(6539)株式会社 MS-Japan 減収減益だが売上と利益予想超す
有本 隆浩 社長 |
株式会社MS-Japan(6539) |
企業情報
市場 |
東証1部 |
業種 |
サービス業 |
代表取締役社長 |
有本 隆浩 |
所在地 |
東京都千代田区富士見2-10-2 飯田橋グラン・ブルーム4F |
決算月 |
3月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数(期末) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
1,145円 |
24,985,000株 |
28,607百万円 |
11.6% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
15.00円 |
1.3% |
39.56円 |
28.9倍 |
374.65円 |
3.1倍 |
*株価は7/19終値。各数値は21年3月期決算短信より。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
2018年3月(実) |
3,117 |
1,170 |
1,304 |
910 |
36.67 |
11.25 |
2019年3月(実) |
3,828 |
1,690 |
1,770 |
1,197 |
48.17 |
15.00 |
2020年3月(実) |
4,098 |
1,704 |
2,023 |
1,374 |
55.16 |
15.00 |
2021年3月(実) |
3,369 |
1,239 |
1,612 |
1,082 |
43.37 |
15.00 |
2022年3月(予) |
3,928 |
1,549 |
1,486 |
988 |
39.56 |
15.00 |
*単位:百万円、円。20年3月期まで非連結決算。21年3月期以降は連結決算。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。2018年10月1日付で1:4の株式分割を実施。18年3月期のEPS、DPSは分割を考慮。
株式会社MS-Japanの会社概要、業績動向、成長戦略、有本社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.成長戦略
5.有本社長へのインタビュー
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 企業の管理部門及び弁護士・公認会計士・税理士を始めとした経営管理領域の士業に特化した人材紹介事業「MS Agent」を中心に、ダイレクトリクルーティングメディア「MS Jobs」、ビジネスメディア「Manegy(マネジー)」、BtoBプラットフォーム機能を有するサービス「Manegy to B」などを展開。効率化を追求する経営方針による高い収益性、独自の発想力等が強み。既存事業の成長とともに、「BtoB取引プラットフォーム」の展開を視野に入れて更なる成長を目指す。
- 21年3月期の売上高は前期比17.8%減の33億69百万円。人材紹介事業は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた。メディア事業は増収。営業利益は同27.3%減の12億39百万円。先行きが不透明な中、採用基準の厳格化等の需要の変動に合わせたコストコントロールを実施し、主に新規登録者獲得のためのマーケティングコストを最適化したことで販管費は同11.0%減少したが、減収に伴う売上総利益の減少をカバーできなかった。前期比減収減益ではあったが、予想に対しては売上・利益とも上回って着地した。四半期ベースでは、人材紹介事業の回復とメディア事業の伸長で、売上高は回復傾向にある。
- 22年3月期の売上高は前期比16.6%増の39億28百万円、営業利益は同25.0%増の15億49百万円の予想。前期後半から回復基調に入った人材紹介事業は同13.3%の増収、本格的なマネタイズ段階に入ったメディア事業は既存のサービスを前提に同55.1%の大幅増収を見込んでいる。更なる高効率経営を進め、営業利益率は同2.6ポイント上昇の39.4%へ。配当は前期同様15.00円/株を予定。予想配当性向は37.9%。
- 有本社長に、自社の競争優位性、成長戦略、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「管理部門・士業に特化した人材紹介事業からスタートした当社は、「Manegy」「Manegy to B」などをリリースし、経営管理領域において事業ポートフォリオを拡張し成長してきましたが、本当の成長はいよいよここからです。データベースを活用した「経営管理プラットフォーム」構築を進め、日本のみでなく世界有数の企業へと飛躍していく当社に是非ご期待下さい」とのことだ。
- 「MS-Japan=管理部門・士業領域における人材紹介事業No.1」というのが、同社に対する投資家の一般的なイメージかもしれないが、同社の強みは、人材紹介事業そのものではなく、創業以来構築してきた管理部門・士業領域における人材データベースであるという点を認識しておく必要がある。データベースの更なる増強をベースに収益機会を拡大し、世界でも例を見ないプラットフォーマーを目指す同社の動向、事業の進捗状況を注目していきたい。
1.会社概要
企業の管理部門及び弁護士・公認会計士・税理士を始めとした経営管理領域の士業に特化した人材紹介事業「MS Agent」に加えて、同領域のダイレクトリクルーティングメディア「MS Jobs」を運営。さらに、同領域のユーザーに向けたビジネスメディア「Manegy(マネジー)」を通じて、管理部門ユーザーとサービスを繋げるBtoBプラットフォーム機能を有するサービス「Manegy to B」を運営。管理部門及び士業領域にて、人材関連事業に留まらないサービスを展開している
【1-1 沿革】
実家が商売を営んでいたこともあり、高校生の頃から起業を想定していた有本 隆浩氏(現 株式会社MS-Japan代表取締役社長)は大学卒業後、(株)リクルートに入社。人材採用領域において抜群の営業力で突出した成績を残した後、独立し1990年、株式会社日本MSセンター(現社名:株式会社MS-Japan)を設立。
会計事務所の人材採用が極めて非効率的である点に着目し、会計事務所の人材支援事業をスタートし、初年度から高収益を上げる。
1990年代に入りバブル経済崩壊を迎え大企業が管理部門において大量なリストラを進める中、人材補充の需要が増大することを予見し、企業の管理部門に特化した人材紹介事業を開始した。
その後も、国際会計基準の導入、新興市場の創設にともなうIPOの増大といった制度改正、法改正に伴い、USCPA保有者、IPO人材等の求人ニーズを取り込んでいく。また、監査法人のリストラや司法試験の制度改革に伴う、公認会計士やロースクール出身者の就職難に際しては、企業に財務・会計、法務の専門家を紹介。今では一般的となった企業内会計士、企業内弁護士といったポジション・市場を同社が創り出して行った。
こうした時代の流れや変化をいち早く捉え、新たなマーケットを創造することで業容は着実に拡大し、2016年12月、東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場。2017年12月には東京証券取引所市場第一部へ市場変更した。
【1-2 企業理念】
「自主自立した個・組織が、有機的に融合し調和する社会を実現するために、時代に必要な新しい価値を創造し、新時代の架け橋となる」ことを目指している。
また、同社が基準とするビジネスキーワードは「人」と「情報」のマッチング。
人が生きていくために必要な情報(結婚、出産、自己啓発、老後生活、介護保障など)、企業が発展する為に必要な情報(ビジネスマッチング:M&A、フランチャイズ、アライアンスなど)を多角的に捉え、有益なカタチで提供することで様々な社会的な課題解決に貢献していく。
同社のシンボルマークは、「空高く向上するスカイブルーのカラーに、ハートをクロスしたモチーフ」から生まれた。
このシンボルマークには、「当社に関わる方々が心で結ばれ、幸せになれれば」という思いが込められている。
【1-3 事業内容】
(1)概要
企業の管理部門と会計・法律領域の士業に対象を特化し、人材紹介事業の「エージェント事業」、同領域のユーザーに向けたビジネスメディアやプラットフォームを運営する「メディアプラットフォーム事業」、ダイレクトリクルーティングメディアを運営する「HR-tech事業」の3事業を展開している。
(同社資料より)
(2)ビジネスモデル
企業の管理部門と会計・法律領域の士業に特化した人材紹介事業からスタートした同社だが、対象領域に変わりはないものの、更なる成長を追求すべく、収益機会拡大に向けたビジネスモデルの構築を進めている。
人材紹介事業では転職希望者が「MS Agent」に登録。同社がエージェントとなり求人企業とのマッチングを行うという流れだが、収益機会(マネタイズポイント)は「転職」時のみとなる。
この収益機会を更に拡大させるために、現時点では転職を考えていない管理部門・士業の人々にも同社の認知度を向上させ、同領域における人材をプール、データベース化するためにスタートさせたのが「メディアプラットフォーム事業」である。
コミュニケーションプラットフォームサイト「Manegy(マネジー)」では、管理部部門・士業の人々が関心のある話題に関する情報を提供。「Manegy to B」では彼等が日々利用する各種サービスを比較検討する機能を提供している。
同社ならではのWEBマーケティングを展開して、これらのメディアやサービスへの誘導を図り、登録者の増大を進めている。
人材データベースの増強は、以下のように収益機会の拡大・多様化に繋がっていく。
1つは潜在的な転職希望者を囲い込むことで、将来の転職ニーズ顕在時の人材紹介事業における収益獲得。
加えて、「Manegy」では主として認知向上を図りたい企業からの広告収益を、「Manegy to B」では自社製品やサービスをアピール・販売したい企業から収益を収受する。
また、「4.成長戦略」で後述するように、管理部門・士業の人々が興味関心を持つデータを活用して新サービスを展開するほか、強力なデータベースを基盤とした「BtoB取引プラットフォーム」を構築し、更なる成長を目指す。
(同社資料より)
(3)各事業の概要
①エージェント事業
一般事業会社の管理部門職種(経理・財務・人事・総務・法務・経営企画等)と弁護士、公認会計士、税理士等の資格を有する士業を対象とした人材紹介を行っている。
現在の中心事業である「MS Agent」は、管理部門職種(経理・財務・人事・総務・法務・経営企画等)と、経営管理に関わるプロフェッショナルである各種士業(弁護士・公認会計士・税理士等)に専門特化した国内No.1の人材紹介事業である。
(同社資料より)
転職を希望する求職者が同社に登録を行い、カウンセリングを通じて転職先を紹介する一方で、採用企業側に対しては必要な人材のニーズをくみ取り、登録者を紹介することで双方のニーズをマッチングする。
経営管理領域に関わる職種に特化した企業として、四半期決算の開始や新たな会計基準の導入、財務報告に係る内部統制に対する評価の実施基準の制定、法科大学院制度の導入やコーポレートガバナンス・コードの制定等、時代を反映した規制の変化を捉え、それらに関連する職種に対して様々なキャリアプランを提案している。
また、採用企業側に対しては、国内上場・非上場企業、ベンチャー企業、外資系企業や金融機関、ベンチャーキャピタル等の一般事業会社における管理部門等の人材採用支援のみならず、会計事務所、監査法人、法律事務所、コンサルティングファーム等の専門的な組織の人材の採用支援も行っており、業界にとらわれず幅広くサービスを提供している。
収入形態としては、登録された求職者の採用が決定、求職者が内定を承諾し、入社した場合に、採用企業側より手数料を得る成功報酬型を採用している。
②メディアプラットフォーム事業
◎「Manegy」
2017年3月より、士業と企業の管理部門の業務に役立つコミュニケーションプラットフォームサイト「Manegy」を運営している。
経理、財務、人事、総務を始めとした管理部門や士業の人達が関心を持つニュースやトピックスの掲載、セミナーの案内のほか、「教えて専門家」というコーナーでは、業務上の悩みを実名専門家に質問することもできる。
2020年8月に管理部門が日々利用する各種サービスの比較検討が可能なサービス「Manegy to B」を正式リリースした。
「Manegy to B」は、経理財務・人事労務・法務総務など、経営管理領域に関するあらゆるサービスを網羅した国内最大級のBtoBプラットフォーム。
(同サイトより)
例えば、「経理・財務」カテゴリーでは、クラウド会計、会計システム、経費精算など、「人事」カテゴリーでは、人事管理、人事評価・目標管理、勤怠管理、給与計算・明細など、「総務」カテゴリーでは、グループウェア、福利厚生、企業内コミュニケーションなどの項目において、多くのソフトウェアやサービスが掲載されており、ユーザーは「Manegy to B」上で資料をダウンロードしたり、複数企業に資料請求したりして、各ソフトやサービスを比較することができる。ホワイトペーパーのダウンロードやウェビナーの視聴も可能である。
また、「Manegy」同様、お役立ち情報やセミナー情報も掲載している。
「Manegy to B」を通じたリード獲得や顧客開拓を図るサービス提供企業から、資料請求やセミナー集客についての収益を収受している。
掲載サービス数は日を追って拡大しており、2021年3月末には160件を超え、日本国内の主要サービスをほぼ網羅している。
2021年3月には初のオンラインイベントも開催し、イベント期間でのべ3,500名以上の管理部門ユーザーを集客した。
(同社資料より)
「Manegy」とともに、管理部門・士業領域における人材データベース増強をベースにした収益機会拡大のための重要な事業である。
◎その他
さらに、IPOに関連するインタビューやコラム等の情報やセミナー情報を提供するポータルサイト「IPO PRO」、会計事務所及び法律事務所の検索サイト「J-ing」、公認会計士や税理士等向けの会計関連情報及びキャリアに関する情報ポータルサイト「KAIKEI FAN」、弁護士やロースクール生向けの法務関連情報及びキャリアに関する情報ポータルサイト「LEGAL NET」等を運営している。
③HR-tech事業
人材領域の新たなサービスとして2020年5月に、求職者と採用企業を直接結ぶダイレクトリクルーティングサイト「MS Jobs」のβ版をリリースした。今期中の正式リリースを予定している。
経営管理領域におけるマーケティング力によって獲得した求職者(21年3月期で年間約17,000名が登録)を活かし、高単価・都市部限定の人材紹介だけではなく、日本全国および中小企業を顧客ターゲットとするため、こちらも収益機会は一段と拡大する。
(同社資料より)
β版リリース以降、掲載求人数は順調に増加し、1,500件を突破した。正式リリースに向けて、人材紹介事業サイト「MS Agent」との連携を見据えたサイト開発及び掲載求人数のさらなる増加に向けて取り組んでいく。
【1-5 特長と強み】
(1)高い収益性
「最大の売上を上げ、コストを最小化することで最大の利益を生み出す」ことを徹底、効率化を追求する経営方針の下、営業利益、経常利益、当期純利益及び各種利益率を重要な経営指標として位置付けており、高い収益性を実現している。
☆
特定領域に特化しているため、求職者のカウンセリングを行うキャリアカウンセラー及び採用企業の担当者であるリクルーティングアドバイザーに、同業界の業務内容や業界の動向に対する専門的な知識が蓄積される。
☆
求職者及び採用企業双方の専門的なニーズを細部にわたるまで把握する仕組みがあることから、精度の高いマッチングを実現することが可能であり、スピーディーな紹介・決定を実現している。
☆
経営管理領域の職務は、多くの専門的な知識が必要とされる領域であり、そのような専門的なスキルや経験を多く有するシニア層の人材紹介や、管理領域の専門的なスキルを有する女性のキャリア実現のサポート等、少子高齢化等の時代に即した対象マーケット拡大施策にも注力している。
例えば、求職者のプロフィールを記入する登録シート一つをとっても、共通フォーマットの利用が一般的であるのに対し、同社では、会計事務所用、経理用、法務用で異なったシートを使用している。
各領域における候補者のスキルを詳細にチェックできるため、採用する企業側も迅速な判断が下すことが可能で、スピーディーに適切な人材の採用を決定することができる。
【1-6 配当政策・株主還元】
株主と長期的な信頼関係を構築するため、利益還元を重要な経営課題に位置付けている。将来の事業展開と経営基盤強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を実施していくことを配当政策の基本としている。
この数年間の配当性向は概ね30%を超えている。
【1-7 ROE分析】
17/3期 |
18/3期 |
19/3期 |
20/3期 |
21/3期 |
|
ROE(%) |
17.0 |
15.9 |
18.3 |
18.4 |
11.6 |
売上高当期純利益率(%) |
28.04 |
29.19 |
31.29 |
33.53 |
32.11 |
総資産回転率(回) |
0.54 |
0.49 |
0.53 |
0.49 |
0.33 |
レバレッジ(倍) |
1.13 |
1.11 |
1.11 |
1.11 |
1.09 |
レバレッジは低い反面、同社の特長である高利益率を背景に、高水準のROEで推移している。
2.2021年3月期決算概要
【2-1業績概要】
20/3期 |
構成比 |
21/3期 |
構成比 |
前期比 |
予想比 |
|
売上高 |
4,098 |
100.0% |
3,369 |
100.0% |
-17.8% |
+0.4% |
売上総利益 |
4,096 |
99.9% |
3,368 |
100.0% |
-17.8% |
– |
販管費 |
2,391 |
58.4% |
2,128 |
63.2% |
-11.0% |
– |
営業利益 |
1,704 |
41.6% |
1,239 |
36.8% |
-27.3% |
+1.8% |
経常利益 |
2,023 |
49.4% |
1,612 |
47.9% |
-20.3% |
+8.6% |
当期純利益 |
1,374 |
33.5% |
1,082 |
32.1% |
-21.3% |
+9.0% |
*単位:百万円。予想は21年2月発表。20/3期は非連結決算、21/3期は連結決算。前期比は参考値。
減収減益も予想を上回る。
売上高は前期比17.8%減の33億69百万円。人材紹介事業は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた。メディア事業は増収。
営業利益は同27.3%減の12億39百万円。先行きが不透明な中、採用基準の厳格化等の需要の変動に合わせたコストコントロールを実施し、主に新規登録者獲得のためのマーケティングコストを最適化したことで販管費は同11.0%減少したが、減収に伴う売上総利益の減少をカバーできなかった。
前期比減収減益ではあったが、予想に対しては売上・利益とも上回って着地した。
四半期ベースでは、人材紹介事業の回復とメディア事業の伸長で、売上高は回復傾向にある。
【2-2 事業別動向】
(1)人材紹介事業
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け専門組織、一般企業ともに採用活動の中断、延期などが発生し、その後も採用の厳格化の影響等により減収。
新規登録者数は、16,139人。一人当たり獲得単価は前期比で改善した。
(2)メディア事業
Manegyの年間売上高は1.56億円で前期比200.1%増と大幅な増収。
2020年8月に正式にリリースしたBtoBのサービス比較プラットフォーム「Manegy to B」での資料請求数も伸長しており、本格的なマネタイズがスタートした。
【2-3 財務状態】
◎主要BS
20年3月末 |
21年3月末 |
増減 |
20年3月末 |
21年3月末 |
増減 |
||
流動資産 |
7,088 |
7,648 |
+560 |
流動負債 |
844 |
565 |
-279 |
現預金 |
6,371 |
6,380 |
+9 |
固定負債 |
– |
213 |
+213 |
有価証券 |
518 |
1,000 |
+481 |
負債合計 |
844 |
778 |
-65 |
固定資産 |
1,718 |
2,509 |
+791 |
純資産 |
7,961 |
9,380 |
+1,418 |
投資その他の資産 |
1,430 |
2,250 |
+819 |
利益剰余金 |
6,117 |
6,825 |
+707 |
投資有価証券 |
1,202 |
2,116 |
+914 |
負債純資産合計 |
8,806 |
10,158 |
+1,352 |
資産合計 |
8,806 |
10,158 |
+1,352 |
*単位:百万円。20年3月末は非連結。21年3月末は連結。増減はインベストメントブリッジが計算した参考値。
3.2022年3月期業績予想
【3-1 業績予想】
21/3期 |
構成比 |
22/3期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
3,369 |
100.0% |
3,928 |
100.0% |
+16.6% |
営業利益 |
1,239 |
36.8% |
1,549 |
39.4% |
+25.0% |
経常利益 |
1,612 |
47.9% |
1,486 |
37.8% |
-7.8% |
当期純利益 |
1,082 |
32.1% |
988 |
25.2% |
-8.7% |
*単位:百万円
21/3期 |
構成比 |
22/3期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
3,369 |
100.0% |
3,928 |
100.0% |
+16.6% |
人材紹介 |
3,204 |
95.1% |
3,631 |
92.4% |
+13.3% |
メディア(Manegy) |
156 |
4.6% |
242 |
6.2% |
+55.1% |
その他 |
8 |
0.3% |
54 |
1.4% |
+575.0% |
*単位:百万円
増収・営業増益を予想
売上高は前期比16.6%増の39億28百万円、営業利益は同25.0%増の15億49百万円の予想。
前期後半から回復基調に入った人材紹介事業は同13.3%の増収、本格的なマネタイズ段階に入ったメディア事業は既存のサービスを前提に同55.1%の大幅増収を見込んでいる。
更なる高効率経営を進め、営業利益率は同2.6ポイント上昇の39.4%へ。
配当は前期同様15.00円/株を予定。予想配当性向は37.9%。
これまで別々に運用していた「MS Agent」と「MS Jobs」のデータベースの統合に伴うサイト開発・データベースの連携を進めており、新機能を今期中に順次リリースする予定である。
4.成長戦略
同社では、自社の事業優位性を基盤に、以下のような成長戦略を推進していく。
【4-1 経営管理領域における事業優位性】
同社の経営管理領域における事業優位性は以下の通りである。
* | ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を管理する「管理部門」に特化 |
* | 人材紹介という採用単価が比較的高い手法を採用できる優良企業の顧客基盤。取引先企業数は約23,500社。うち上場企業は約2,700社と、全上場企業の約7割。取引先会計事務所・法律事務所等は約2,500事務所。 |
* | 税理士などの士業にも特化することで事務所顧問先の中小企業にもアプローチ可能 |
* | 「Manegy」の月間PV数は年平均200万を超え、月間UUの年平均は40万人以上。ユーザーとは転職時だけでなく日常の接点も急速に拡大している。 |
こうした優位性をベースに、約50~100万人と推定されるキャリア層・士業人材をターゲットに事業を拡大している。
【4-2 構想・施策】
(1)日本最大の経営管理DMPの構築を推進
人材紹介業に加え、Manegyを始めとした各種サイトで蓄積した士業及び管理部門職種の人々の興味関心データを活用し、様々な事業を加速させてビジネスの展開を図る。
DMPとは「Data Management Platform(データ マネジメント プラットフォーム)」の略で、「インターネット上に蓄積された様々な情報データを管理するためのプラットフォーム」のこと。
管理部門・士業に特化した唯一無二のDMPを構築し、様々なサービスを提供する。
(同社資料より)
(2)経営管理領域を軸に事業ポートフォリオを拡張:「BtoB取引プラットフォーマー」への進化
管理部門や士業人材の転職ニーズと企業の採用ニーズのマッチングからスタートした同社は、仕事に役立つ情報を提供するメディア「Manegy」、管理部門が日々利用する各種サービスの比較検討が可能な「Manegy to B」をリリースし、経営管理領域を軸に事業ポートフォリオを拡張してきた。
今後は、人材データベースを更に強化しつつ「BtoB取引プラットフォーム」を構築し、新たな事業展開を図る考えで、今期をプラットフォーム構想具現化初年度と位置付けている。
(同社資料より)
(3)CVCファンドの設立
2021年1月19日、ハヤテインベストメント株式会社と共同でコーポレートベンチャーキャピタルファンド「MS・HAYATE1号投資事業有限責任組合」を設立した。
経営管理・士業領域の人材紹介事業及びメディア事業で構築したネットワークを活用し、経営管理領域における新たなテクノロジーやサービスを開発する企業や、将来的に応用可能な技術を有する企業に幅広く投資を行い、人(人材紹介)・顧客(メディア)・資金(本ファンド)を通じた成長を支援することで、シナジーを通じた自社の非連続的な成長にも繋げて行く考えだ。
【4-3 目指す姿】
採用、サービスの比較検討・導入に加え、例えば商取引の実行なども含め、経営管理領域に携わる人があらゆる活動を行うことができる「経営管理プラットフォーム」の構築を目指している。
国内のスタンダードを確立するとともに、世界へも進出。「世界中の企業経営が、より効率的に、より効果的になる世界の実現」を目標としている。
(同社資料より)
5.有本社長へのインタビュー
有本社長に、自社の強み・競争優位性、今後の成長戦略、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。
Q:「まず最初に、御社の強み、競争優位性についてお聞かせください」
1つは、高い収益性です。
日本には上場企業が約3,800社ありますが、当社はその中でも利益率はトップクラスに入ります。
これは私の会社経営についての考え方が形となって現れています。つまり、「最大の売上を上げ、コストを最小化することで最大の利益を生み出す」ことを徹底している結果です。
情報産業なので、「仕入」という概念が無い。全ての企業活動において効率性を追求し、高収益を実現している点が、当社最大の強みです。
(同社ウェブサイトより)
また、優れたWEBマーケティング力も当社の大きな強みです。
当社では企業などから求人案件があった際、自社で構築したデータベースから候補者をピックアップしており、他社のように外部の媒体を使用していません。
これは、外部媒体側の価格政策に左右されることなく収益の安定性を図ることができることに加え、人材データベースを構築するためのノウハウを蓄積できるという点で、当社の大きなアドバンテージとなっており、このノウハウをベースとしたWEBマーケティング力は当社の強力な競争優位性となっています。
このマーケティング力は管理部門・士業領域における人材データベースをさらに増強し、今後の収益機会の拡大・新規サービスの開発を図るための当社の強力な武器でもあります。
Q:「続いて、今後の成長戦略についてご説明いただけますか?」
当社は人材紹介事業「MS Agent」からスタートし、仕事に役立つ情報を提供するメディア「Manegy」、管理部門が日々利用する各種サービスの比較検討が可能な「Manegy to B」などをリリースし、経営管理領域を軸に事業ポートフォリオを拡張してきました。またその過程で、管理部門・士業に特化したデータベースを蓄積してきました。先程お話ししたWEBマーケティング力を武器に、このデータベースをこれからもますます拡大・拡充させていきます。
「Manegy」や「Manegy to B」の成長によって、これまでは転職時にしか接点を持ちにくかった管理部門や士業の方々と、日常的に接点を持つことができるようになってきました。それによって、様々なマネタイズポイントを創出することができる。いわば、このデータベースはビジネスチャンス、新規事業の宝庫であり、今後の成長のための強力なドライバーです。
データベースを活用した「BtoB取引プラットフォーム」の展開を視野に入れて準備を進めており、今期をプラットフォーム構想具現化初年度と位置付けています。
残念ながら今は詳細をお話しすることはできませんが、様々な案件を現在仕掛けています。
Q:「課題や対応についてはいかがでしょうか?」
今後「BtoB取引プラットフォーマー」として成長を追求していく上では、やはり優秀な技術者が必要です。
戦略的に技術者を確保しようと思い、正社員のみにこだわらず、業務パートナーという形で確保を進めたところ、優秀なIT技術者に多数集まっていただくことができ、この戦略は上手く進めることができています。
日本や世界を代表するIT企業、Tech企業で豊富な実績を積んできたエンジニアが活躍しており、彼らは、管理部門・士業に特化した「BtoB取引プラットフォーマー」というビジネスモデルに非常に大きな関心・興味を持ってくれています。
これまでには無かった全く新しいモデルを創り出すことに対して優秀な彼らが共感・協力してくれるということは当社としても大変心強い限りです。
膨大なデータベースとテクノロジーを駆使して、人材紹介に限ることなく、管理部門・士業領域におけるあらゆるBtoBビジネスに不可欠なプラットフォームを構築します。
そうした意味では、我々は既に他の人材紹介企業をライバルとは見ていません。
「管理部門・士業領域に特化したBtoB取引プラットフォーム=経営管理プラットフォーム」は日本だけではなく世界でも通用するビジネスモデルであると確信していますので、国内のスタンダードを確立しつつ、ビジネスフィールドを世界にも広げ、世界一の経営管理プラットフォームの創出を目指します。
Q:「ありがとうございます。それでは最後に、株主・投資家へのメッセージをお願いいたします」
管理部門・士業に特化した人材紹介事業からスタートした当社は、「Manegy」「Manegy to B」などをリリースし、経営管理領域において事業ポートフォリオを拡張し成長してきましたが、本当の成長はいよいよここからです。
我々が対象としている経営管理マーケットは極めて巨大です。他社にはない新たな発想で様々な事業を仕掛け、この巨大な市場を開拓していきます。
一方で、仕入や在庫とは無縁で、アイデアのみで事業に取り組み、管理部門に特化することでリスクを徹底的に軽減し、これからも高収益・高効率経営を追求していきます。
データベースを活用した「経営管理プラットフォーム」構築を進め、日本にとどまらない、世界有数の企業へと飛躍していく当社に是非ご期待下さい。
6.今後の注目点
「MS-Japan=管理部門・士業領域における人材紹介事業No.1」というのが、同社に対する投資家の一般的なイメージかもしれないが、同社の強みは、人材紹介事業そのものではなく、創業以来構築してきた管理部門・士業領域における人材データベースであるという点を認識しておく必要がある。
データベースの更なる増強をベースに収益機会を拡大し、世界でも例を見ないプラットフォーマーを目指す同社の動向、事業の進捗状況を注目していきたい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 6名、うち社外3名 |
監査役 | – |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年6月28日
<基本的な考え方>
当社は、事業環境が刻々と変化する人材紹介業界において企業価値の持続的な向上を図るには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、ガバナンス体制の強化・充実を重要課題と位置付けています。こうした認識のもと、業務分掌や規程の整備等により内部統制を強化するとともに、随時体制の見直しを実施し、企業価値の向上を図ります。
<実施しない主な原則とその理由>
原則 |
実施しない理由 |
【補充原則1-2④.株主総会における権利行使】 | 議決権の電子行使につきましては、現状は実施しておりませんが、株主からの要望等を考慮し、導入時期も含めて今後検討してまいります。また、招集通知の英訳につきましては、2021年3月末現在の、海外投資家比率を鑑み、現状は考えておりませんが、今後、保有比率を踏まえて必要性に応じて検討してまいります。 |
<開示している主な原則>
原則 |
開示内容 |
<原則1-4 いわゆる政策保有株式の保有> | 当社では、原則として政策保有株式を保有いたしません。なお、政策保有が必要となる場合につきましては、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、取締役会にてその保有の適否について十分に検証し、当社にとって中長期的な企業価値の向上に資すると判断される場合に限るものとしております。 |
【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】 | 当社は、取締役経営管理部長をIR責任者と定めております。株主や投資家の皆様に対しては決算説明会又は動画配信等を年に2回開催することにより、建設的な対話の機会を確保できるよう取り組んでおります。 |