(3131)シンデン・ハイテックス株式会社 液晶分野の特別需要等で増収増益

2021/06/10

 

鈴木 淳 社長

シンデン・ハイテックス株式会社(3131)

 

 

企業情報

市場

JASDAQ

業種

卸売業(商業)

代表者

鈴木 淳

所在地

東京都中央区入船3-7-2 KDX銀座イーストビル

決算月

3月

HP

https://www.shinden.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,702円

2,035,000株

3,463百万円

9.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

80.00円

4.7%

265.43円

6.4倍

2,832.93円

0.6倍

*株価は5/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績。BPSは直近四半期末実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

44,440

838

502

362

219.34

90.00

2018年3月(実)

54,406

1,207

874

603

344.08

130.00

2019年3月(実)

46,102

626

299

209

102.09

45.00

2020年3月(実)

44,277

496

291

185

92.88

45.00

2021年3月(実)

49,084

819

702

497

246.18

75.00

2022年3月(予)

36,400

870

780

540

265.43

80.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

 

シンデン・ハイテックスの2021年3月期決算の概要と2022年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 21/3期は前期比10.9%の増収、同65.2%の営業増益。当初はコロナ禍により、主力ビジネスである車載用機器向け及び事務用機器向けの需要が減少し一部のバッテリビジネス及び開発案件の遅延も加わり、厳しいスタートとなった。しかし、2Qより液晶分野における特別需要及び前倒し需要による増加、並びに半導体分野及び液晶分野において車載用機器向け等のボリュームビジネスの需要が増加したこと等の要因により、業績が急回復した。感染拡大防止のため在宅勤務等の移動の抑制策を推進し、販管費が減少したことにより大幅な増益となった。75円の期末配当を実施。

     

  • 22/3期は前期比25.8%の減収、同6.2%の営業増益を見込む。主要取引先が商流変更になることが減収の主因。しかし、収益構造改革を推進し営業利益以下の利益に与える影響は、他の案件によりリカバリーする見込み。分野別には、半導体製品で前期並み、ディスプレイは年度後半より大幅減を見込む。バッテリ&電力機器では前期に遅延したビジネスが年度後半より再開し、増収を見込む。利益面では売上総利益は、各分野とも利益率を改善し、前期並みとなる見通し。販管費は減収に伴う変動費及び各種手数料の減少により減少する見通し。配当は80円の期末配当を実施予定。

     

  • 同社のビジネスを考える上でのポイントは、先を見越して進めている水面下でのパイプラインの整備である。21/3期にコロナ禍にもかかわらず業績を伸ばしたのは数年前から取り組んできた営業の成果。22/3期は2桁減収ながら増益を見込む。これまで取り組んだ営業の成果に加え、今後は「収益構造改革」による成果も現れる段階。また、プロダクト・マーケティング本部の設立・運用開始と新たな商品分野としてバッテリ&電力機器が加わったことにも注目。5Gや自動車の電動化が進展、脱炭素社会への投資もこの分野に貢献するだろう。加えて旺盛な半導体需要、DX・GXの進展など世界的な流れは同社ビジネスにとってフォローウインド。そうした中、株価については、PER、PBRとも低位で、配当利回りも高い。極めて割安に放置されている印象だ。

     

1.会社概要

液晶、半導体、電子機器等の独立系エレクトロニクス商社。主に海外メーカーの製品を仕入れ、国内電子機器メーカーに販売しており、売上の約80%を液晶・半導体が占め、電子機器その他が約20%。中国(香港)、韓国、タイの連結子会社3社とグループを形成し、それぞれの地域に展開する日系企業向けビジネスを手掛けている。海外売上比率が約5%を占める。

 

【経営理念 : 「当たり前のことを当たり前にする会社」】

・世界中より時代を先取りできる製品を発掘し、お客様に供給することで「社会の発展に貢献」する
・業界において、ナンバー・ワンを目指す
・トータルソリューションとして、お客様のニーズを的確に捉え、スピーディーに対応し、「お客様の満足できる企業」を目指す
・社員が「夢を持って働ける企業」を目指す

 

【CSR・環境への取り組み】

同社は地球環境に優しい企業活動を経営課題の一つと位置づけており、環境保全と資源保護に配慮した活動による社会貢献と環境汚染の予防を推進している。具体的には、SDGsも念頭に、環境配慮型電池及びその周辺装置(半導体を含む)の拡販、システムでの低消費電力化に向けた高性能半導体の拡販に取り組んでいる。
この他、顧客のグリーン調達基準を遵守するため、化学物質管理システム(CMS)を構築・運用している他、社員が能力を発揮し、仕事と生活の調和を図り、働きやすい雇用環境の整備を行うため、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し推進している。2003年7月にISO 14001認証を、2004年3月にISO 9001認証を、それぞれ取得している。

 

1-1 取扱商品と仕入先・販売先

液晶商品は主に韓国液晶メーカーから液晶モジュールを仕入れ、半導体商品はDRAMやフラッシュメモリ等を主に韓国メモリメーカーから仕入れ、事務用機器、産業用機器等のセットメーカーに販売している。ASSP(特定用途向け汎用IC)やASIC(特定用途向けカスタムIC)については、米国や韓国のメーカーから仕入れており、CPU(中央演算処理装置)やGPU(リアルタイム画像処理に特化した演算装置)については米国メーカーから仕入れた商品をパソコン用途以外の顧客に販売している。この他では、ファウンドリも手掛けている。ファウンドリとは、顧客から半導体の設計データを受け取り、韓国・米国半導体メーカーに製造依頼し、完成品を依頼元に販売するビジネスである。電子機器では、国内・韓国メーカーの検査装置や国内・台湾メーカーのメモリモジュールを取り扱っている。また、電池関連商品や液晶及び半導体等の新規ビジネスを開拓中である。尚、取扱商品分野は22/3期から組替えとなる(詳細は、3.2022年3月期業績予想に提示)。

 

 

取扱商品

分野

製品

用途

半導体

メモリ、ASIC・ASSP、SoC・CPU、ファウンドリ、LED

カーナビゲーション等の車載用機器、複合機等の事務用機器、サーバ、スマートフォン、アミューズメント、産業用機器、モバイル機器

液晶

液晶モジュール(TFT)、有機EL、タッチパネル

カーナビゲーション等の車載用機器、モニタ、産業用機器、医療用機器、PC及びタブレット

電子機器

各種検査等装置、メモリモジュール、通信モジュール、表示機器

産業用機器、複合機等の事務用機器、カーナビゲーション等の車載用機器、サーバ

その他

バッテリ(リチウムイオン、鉛)、EMS、電力機器、部材

産業用機器、民生用機器、半導体・液晶用部材、太陽光発電所用機器

 

 

仕入先

 

主な仕入先

特徴

半導体

SK hynix(韓国)

DRAM、NAND型フラッシュ、CIS等の半導体メーカー。

AMD(米国)

PCプロセッサー、組み込み用プロセッサー等の半導体メーカー。

GLOBAL FOUNDRIES(米国)

IBMマイクロエレクトロニクス事業を譲受した世界トップクラスのファウンドリ。

LG Innotek(韓国)

携帯電話、自動車、LED等、幅広い分野に携わる電子部品メーカー。

Giga Device(中国)

NORフラッシュ製品やNANDフラッシュからMCU製品まで幅広く提供する不揮発性メモリデバイスの大手ファブレスメーカー。

SKYWORKS(米国)

スマートフォン等ワイヤレス通信機能を搭載した製品を幅広くサポートするデバイスを開発する半導体メーカー

液晶

LG Display(韓国)

世界最大のTFT LCD・有機ELメーカー。

GOWORLD DISPLAY(中国)

各種LCDモジュール・静電タッチパネルメーカー。

ONation Corporation(台湾)

顧客の要望に沿ったLCDモジュールを開発・販売するメーカー。

電子機器

SK hynix(韓国)

メモリモジュール、SSD等を提供する半導体メーカー。

Tul Embedded(台湾)

グラフィックスソリューションを世界的に提供するサプライヤー。

ADATA Technology(台湾)

DRAMモジュール、USBフラッシュドライブ、メモリカード、SSDを含むメモリソシューションを展開。

innodisk(台湾)

産業用・組込み用フラッシュストレージ及びDRAMメモリモジュールメーカー。

その他

LG Energy Solution(韓国)

韓国最大の総合化学メーカーLG Chem.より独立。Liバッテリの供給元。

パナソニック(日本)

同社の充電式乾電池を取扱う。

Cyber Power(台湾)

UPSメーカー。

ESUN(台湾)

産業用二次電池(Si-C鉛蓄電池)メーカー。

2.2021年3月期決算概要

2-1 連結業績

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

会社予想

予想比

売上高

44,277

100.0%

49,084

100.0%

+10.9%

47,000

+4.4%

売上総利益

2,599

5.9%

2,803

5.7%

+7.9%

販管費

2,102

4.7%

1,984

4.0%

-5.6%

営業利益

496

1.1%

819

1.7%

+65.2%

750

+9.3%

経常利益

291

0.7%

702

1.4%

+141.0%

680

+3.4%

親会社株主帰属利益

185

0.4%

497

1.0%

+168.3%

460

+8.1%

* 単位:百万円

 

前期比10.9%の増収、同65.2%の営業増益
売上高は前期比10.9%増の490.8億円。当初はコロナ禍により、主力ビジネスである車載用機器向け及び事務用機器向けの需要が減少し、ESS(Energy Storage System:電力貯蔵システム)向け等の一部のバッテリビジネス及び開発案件の遅延も加わり、厳しいスタートとなった。しかし、2Qより、事務用機器向けの不振、バッテリビジネス及び開発案件の遅延が継続しているものの、液晶分野における特別需要及び前倒し需要による増加、並びに半導体分野及び液晶分野において車載用機器向け等のボリュームビジネスの需要が増加したこと等の要因により、業績が急回復した。

 

営業利益は前期比65.2%増の8.1億円。売上総利益は前期25.9億円から28.0億円へ増加した。感染拡大防止のため在宅勤務等の移動の抑制策を推進し、海外出張をはじめとする活動経費が大幅に圧縮され、販管費は前期21.0億円から19.8億円へ減少したことにより大幅な増益となった。営業外損益においては、通期では為替差益を計上しているものの、2月後半からの急激な円安基調により、4Qにおいて四半期為替差損を計上したため前年度に対し差益額が減少した。しかし、営業利益の増加及び支払利息の減少により、経常利益は前期比141.0%増の7.0億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は同168.3%増の4.9億円となった。

 

期初に発表した会社予想は売上高382億円、営業利益7.3億円、経常利益4.7億円、親会社株主に帰属する当期純利益3.1億円。2020年11月30日に上記数字に上方修正、修正予想も上回った。

 

2-2 分野別動向

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

会社計画

計画比

半導体

17,261

39.0%

16,789

34.2%

-2.7%

12,600

+33.2%

液晶

15,671

35.4%

22,311

45.5%

+42.4%

12,600

+77.1%

電子機器

4,635

10.5%

4,491

9.1%

-3.1%

4,750

-5.5%

その他

6,709

15.2%

5,492

11.2%

-18.1%

8,250

-33.4%

連結売上高

44,277

100.0%

49,084

100.0%

+10.9%

38,200

+28.5%

* 単位:百万円、会社計画は期初に開示したもの

 

液晶分野は、車載用機器向けが2Qより回復に転じたことと、スマートフォン向け有機ELビジネスの特別需要、GIGAスクール構想の前倒し執行による液晶モジュールの需要の増加により売上高は前期比42.4%増の223.1億となった。
半導体分野は、スマートフォン周辺機器向けメモリの需要増、そして年度中盤より車載用機器向けの需要が回復に転じたが、事務用機器向けメモリの需要減が継続したことにより売上高は前期比2.7%減の167.8億円となった。
液晶分野半導体分野ともに、当初はコロナ禍による落ち込みを想定していたが、2Qより中国の車載向用機器の回復やスマートフォン向けの需要増により期初の会社計画を大幅に上回った。
電子機器分野は、台湾製サーバの販売を開始し、異物検出装置が堅調に推移したが、事務用機器向けメモリモジュールの需要減が継続したことにより売上高は前期比3.1%減の44.9億円となった。
その他分野は、EMS(Electronics Manufacturing Service:製品の開発・生産を受託するサービス)ビジネスが堅調に推移したが、ESS向け等のバッテリビジネスが遅延状況にあり売上高は前期比18.1%減の54.9億円となった。

 

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

20年3月

21年3月

 

20年3月

21年3月

現預金

5,892

6,240

仕入債務

2,295

2,691

売上債権

7,428

9,091

短期有利子負債

7,507

9,517

たな卸資産

4,150

4,260

未払法人税等

119

221

流動資産

17,898

19,973

流動負債

10,431

13,042

有形固定資産

14

12

長期有利子負債

2,403

1,584

無形固定資産

31

14

固定負債

2,422

1,586

投資その他

249

402

純資産

5,339

5,773

固定資産

294

429

負債・純資産合計

18,193

20,402

* 単位:百万円

 

総資産は204.0億円となり、前期末との比較で22.0億円増加した。主な要因は、売上債権や現預金の増加によるもの。負債は146.2億円となり、17.7億円増加した。主な要因は、有利子負債や買掛金の増加によるもの。純資産は57.7億となり、4.3億円増加した。主な要因は、利益剰余金の増加によるもの。
流動比率は、短期借入金の増加等により、前期末との比較で18.5ポイント減少し153.1%となった。自己資本比率は、有利子負債の増加等により、1.0ポイント減少し28.3%となった。有利子負債対純資産比率は1.9倍となり、前連結会計年度末とほぼ同水準となった。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

20/3期

21/3期

前期比

営業キャッシュ・フロー(A)

-467

-602

-135

投資キャッシュ・フロー(B)

-1

1

+3

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

-468

-600

-132

財務キャッシュ・フロー

-588

862

+1,451

現金及び現金同等物期末残高

5,877

6,225

+348

+5.9%

* 単位:百万円

3.2022年3月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

21/3期 実績

構成比

22/3期 予想

構成比

前期比

売上高

49,084

100.0%

36,400

100.0%

-25.8%

営業利益

819

1.7%

870

2.4%

+6.2%

経常利益

702

1.4%

780

2.1%

+11.0%

親会社株主帰属利益

497

1.0%

540

1.5%

+8.6%

* 単位:百万円

 

22/3期は商流変更の影響で25.8%減収予想、営業利益は6.2%増を見込む
22/3期より「収益構造改革」における製品戦略の定量可視化のため、商品分野の分類を従来の4分類(半導体・液晶・電子機器・その他)から5分類(半導体製品・ディスプレイ・システム製品・バッテリ&電力機器・その他)に組替える。新たな分野の位置づけは、以下の通り。

 

商品分野・製品と位置づけ

分野

製品

位置づけ

半導体製品

メモリ、メモリモジュール、SSD、ASSP、ASIC、GPU・CPU、LED、ファウンドリ

顧客及びメーカーとの間で長年培ってきた信頼関係やノウハウを基に、ディスプレイ分野とともに、引続き中核分野と位置づける。

従前の旧半導体分野に加え、旧電子機器分野からメモリモジュール及びSSDを編入し、半導体製品商材を総合した分野とする。

ディスプレイ

液晶モジュール、有機EL、タッチパネル、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ

半導体製品分野同様、引続き当社の中核分野と位置づける。

旧液晶分野の液晶モジュール、タッチパネル、有機ELに、液晶及びLED ディスプレイを加え、表示系にかかる商材を総合した分野とする。

システム製品

検査等装置、通信モジュール、Board、EMS、サーバ、その他システム製品

「収益構造改革」の成否を見極めるうえでの重要・注力分野と位置づける。

従前の旧電子機器分野の検査等装置といった装置ビジネスやBoard等に、旧その他分野よりEМS等の商材の組合せやソリューション等、付加価値の高いビジネスモデルを編入し、それらを総合した分野とする。

バッテリ&

電力機器

電池関連商品、電力機器

今後、市場の成長が期待されるバッテリを基軸商材とし、「収益構造改革」を加速化させるための重要分野と位置づける。旧その他分野より編入した電力エネルギーを切口として、バッテリセルといったキーパーツから周辺パーツへの展開、発電所用の電力機器を含め、脱炭素化社会に向けた商材を総合した分野とする。

その他

材料、その他

上記に当てはまらない商材及び新たな取組みの商材を総合した分野と位置づける。

 

22/3期は売上高が前期比25.8%減の364億円、営業利益同6.2%増の8.7億円を計画する。主要取引先であるエルジーディスプレイジャパン株式会社の車載用機器及びモニタ向けの液晶モジュールビジネスが直接取引へ商流変更になることが主な要因となり、減収を見込む。しかし、新規液晶メーカーの開拓そして収益構造改革を推進し、営業利益以下の利益に与える影響は、他の案件によりリカバリーする見込み。
分野別には、半導体製品では世界的半導体不足の懸念があるものの、年度後半より安定すると想定し前期並みの売上を見込む。ディスプレイは商流変更や特別需要の反動で年度後半より大幅減を見込む。新規メーカー開拓・FA向けの開拓等に注力する。システム製品では、異物検出装置が堅調に推移、EMSが増加するも開発案件の遅延の影響が残ると想定し、微減収の見通し。バッテリ&電力機器では前期に遅延したビジネスが年度後半より再開し、増収を見込む。
利益面では売上総利益は、各分野とも利益率を改善し、ディスプレイ分野の落ち込みをカバーし、前期並みとなる見通し。販管費は減収に伴う変動費及び各種手数料の圧縮により減少する見通し。営業外も同様に減収に伴う有利子負債の減少により支払利息が減少、経常利益は前期比11.0%増の7.8億円を見込む。

 

配当は、配当性向30%の基本方針に基づき80円の期末配当を予定している。

 

 

 

3-2 対処すべき課題と収益構造改革

対処すべき課題と対処方針
対処すべき課題の現状認識として外部要因と内部要因を同社では挙げている。外部要因としては、(ⅰ)景気の変動、(ⅱ)需給動向の変動、(ⅲ)為替や金利の変動、(ⅳ)地政学的リスク、(ⅴ)技術革新による陳腐化、(ⅰ)~(ⅲ)については新型コロナウイルスに関するリスクでもある。内部要因としては、汎用品ビジネスの販売構成が高い(大量生産型志向)ことにより、仕入先構成が東アジアに偏重傾向にあるとしている。
これらへの対処方針として、既存仕入先の汎用品ビジネスを維持・拡大させるとともに、「収益構造改革」(詳細は後述)を通じて最大価値を創出し、安定的かつ持続的な成長を目指す。

 

2021年以降、日本を動かす2つの「X」

日本で遅れていたデジタル化、脱炭素化が急進展しようとしている。

(同社資料より)
DX、GXという2つの「X」は同社の収益構造改革との親和性は高く、ビジネスチャンスの拡大を図る。

 

収益構造改革とは

同社グループは、汎用品のボリュームビジネスが主力であるため、それらの仕入先が東アジアに偏重傾向となっており、地政学的リスクを有しているとの現状認識を持っている。さらに厳しい外部環境の中で、安定的かつ持続的成長のために、主力の汎用品ビジネス及び既存メーカーの維持拡大のみならず、世界的視点で欧米や国内の既存メーカーの深掘と新規メーカーの発掘を加速化し、システムソリューションとして顧客に提供するため、2021年度より商品を軸とした横断的組織である「プロダクト・マーケティング本部」を設立し、運用を開始した模様。「収益構造改革」にかかる以下の戦略と新たな組織を有機的に運用することで、最大価値の創出を図る。
① 基本戦略
a. 中核分野(半導体製品、ディスプレイ)の高利益化
b. 収益のもう一つの柱(システム製品、バッテリ&電力機器)となるビジネスモデルの確立
c. 資金効率の向上と財務体質の強化
② 市場・顧客戦略
a. 5G・IoT及びEV(Electric Vehicle)市場 :
基地局等の社会インフラ、FA(Factory Automation)向け応用製品への拡販
b. 新規市場及び優良顧客の開拓 :
農機具・輸送機器・建設機器・データセンタ・医療機器等の市場(顧客)を開拓
③ 製品戦略
a. 国内・台湾・欧米の既存メーカーの深掘及び新規開拓
b. 半導体製品 :
ASIC(Application Specific Integrated Circuit)・CPU(Central Processing Unit)等の高付加価値商品の拡販
c. ディスプレイ : 有機ELの新規仕入先の発掘及び拡販、サイネージビジネスの事業化
d. バッテリ : ESS向けの拡販
e. 駆動系商品 : バッテリ及びモータの拡販
f. EMSの強化
④ 資金効率の向上と財務体質の強化
a. 現在の良好な取引金融機関との関係を維持し、業容拡大に対応できる安定的な資金調達手段を確保
b. 高利益化による資金効率の向上をもって自己資本を充実させ、財務体質を強化

 

経営目標・株主還元

「収益構造改革」を推進し高利益化を図るとともに、資産の効率化、財務レバレッジの向上を追求、ROE10%を目標とする。
また、株主に対する利益還元を重要な経営政策の一つと位置づけ、財政状態や経営環境等を総合的に勘案し、必要な内部留保を確保しつつ、配当を実施する方針。年1回期末配当として、株主総会の決議により配当を実施することが基本方針。配当性向30%を公約。

 

4.今後の注目点

同社のビジネスを考えるうえでのポイントは、表面的な売上・利益よりも、先を見越して進めている水面下でのパイプラインの整備である。売上・利益は結果であり、その時々の為替やデバイスの市況にも左右されてしまうが、パイプラインが整備されていれば、目先の業績が振れても、中長期の成長に不安はない。21/3期にコロナ禍にもかかわらず業績を伸ばすことができたのは数年前から取り組んできた営業の成果であり、今も数年先を見据えた営業努力が続いている。
22/3期については、商流変更やGIGAスクール構想の前倒し需要、有機ELビジネスの特別需要の反動が生じるため2桁減収予想ながら増益を見込む。市場で急速に進む半導体供給不足は短期的な不安要素となりそう。中期的にはこれまで取り組んだ営業の成果に加え、今後は「収益構造改革」による成果が徐々に現れる段階に入る。また、新たな商品分野としてバッテリ&電力機器が加わったことにも注目したい。世界各地で自動車の電動化が進展することや、脱炭素社会への投資がこの分野に貢献することとなりそう。
株価については、PER、PBRとも極めて低位にある上、配当利回りが高い。それに加えて旺盛な半導体需要、DX・GXの進展、自動車の電動化といった世界的な流れは同社ビジネスにとってフォロー。今後の見通しを考慮すると極めて割安に放置されている印象を持った。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

11名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2020年11月10日)
基本的な考え方
当社は、コーポレート・ガバナンスの強化・充実を経営上の重要な課題の一つとして位置付けております。
経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応し、グループ全体の持続的な企業価値の向上を図るとともに、企業理念を具現化し発展していくために、意思決定の迅速化及び責任の明確化、並びに内部統制システムの整備等により、経営体制を充実させ、経営の透明性向上とコンプライアンス遵守の徹底を図っていくことを当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方としております。さらに、株主をはじめとするステークホルダーに対する、企業としての社会的責任を果たすことを、経営の重要な責務として認識し、グループ内における監督機能、業務執行機能及び監査機能を明確化することにより、経営目標の達成に向けた経営監視機能の強化に努めております。

 

 

<実施しない原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しておりますので、本欄に記載すべき事項はありません。

 

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