(3937)株式会社Ubicomホールディングス 各段階利益が過去最高を更新

2021/07/08

 

 

 

青木 正之 社長

株式会社Ubicomホールディングス(3937)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役CEO

青木 正之

所在地

東京都文京区小石川2-23-11 常光ビル9階

決算月

3月末日

HP

https://www.ubicom-hd.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,565円

11,802,880株

42,077百万円

24.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

68.78円

51.8倍

249.28円

14.3倍

*株価は6/23終値。各数値は21年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

3,208

322

355

212

19.08

0.00

2019年3月(実)

3,555

564

591

368

32.57

5.00

2020年3月(実)

4,038

707

715

533

46.17

5.00

2021年3月(実)

4,198

919

877

623

53.25

7.00

2022年3月(予)

4,963

1,079

1,104

811

68.78

未定

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

株式会社Ubicomホールディングスの2021年3月期決算概要、今後の取り組み、青木社長へのインタビューなどをお伝えします。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.青木社長に聞く
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 21年3月期の売上高は前期比4.0%増の41億98百万円。グローバル事業は上期を中心にコロナ禍の影響を受け、下期からは先端IT人材育成に係る戦略投資を実施したものの、主要ピラー顧客からの売上は順調でほぼ前期と変わらず。メディカル事業も上期はコロナ禍の影響受けたが、後半巻き返し2ケタの増収。営業利益は同29.9%増の9億19百万円。利益率の高いメディカル事業が伸長し粗利率は0.8ポイント改善。売上総利益も同6.0%増加。第3四半期から本格的に戦略投資を実施した一方で販管費は10.8%減少したことから営業利益は同29.9%増の9億19百万円となった。経常利益は同22.6%増の8億77百万円。新型コロナウイルス感染症の影響(フィリピンにおける社員送迎やリモートでの開発体制への移行に伴う支出など約30百万円)および為替のインパクト(約45百万円)を吸収した。各段階利益は過去最高を更新。配当は前期比2円増配の7.00円/株とした。配当性向は13.1%。

     

  • 22年3月期の売上高は前期比18.2%増の49億63百万円、営業利益は同17.4%増の10億79百万円、経常利益は同25.9%増の11億4百万円の予想。営業利益、経常利益は今期も過去最高を更新する見込み。引き続き「戦略的投資」を進めるが、これを吸収したうえで2桁の増益を目指す。配当は現時点では未定としているが、今期も利益水準に応じて適切な株主還元を実施する考えだ。

     

  • 青木社長に、前期決算の振り返り、今後の取り組み、保険ナレッジプラットフォームの今後の展開、ESG経営、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「当社は2016年の東証マザーズ上場からこれまでの間2年で利益を倍増させてきました。今後はさらに成長を加速させるべく、M&A、アライアンスを積極的に展開していくとともに、先端IT人材の育成に注力して参ります。これからも当社の挑戦を応援していただきたいと存じます」とのことだ。

     

  • メディカル事業の収益性向上が著しい。コロナ禍の下でも病院経営効率化という需要を確実に取り込み、第1四半期(4-6月)こそ低調だったものの、第2四半期から売上・利益とも回復。直販やクロスセルの拡大および価格改定により営業利益率は50%を超えた。グローバル事業も、売上・利益は前期並みであったが、営業利益率は17.8%とほぼ前期水準を維持しており、継続的開発パートナーシップに基づく利益率の高いピラー顧客向け案件が堅調であったようだ。

     

  • 今期も引き続き「戦略的投資」を進めるが、これを吸収したうえで2桁の増益を見込んでおり、各四半期の動向を注目していきたい。また、中期的には「保険ナレッジプラットフォーム」をはじめとしたニッチNo.1プラットフォーマー戦略が、同社が見込む巨大市場をどのように開拓していくのかにも引き続き期待したい。

1.会社概要

人材不足、医療逼迫等の社会課題の解決に資するITソリューションを創造する、唯一無二のビジネスイノベーションカンパニー。医療、金融/公共、自動車、製造業およびロボティクス等の領域を戦略市場と位置付け、広範なITソリューション・サービスを提供。
フィリピンの開発拠点を中心に約1,000名のエンジニアを有し、ソフトウェア開発からAI等の先進ソリューション開発を通じて、国内のIT人材不足の解決やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するグローバル事業と、医療機関向け経営支援ITソリューションのリーディングカンパニーとして、レセプト点検、医療安全支援、クラウドサービス等の医療最適化ソリューションを手掛けるメディカル事業の二本柱で展開。スクラップ&ビルドによる事業の再構築を経て、高収益ビジネスモデルを確立。さらには、リーディングカンパニーや成長企業との戦略的提携やM&Aを通じて事業成長の加速を図るWin-Winインベストメントモデルの推進と、プラットフォームビジネス等の既存事業とは異なる軸足の新規事業の早期確立を目指す。

 

【1-1沿革】

元より起業意欲が旺盛であった青木 正之氏は、2005年3月に株式会社ワールドの新規事業子会社である株式会社WCLの代表取締役社長就任後、国内外で様々な新規事業のシーズを探していると、訪問したフィリピンで多くの若く優秀なエンジニアが活気に満ちて仕事をしていることを知る。折から日本企業において社内業務のIT化が進行する中、フィリピンでシステム開発を行うことで幅広いシステムソリューションを低コストかつグローバルに提供すれば需要を確実に取り込みことができると考え事業化を決意。2005年12月に株式会社AWS(現:株式会社Ubicomホールディングス)を設立した。
ICT化の進展というフォローの風に加え、優秀なトップエンジニアを多数擁するフィリピン開発拠点の競争優位性を武器に顧客開拓が順調に進み業容は拡大。2012年に医療レセプトシステム最大手の(株)エーアイエスを子会社化。2016年6月、東証マザーズに上場。2017年7月に(株)Ubicomホールディングスに社名変更後、同年12月には東証1部に市場変更した。

 

【1-2 経営理念・ビジョン】

「人」×「技術」で革新的なITソリューションを創造する唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーとして以下3つの経営理念を掲げている。

 

1.Unique beyond comparison

時代の先を見据え、社会課題の解決に資するITソリューションを創造する、唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続けます。

2.Go Global

Ubicomグループのビジネススキームを、米国およびアジア各国を中心にグローバルに展開していきます。

3.Win-Win

お客様、協業先、そして全てのステークホルダーの皆様との相互発展を通じて、Ubicomグループの「仲間」を増やしてまいります。

 

「技術」「人材」「知財」「先見性」「パートナーシップ」の5つのコアアセットを基にビジネスイノベーションを創出し、少子高齢化、医療逼迫、IT人材の枯渇、DXといった課題を解決することを自社の社会的な責務・存在意義であると考えている。

 

(同社WEBSITEより)

 

【1-3 事業内容】

1-3-1 概要
20年以上の実績を誇る組込みソフトウェア開発、アプリケーション開発、テスト、品質保証のサービスに加え、国際化や少子高齢化など社会構造の変化や、医療生命科学・ロボット・人工頭脳の分野における技術革新を新規ビジネス創出のチャンスと捉え、戦略市場と位置付ける「医療」「金融/公共」「自動車」「製造/ロボティクス」分野において、「AI:人工知能」、「Analytics:分析」、「Automation/RPA:ソフトウェアテスト等の実行・管理の自動化」領域を中心とした同社独自のコアソリューションを開発し、多くの顧客企業に提供している。

 

1-3-2 同社を取り巻く事業環境
人材不足解決支援や医療最適化支援等の社会課題の解決に資するITソリューションの提供による成長を追求する同社を取り巻く事業環境は以下の通り。グローバル事業、メディカル事業(事業内容詳細は後述)ともにフォローの風が吹いている。

 

(同社資料より)

 

(1)国を挙げたデジタル化推進、深刻化するIT人材不足
政府がデジタル化に向けた旗振りを本格化するなか、経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月発表)によれば、付加価値の創出や革新的な効率化を通じて生産性向上等に寄与できるIT人材の確保が重要となっている一方で、少子高齢化が進む中、人材確保が難しくなっており、IT 需要の伸びを「低位」「中位」「高位」とケース分けした際、「高位」の場合、2025年に58.4万人、2030年に78.7万人の国内IT人材が不足すると試算している。

 

(2)膨張を続ける国民医療費とレセプト審査の厳格化、医療経営の逼迫、医療従事者の働き方改革
2018年度の概算医療費(労災・全額自費等の費用を含まない。医療機関などを受診し傷病の治療に要した費用全体の推計値である国民医療費の約98%に相当)は42.6兆円と過去最高を記録した。
高齢化の進展に伴い医療費は増大傾向にあることから各健康保険の財政状況は悪化が続いており、保険料負担軽減に向け、国はレセプト審査の厳格化等による医療費適正化政策を進めている。

 

(レセプトとは?)
現在の保険診療制度の下では、医療機関が受け取る診療報酬のうち、患者が支払う医療費は最大3割で、7割以上は健康保険組合、共済組合、市区町村などが負担する。
患者が受けた診療について、医療機関がこれら公的機関に保険負担分の支払いを請求するための医療診療の明細書をレセプトと呼び、レセプトを発行するレセプト業務は医療機関の収益の大部分を支える大切な業務である。
提出されたレセプトは、審査支払機関で厳重な確認作業が行われ、レセプトの記載内容に誤りがあると、審査支払機関からレセプトを差し戻されたり(返戻)、診療報酬点数を減点されたりすることがある。返戻された場合には、レセプトを精査・修正して、再提出しなければならず、適切なレセプトを提出することは効率的な医療機関経営を行うにあたり極めて重要な作業である。2009年には、医療機関は原則としてオンラインによるレセプトの請求が義務付けられるようになった。

 

(医師等の働き方改革)
日本は超高齢社会の進行とともに医療ニーズの急速な拡大、多様化、高度化が進む一方で、医師の不足や偏在、長時間労働等の業務負荷の問題が顕在化している。
深刻化の一途を辿る医師への負担を軽減し、医療現場における働き方改革を推し進めるべく、2024年4月より医師の時間外労働に対する罰則付き上限規制が施行される。その為、医療機関においては医師等の業務の効率化・最適化への取り組みが待ったなしの状況である。

 

コロナ禍を受けて医療提供体制の逼迫や病院経営の悪化が重大な社会問題として表面化するなか、審査支払機関におけるレセプト審査の厳格化や医療従事者の働き方改革の動きも重なり、レセプトチェックの等の業務効率化による収益改善、医療の安全と質の確保、働き方改革への対応は医療機関経営における重要課題となっている。

 

(3)急成長が見込まれる医療クラウド市場
2010年2月に一部改正された、厚生労働省通知「「診療録等の保存を行う場所について」により、民間企業が保有するデータセンターへの医療情報の外部保存が認められ、民間企業にとって医療クラウドサービスを提供しやすい環境が整った。
アプリケーションプラットフォーム、サーバがネットワーク内に存在するクラウドサービスは、医療分野においては、電子カルテ、医療用画像管理システム、地域医療連携システム、在宅療養支援サービス、遠隔画像診断サービス、治験向けサービス、調剤薬局向けサービスなど、様々なサービスにおいて活用されると言われている。

 

特に、今日の医療機関におけるデータ量の急速な増大、およびネットワーク活用の広まりの中にあって、クラウドサービスには「他施設との連携が容易」、「自前で保守管理をする手間がない」、「価格が安い」、などのメリットがあることに加え、2011年3月の東日本大震災の際に被災地の多くの紙カルテが失われた事態を受け、災害対策という面からも医療クラウドへの期待が高まっている。更に今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療現場逼迫は、オンライン診療や電子カルテの必要性を強く認識させることとなった。
個人情報保護の観点から安全性の問題を指摘する声もあるものの、規制と緩和のバランスの中で、社会的課題解決に向けたソリューションとして今後大きく発展していくものと思われる。

 

1-3-3 注力する事業領域
新しい時代を切り拓く「3A」分野を戦略的な技術領域と位置付け、これらをベースとした事業拡大に注力している。

分野

現状及び今後

AI

音声AI、チャットボット(自動会話プログラム)に係る開発を終え、横串的展開を推進。今後は自動車のSDL(カーオーディオとスマートフォンを連携させるスマートデバイスリンク)に音声AIを用いた車載向けAI機器のソリューション開発に注力する。加えて自動走行車搭載デバイスへの応用も見据えており、本格普及期には、大きな利益を持続的にもたらすストックビジネス化を目指している。

Analytics

日本におけるNo.1レセプト点検ソフトのMightyシリーズや分析ツールの開発フェーズを終え、データの質・量の向上を図り、医療関連のビッグデータ分析を行うエンジンをつくり、今後は新たなマネタイズモデル実現に向けたフェーズへ移行。

その他、工場や船舶会社などに向けた予知保全のソリューションを提供。

Automation/RPA

ソフトウェア自動化のエンジンを確立しており、ロボティックス(ロボット工学)・RPA(ロボットによる業務自動化)を推進。

大手ロボティクス、FAメーカーにリーチしたマーケットの拡大を目指している。

 

1-3-4 セグメント
報告セグメントは、ITソリューション・サービスを金融/公共、医療、自動車、製造/ロボティクス等の幅広い市場に向けて提供するグローバル事業と、レセプト点検ソフトをはじめとする医療機関向け経営改善ソリューション等を手掛けるメディカル事業の2つ。

 

 

(同社WEBSITEより)

 

 

(1)グローバル事業
◎概要
フィリピンの100%子会社であるAdvanced World Systems, Inc.およびAdvanced World Solutions, Inc.を主要開発拠点に、金融/公共、医療、自動車、製造/ロボティクスを重点対象業種として、組込みソフトウェア開発、業務アプリケーション開発、保守、テスティング等を行っている。
さらには同社が戦略的技術領域と定義する「3A」(「AI:人工知能」、「Analytics:分析」、「Automation/RPA:自動化」)技術を活用し独自のコアソリューションを展開しているが、その高度なソリューション開発力の源泉が、約1,000名のトップクラスのエンジニアを擁するフィリピン開発拠点であり、強力な競争優位性を生み出している。(詳細は【1-4 特徴と強み】を参照)

 

◎顧客
顧客企業は金融、公共、医療、自動車、製造、サービス業等と多岐にわたる。
前述のように日本ではIT人材不足が深刻化していることに加え、開発・運用にかかるコスト削減ニーズが根強いが、約1,000名の日本語、英語に堪能なIT人材を擁する同社はこうしたニーズを着実に取り込んでいる。
加えて多数の国内大手顧客との長年に亘る豊富な開発実績は同社に対する信頼・評価を一段と高めている。

 

(2)メディカル事業
◎概要
100%子会社である株式会社エーアイエスが、医療従事者の働き方改革、医療機関の収益改善、医療の安全と質の向上に資する、医療機関向けソリューションパッケージの開発・販売、クラウドサービス、データ分析ソリューション、開発支援、コンサルティングを手掛けている。
医療現場の業務効率を改善し経営品質を高める「Mightyシリーズ」製品は、その豊富かつ有用な機能が高く評価され、「働き方改革」という追い風もあり、ここ数年で毎年1,300以上の新規ユーザーを獲得しており、2021年3月末時点では、病院(20床以上)の約40%(3,311施設)、クリニック(19床以下)の約14%(14,141施設)、合計17,452施設が導入するトップシェア製品である。

 

◎主力製品・サービス
①レセプト点検ソフト「Mighty Checker®」
レセプト点検の効率化と精度向上が求められる中、1999年にレセプト点検ソフト「Mighty Checker®」を他社に先駆けてリリースした同社は、その有用性が高く評価されレセプト点検ソフトのリーディング企業としてのポジションを確立。2019年3月期にはレセプト点検にAIを導入した次世代レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」をリリースし、その地位を揺ぎ無いものとしている。
主として以下のような機能により医療機関のレセプト業務を強力にバックアップしている。

製品名

特長

Mighty Checker® EX

・2018年秋にリリースしたMighty Checkerシリーズの最上位製品

・従来製品「Mighty Checker PRO」において好評の機能やユーザビリティを更に進化させ、レセプト点検にAIを導入した次世代レセプトチェックシステム

Mighty Checker® PRO Analyze

・医科レセプト点検ソフトウェアの上級システム

・点検結果を分析し、効率的な点検業務を提案

・査定・返戻対策に加え、レセプト点検結果を活用した、より効率的な点検結果の活用が可能

・査定返戻データ取り込みによりスムーズなデータベース修正を実現し、査定返戻の抑止を強化

Mighty Checker® PRO Advance

・医科レセプト点検ソフトウェアの普及型システム

・病名・医薬品・医療行為の適応症を点検

・査定・返戻対策の点検(突合点検・縦覧点検・算定日チェック等)

・算定支援機能による点検(指導料等で算定できる可能性がある項目をチェック)

Mighty Checker® Cloud

・クラウド型レセプト点検サービスで、クラウド型電子カルテとの連携が可能

・院内システムのクラウド化対応の他、運用と導入のしやすさから業務効率化、リモートワーク、端末を選ばないBYOD対応、BCP対策にも

・今後、クラウド型電子カルテへの組込みを強化

 

②オーダリングチェックソフト「Mighty QUBE® PRO」
Mighty Checker®のデータベースを活用し、疾患と診療行為・投薬の適応性、用法用量等を処方オーダー時に点検し、不適応のものや、病名が漏れているケースへエラーを出すシステム。医療指示の誤入力・誤操作を防ぐことで、医療事故(ヒヤリ・ハット)や査定(減額)を防止し、医師が最も重要な診療行為に集中できるよう支援する。医療安全・質の向上と業務効率化の両立を追求することで、病院の財務・経営面の改善をサポートするとともに、病院と患者の両方に利益をもたらす点が高く評価され、多くの医療機関での導入が進んでいる。

 

◎導入事例
医事課職員6名の病院における導入事例を挙げると、導入後1カ月で診療分レセプト月間作業時間が半減したことに加え、算定支援機能により売上高が増収となった。
今後、職員が操作に慣れるに従い作業時間が更に短縮し、過去データの蓄積とAI検知により点検精度は更に向上していくことが見込まれるという。

 

③「備えの医療クラウドSonaM(そなえむ)」
医療機関のBCP対策と医療データ保全を、国内屈指の高度なセキュリティ基盤で支えるクラウドサービス。

 

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、オンライン診療の必要性がクローズアップされるなど診療方法の多様化が進むとともに、医療デジタル化・クラウド化におけるセキュリティの必要性が高まっている。
また、災害時における役割が一段と大きい医療機関においては、院内の医療データの安心安全な保管先と保管方法の確保が急務となっている。

 

こうした環境下で逼迫した医療提供体制を支援することを目的に開発された「SonaM(そなえむ)」は、レセプトデータ、カルテ、検査画像などの医療データをセキュアクラウドにより保全するもの。
医療データをクラウドで扱うためには、厚労省、経産省、総務省の3省が提唱する3つの医療情報セキュリティガイドラインの総称である「3省3ガイドライン」に準拠することが必要だが、NTT東日本の高度なクラウドセキュリティ基盤を採用することによって万全の態勢を整えている。
また事業規模の異なる医療機関毎の多様なニーズに対応できるよう、複数の段階的な利用プランを用意している。

 

Mightyシリーズに次ぐ新たな高収益サブスクリプションモデルであり、Mightyシリーズとのクロスセルや、直接取引の拡大によるユーザー単価向上を目指している。

 

④保険ナレッジプラットフォーム
保険業界における保険金支払審査業務に必要な情報や知識を一つのシステムに統合した、業界初(Ubicom調べ)の判定効率化支援プラットフォーム。
SBI生命保険株式会社での採用が内定している。

 

(概要・特長)
これまで保険会社では、顧客からの保険金請求に対する審査業務において、診療行為、医薬品、傷病名、先進医療、法改正など、判定に必要な散在した情報を網羅するために多大な労力が必要であった。
同社の17,000を超える医療機関ユーザーへの提供実績に裏打ちされた独自の医療データベースを利用した保険ナレッジプラットフォームを活用することで煩雑な審査業務を大幅に効率化することができる。

 

保険加入者が退院した後、保険会社や病院との書類手続きを経て給付金を受給するまでに現在は2-4週間、保険会社も支払審査から支払いまで約2-3週間かかっている。

 

「保険ナレッジプラットフォーム」はまずフェーズ1では、保険会社の上記必要期間を最短で1日程度に短縮する。
次のフェーズ2では、保険加入者の手続きが数分で完了することになる。

 

(マネタイズ構想)
Mightyシリーズを超える高単価・高収益サブスクリプションモデルを目指している。
収益は、基本初期費用、基本接続使用料、オプション初期費用、オプション接続使用量から構成されるが、同社では多様なニーズに対応して20以上のオプションを開発し、この積み上げにより高収益を実現する考えだ。

 

(同プラットフォームの強み)
1.知財
20年以上に亘って17,000を超える医療機関ユーザーへの提供実績に裏打ちされた独自の医療データベースを活用し、保険審査向け診療や医薬品コードや先進医療情報などを独自に搭載している。
また、AI開発の知見も寄与している。

 

2.ビジネスモデル
高単価、月額制でかつクラウドベースの次世代型サービスモデルである。
また開発次年度から維持コストのみで横展開が可能であり、潜在的な将来価値は巨額である。
加えて、ITを活用することで、保険請求手続きの負荷軽減、保険金受給までの日数短縮を実現するとともに、保険会社の事務負荷の大幅軽減を目指す「生命保険エコシステム構想」への参画により市場浸透の加速が期待できる。
また、サービスのブラッシュに向け同社のフィリピン開発リソースを活用できる点も大きなメリットである。

 

3.市場性
同社では業界初のブルーオーシャン市場への参入であると考えている。
1社あたり年間数百~数千万円の利用料で潜在的には約100社の顧客・市場を有している。

 

(今後の展開)
メディカル事業における新たなサブスクリプション型メニューの一つとして、保険業界全体への保険ナレッジプラットフォームの横展開を図るとともに、保険業界向けソリューションの更なる進化に向けて、AI(人工知能)等の先進技術を搭載した支払審査検索システムの開発と実装を目指す。更には、昨今の感染症対策を背景とした「対面サービス」から「非対面サービス」への転換ニーズを追い風に、保険業を含む金融サービス全体のDX化およびAI化に伴う開発需要の取り込みに注力する。

 

(同社資料より)

 

また、2020年11月には、「保険ナレッジプラットフォーム」の横展開として、「生命保険エコシステム構想」に参画することとなった。

 

生命保険エコシステム構想は、ITを活用することで、保険請求手続きの負荷軽減、保険金受給までの日数短縮を実現するとともに、保険会社の事務負荷の大幅軽減を目指すもの。
非定型AI-OCRの技術を持ち保険販売事業、ソリューション事業、システム事業を手掛ける株式会社アイリックコーポレーション(東証1部、7325)とソフトウェア販売や技術サポートを手がける株式会社アシストが中核となっている。
この構想の展開・拡大に向け「保険ナレッジプラットフォーム」における保険金支払業務自動化技術が高く評価され、構想強化企業第1号として参画することとなった。
「保険ナレッジプラットフォーム」の好調な引き合いを背景に、ユーザー目線の機能の拡充と訴求力の強化に向けて、基本機能である保険金支払審査業務向け「判定情報検索エンジン」に加え、「AI 自動判定」機能のオプション実装を準備している。
Ubicomにとって新しい取り組みである保険業界向けサブスクリプション型プラットフォームの提供を、新たなコア事業の一つとして育成するために、保険会社とその顧客の相互メリットや協業先企業とのシナジーの創出、技術革新およびビジネスモデルの確立を図る。
また、21年3月期第3四半期より、「保険ナレッジプラットフォーム」を含む保険業界向け先進ソリューション開発及びDX推進の一層の強化に向けて、同社グループが有する約1,000名のグローバルIT人材の活用を拡大する。
加えてAI等の先端領域に特化した次世代技術者育成の為の人材開発投資を進め、将来を見据えた企業価値の更なる向上に取り組む考えだ。

 

(同社資料より)

 

【1-4 Ubicomの特徴と強み】

1-4-1 フィリピンの開発拠点を中心に、約1,000名のエンジニアを育成・活用
沿革でも触れたように、青木社長が現地視察を重ねた中で開発拠点として最適と判断したフィリピンは、同社競争優位性の源泉であると同時に今後の成長戦略を牽引する極めて重要な役割を担っている。
前身を含め25年以上に亘る開発実績を有するフィリピン開発拠点の主な特徴は以下のとおりである。

 

①グローバル開発の最適地「フィリピン」
フィリピンは若年層中心に長期的な人口増加が続く人口ボーナス期に入っていることなどから平均して年6%近い経済成長を続けており、特に若年層は活力にあふれ、上昇志向が強まっている。
加えて英語が公用語であるためグローバルで活躍できる素地が整っていること、ITリテラシーが高いこと、ASEANの中心に位置しアクセスも良好であることなどから、グローバルベースでのIT開発拠点として最適である。

 

②超一流の人材を採用
フィリピンの開発拠点を中心に、約1,000名という多くのエンジニアが在籍しているが、「量:人数」のみでなく「質:優秀さ」においても他に例を見ないレベルの高さを誇っている。
長年の実績に裏打ちされ、フィリピン開発拠点に対するエンジニア志望者の評価は高く、入社希望者は例年数千名に上るが、採用されるのはわずか約4%と極めて狭き門となっており、まさに超一流の人材を獲得することができている。

 

③独自の教育・研修プログラムによる戦力化
超一流の人材を採用しても、それだけではトップクラスのエンジニア集団を構築することはできない。
戦力となる真のトップエンジニアに育て上げるための研修・教育制度こそが、他社が容易にキャッチアップすることのできない強力な差別化要因の一つである。

 

同社グループは今から18年前の2003年4月、フィリピンに自社研修センター「ACTION」を設立し運営を開始した。
「ACTION」における研修プログラムは同社が自社開発したもので、IT基礎概念、先進技術、対人ソフトスキル、日本語の4カテゴリーで構成され、PhilNITS(フィリピン国家情報技術者試験)と日本語検定4級の合格を目標に5カ月間の研修を実施する。
研修終了後、研修生はボードメンバーに対して成果を発表し面接評価を経て初めてプロジェクトへの参加がアサインされる。優秀な学生であっても実際に仕事を任されるまでの道のりはけっして楽なものではないが、こうしたハードルを乗り越えたプログラム卒業者は高度な技術力と日本語環境における業務遂行能力を有することから日本のIT市場において圧倒的な優位性を発揮しており、同社成長の強力なエンジンとなっている。
また、同社ではチャレンジングで最先端を行くプロジェクトが常に多数稼動しているため、やる気に溢れた優秀な人材に活躍の場を与えており、この点も同社グループが就職先としてフィリピンにおいて大きな人気を得ている要因の一つでもある。

 

④ソリューション開発力の更なる高度化・強化
既に他社を凌駕する高いソリューション開発力を有する同社だが、そのアドバンテージを更に強固なものとすべく2017年に設立したのが「先端技術開発センター」である。
同センターでは約数十名の先端技術者がAIやビッグデータ分析に特化しており、そのネイティブな英語力を活かし世界的なトップ研究者に繋がることで最先端技術にアクセスできる体制を構築している。
これにより短期間かつ低コストで顧客ニーズにマッチした高付加価値プロトタイプ(試作品)を作成し、日本の大手顧客に直接提供することが可能となったため、同社の提案力は飛躍的に向上している。

 

⑤外部から高評価を獲得
高いハードルを越えてプロジェクトに参画することができたトップエンジニア達の活躍は外部から高く評価され数々の受賞歴に結びついている。
*2020年、フィリピン子会社がフィリピン貿易産業省等よりソフトウェア開発サービス輸出優秀賞を受賞。
*2020年、エンジニア2名がアジア版情報処理技術者試験のトップ合格者の中でも特に優秀なアジアトップガン人材に選出。
*2017年、「国際ICTアワード」においてフィリピン子会社がフィリピン全土NO.1のベストソフトウェアカンパニーを受賞。
*自社研修プログラム「ACTION」がフィリピンeサービスアワードにおいて企業プログラム部門賞等を6年連続で受賞。

 

 

1-4-2 強固な顧客基盤
グローバル事業、メディカル事業ともに圧倒的な競争優位性を武器に強固な顧客基盤を構築している。
成長戦略における、サブスクリプションモデルによるストック型ビジネスの拡大、Win-Winインベストメントモデルにおける成長企業と顧客企業のマッチングなどにおいてもこの強固な顧客資産は大きな役割を果たすものと思われる。

 

1-4-3 グループ内外を問わない仲間意識、オーナーシップが根付いた企業風土
青木社長は海外を含めた従業員およびその家族を「仲間」と位置付け、全員が笑顔を絶やさず常に明るく前向きに、現状に満足することなく1人1人がオーナーシップを持って時代を先取りすることによって飛躍する企業グループであることも同社グループの強みの一つであると考えている。

 

このフラットな関係性を重視する仲間意識は、グループ内だけではなく、グループ外に対しても向けられている。
同社の重要な成長戦略の一つである「Win-Winインベストメントモデル」はリーディングカンパニーや成長企業との協業・戦略的提携を推進し、既存事業の成長の加速と新規事業の創出を図るものだが、企業規模の違いや株主と出資先といった関係を超え、ともに成長を目指す「仲間」であるとの意識を根底に置いていることが、提携先企業に向けたモチベーションの一段の向上に繋がると期待できる。この点は一般的なVCやCVCとの大きな違いであろう。

 

【1-5 ROE分析】

 

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

ROE(%)

4.9

12.2

17.7

24.7

27.3

24.2

 売上高当期純利益率(%)

1.24

-0.16

3.76

6.63

10.37

13.21

14.86

 総資産回転率(回)

1.33

1.46

1.44

1.36

1.27

1.17

1.02

 レバレッジ(倍)

2.97

2.62

2.25

1.96

1.87

1.76

1.60

*総資産回転率及びレバレッジは期首・期末平均を使用。有価証券報告書・決算短信を元に(株)インベストメントブリッジが計算。

 

総資産回転率、レバレッジは低下傾向にあるが、マージン改善が続いている。今期の予想売上高当期純利益率は16.3%。
引き続き高水準のROEを維持するであろう。

 

【1-6 株主還元】

同社は株主への利益還元を経営の最重要課題の一つとして認識しつつも、これまでは将来の事業展開と経営体質の強化のための内部留保の拡充を優先してきたが、昨今の受注の拡大及び堅調な業績の進捗に加えストック型の高収益モデルの基盤を確立したことを踏まえ、19年3月期、初めて5.00円/株の配当を実施。前21/3期は前期比2円増配の7.00円/株とした。配当性向は13.1%。
今後はサブスクリプション事業モデルへの転換による安定的なキャッシュ・フローの創出をベースに、業績の成長と戦略的投資のバランスをみたうえで、配当性向30%以上を目指して株主還元策の拡充にも注力する考えだ。

 

【1-7 ESGに関する取り組み】

「技術」「人材」「知財」「先見性」「パートナーシップ」の5つのコアアセットを基にビジネスイノベーションを創出し、少子高齢化、医療逼迫、IT人材の枯渇、DXといった課題を解決することを社会的な責務・存在意義であると考えている同社のESGに関する取り組みは以下の通り。

 

グローバル事業

*顧客DX(AI/分析/自動化/クラウド等の先進技術支援を通じたお客様の業務改革)

*ニューノーマル促進(オフショア活用、非対面/非接触/遠隔ソリューション開発)

*国内企業のグローバル化支援を通じた日本のグローバル競争力向上

メディカル事業

*保険業界向け新事業に代表される非競争領域のプラットフォーム化による三方良しの推進

*医療機関の収益改善、業務改善、ペーパーレス化、クラウド活用、遠隔医療支援

*医師の働き方改革、医療安全と質の向上

グループ全体

*レジリエンス経営(テレワークを含む事業継続体制の強化)

*取引の透明性(汚職防止)と非対面化(感染症対策)に資する電子請求/領収書プラットフォーム推進

*アジアの若い人材の教育と活躍の場の提供

*人材と管理職の多様性への取り組み

 

2.2021年3月期決算概要

(1)業績概要

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

予想比

売上高

4,038

100.0%

4,198

100.0%

+4.0%

-5.4%

売上総利益

1,720

42.6%

1,822

43.4%

+6.0%

販管費

1,012

25.1%

903

21.5%

-10.8%

営業利益

707

17.5%

919

21.9%

+29.9%

+13.9%

経常利益

715

17.7%

877

20.9%

+22.6%

+4.4%

当期純利益

533

13.2%

623

14.9%

+17.0%

+3.1%

*単位:百万円。

 

増収増益。利益は過去最高を更新。
売上高は前期比4.0%増の41億98百万円。グローバル事業は上期を中心にコロナ禍の影響を受け、下期からは先端IT人材育成に係る戦略投資を実施したものの、主要ピラー顧客からの売上は順調でほぼ前期と変わらず。メディカル事業も第1四半期はコロナ禍の影響受けたが、後半巻き返し2ケタの増収。
営業利益は同29.9%増の9億19百万円。利益率の高いメディカル事業が伸長し粗利率は0.8ポイント改善。売上総利益も同6.0%増加。第3四半期から本格的に戦略投資を実施した一方で販管費は10.8%減少したことから営業利益は同29.9%増の9億19百万円となった。
経常利益は同22.6%増の8億77百万円。新型コロナウイルス感染症の影響(フィリピンにおける社員送迎やリモートでの開発体制への移行に伴う支出など約30百万円)および為替のインパクト(約45百万円)を吸収した。
各段階利益は過去最高を更新した。配当は前期比2円増配の7.00円/株とした。配当性向は13.1%。

 

(2)セグメント別動向

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

グローバル事業

2,736

67.8%

2,761

65.8%

+0.9%

メディカル事業

1,301

32.2%

1,435

34.2%

+10.3%

その他

1

0.0%

連結売上高

4,038

100.0%

4,198

100.0%

+4.0%

グローバル事業

477

17.5%

492

17.8%

+3.1%

メディカル事業

590

45.4%

734

51.1%

+24.2%

その他

0

50.0%

調整額

-360

-308

連結営業利益

707

17.5%

919

21.9%

+29.9%

*単位:百万円。売上髙は外部顧客への売上高。営業利益の構成比は売上高利益率。

 

(グローバル事業)
増収増益。

 

主要ピラー顧客からの売上とソリューションの受注が拡大した。一方で新型コロナウイルス感染拡大に伴って施した各種施策(フィリピンにおける社員送迎など)に係るコストや、リモートでの開発体制に移行に伴う支出の増加もあり減益となったが、新型コロナウイルス感染症の影響は最小限に留めることができた。

 

◎グローバル部門
ソフトウェアテストやその実行・管理の自動化、製品開発支援およびアプリケーション開発分野での、フィリピンおよび日本における既存のピラー顧客からの受注が伸長した。
中でも、PC/IT機器の分野では、グローバル大手PCメーカーの取引拡大に加えて他の大手PCメーカーへの横展開推進が結果に繋がった。また、AIチャットボット領域における大手監査法人系グローバルコンサルティンググループにおいては、今後の実用段階およびグループでの他領域における横展開を見据え、取引は順調に拡大した。
業界を代表する大手顧客を中心に、顧客のピラー化・サブピラー化に向けた積極的な取り組みを強化している。

 

新たなソリューションとして取り組みを開始した IVA(インテリジェントビデオ解析)技術を活用したEdge IoT/AIoT分野に関しても、モビリティ領域における顧客へのR&D支援をはじめ顧客への提案を引き続き推進している。
また、今後成長が期待されるAR/VR分野においても取り組みを開始し、顧客への提案や試作を推進している。
更には、コロナ禍におけるDXを更なるチャンスと捉え、第3四半期より先端IT技術およびプロジェクトマネジメントスキルを中心とした人材投資に係る戦略的投資を行い、既存のコア技術と併せて、ソリューションの横串的展開を推進している。

 

中国においては、既存顧客との更なる関係強化を推し進め、コア技術を活かしたソリューション提案と効率的な人員のアサインにより、収益力の向上を図った。特にコロナ渦において、グローバル規模で在宅勤務が定着することによるPCの需要拡大に伴い、グローバル大手PCメーカーとの取引も拡大した。
米国では20年3月期に出資したシリコンバレーのベンチャーキャピタル「GoAhead Ventures」のオフィスにサテライトオフィスを開設し先進技術に係るリサーチ機能の強化を図っている。

 

◎エンタープライズソリューション部門
金融セクターを中心とした既存案件の堅調な拡大および製造・公共セクターの新規大型案件の立ち上げを推進している。
また、これまでの中途を含めた積極的な人材投資効果が奏功し、売上・利益ともに前期比を大幅に上回った。

 

(メディカル事業)
増収増益。

 

レセプト点検ソフト「MightyChecker®」およびオーダリングチェックソフト「Mighty QUBE®」の引き合いは、新型コロナウイルス感染症の影響で一部組込系のマーケティング活動に遅延が生じたものの、総じて引き続き順調に拡大している。
戦略的商品である、次世代レセプトチェックシステム「MightyChecker®EX」は、売上トップクラスの大手グループ内病院を含む多数の引き合いがあり、直販を中心に導入数は堅調に推移した。これら大手医療グループ内における横展開に加え、新型コロナウイルス感染症対策としてWEBを活用した営業・サポートへの移行により、更なるダイレクトアカウント(直接販売)獲得、価格政策の実行およびソリューションの重ね売り(顧客単価アップ)の推進を行っている。
また、医療クラウド新サービスSonaM(そなえむ)や、生損保向け新ソリューションの開発、その他データ分析(健保組合・学会等)など、医療のデジタル化に関する新事業を積極的に立ち上げ、Mightyシリーズに次ぐ将来の「新たなサブスク型の収益源」の確保に向け、積極的な投資を実施し、更なる収益率向上の実現に向けた施策に取り組んでいる。

 

医療データベースを活用した支払審査検索エンジン「保険ナレッジプラットフォーム」は生命保険会社における採用が決定した。
本格的な横展開も決定しており、本格的なローンチを見据えた同プラットフォームの開発に着手している。
今後は新たなサブスクリプション型メニューとして、保険業界全体へ向けた浸透を図る。
サブスクリプションモデルによる収益基盤が構築されたことにより、開発や人員強化、新ソリューションなどの戦略的投資を吸収し、セグメント利益は前期比増益で計画を上回る水準で推移している。
高収益構造の確立と、プロジェクト毎の徹底した収益管理及び継続的なコスト削減等が奏功し、売上高セグメント利益率は51.1%と過去最高を更新した。

 

(3)財政状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

20/3末

21/3末

 

20/3末

21/3末

流動資産

3,128

3,793

流動負債

1,370

1,239

現預金

1,976

2,808

短期借入金

115

100

売上債権

667

655

前受金

702

682

固定資産

668

647

固定負債

208

258

有形固定資産

65

60

長期借入金

無形固定資産

132

81

負債

1,579

1,498

投資その他の資産

470

504

純資産

2,217

2,942

資産合計

3,797

4,440

負債・純資産合計

3,797

4,440

単位:百万円。

 

現預金、投資その他の資産の増加等で資産合計は前年末に比べ6億42百万円増加の44億40百万円となった。
前受金の減少等で負債合計は同81百万円減少の14億98百万円。
利益剰余金の増加で純資産は同7億24百万円増加の29億42百万円。
この結果、自己資本比率は前期末から7.9ポイント上昇し66.3%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/3期

21/3期

増減

営業CF

498

921

+423

投資CF

-69

-60

+8

フリーCF

429

861

+432

財務CF

-96

-76

+20

現金同等物残高

1,941

2,773

+832

*単位:百万円。

 

税金等調整前当期純利益の増加、売上債権の減少等で営業CF、フリーCFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。

 

(4)トピックス

◎オージス総研と業務提携に基づく戦略的パートナーシップを推進
2021年5月、株式会社オージス総研との業務提携関係をもとに、今後さらなる戦略的パートナーシップを推進すると発表した。

 

(株式会社オージス総研 概要)
1983年設立。大阪ガス株式会が100%出資。
オープンソースソフトウェアの活用・オブジェクト指向技術・クラウドサービス関連技術・アジャイル開発技術・データセンター運用やこれをベースにしたクラウドサービス・エンドポイントを中心としたセキュリティなどを提供している。
大阪ガスの基幹システム開発から運用までを一貫して提供しており、他にも製造・金融・公益など全国で幅広い実績を有している。近年ではデータ分析、IoT およびルールモデリングを重視したルールベース開発(BRMS)に注力する他、デザイン思考やアジャイル開発のノウハウを活かしたDX支援コンサルティング、行動観察を活用した新価値創造コンサルティングを提供している。

 

(業務提携及び戦略的パートナーシップの目的)
オージス総研とUbicomは、互いの持続的な事業発展の実現と、社会環境の変化に伴う新しい課題にいち早く対応すべく、業務提携を土台とした戦略的パートナーシップを構築する。両社の培ってきた技術力、営業力、ノウハウ等を相互に補完し、以下3つのスコープにおける協業体制とシナジーの強化を通じて、デジタル・トランスフォーメーション・ビジネスの拡大とグローバル化の推進をともに目指す。
(1)「OGIS Philippines Solution Laboratory(仮称)」構築による、開発力の増強
(2)Ubicomが保有する、チャットボットをはじめとしたAI技術やテスト自動化ソリューションの活用
(3)オージス総研のグローバル化推進

 

(業務提携及び戦略的パートナーシップに係る事業計画)
上記の目的を達成する為に、Ubicomのフィリピン開発拠点にオージス総研専用の開発ラボラトリー「OGIS Philippines Solution Laboratory(仮称)」を開設するとともに、2021年度中に20名程度の専任開発要員の配属を計画している。
また、2023年度までには開発要員規模を50名以上に拡大し、主要パートナーとしての関係構築(ピラー化)を目指す。

 

 

3.2022年3月期業績予想

(1)業績予想

 

21/3期

構成比

22/3期(予)

構成比

前期比

売上高

4,198

100.0%

4,963

100.0%

+18.2%

営業利益

919

21.9%

1,079

21.7%

+17.4%

経常利益

877

20.9%

1,104

22.2%

+25.9%

当期純利益

623

14.9%

811

16.3%

+30.2%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

増収増益。利益は連続して過去最高を更新。
売上高は前期比18.2%増の49億63百万円、営業利益は同17.4%増の10億79百万円、経常利益は同25.9%増の11億4百万円の予想。営業利益、経常利益は今期も過去最高を更新する見込み。
引き続き「戦略的投資」を進めるが、これを吸収したうえで2桁の増益を目指す。
配当は現時点では未定としているが、今期も利益水準に応じて適切な株主還元を実施する考えだ。

 

(2)今後の取り組み

①戦略市場
戦略市場における取り組みは以下の通り。
新型コロナウイルス、チャイナ+1、日本政府のデジタル化推進政策、DX、テレワーク、オフショア活用といった同社にとってのフォローの風を活かし、技術者教育投資と営業戦略を推進する。

 

市場

取り組み

金融/公共

クラウドネイティブ技術教育

業務提携やアライアンス推進

製造/AI/ロボット

AI/IoT/DXソリューション開発

テクノロジー領域の新規顧客開拓

自動車

品質強化とMBD開発技術

国内外マーケティング強化

医療

フィリピン人材と知財の活用

クロスセル/直販による顧客単価向上

 

②戦略的投資
前2021年3月期は既存人材の再教育と先端IT人材への投資を開始したほか、メディカル事業においてフィリピン人材の活用を拡大した。

 

今2022年3月期以降は、M&A及びアライアンスにより、同社開発力の源泉であるUbicom人材プールの増強を図る。また、この人材プールを活用して新たなメディカルプラットフォームの創出により医療分野を代表する知財戦略を更に強化する。

 

Ubicom人材プールの中でも先進プラットフォームやソリューション開発を担う先端IT人材100名体制を目指している。

 

③各事業における方向性、取り組み
③-1 グローバル事業
市場環境
自動車・製造業における環境政策及び、金融・医療における業務改革の加速化により、先端IT人材ニーズが今まで以上に増大している。
また、コロナ禍を契機としたリモートワークの常態化によりオフショア活用機会も増加している。

 

方向性
同社では、日本のソフトウェア開発の潜在市場は約10兆円、そのうち現在のオフショア利用率は2%程度に過ぎず、今後10%までは上昇する余地があると見ている、

 

そうした需要を取り込むため、技術力・語学力・グローバル開発力を備えたオフショアでDXに取り組むことができる人材育成のための教育投資に注力する。
日本のみでなく、より巨大市場である欧米も視野に入れ、M&Aや戦略的なアライアンスも推進する。

 

ビジネスモデル
同社では継続的に取引のある各業界のマーケットリーダーで数億円規模の売上実績のある顧客をピラー顧客(主柱となる顧客)と定義している。
新規顧客に関しては当初は顧客先に1-5名が出向してオンサイトで開発に当たるが、売上額が拡大するにつれエンジニア配属数を増やし、オフショアへの切り出しを始め、オフショア中心の開発体制に移行。最終的には50名以上が継続的な開発を行うビッグピラー顧客とすることを目指している。
この段階に進む過程で、規模のメリット、業界の知見集積による開発生産背の向上、テスト自動化の自社ソリューションの展開により、営業利益率は15%まで上昇する。

 

こうした、顧客のピラー化と高収益化を目指すのがグローバル事業におけるビジネスモデルである。

 

今後のビジョン
DX領域を中心とした人材・開発力増強と新領域参入により、事業ポートフォリオと収益力を更に強化する。

 

そのためには、顧客のピラー化が不可欠である。
21年3月期は将来のピラー候補と見込まれる新規顧客獲得(14件)と、既存顧客内における横展開(新規案件43件)が進んだ。
今期以降も新規開拓を継続し顧客のピラー化を進め、2014年3月期1社、2021年3月期6社だったピラー顧客に加え、2024年3月期には新たに20社以上の確立を目指す。

 

③-2 メディカル事業
市場環境
2024年より医師に関して時間外労働に上限規制が適用され、医師の世界でも働き方改革が推進される。
それに伴い、病院経営においては経費削減、収益改善がより重視され、検査・分析において省人化・自動化といったニーズがますます高まるものと思われる。

 

方向性・今後のビジョン
医療現場の業務効率を改善し経営品質を高める「Mightyシリーズ」製品は、その豊富かつ有用な機能が高く評価され、2021年3月末時点で、病院(20床以上)の約40%(3,311施設)、クリニック(19床以下)の約14%(14,141施設)、合計17,452施設が導入するトップシェア製品である。
今後もWEBを活用したマーケティングも交え、直販、クロスセル、価格改定などにより、シェア向上、売上・利益の拡大を図る。

 

また、前期に立ち上げた保険ナレッジプラットフォームの顧客数拡大と、知財の利活用による新たなメディカルプラットフォームの創出も目指している。いずれも粗利率70%以上を想定している。
同社では医療プラットフォームソリューションの国内潜在市場は約3,000億円と見ているが、現在のメディカル事業売上高は約14億円。巨大市場の開拓を目指す。

 

④成長ビジョン
各事業で掲げている成長ビジョンの実現に向け戦略的投資を実行し、「ニッチNo.1プラットフォーマー戦略」を推進する。

 

(同社資料より)

 

 

4.青木社長に聞く

青木社長に、前期決算の振り返り、今後の取り組み、保険ナレッジプラットフォームの今後の展開、ESG経営、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

21年3月期決算について

グローバル事業は、特に第1四半期、第2四半期は開発案件の保留などコロナの影響を受けました。後半持ち直したものの、成長ビジョンの実現に向けた既存人材の再教育等の戦略投資との両立を図り、前期並みの売上にとどまりました。ただ、受注は過去最高を記録し、将来の大型顧客になりうる新規顧客を獲得することができました。
コロナ禍でのリモートワークの普及が追い風になり、オフショア開発ニーズも取り込むことができたほか、業務プロセスのDX化ニーズを受けて大手コンサルティングファームの社内ヘルプデスク向けのAIチャットボットが実用化するなど、売上・利益ともに伸び率は小さなものでしたが、今期以降に向けて事業基盤を強化ができたと考えています。

 

メディカル事業も、コロナの影響で、特に医療最前線である病院に対し上期は積極的な営業がほとんどできず苦戦しました。「Mightyシリーズ」の導入病院・クリニック数の伸びも計画には及びませんでしたが、後半にかけ、ウェビナーの活用などを通じ挽回し、2桁増収増益となりました。
医療現場の業務効率改善、医師の「働き方改革」の必要性に変わりはなく、着実にそうしたニーズを取り込むことができました。
また、以前から注力している直販やクロスセルの拡大、一部価格改定の実施に加え、サブスクリプションモデルの構築により、セグメント利益率は前期の45.4%から51.1%へと大きく引き上げることができたのは大きな成果です。

 

 

今期以降について

コロナの影響も小さくなってきていますので、グローバル事業では引き続き将来のピラー顧客化を見据えた新規顧客の開拓と、金融/公共、製造/AI/ロボット、自動車という重点領域での開発を進めます。
メディカル事業も引き続き「Mightyシリーズ」の導入件数拡大と、直販やクロスセルによる顧客単価上昇(利益率上昇)を図ります。

 

また、両事業において開発を進めるためのカギとなるのが、先進プラットフォームやソリューション開発を担う先端IT人材100名体制であると考えています。本来は前期に完了させたかったのですが、業績や稼働状況との兼ね合いを考慮し未達でした。
今期はM&A及びアライアンスを利用してUbicom人材プールの増強、中でも先端IT人材100名体制を早期に完成させたいと考えています。

 

そうしたコストも今期には含んでいますが、スピードアップを目指して投資額は若干増加する可能性もあるかと思いますが、利益とのバランスを見ながら投資を行っていく考えです。

 

 

保険ナレッジプラットフォームの今後の展開

診療行為、医薬品、傷病名、先進医療、法改正など保険金支払いの判定に必要な情報の中にはデジタル化されていない手書きの情報も大量にある中で、当社の独自医療データベースとAI OCRを用いて、情報を容易に網羅することにより煩雑な審査業務を大幅に効率化することができるのが、保険ナレッジプラットフォームです。

 

現在日本には生命保険、損害保険合わせ約100社が存在します。
保険ナレッジプラットフォームの利用料は1社あたり年間数百~数千万円と想定していますので、現在の当社売上高と比較すると、巨大なマーケットであると想定しています。

 

ビジネスモデル・マネタイズとしては、Mightyシリーズを超える高単価・高収益サブスクリプションモデルを目指しています。
収益は、基本初期費用、基本接続使用料、オプション初期費用、オプション接続使用量から構成されますが、同社では多様なニーズに対応して様々なオプションを開発し、この積み上げにより高収益を実現します

 

保険ナレッジプラットフォームは、初めに当社が完成させたプラットフォームがあり、そこに保険会社がどんどん乗ってくるというスタイルというものではなく、クライアントの基幹システムに対応したカスタマイゼーション(メニュー)を積み上げて横展開していくモデルです。
ですので、初めにクライアントとの契約ありきでプラットフォームの利用が始まりますから、プラットフォームを作ったはいいが利用企業数が増えないのでコストばかりが先行するということにはなりません。
また、既に当社が有する知財で開発し、これまでの経費で吸収できていますので、仮に多少契約の進捗が遅延したとしても大きなボディーブローになるものではありません。

 

現在、大手、中堅、中小の保険会社と商談を進めていますが、非常に高い関心をお持ちいただいています。
お客様のニーズに合わせて複数のエンジンのうち使いやすそうなもの1つ、2つから導入できるスタイルですので、この2-3年程度でこのモデルの評価が高まっていくのではないかと思っています。
契約者向けサービス向上という観点から、波及効果は大きいと思いますので、マーケティングと同時並行でブラッシュアップを進め、大きな事業の柱に育成していこうと考えています。

 

 

ESGについて

当社は経営理念の一番に「1.Unique beyond comparison:時代の先を見据え、社会課題の解決に資するITソリューションを創造する、唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続けます」を掲げています。
より具体的には、「技術」「人材」「知財」「先見性」「パートナーシップ」の5つのコアアセットを基にビジネスイノベーションを創出し、少子高齢化、医療逼迫、IT人材の枯渇、DXといった課題を解決することを自社の社会的な責務・存在意義であると考えています。

 

つまり、当社の事業内容自体が、ESGのうち、とくに「S:社会」への取り組みそのものであり、当社の事業拡大がイコール社会的課題の解決であるということです。

 

そのために最も重要なのが「人的資本の強化」です。当然のことですが、5つのコアアセットも、すべて人的資本がその源泉です。

 

当社のフィリピン子会社は約1,000名に上るトップエンジニアを擁しており、そのソリューション開発力は当社の大きな強みですが、それを生み出すフィリピンにおけるエンジニア教育体制が強力なコアコンピタンスです。

 

彼らは極めてIQは高いのですが当然日本語は出来ません。ただ、当社で真のトップエンジニアとして活躍してもらうには日本のクライトン企業とのコミュニケーション能力や日本語環境における業務遂行能力を身に付けてもらわなければなりません。
当社では2003年に開設した自社研修センター「ACTION」においてIT基礎概念、先進技術、挨拶や礼儀作法を含めた対人ソフトスキル、日本語学習などの研修プログラムを蓄積してきました。この研修ノウハウは他社が簡単に真似のできるものではないと自負しています。

 

Ubicom本体のメンバーも、皆オーナーシップを持ち、当社の社会的な存在意義や理念、課題や問題意識を全員が共有し、まさにワンチームで様々な課題に取り組んでいます。
今後当社の規模がますます大きくなる中で人数も増えていきますが、こうした意識の共有や浸透は私の大きな役割であると考えており、フィリピン・日本双方での「人的資本強化」にこえからも注力していきたいと思っています。

 

 

株主・投資家へのメッセージ

当社は2016年の東証マザーズ上場からこれまでの間2年で利益を倍増させてきました。
今後はさらに成長を加速させるべく、M&A、アライアンスを積極的に展開していくとともに、先端IT人材の育成に注力して参ります。
保険ナレッジプラットフォームに関しては本格的な立ち上がりには少々時間がかかるかもしれませんが、「Mighty Checker」シリーズを超える高収益モデルとして確立させる考えですので、是非長期的な目線で見守っていただきたいと思います。
同時に、グローバル事業・メディカル事業双方で蓄積してきた知財を活用した新しいプラットフォームの構築にも取り組んでおり、近いうちに皆様にお知らせできればと思っております。

 

配当については、将来的には配当性向30%以上を実現したいと思っておりますが、現時点では成長のための投資を行うことの方が株主の皆様へのより高いリターンに結び付くと考えていますので、この点も是非ご理解ください。

 

これからも当社の挑戦を応援していただきたいと存じます。

5.今後の注目点

メディカル事業の収益性向上が著しい。コロナ禍の下でも病院経営効率化という需要を確実に取り込み、第1四半期(4-6月)こそ低調だったものの、第2四半期から売上・利益とも回復。直販やクロスセルの拡大および価格改定により営業利益率は50%を超えた。
グローバル事業も、売上・利益は前期並みであったが、営業利益率は17.8%とほぼ前期水準を維持しており、利益率の高いピラー顧客向け案件が堅調であったようだ。

 

今期も引き続き「戦略的投資」を進めるが、これを吸収したうえで2桁の増益を見込んでおり、各四半期の動向を注目していきたい。また、中期的には「保険ナレッジプラットフォーム」が、同社が見込む巨大市場をどのように開拓していくのかにも引き続き期待したい。

 

 

 

(同社資料を基にインベストメントブリッジが作成)

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年6月24日

 

*基本的な考え方
当社は、「唯一無二のビジネスイノベーションカンパニーであり続けること」「グローバル展開」「Win-Winモデルの推進による相互発展」を経営理念としております。この経営理念のもと、更なる企業価値の向上及びグローバルな競争力を維持していくためには、コーポレート・ガバナンスの充実と強化が重要課題であると認識しております。具体的には、「より効率的かつ健全に事業活動を行うことにより、企業の収益力を高め、株主の利益を最大化することを目標とする」との基本的認識とコンプライアンスの重要性をコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方として、株主、従業員、取引先、地域社会等のあらゆるステークホルダーに対して社会的責任を果たし、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識にたち、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則3-1② 英語での情報の開示・提供】

現在のところ各種開示資料の英語による開示を実施しておりませんが、当社の株主構成等を勘案した上で英語による情報の開示・提供は必要であると認識しており、海外投資家向けIR・SR活動において英語での情報提供の充実化を図っております。今後も海外の機関投資家の比率や対応に必要な諸条件を総合的に勘案し、英文開示の実施時期について継続的に検討してまいります。

【補充原則4-2① 経営陣の報酬とインセンティブ】

当社の取締役の任期が1年であるため、報酬は前年度の業績により毎年見直されますが、中長期的な業績と連動する報酬や自社株による報酬制度は設けておりません。経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うことの必要性は認識しており、今後適切な方法を継続的に検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

原則1-4【いわゆる政策保有株式】

当社は、当社グループの中長期的な企業価値向上に資すると判断される場合、株式を政策保有します。当該株式の保有は、業務提携・協業などによる取引関係の維持・強化等、保有目的の合理性が確保されているなどの条件を満たす範囲で行うことを方針としております。また、株式に係る議決権の行使については、議案が当社保有方針と適合するかを勘案したうえで議決権の行使を行うこととしております。

【補充原則4-11② 社外役員の兼任状況】

社外取締役及び社外監査役の他社での兼任状況は、株主総会招集通知、有価証券報告書及びコーボレート・ガバナンスに関する報告書等を通じ、毎年開示を行っております。

なお、社外取締役及び社外監査役を除く取締役及び監査役は、他の上場会社の役員を兼任しておりません。

原則5-1【株主との建設的な対話に関する方針】

株主からの対話の申込みに対して、積極的に対応しております。

当社のIR活動は、戦略企画本部を担当部署とするIR体制を整備しており、投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材を積極的に受け付けております。

更に、代表取締役自らが出席する決算説明会の開催及び決算説明の動画の配信を、年2回以上実施しております。

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