(4493)株式会社サイバーセキュリティクラウド 投資を吸収して大幅な増収増益

2021/03/18

 

 

渡辺 洋司 社長 兼 CTO

株式会社サイバーセキュリティクラウド(4493)

 

 

企業情報

市場

東証マザーズ

業種

情報・通信

代表者

渡辺 洋司

所在地

東京都渋谷区東3-9-19 VORT恵比寿maxim3階

決算月

12月

HP

https://www.cscloud.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,405円

9,313,200株

31,711百万円

20.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00

19.28円

176.6倍

71.35円

47.7倍

*株価は3/2終値。各数値は2020年12月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年12月

246

-42

-46

-52

0.00

2018年12月

488

-29

-27

-27

0.00

2019年12月

816

143

141

153

17.20

0.00

2020年12月

1,194

188

172

134

14.60

0.00

2021年12月(予)

1,790

250

247

179

19.28

0.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。2020年12月期より連結決算。
* 株式分割 2018年3月 1:10、2019年9月 1:100、2020年7月 1:4(EPSは遡及修正後)。

 

 

(株)サイバーセキュリティクラウドの2020年12月期決算概要、2021年12月期業績予想などをご報告します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年12月期決算概要
3.2021年12月期業績予想
4.今後の成長戦略
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • WebサイトやWebサーバをサイバー攻撃から守るクラウド型WAF(Web Application Firewall)「攻撃遮断くん」、AIによる「AWS WAF」のルール(シグネチャ)自動運用サービス「WafCharm」を中心としたセキュリティサービスを提供している。「攻撃遮断くん」はディープラーニング(深層学習)を用いた攻撃検知AIエンジンを活用し、一般的な攻撃の検知はもちろん、未知の攻撃の発見、誤検知の発見を高速に行うと共に、最新の脅威にもいち早く対応。導入社数・サイト数で国内1位を獲得し、企業規模を問わず利用されている。

     

  • 20年12期は中長期成長のための投資を吸収して大幅な増収増益を達成。予想も上回った。売上高は前期比46.2%増の11億94百万円。営業利益は同41.2%増の2億3百万円。主力の攻撃遮断くんに加え、第二の柱となるWafCharmが大きく成長した。売上増への対応やサーバコストの増加に加え、エンジニアの増強による人件費の増加もあり、原価率が31.7%と3.1ポイント上昇したものの、増収効果で売上総利益が同39.9%増加。営業要員を中心にした人員増強による人件費や採用教育費、研究開発活費、及び広告宣伝費など販管費の増加を吸収した。

     

  • 21年12月期は前期比50.0%の増収、同32.8%の営業増益予想。ソフテック子会社化も寄与し、今期も大幅な増収増益を見込んでいる。2022年以降の成長に向け、グループ全体で各種施策に取り組む。特に、WafCharmの3大クラウド(AWS、Azure、GCP)での展開に注力する。WAFの認知度向上のためのプロモーションや啓蒙活動を積極的に展開することもあり、先行投資的費用が増加し営業利益率は前期比1.7%低下する見込みである。

     

  • 同社が2021年2月16日にリリースした「改正個人情報保護法成立後のサイバーセキュリティ対策に関する意識調査」によると、サイバーセキュリティの必要性は認識しているものの、大企業の10社に1社が過去1年以内にサイバー攻撃の被害を受けており、また「Web サービスを手掛ける企業」の経営層でさえも8 割以上が「WAF」の導入を把握できていないというのが実態である。加えて、自社が保有する個人情報を守るためにはどのようなセキュリティ対策が必要なのかを正しく理解できていない経営層も多数存在しているということだ。

     

  • 過去5年間の売上高の年平均成長率が8割を超す同社だが、こうした企業の実態からは依然として同社の前には巨大な市場が広がっており、PER、PBRから見ても投資家の期待は極めて高いことがわかる。新経営体制の下、こうした期待に応えるべく持続的な収益の拡大、企業価値の向上を実現していけるのかを注目したい。

     

1.会社概要

「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」という経営理念を掲げ、Webサイトへのサイバー攻撃の可視化・遮断ツール「攻撃遮断くん」(クラウド型WAF)、AWS WAFなどプラットフォームのルール(シグネチャ)自動運用サービス「WafCharm」、及びAWS WAFのルールセット「AWS WAF Managed Rules」を中心としたセキュリティサービスを、世界有数のサイバー脅威インテリジェンスとAI技術を活用しながらサブスクリプションで提供している。

 

2018年9月に「AWS WAF」のルールセットであるManaged Rulesの販売及び海外展開を目的として設立したCyber Security Cloud Inc.(ワシントン州シアトル)と共にグループを形成しているが、「現時点では企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しい」として非連結子会社としている。

1-1 セキュリティ対策と同社の事業領域

あらゆるサービスがインターネットを通じて普及し、日常生活やビジネス面での利便性が格段に向上する中、サイバー攻撃が増加の一途をたどっている。
サイバー攻撃に対する企業のセキュリティ対策は大きく2つに分けることができ、一つはマルウェア(悪意のあるソフトウエアやプログラム)等に対してPC端末や社内ネットワークを守るための社内セキュリティ、もう一つはソフトウエアの脆弱性やWebアプリケーション層への攻撃から外部公開サーバを守るWebセキュリティである。
例えば、AmazonのようなECサイトであれば、多くの人がクレジットカード情報をAmazonに登録しているが、こうした情報をサイバー攻撃から守ることがWebセキュリティである。

 

 

Webセキュリティ対策を行うにあたっては、Webアプリケーション(ブラウザから利用可能なアプリケーションやサービス)、ソフトウエア・OS、インフラ・ネットワーク等、保護対象のレイヤーによって対策が異なる。この中でWebサイトを構成するWebアプリケーションをサイバー攻撃から守るための対策がWAF(Web Application Firewall)である。また、WAFの提供形態は主にアプライアンス型WAF、ソフトウエア型WAF、クラウド型WAFがあり、同社はWebサービスを提供している法人等に対して、クラウド型WAF「攻撃遮断くん」を提供している。

 

* WAFは、「SQLインジェクション」や「XSS」をはじめとした不正侵入による情報漏えいやWebサイト改ざん等を防ぐファイアウォール。従来のファイアウォールやIDS/IPSでは防ぐ事ができない攻撃にも対応可能。(同社資料より)

 

 

クラウド型WAF「攻撃遮断くん」は、2013年に販売を開始し、導入の手軽さ、同社自身の開発・運用という安心感、更には豊富な大企業へのサービス提供実績等もあり、日本国内のクラウド型WAF市場における累計導入社数・導入サイト数でNo.1を誇る。
ただ、近年の情報漏洩事故の多くが、Webサイトに対する不正アクセスが原因とされる中で、Webサイトへのセキュリティ対策は未だ十分に行われておらず、また対策済みであると誤認している経営者が多いと言う(株式会社マーケティングアンドアソシェイツ「セキュリティソフト浸透度調査」)。

 

 

1-2 サービス内容

同社はWebセキュリティ事業の単一セグメントにおいて、クラウド型WAF「攻撃遮断くん」、「攻撃遮断くん」で培った技術を基に、AWS(Amazon Web Services)が提供する「AWS WAF」のルール(エンジン)の自動運用を行うサービス「WafCharm」、更には「AWS WAF」のルールセットであるManaged Rulesを提供している。

 

◎クラウド型WAF「攻撃遮断くん」
「攻撃遮断くん」は、Webアプリケーションに対するサイバー攻撃を検知・遮断・可視化する、クラウド型のセキュリティサービス。製品の開発から、運用・販売・サポートまで、同社が一貫して手掛けることで、Webサイトへの多種・大量のサイバー攻撃のデータと運用ノウハウを蓄積できていることが強み(1万サイト以上から得た1兆以上のデータ)。
それらを「攻撃遮断くん」の開発・カスタマイズやシグネチャ(攻撃の特徴的なパターン)を更新に反映させることでWebサイトをセキュアな環境に保つことを実現している。
また「攻撃遮断くん」は、リアルタイムでサイバー攻撃を可視化し、攻撃元IPや攻撃種別(どこの国から、どのような攻撃がなされているか)等を管理画面で把握することができる。目には見えないサイバー攻撃を可視化することで、より適切な状況把握と情報共有が可能になる。

 

 

2つのタイプでサービスを提供
「攻撃遮断くん」は、サーバにエージェントプログラムをインストールし、クラウドの監視センターとのログ送信・遮断命令の交信を受けてエージェントプログラムが攻撃を検知・遮断するサーバセキュリティタイプ(エージェント連動型)と、DNS(Domain Name System)を切り替えて攻撃遮断くんWAFセンターで攻撃を検知・遮断するWeb/DDoSセキュリティタイプ(DNS切り替え型)の2タイプを提供しているため、顧客のWebアプリケーションの環境に捉われずに導入することが可能。

 

Web/DDoSセキュリティタイプは、WAFセンターを経由してサイトにアクセスする仕組みとなっており、WAFセンターで攻撃かどうかを判断している。DNSの切り替えのみで簡単に導入が可能で、Webサイトへのリソース負荷がかからないというメリットがある一方、通信が迂回(監視センター経由)するため、トラフィックの多いECや、メディア、動画のサイト等では遅延が発生する可能性がある。
これに対して、サーバセキュリティタイプは、サーバにエージェントプログラムをインストールすることで、別立てしている監視センターにて攻撃を判断し、サーバに対して直接遮断命令を送ることから、通信の遅延が発生しにくく、またトラフィック量に依存しない形での提供が可能となっている。

 

(同社資料より)

 

 

AIの活用
「攻撃遮断くん」はAIの活用が進んでいることも特徴。具体的には、AIを活用することで従来のシグネチャでは発見することができなかった攻撃や、顧客のサービスに影響がある誤検知を発見できる。同社は、一般的な攻撃情報だけでなく、ユーザーの正規のアクセスや攻撃として誤検知されたアクセスをニューラルネットワーク(AIの機械学習のための技術・ネットワーク)に学習させ、日々のアクセスデータや検知データを AI で評価することでシグネチャ精度を日々向上させている。

 

◎AWS WAFなどプラットフォームのルール自動運用サービス「WafCharm」
2017年12月に提供を開始した「WafCharm」は、「攻撃遮断くん」で蓄積したWebアプリケーションに対する攻撃パターンをAIに学習させることで、世界のクラウド市場で最大のシェアを持つAWS(Amazon Web Services)に搭載されたAWS WAFの自動運用を可能にした。導入と運用の手軽さだけでなく、AWSとの連携によるAWS WAFの新機能リリースに対応した新機能の迅速な開発も評価されている。
AWS WAFを導入することでWebアプリケーションのセキュリティを高めることができるがサイト運営者が自らルールを設定して運用する必要があり、使いこなすためには多くの知識と時間が必要となる。しかし、「WafCharm」を利用することで、AWS WAFの持つ複数のルールから、AIがサイトに最適なルールを設定し、運用してくれる。加えて、新たな脆弱性への対応も自動でアップデートされるため、常にセキュアな状態でWebサイトの運用が可能。また、ルール毎の検知数・攻撃種別・攻撃元国・攻撃元IPアドレスをまとめたレポート機能や、検知した内容をリアルタイムでメール通知するメール通知機能も用意されている。
2020年11月からはMicrosoftのプラットフォーム「Azure」での提供も開始。Googleのプラットフォーム「Google Cloud Platform」での展開も予定している。

 

◎AWS WAFのManaged Rules
AWS WAFでは、Managed Rulesというセキュリティ専門のベンダーが独自に作成する厳選されたセキュリティルールが用意されており、特定の脅威を軽減させるために必要なセキュリティルールがパッケージになっている。セキュリティの対象が特定の脅威に限定されるが導入・運用が容易。「WafCharm」で培ったAWS WAFにおけるルール設定ノウハウをもとにパッケージ化したサービスであり、AWS WAFのユーザーは、AWS Marketplaceから簡単にManaged Rulesを利用することができる。
世界で7社目となるAWS WAFマネージドルールセラーに認定された同社の米国子会社が2019年2月末にAWS MarketplaceでManaged Rulesの提供を開始した。

 

1-3 ビジネスモデル

主要サービス「攻撃遮断くん」は、顧客に対し提供するサービスの対価を、使用した期間に応じて受領するサブスクリプション(月額課金)型モデルとなっており、継続したサービス提供を前提としている。
収益構造は、ストック収益である月額課金額(MRR:Monthly Recurring Revenue)と、初期導入費用、スポット費用で構成され、「攻撃遮断くん」にかかる収益の95%以上がストック収益になっている。また、Webアプリケーションの脆弱性の情報収集と脆弱性への迅速な対応、シグネチャの設定、カスタマイズ等による顧客価値向上を実現することで高い継続率を実現しており、2020年12月期の解約率は1.07%-1.24%と低位にとどまる。
開発から、運用、サポートまで自社で一気通貫する強みを活かし、顧客満足度を高めながらサービスを提供している。

 

(同社資料より)

2.2020年12月期決算概要

2-1 単体業績

 

19/12期

構成比

20/12期

構成比

前期比

予想比

売上高

816

100.0%

1,194

100.0%

+46.2%

+6.0%

攻撃遮断くん

728

89.2%

919

77.0%

+26.2%

-3.4%

WafCharm

71

8.7%

216

18.1%

+202.4%

+50.7%

Managed Rules

16

2.0%

58

4.9%

+261.6%

+90.4%

売上総利益

583

71.4%

816

68.3%

+39.9%

+9.5%

販管費

440

53.9%

613

51.3%

+39.3%

+8.3%

営業利益

143

17.5%

203

17.0%

+41.2%

+13.5%

経常利益

141

17.3%

187

15.7%

+32.0%

+12.7%

当期純利益

153

18.8%

149

12.5%

-3.0%

+6.4%

* 単位:百万円。販管費は同社資料を基に売上総利益から営業利益を控除。

 

中長期成長のための投資を吸収して大幅な増収増益。予想も上回る。
売上高は前期比46.2%増の11億94百万円。営業利益は同41.2%増の2億3百万円。売上、利益ともに予想を上回った。
主力の攻撃遮断くんに加え、第二の柱となるWafCharmが大きく成長した。売上増への対応やサーバコストの増加に加え、エンジニアの増強による人件費の増加もあり、原価率が31.7%と3.1ポイント上昇したものの、増収効果で売上総利益が同39.9%増加。営業要員を中心にした人員増強による人件費や採用教育費、研究開発活費、及び広告宣伝費など販管費の増加を吸収した。
売上、利益ともに予想を上回った。

新規採用により人件費が増加したほか、R&Dを強化しコストが増加した。
2020年12月期第4四半期(10-12月)は潜在層へのリーチのため、小泉孝太郎氏を活用した動画広告等を含む広告宣伝を集中的に実施。獲得リード数は、前年同期比で約2.3倍と、過去最高のリード数を更新した。
また、上場に伴う信頼度向上なども影響し、採用が加速している。20年12月期は単体で18人増員した。子会社化したソフテック社の11人が加わり、グループ全体の陣容は59名と前期末30名の約2倍となった。

(同社資料より)

2-2 サービス別動向

◎KPI

 

KPI

19/12期4Q

20/12期4Q

前年同期比

攻撃遮断くん

ARR(百万円)

788

966

+22.6%

利用企業数(社)

798

926

+16.0%

ARPU(千円)

988

1,043

+5.6%

解約率(%)

1.06%

1.24%

+0.18pt

WafCharm

ARR(百万円)

121

306

+152.6%

ユーザー数

157

392

+149.7%

ARPU(千円)

773

782

+1.2%

Net解約率(%)

1.4%

-16.9%

-18.3pt

Managed Rules

ARR(百万円)

31

81

+159.4%

ユーザー数

547

1,558

+184.8%

全社合計

ARR(百万円)

941

1,354

+43.9%

* ARR(Annual Recurring Revenue)は対象月の月末時点におけるMRR を12倍することで年換算して算出。MRRはサブスクリプション型モデルにおけるMonthly Recurring Revenueの略。既存顧客から毎月継続的に得られる収益の合計。
* ARPU(Average Revenue Per User):1社当たりの年間平均売上金額。
* 攻撃遮断くんの解約率は、MRRチャーンレートの直近12ヶ月平均をもとに作成。MRRチャーンレートとは、当月失ったMRRを先月末時点のMRRで除すことで計算される実質解約率。
* WafCharmのNet解約率は、N-1期末時点における課金ユーザーにおける、N期末時点までに増減したARR÷N-1期末時点におけるARRで算出。Net解約率がマイナスの場合、既存ユーザーのアップセル及び従量課金売上による増加額が、解約やダウンセルの金額を上回っている状態。

 

主力の攻撃遮断くんに加え、第二の柱となるWafCharmが大きく成長した。WafCharm Azure版もリリースが完了し、さらに拡大させていく方針だ。
全社ARRは前年同期比43.9%増の13.5億円まで拡大した。WafCharmが順調に増加し、ARRは3億円を突破した。

(同社資料より)

 

◎攻撃遮断くん
期末の利用企業数は926社と順調に増加した。また、アップセル(サイト数・サーバ台数の増加、帯域UP)等により、ARPUも前年同期比5.6%増の1百万円と堅調に拡大している。
攻撃遮断くんの平均月次解約率は第4四半期1.24%と第3四半期から0.09%上昇したが、1%前半と低い水準で推移している。
主な解約理由は、サイト閉鎖に伴う解約(サービス終了、一時利用含む)や、パートナー企業とエンドユーザー間の契約終了に伴う解約(サーバ利用やM S Pサービスの終了)であり、サービスへの不満は少なく、多くのユーザーが継続的に利用している。

 

◎WafCharm
ユーザー数は前期末で前年同期比149.7%増の392ユーザー、ARRは同152.6%増の3億6百万円と大きく伸長した。
ユーザー数ベースの解約率は1 %前後発生するものの、アップセルや利用増加に伴う従量課金で単価が上昇し、Net解約率はマイナスを達成した。

 

 

2-3 トピックス

(1)株式会社ソフテックを子会社化
2020年12月、株式会社ソフテックの全株式を取得し、子会社化した。

 

(株式会社ソフテック概要)
1991年設立。脆弱性情報提供サービス「SIDfm™」事業と、Webセキュリティ診断事業を展開している。
「SIDfm™」はサービスを開始して以来、20 年以上に渡り数多くの顧客の脆弱性管理基盤の情報ベースとして活用されており、ソフテックの脆弱性専門アナリストが、日々現れる脆弱性の内容を調査してコンテンツを作成し、様々な手段を用いて顧客に情報を送り届けている。また、顧客が判断に悩む脆弱性の影響調査においても、「SIDfm™」コンテンツを見ることにより的確な判断を行うことができるだけでなく、脆弱性情報は個々のIT 資産の脆弱性の状態を管理するためのマッチングにも利用されている。このように、ソフテックでは脆弱性に係るコンテンツの作成から脆弱性の管理ツールの提供までの包括的なソリューションを提供している。
2019年12月期の売上高は2億89百万円、営業利益は86百万円。総資産4億28百万円、純資産3億47百万円。

 

(子会社化の背景)
サイバーセキュリティクラウドがこれまで展開してきたWebセキュリティ事業では、脆弱性情報を活用しながらWebサイト・Webサーバへのサイバー攻撃を可視化、遮断している。
サイバーセキュリティクラウドのWebセキュリティ事業に、「SIDfm™」による脆弱性管理に強味を持つソフテックが加わることにより、それぞれのノウハウ共有による両社の技術力強化に加え、サイバーセキュリティクラウドのビッグデータ活用や販売チャネルの拡大も可能となる。
両社のシナジーを活用したさらなるサービス体制の向上、より強固な会社基盤の構築を図ることで、中長期的な企業価値の向上に寄与すると判断し、子会社化することとした。
取得価格はアドバイザリー費用等を含み概算4.3億円。

(同社資料より)

 

(2)代表取締役の異動
2020年12月31日をもって、代表取締役社長 大野暉氏が退任し、2021年1月1日付で取締役CTO 兼Webセキュリティ事業本部長であった渡辺洋司氏が代表取締役社長兼CTOに就任した。
渡辺氏は「攻撃遮断くん」、「WafCharm」、「AWS WAF Managed Rules」の開発・運用、並びにAI技術の開発など、サイバーセキュリティクラウドにおける技術領域を牽引してきた。
また、2021年2月12日には、渡辺氏が代表取締役CTOに就任し、社長室室長の小池敏弘氏が代表取締役社長兼CEOに就任すると発表した。

 

小池敏弘氏は、リクルートグループにて事業企画やプロダクト開発など幅広い業務を経験した後、SaaSやITサービスを提供する複数の会社経営を行ってきた。ビジネス戦略はもちろんのこと、テクノロジーやマーケティングなど企業成長に欠かせない豊富な知識と経験を有していることから、サイバーセキュリティクラウドの様々な経営課題に対し着実に対処しつつ、強いリーダーシップのもと新経営体制を牽引できると判断し、代表取締役社長として適任であると判断した。
新たな経営体制へと移行し、2名の代表取締役による強固な体制のもとで様々な施策を実行することで、グループの持続的な成長と企業価値向上を目指す。
他の役員人事も含め、2021年3月31日開催予定の第11回定時株主総会および同日開催の取締役会ならびに監査役会において、正式に決定される予定である。

 

(3)ユーザーおよびパートナーの拡大
ユーザーは企業規模、業種・業態を問わず幅広く広がっている。
また2020年の1年間で販売代理店は攻撃遮断くんで9社、WafCharmで13社が新たに加わり、販売力は一段と強化された。

 

(同社資料より)

3.2021年12月期業績予想

3-1 連結業績

 

20/12期

構成比

21/12期(予)

構成比

前期比

売上高

1,194

100.0%

1,790

100.0%

+50.0%

CSC

1,194

100.0%

1,587

88.7%

+33.0%

ソフテック

202

11.3%

EBITDA

193

16.2%

287

16.0%

+46.0%

営業利益

188

15.7%

250

14.0%

+32.8%

経常利益

172

14.4%

247

13.8%

+43.5%

当期純利益

134

11.2%

179

10.0%

+33.7%

* 単位:百万円。

 

前期比50.0%の増収、同32.8%の営業増益予想
ソフテック子会社化も寄与し、今期も大幅な増収増益を見込んでいる。
2022年以降の成長に向け、グループ全体で各種施策に取り組む。
特に、WafCharmの3大クラウド(AWS、Azure、GCP)での展開に注力する。
AWS(Amazon Web Service)には2017年12月から搭載され、392ユーザーに提供。国内No.1の実績を有している。
MicrosoftのAzureには2020年11月より公開を開始しており、今後もパートナー拡大とAzureユーザーへの認知向上を狙う。
また、GCP(Google Cloud Platform)には2021年中の展開を予定している。
WAFの認知度向上のためのプロモーションや啓蒙活動を積極的に展開することもあり、先行投資的費用が増加し営業利益率は前期比1.7%低下する見込みである。

 

4.今後の成長戦略

【市場環境と同社の目指す姿】

コロナ禍により、クラウド化、DX、5G、IoTの普及、浸透が加速するのに伴い、サイバーセキュリティ領域も急拡大することが見込まれ、同社にとっては極めて有利な事業環境が予想される。
そうした追い風の下、同社は成長を続ける国内WAF市場における圧倒的No.1のポジションを確立することを目指し、グローバルセキュリティメーカーとして、世界中で信頼されるサービスを提供していく。

 

【3つの戦略】

成長を実現するために以下3つの戦略を推進する。

 

マーケット戦略
必要性と導入状況に大きな開きがあることから6.7%と低位にとどまっているWAF導入率を更に引き上げるため、啓蒙活動を強化。各種プロモーション等により日本中へリーチし、認知度向上と大量のリード獲得を目指す。
正しいセキュリティ対策を啓蒙することで、新たな顧客を開拓する。また、クラウド化の流れに乗り、「WafCharm」をグローバルなプロダクトとする。

 

プロダクト戦略
前期子会社化したソフテック社とノウハウ共有、相互送客を進め、各プロダクトを有機的に連携させることで、プロダクトの価値向上、クロスセルによる拡販を目指す。
また、攻撃遮断くん、WafCharmの既存製品をあらゆるプラットフォームで販売するための開発を強化。より簡単に、いつでもどこからでもWAFが利用できる世界を目指す。

 

テクノロジー戦略
累計1.9兆件に及ぶ利用者のWebアクセスデータと悪意のある攻撃データをもとに、AIやノウハウを活かしてコア技術を開発。開発したコア技術を、WAF運用、金融・マーケティング、IoT・5G、医療など各分野での応用展開を目指す。

5.今後の注目点

同社では、サイバーセキュリティの必要性についての啓蒙活動を実施しているが、その一環として様々なレポートを継続的に発行している。
直近では2021年2月16日に「改正個人情報保護法成立後のサイバーセキュリティ対策に関する意識調査」をリリースした。
この調査では企業規模の異なる600名の経営者のサイバーセキュリティ対策についての意識・実態を調べたもので、その結果は以下のようなものであった。

 

①約6割の経営層が改正個人情報保護法の成立を認識
②改正法の成立を認識している経営層の8割以上がサイバーセキュリティ対策を強化する必要があると感じている
③大企業の経営層のうち約5割が、改正個人情報保護法の成立を受けて「サイバーセキュリティ対策の強化を実施した、及び1年以内に実施する予定」と回答
④サイバーセキュリティ対策を実施している経営層のうち約7割が社内セキュリティ対策とWeb セキュリティ対策を両方実施していると回答した一方で、そのうち9 割以上がWeb セキュリティ対策に対する認識ができていない
⑤「Web サービスを手掛ける企業」の経営層のうち8 割以上が「WAF」の導入を把握できていない
⑥大企業の10社に1社が過去1年以内にサイバー攻撃の被害に遭い、被害内容の3割以上が「情報漏洩」

 

サイバーセキュリティの必要性は認識しているものの、大企業の10社に1社が過去1年以内にサイバー攻撃の被害を受けており、また「Web サービスを手掛ける企業」の経営層でさえも8 割以上が「WAF」の導入を把握できていないというのが実態で、加えて、自社が保有する個人情報を守るためにはどのようなセキュリティ対策が必要なのかを正しく理解できていない経営層も多数存在しているということだ。

 

過去5年間の売上高の年平均成長率が8割を超す同社だが、こうした企業の実態からは依然として同社の前には巨大な市場が広がっており、PER、PBRから見ても投資家の期待は極めて高いことがわかる。
新経営体制の下、こうした期待に応えるべく持続的な収益の拡大、企業価値の向上を実現していけるのかを注目したい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2020年03月27日)
基本的な考え方
当企業グループは、「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」という経営理念のもと、グループの持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、その実現を効果的、効率的に図ることができるガバナンス体制を構築します。また、コンプライアンスの重要性をコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方として、株主の権利を重視し、また、社会的信頼に応え、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識に立ち、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。

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