強化」「UI/UXバックエンド改善」を図る「STEP1-2」を新たに設定し、時間軸を伸ばしながら今期から新成長ステージに取り組んでいくこととした。

 

(同社資料より)

 

 

 

 

(成長戦略)
将来のけん引役となる事業構築に向け、「顧客基盤整備」「UI/UXバックエンド改善」を図る。

 

◎顧客接点の向上
おいくらアプリのインストール広告展開を始めとして、マーケティング積極化により利用客の増加を図る。
Web広告についても引き続き推進する一方、TVCMは加盟店数が増加した後に再度検討する。

 

◎顧客基盤の強化
加盟店開拓活動の積極化により有料加盟店数を2,000店舗へと倍増させる。
具体的には、全国20,000店舗のリサイクルショップに対し自社及びパートナー活用による営業を強化するほか、古物商許可を有する個人事業主に対して「おいくら」の利用を促す。

 

◎UI/UXバックエンド改善
「ユーザーマイページ改修などによる査定申込者の使い勝手向上」「加盟店ページ改修:商品検索機能の拡充などによる加盟店の利便性向上」「買取ノウハウやQA集など使い方マニュアルコンテンツの拡充による加盟店の満足度改善」「バックエンドシステム改修によるシステムリニューアルの実施」などに取り組む。

 

(計画)
今期は減収となるが、24年6月期以降の本格的な業績貢献に繋げるべく事業基盤強化を進める。

 

(同社資料より)

 

(2)メディア事業戦略
(現状)
社内売上は大きく減少したが、社外向けは増加。また通信以外の分野は大きく成長し、収益基盤は多様化している。

 

(成長戦略)
既存メディアの成長に加え、事業譲受で獲得した4メディアを本格的に強化。SEOに大きく左右されない体制を構築する。

 

◎通信分野
格安SIM・スマホの情報サイト「SIMCHANGE」と主力の「iPhone格安SIM通信」のシナジーを確立
通信キャリア向け営業の強化
記事数の拡充
Youtubeコンテンツの拡充

 

◎その他分野
趣味系メディア「ビギナーズ」の電子書籍、VOD、ゲームコンテンツの拡充
修理プラットフォーム「最安修理ドットコム」の露出強化、修理カテゴリ拡充
アウトレットモール情報メディア「OUTLET JAPAN」の改修、アフィリエイト営業強化
農業メディア「UMMメディア」の露出強化

 

(計画)
事業内の収益の柱を複数確立し、市場成長率並みの年平均15%成長を目指す。

 

(同社資料より)

 

(3)モバイル通信事業戦略
(現状)
従来の「WiMAX2+」を商材としていたモデルでは、ショット型である販売奨励金収入の割合が大きく、収益構造が不安定であった。

 

(成長戦略)
21年4月からスタートした「WiMAX5G」では、ストック型である回線料収入の割合が、販売奨励金収入よりも大きくなるモデルにシフトしている。
集客の多様化に加え、魅力的なプラン設計によりWiMAX5Gの獲得を強化。既存の回線契約により発生が見込まれる将来の通信料収入等の収益である「将来収益」の積み上げに注力する。

 

(同社資料より)

 

 

(計画)
ストック型の5G回線の獲得増加に伴い短期的に今期の利益は減少する見通しだが、将来収益は3カ年で順調に積みあがる見通しで経営の安定に寄与する。

 

 

 

(同社資料より)

 

【4-3 事業計画】

今期は投資を加速。ネット型リユース事業を中心とした売上成長により3年後の24年6月期営業利益12億円達成を目指す。また、モバイル通信事業における将来収益の獲得による収益基盤の安定化も併せて推進する。

 

 

 

21/6期

22/6期(計画)

23/6期(計画)

24/6期(計画)

CAGR

売上高

10,875

12,000

15,000

20,000

+22.5%

ネット型リユース事業

6,580

7,659

9,804

13,744

+27.8%

個人向けリユース

5,350

6,000

7,500

10,000

+23.2%

マシナリー

1,061

1,500

2,000

3,000

+41.4%

おいくら

169

159

304

744

+63.9%

メディア事業

519

600

700

800

+15.5%

モバイル通信事業

3,866

4,300

5,000

5,500

+12.5%

営業利益

54

-400

300

1,200

+180.7%

営業利益率

0.5%

-3.3%

2.0%

6.0%

営業利益+将来利益

373

203

997

1,950

+73.6%

*単位:百万円

 

 

5.今後の注目点

今期は24年6月期の計画「売上高200億円、営業利益12億円」達成のための基盤づくりの期となる。個人向けリユースの成長回帰、マシナリーの成長加速、おいくらの基盤整備と、投資が先行するため営業損失を見込んでいるが、リユースにおける採用など中計で示している各事業における施策が順調に進んでいるか進捗を見守りたい。

 

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役設置会社
取締役 5名、うち社外2名
監査役 3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2021年2月16日)
基本的な考え方
当社は、「Win Winの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団で在り続ける」という創業以来の経営理念を常日頃より体現すべく、公正で透明性が高く、迅速で効率的な経営に取り組むことを基本的な考えとしております。その実現のため、少数の取締役による迅速な意思決定及び役員相互間の経営監視をはじめとした組織全体でのコンプライアンスの徹底、ディスクロージャーの充実等により、株主の皆様やお客様をはじめ、取引先、地域社会、従業員等各ステークホルダーと良好な関係を築き、長期的視野の中で企業価値の向上を目指すべく経営活動を推進しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
【原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表】
当社は、経営方針を基に、過去の実績、将来の予測、到達目標及び実行の可能性、人員計画、設備計画、及び資金計画、経済、社会情勢及び市場環境を考慮し、今後の経営課題を明らかにした上で、達成すべき売上・利益を算定し、3年をサイクルとして、1年経過毎に見直しを行う、ローリング方式にて中期経営計画を策定しております。計画策定に際しては、事業セグメントごとに経営指標(KPI)を定め、収益目標への達成状況を把握しておりますが、現時点において資本コストを的確に把握した上での、収益力、資本効率等に関する目標数値を定めるには至っておりません。
また、当社は、比較的新奇性の高い事業を展開していることに加え、直近の社会環境の急激な変化に鑑み、可変要素が低く本来的な投資判断に資する中期的な業績予測の開示が必ずしもステークホルダーの適切な判断に資するものではないとの考えから、中長期的な数値目標を開示しておりません。現時点においては、翌期の経営戦略、業績予想(売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)の開示にとどめ、決算説明会等において株主にわかりやすく説明を行っております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則の各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4 政策保有株式】
当社は、現在、政策保有株式として上場株式を保有しておりませんが、当社グループの企業価値向上及び中長期的な発展に資すると判断される技術やノウハウを有している企業との関係性強化、事業戦略上の重要性等を総合的に勘案のうえ、当該企業の株式を政策保有する方針としております。保有にあたっては投資金額の多寡にかかわらず取締役会での審議を経ることとしており、当該取締役会において、前述の方針との適合性はもとより、投資金額の妥当性、利害関係等についても多角的に検証を行います。なお、当社及び投資先の状況変化に鑑み、妥当性がないと判断された場合には、取締役会の審議を経て保有株式の縮減等の見直しを行います。議決権行使にあたっては、当該企業の中長期的な企業価値向上に資するか否かを議案ごとに判断し、適切に議決権を行使いたします。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためには、常日頃から株主と積極的な対話を行い、株主の意見や要望を経営に反映させ、株主とともに会社を成長させていくことが重要であると認識しております。
株主との対話全般について統括を行い、建設的な対話が実現するよう代表取締役社長は取締役管理本部長を中心とするIR体制を整備し、当社の経営戦略や経営計画に対する理解を得るため、個別面談のほか、決算説明会、個人投資家向け説明会、証券会社等主催のIRイベントへの参加、機関投資家との対話の場等を設け、個人投資家からの質疑応答、機関投資家からの取材にも積極的に対応しております。
株主との建設的な対話に向け、株主、投資家の投資判断に資する有益な情報を適切に提供すべく、情報取扱責任者である取締役管理本部長を中心として社内各部門(総務、財務、経理、法務、広報)の責任者は原則週1回会社情報を共有し、有機的な連携を図っております。一方で、インサイダー取引や特定情報の漏えいが行われないよう、情報発信前に開示可否事項について明確な取決めを行う等、細心の注意を払っております。

 

 

 

株式会社インベストメントブリッジ
ブリッジレポート   株式会社インベストメントブリッジ
個人投資家に注目企業の事業内容、ビジネスモデル、特徴や強み、今後の成長戦略、足元の業績動向などをわかりやすくお伝えするレポートです。
Copyright(C) 2011 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。 また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。 当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

このページのトップへ