ESG Bridge Report:(6914)オプテックスグループ

2020/05/15
 

 

小國 勇 代表取締役社長兼CEO

オプテックスグループ株式会社(6914)

 

企業情報

市場 東証1部
業種 電気機器(製造業)
代表取締役社長兼CEO 小國 勇
所在地 滋賀県大津市におの浜4-7-5
決算月 12月
HP https://www.optexgroup.co.jp/

 

財務情報

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

総資産

純資産

ROA

ROE

37,517百万円

2,856百万円

2,876百万円

2,197百万円

43,967百万円

32,372百万円

6.6%

6.8%

*2019年12月期実績。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。ROAは総資産経常利益率。

 

目次

 

1.会社概要
2.トップインタビュー
3.課題・マテリアリティと取り組み
4.新・中期経営計画
5.財務・非財務データ
<参考>
(1)ESG Bridge Reportについて
(2)「ROESGモデル」 について

1.会社概要

世界シェア40%を誇る屋外用防犯センサーや、世界シェア30%・国内シェア50%の自動ドアセンサーを中心に、環境関連製品等の製造・販売も手掛けるオプテックス株式会社を中心とした持株会社。産業機器用センサー事業を手掛けるオプテックス・エフエー(株)、画像処理用LED照明事業で世界シェアトップ(30%)のシーシーエス(株)、各種システム及びアプリケーション・デジタルコンテンツ開発等を得意とする(株)スリーエース、グループ製品の製造を担うオプテックス・エムエフジー(株)、光ファイバー侵入検知システムを手掛けるファイバーセンシス社(米国)、カメラ補助照明で50%の世界トップシェアを有するレイテック社(英国)等の有力子会社を有する。
2019年12月末現在、海外26社を含む世界80拠点で事業を展開している。

 

オプテックス(株) 防犯・自動ドア等、各種センサーの開発・販売
オプテックス・エフエー(株) 光電センサー、変位センサー、産業用画像検査・計測装置の開発、販売
シーシーエス(株)  画像処理用LED照明装置やシステムの開発、製造、販売
(株)スリーエース 各種システム及びアプリケーション・デジタルコンテンツの開発
オプテックス・エムエフジー(株) グループ製品の製造・電子機器受託生産サービス
ジックオプテックス(株) 汎用型光電センサーの開発、独SICK AG社とオプテックス・エフエー(株)の合弁会社
技研トラステム(株) 客数情報システム、来場者計数装置等の開発、製造、販売
(株)ジーニック 画像処理関連のIC、LSIの受託開発ならびにFAシステムの設計、販売
オーパルオプテックス(株) 会員制スポーツクラブおよび環境体験学習プログラムの運営
FIBER SENSYS INC.(米国) 光ファイバー侵入検知システム等の開発、製造、販売
FARSIGHT SECURITY SERVICES LTD.(英国) 遠隔画像監視による警備会社
RAYTEC LIMITED.(英国) 監視カメラ用補助照明の開発、製造、販売
Gardasoft Vision Limited(英国) マシンビジョン用LED照明コントローラの開発、製造、販売

 

【1-1. 沿革】

1979年5月、京都の防犯機器メーカーでセキュリティ用センサー開発に取り組んでいた小林徹氏(現取締役相談役)が「自分たちの作るものが世間でどこまで認められるか試してみたい」というチャレンジ精神からオプテックス株式会社を設立。
同年11月には、「世界初の遠赤外線自動ドアセンサー」を開発した。当時の自動ドアはゴムマットの足踏み式が主流であり、遠赤外線利用の自動ドア用センサーは極めて画期的な製品。メンテナンスや施工対応力でも他社の追従を許さず、創業3年目には自動ドアセンサーでトップシェアを有するに至った(現在、国内シェア約50%)。
その後も独自のアイデアとそれを実現する技術力で、セキュリティ、自動ドア、産業機器向けに様々な製品を開発する。

 

1980年代には、海外にも進出。光などの外乱要因によって誤報しやすいため屋外には設置不可能と考えられていた遠赤外線センサーを独自技術によって利用可能とした屋外用赤外線センサー「VX-40」が欧州市場中心に高く評価され、屋外用侵入検知センサー世界シェアNo.1へと成長する。
業容の拡大を背景に1991年に店頭登録(JASDAQ上場に相当)。2001年の東証2部上場を経て、2003年には東証1部に指定替えとなった。

 

近年では、画像処理技術をコアとしたソリューションやハイエンド防犯システムの強化に取り組んでおり、2008年に画像処理関連のIC・LSIの受託開発等を手掛ける(株)ジーニックを子会社化。2010年には欧米各国の重要施設向けハイエンド防犯システム(光ファイバー侵入検知システム)で豊富な実績を持つファイバーセンシス社(米国)を、2012年には大型重要施設に設置されるハイエンド防犯システム向けのカメラ補助照明を手がけるレイテック社(英国)を、それぞれ子会社化した。
また2016年5月には画像処理用LED照明で世界シェアNO.1のシーシーエス株式会社を子会社化(18年7月に完全子会社化)した。
次世代経営への移管やグループシナジーの追求を目指し、2017年1月1日付で持株会社体制へ移行。
2019年3月に代表取締役社長兼CEOに就任した小國勇氏の下、ビジネスモデルの変革やソリューション提案力強化などにより、グローバルニッチNo.1企業として更なる成長を目指している。

 

【1-2. 企業理念】

グループ企業理念 「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」

ベンチャースピリットとは、自らの行動を革新し、新しい事業創出に挑戦することで、世の中の発展に貢献しようとする志である。

行動指針 人と組織の能力・活力・効率を高め、グループ全体の企業価値を最大化する。

人と組織の価値観を互いに尊重し、多様性を企業活動の力にする。

人と組織の自律を促進し、社会に誇れる企業集団であり続ける。

 

2019年に創業40周年を迎えた同社であるが、ベンチャースピリットの発揮を最も重視する評価項目の一つとしており、同社最大の無形資産である人的資本強化のために、ベンチャースピリット醸成のための環境作りに取り組んでいる。

 

【1-3. 事業内容】

事業は、主力の防犯関連および自動ドア関連などからなる「SS(センシングソリューション)事業」、産業機器用センサーを手掛ける「FA(ファクトリーオートメーション)事業」、画像処理用LED照明装置及びシステムを提供する「MVL(マシンビジョンライティング)事業」、中国で電子機器受託生産サービスを提供する「EMS事業」、スポーツクラブ運営及びアプリケーション・デジタルコンテンツの開発を手掛ける「その他事業」に分かれる。

 

 

 

事業セグメント

事業内容

SS事業 防犯関連 主な製品は、屋内外で使われる各種センサー、ワイヤレスセキュリティシステム、LED照明制御システム等。屋外用センサーでは、世界でもトップクラスのシェアを有している。近年では、マイクロウエーブ技術を活用した車両検知センサーの開発にも取り組んでいる。
自動ドア関連 世界で初めて遠赤外線式自動ドア用センサーを開発した。

主な製品は、自動ドア開閉用センサー、工場向けシャッター用センサー、ワイヤレスタッチスイッチ等。

その他 水質計測機器、交通機器(安全運転支援ツール)、客数情報システム、画像処理関連等の開発・販売。
FA事業 主な製品は、工場での生産ラインに使用される品質管理及び自動化のための光電センサー、変位センサー、画像センサー、LED照明等。国内では食品・医薬品業界を中心とした幅広い業界における生産ラインの品質管理に、海外では産業用センサーのトップシェアを誇るSICK AG社(独)との技術提携により、ヨーロッパ全域でOEM販売、自社ブランドでは国内・アジア・北米と幅広い地域で販売されている。
MVL事業 画像処理用LED照明事業で世界でもトップクラスのシェアを有している。周辺機器、ソフトウエア関連企業などと連携し、「ベストソリューション」を提供。
EMS関連 中国工場で展開する電子機器受託生産サービス
その他 スポーツクラブ運営、アプリケーション・デジタルコンテンツの開発

 

【1-4. 価値創造のフロー】

 

オプテックスグループは、創業以来の理念・ビジョン・存在意義をベースに、優れた人的資本を始めとする競争優位性を活かして4つの事業ドメインで独自性の高い製品を開発。
「ニッチグローバルNo.1企業」として世の中に「安心・安全・快適・効率化」といった価値を提供している、

 

2.トップインタビュー

●企業理念、ビジョン、社会的存在意義について

 

Q.近年、社会全体が持続可能な成長を目指す中で、その重要なプレーヤーの一員である企業の理念、ビジョン、ミッション、社会的存在意義が重視されています。

先ずは御社の企業理念についてお聞かせください。

 

企業理念は、『「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」新しいことをやってみよう!』です。

 

もともと創業者が41年前に会社を設立したときに、ゼロからスタートした会社が世の中に受け入れていただくには、既にある製品の焼き直しではなく、全く新しいモノ・違ったモノによって世の中の役に立たなくてはならない、新しいことに挑戦して新しいモノを提供していこうと考えたわけです。

そうした想いが「世界初の遠赤外線自動ドアセンサー」を始めとした独自性の高い製品開発や国内外での高シェアに繋がっていきました。

 

3年前の2017年に持株会社化に体制を変えました。

これを第二創業期と位置付け、もう1回原点に戻ろうということで、ベンチャースピリットあふれる企業集団を目指そう、新しいことをやってみようということを改めて企業理念として掲げることとしました。

製品開発だけでなく、日々のルーチンワークにおいても新しいことをやっていこう、それによって更に付加価値を付けて行こうという創業時の想いを改めて大事にしようと考えています。

 

代表取締役社長兼CEO 小國 勇氏

 

 

Q.御社では「オプテックス流三方よし」という考え方も掲げておられますね。
近江商人の「三方よし」は、ご存知の方も多いと思いますが、「売り手よし、買い手よし、世間よし」。
商売は自分の儲けを大きくすることがもちろん重要なのですが、自分の利益だけを追求してはいけない、加えて、売り手と買い手が満足するのは当然のことで、社会に貢献できてこそよい商売という考え方です。

 

当社の事業で言えば、部品を仕入れる、金型を発注するにしても信用がないと売っていただけない、注文を受けていただけないわけで、事業を持続的に拡大させようとすれば、「モノを買う人が一番偉い」のではなく、買い手も売り手も同じ立場にあるということです。

 

この近江商人の「三方よし」を、滋賀県に本社を置く当社グループでは、独自の解釈を加え、「オプテックス流三方よし:己よし、相手よし、世間よし」として掲げています。
まずは「相手」に喜んでいただくことを第一に考え、それが己(自社)の利益につながるという、これも創業以来大事にしてきた信条です。
当社グループでは「相手」には、直接に商品・サービスを提供するお客様だけでなく、仕入れ先や協力会社も含んでいます。「一緒に成長しましょう!」という姿勢です。
さらに「相手」には、競合他社も含んでいます。
何故かというと、当社グループが常に独自性の高いアイデアや技術を追求しているからです。競合他社との切磋琢磨の中で、他の誰も作っていない製品を創出できれば、互いを疲弊させる不毛な価格競争は起きませんし、画期的製品によって市場が広がり、お客様・ユーザーの選択肢が拡大することは「世間よし」の実現にもつながっていきます。

 

 

 

このように、あらゆるステークホルダーとの信頼関係を重視する「オプテックス流三方よし」の精神は、当社グループの土台を支える重要な考え方なのです。

 

 

Q事業への取り組みの指針としての「ふとるビジネス」とはどんな考え方でしょうか。
「グローバルニッチNo.1」のセンサーメーカーとして目指してきたのが、「ふとるビジネス」です。

 

これは、お客様の「不安」を「安心・安全」に、「不便」を「便利」に、「不満」を「満足」に変えること、つまり、私たちの開発・提供する製品やサービスによって、お客様の抱える全ての「不」を取り除くということです。
こうした「ふとるビジネス」によって快適性や効率性を提供し、社会に貢献することが、オプテックスグループとしての事業の目的だと考えています。
ただ、当社グループは技術の会社ではありますが、お客様が求めているのは「問題の解決」であって、それを実現するのは必ずしも最新技術やハイテクでなくてもいい訳です。お客様が求めているのは何かという本質を常に見て行かなければならないと考えています。

 

このように、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」、「オプテックス流三方よし」、「ふとるビジネス」が、創業以来の当社グループの企業文化・DNAです。

 

 

●ESGについての認識、考え方

Q.今伺った理念とESGの関係性についてお聞かせください。
近年、企業の成長には「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の観点が不可欠と言われますが、環境問題や社会問題というのも、世の中に存在する「不」であると思います。
当社グループは創業時より、得意のセンシング技術を駆使して、「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献していくことを目標に、事業を展開してきました。それは言い換えれば、先程申し上げたように、世の中に存在するさまざまな不安や不快、不便から「不」を取り除く仕事(=ふとるビジネス)の拡大でした。
その意味では、引き続きこの「ふとるビジネス」を推進することにより、環境問題や社会問題の解決に貢献すると同時に、各事業の拡大、企業価値の向上に繋げていくことができるものと確信しています。

 

また「オプテックス流三方よし」も、多様なステークホルダーとの関係構築を目指すという意味で、当社グループならではのESGに対する姿勢を表したものであると考えています。

 

 

 

≪ふとるビジネスの具体的な製品紹介≫

①自動ドアセンサー

オプテックス株式会社が提供する自動ドア用センサーは、より確実に人の動きを検知し、より安全に自動ドアをご利用いただくために活躍しています。

 

特に最近発売した「eスムースセンサー」は、センサーと画像技術を用いて人の歩く速度や進む方向を読み取り、自動ドア前を横切る通行者による「無駄開き」を抑制できます。

必要な時だけドアが開閉するため、建物の空調効率を向上させ、電力消費量は従来の自動ドアセンサーに比べ約30%削減することができます。

 

②屋外防犯センサー

オプテックス株式会社は「侵入される前に知らせる」屋外事前防犯の重要性にいち早く着目し、1996年に雨・太陽光・風など誤作動要因が多い屋外環境でも正確に作動する「屋外警戒用侵入検知センサーVX-40」を開発しました。

 

特に、欧州をはじめとした海外では、建物内部に侵入される前に侵入者を検知し通報する「事前防犯」が一般家庭に普及しつつあります。

住民の在宅・不在に関わらず不正侵入や犯罪が実行されるケースがあるため、早い段階で侵入者の存在を認知することで通報や自衛を行うことができ、安全を確保できます。

現在では高い信頼性を評価いただき、世界中の建物・施設に採用されており、同分野で世界シェア約40%を誇っています。

 

 

③自動ドア用非接触スイッチ

オプテックス株式会社は食品工場や医療施設のドアや倉庫の間仕切りやシャッターの開閉に利用する非接触スイッチ「Clean Switch」を発売しました。(2020年4月)

 

非接触スイッチは、ドアノブやスイッチに直接触れず、手をかざすだけで反応するため、衛生面やウイルス・細菌の感染リスク軽減に配慮したい場所に有効です。

「Clean Switch」は、10?50 センチメートルの範囲に手を近づけることでドアが開く非接触スイッチです。

非接触スイッチのラインアップの拡充により、公共施設やオフィス、商業施設だけでなく、食品工場や医療施設などあらゆる現場での衛生管理に役立てることができます。

 

 

 

 

●特徴・強み・競争優位性

Q.御社の特徴や強み、競争優位性はどんな点でしょうか。
当社グループは、センシング技術に加え、照明技術やさまざまな要素技術を取り入れ、変化や状態を「見る」、見えないものを「視る」、観察し判断する「観る」を包含した、「見る」技術を進化させ、多様化するお客様に価値ある提案を行い、ソリューションを提供してきました。
確実で安定したセンシングの実現には、複数の要素技術とノウハウ、そして物理的変化を制御する「アルゴリズム」が不可欠です。
こうした用途に適した技術・ノウハウと独自のセンシングアルゴリズムが当社グループの大きな強み、競争優位性であり、それが各製品分野で高いシェアを実現するなど、当社グループのブランド力にも繋がっていると考えています。

 

≪主要な技術≫

ノイズ対策技術 ・数々のノイズを極小化するハードウエア設計

・独自に定めた幾多の環境評価を行ない、クリアしたもののみ製品化

緻密な光学設計 ・光学シミュレーションを駆使し、抜けの無い高密度エリアを実現

・小型化を追求するためのパッケージング化技術

信頼性公的規格遵守 ・あらゆるグローバルスタンダードに適合、及び準拠

・各業界で定めた規格、ガイドラインへの適合、及び準拠

(CEマーキング、EN規格[TUV認定]、ANSI規格、JIS規格等)

環境配慮設計 ・使用制限物質15種、自主管理物質10種を定め、全構成部品の無害化を実現

・RoHS指令適合、無鉛はんだ化

・使用時のCO2の影響を最小化する設計

安心、安全制御 ・システムの機能をダウンさせない為のセンサーの異常時や故障時の自己診断、及びフェールセーフ機能の採用

・機能を維持する為の、予防保全策の提案

独自のセンシングアルゴリズム ・ハードウエアで抑えきれないノイズの影響をカット、意図した事象のみの検出、精査、解析を図る為の独自のアルゴリズム

・フィールドでの性能を維持する為の各種自動補正機能

 

こうした技術・ノウハウの蓄積には「本質的に要求されていることは何か」を追求する姿勢が極めて重要です。

 

例えばオプテックス株式会社では、顧客の視点に立った発想でのモノづくりを重視し永年受け継がれてきた開発のフィロソフィーを「オプテックスのかたち」として掲げています。また、「高い信頼性」と顧客の要求を満たす「性能」を実現するために、さまざまな製品評価テストを実施しています。
当社グループのセンサーが利用される屋外環境では、雨や風、気温の変化、雷、小動物など、日々想定外の現象が多くの影響を与えることになりますが、信頼性の高いセンサーを作り上げるには、そうした現象を一つ一つクリアすることが必要です。
また、販売する世界各国によって異なる法令や公的規格に準拠した製品づくりも不可欠であり、そのために数多くの製品評価テストの実施が重要となるのです。

 

こうした取り組みは大変地道なものではありますが、簡単に真似できるものでもありません。
ニッチ分野において、一つの事柄を長くかつ深く掘り込んできたことが、目には見えない強力な参入障壁の構築に繋がっているのです。

 

●主要マテリアリティにおける取り組み

Q.今回御社では初めて15のマテリアリティを選定しました。(「3.課題・マテリアリティと取り組み」参照)
このうち、御社の持続的成長にとって特に重要なマテリアリティについて社長のお考えを伺いたいと思います。

 

まず最初は、「人的資本」についてです。従業員の働き甲斐醸成、教育・育成制度、多様性を尊重する企業文化などについてお聞かせください。
米国の心理学者アブラハム・マズローが彼の「欲求5段階説」において、人として最も高次元な欲求は「自己実現の欲求」であると唱えているように、人間が何によって動かされるかというモチベーションは、自分でやりたいことがあり、それが実現できて、褒められ、評価されることだと思います。
そうしたことから、当社グループは創業以来、「世界一、自己実現ができる会社でありたい」、そのために「会社とは、従業員にとっての舞台である」と考えています。
その舞台でどう演じるか、どう踊るかは、「主役」である社員一人一人次第ですので、是非会社を舞台に自分の夢を実現して欲しいと思っています。
もちろん仕事の遣り甲斐には報酬も重要な要素ではありますが、やはりそれだけではない。
そのため、マネージメントは、社員がどんな夢を持ってどんなことをやりたいかということをヒアリングし、それが実現できるようにサポートしてあげるように努めています。

 

 

当社グループにおける評価基準についてもお話ししましょう。
当社グループで一番評価される人は『チャレンジをして成功した人』です。二番目は『チャレンジをして失敗した人』、三番目は『チャレンジをサポートした人』で、評価が一番低い人は『チャレンジをしない人』です。
この、結果だけでなくプロセスを重視する姿勢も、創業以来大切にしてきた、オプテックスグループの経営哲学の一つです。
私自身の経験でも、成功したことは実はさほど覚えておらず、逆に失敗したことが糧になっています。

 

また当社グループでは「多様性の尊重」にも重きを置いています。
「多様な選択肢こそが豊かな社会の証し」との考え方の下、製品開発を通じた社会の多様性に貢献することがオプテックスグループの役割であると考えており、「オプテックス流三方良し」の相手に競合他社を含めているのも、多様性重視の表れです。

 

もちろん、社員一人ひとりの多様性も尊重しており、そのうえで、各自が主体性を発揮して、常に挑戦を続けてもらいたいと思っています。
こうした社員の「自己実現」や「チャレンジ」をサポートするために、様々な制度を設けており、社員が持つ能力を最大限発揮できる企業風土創りを通じて、競争力を更に高めていこうと考えています。

 

Q.続いて御社の競争優位性の源泉である研究・製品開発について、今後の課題も含めてお聞かせください。
先程も申しましたように、当社グループはお客様の使用方法や環境を知りつくし、愚直なまでに一つ一つ問題を解決しようとする中で、新たなアイデアを産み出し、結果として他社が追随できない、付加価値の高い事業に仕上げることが可能な点が大きな強みです。
さまざまな環境やシーンにおいて、センシング性能が発揮できるかを、実際に現地出向いて実験を行ったり、同様の環境をつくって評価テストを実施したりしており、そうした地道な活動によって的確な性能評価を行うことができる点が当社グループの競争力となっています。
今後も、一つの事柄を長くかつ深く掘り込んでいくことで競争力を更に強化していきます。

 

一方で、様々な製品を送り出してはいますが、世界的に高くご評価を頂き、高シェアを実現している屋外用防犯センサーのような製品が新たに生まれていない、つまり新製品の打率向上が課題であるとも認識しています。
これは、企業規模が大きくなるに伴い製品の幅が広がり、全く新しい製品の開発と既存製品の維持・改良とが混在し、ややもすると後者にウェイトがかかっているという点に起因しており、もっとチャレンジが必要であると考えています。

 

そこで、そうした状況を打破し、各事業会社に自社の専門分野をもっともっと深く掘り下げてもらうという狙いもあり2017年に持株会社体制に移行しました。
各社とも全体最適ではなく個別最適で、幅ではなく深さを意識して製品開発に取り組んでおり、今年で4年目となるのですが、各事業会社のやるべきことは非常に明確になってきましたので、新しいものがこれからはもっと出てくると思います。
そうした中、今後は持株会社としてのリーダーシップを一層発揮・強化する必要があると考えています。

 

 

Q.環境課題における取り組み、GHG(温室効果ガス)削減、安全な水の確保についてはどうお考えですか。
GHG(温室効果ガス)削減については、当社グループでは、主に小型のセンサー、およびソフトウェアの開発・販売を行っているため、一般的な製造メーカーに比べて環境負荷は低いと言えます。
また、当社グループの製品は、センサーで人や物を検知し必要なときだけ機械やシステムを動かしたり、センサーを利用して工場ラインの効率化・高品質化に貢献したりするなど、環境負荷低減につながる製品でもあります。
現在、多くのお客様にご活用いただけているのは、経済性と環境性能が両立するためと認識しており、当社グループの製品による温室効果ガス排出削減は、今後も拡大することとなるでしょう。

 

また、当社グループではセンサーを利用した水質測定器を以前から手掛けてきましたが、これを発展させた簡易水質測定機器・システム「WATER it」は、水質測定にかかる手間や時間、コストを大幅に削減することができるもので、今後は世界的な課題である「安全な水の確保」へも製品供給を通じて貢献していきたいと考えています。

 

なおグループ全体でのCO2削減についてのデータ整備については現在、実施体制を構築中であり、可能な限り早期に開示すべく準備を進めています。

 

Q:コーポレートガバナンスについてのお考え、取り組みをお聞かせください。
当社グループが創業時から大事にしてきたこととして、「どんなことでも自由にディスカッションをしていこう」という点が挙げられます。
物事を隠さず、本質的に正しいかどうかというディスカッションを常に行うことのできる風通しの良い会社にしたいという想いは今も変わりません。

 

オープンでフラット、多様性を尊重する当社グループは、国内外で子会社の数が増加し、事業規模も拡大する中、経営の透明性向上と、公正かつ迅速な意思決定を伴う経営システムの維持及び経営監視の強化を目指し、2016年に監査役設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。

 

現在、取締役・監査等委員11名中、3分の1以上の4名が独立社外取締役で、2020年3月開催の定時株主総会では初めて女性の社外取締役を選任頂きました。
今後も、より一層多様性を重視したコーポレートガバナンス体制の構築を進めていきたいと思います。

 

●中期経営計画について

Q.次に、新・中期経営計画のポイントについてお聞かせください。
先頃、当社グループは2020年度を初年度とする3カ年の中期経営計画を発表しました。
新型コロナウイルスの影響も鑑みて、数値目標については再検討も必要かもしれませんが、計画の柱となる考え方には変わりなく、各事業分野における「ビジネスモデル変革への挑戦」が最大のポイントです。

 

SS事業では、従来のセンサー販売主体の「モノ売り」から、お客様課題を解決する「ソリューション提供型事業(=コト売り)」への転換を推進していきます。
FA事業は高付加価値製品の強化によって成長を図ります。
特に注力していくのが食品業界向けに売上を伸ばしている「画像センサー」と、“5G”の波を背景に電子部品業界で需要拡大が予想される「変位センサー」の分野です。
MVL事業では「トータルソリューションベンダー」への変革を目指していきます。
これまで国内の各所に開設してきた実験室を活用して提案力を高めるとともに、カメラ、レンズ、AI、ロボットなど多様な業界との連携を強化し、ニーズが急拡大している「目視検査の自動化」への対応をはじめ、お客様の課題解決をトータルに支援できる事業として進化させていきます。

 

※.新・中期経営計画の詳細は「4.新・中期経営計画」参照

 

 

 

●ROEについて

Q.ROEに関してはどのようにお考えですか。
株主・投資家のご期待に応えることを重視しており、ROE10%以上を経営指標の一つとしています。
各事業会社が推進する基幹事業のさらなる成長と、全体最適視点で経営資源の有効活用を図り、新規事業への絞り込みを行いながら投資を進めていきます。
同時に絶えず創意工夫を重ねながら間接業務の効率化行い、生産性の向上を意識し、利益を最優先することにより経営指標の継続的な実現を目指しています。
またROEを役員報酬決定における要件の一つともしています。

 

●その他のリスク、課題

Q.現在の新型コロナウイルス感染拡大の影響についてお聞かせください。(2020年4月30日現在)
新型コロナウイルス発生直後は中国の自社工場にて従業員が出勤できない状況が続きましたが、現在生産能力は90%程度まで回復してきています。

 

今回の件でサプライチェーン強化の必要性を認識し、生産工場の分散化を進めており、2021年には生産比率を、日本(協力工場:オフロム株式会社、サンオクト株式会社)40%、中国(自社工場:OPTEX DONGGUAN)40%、ベトナム(生産委託:リズムプレシジョンベトナム株式会社)20%を目指すとともに部品調達先の分散化を進めていきます。
当社グループでは、オプテックス株式会社とオプテックス・エフエー株式会社の生産機能を分離・集約することで製造力を強化し、グループ事業の発展に貢献することを目的としてオプテックス・エムエフジー株式会社を2018年に設立したのですが、生産及び調達戦略を一元的に構築・推進できる体制に変更出来たため、これらの施策はスムーズに進めることができるものと考えています。今後はシーシーエス株式会社の生産機能に関しても分離・集約を進め、持株会社制に移行した利点を更に発揮する計画です。

 

また販売面においては、販売先は世界80ヶ国以上に分散しており、製品も業界ごとに多岐に渡っていることから、サプライチェーンに比べリスク分散は図られていると認識しています。

 

Q.世界各国地域のマーケットの大きさから見ると、米州市場の売上構成比は物足りないように感じます。米国での取り組みはいかがでしょうか。
当社グループはセキュリティ、自動ドア、産業用センサーも、海外ではヨーロッパで実績を上げてきました。
米州市場について売上構成が低いのは、進出に失敗したということではなく、まずヨーロッパを中心に展開してきましたから、手が回らなかった、本格的に力を入れてこなかったというのが一番大きな理由です。

 

ただ、現在、北中南米向けの売上額は全グループの13%と少なく、この比率を早急に向上させることは当社グループの重要課題と認識しています。
我々がヨーロッパで成功したということは、製品が米国で成功しないわけはないので、とにかく広大な米国で販売網をどうするのか、営業力をどうやって強化するのかが一番の課題です。
事業ごとの状況は異なるのですが、販売代理店に任せると本気で取り組んでもらえないケースも出てくるので、やはり直販体制を構築することが必要です。
現地法人を設立し、業界に精通した人材を採用するなど一定の人的投資が必要ですが、ここから本格的に取り組んでいきます。

 

防犯関連については、現地ベンチャー企業との提携により「画像確認ビジネス」を開始しました。
自動ドア関連については、現地大手自動ドアメーカーへの自動ドアセンサーのOEM供給を加速していきます。
ファクトリーオートメーション関連では、OPTEX FA INC.を2018年に設立し、直販体制への切り替えを進めており、販売を加速していきます。
MVL関連のシーシーエスが既に拠点を持っていますから、事業会社間の連携強化、シナジー拡大にも挑戦していきたいと思っています。
また、現地でのM&Aについてもホールディングスがリードして積極的に検討していきたいと考えています。

 

●ステークホルダーへのメッセージ

Q.様々なポイントについてお話しいただきありがとうございました。最後にステークホルダーへのメッセージをお願いいたします。
当社グループは1979年の創業時から「ベンチャースピリットの発揮」「オプテックス流三方よし」「ふとるビジネスの拡大」を基本理念に事業拡大に努めてまいりましたが、これらはまさに持続可能な社会を構築するために企業が取り組むべき「ESG経営」そのものではないかと思っています。
これら基本理念をベースに各事業で生み出す製品やサービスが世の中やお客様に「安全・安心・快適・効率」を提供する、これこそが当社グループの果たす役割であり、社会的な存在意義です。

 

新型コロナウィルスの影響により当分は厳しい経営環境が続くと予想されますが、これからも当社グループはステークホルダーの皆様のご期待に応えるべく、積極果敢にチャレンジを続ける中で、持続的な成長と社会への価値提供を目指してまいります。
一方で、ESGに関する具体的な取り組みやデータの開示に関しては、網羅性の観点からは決して十分とは考えておらず、社内体制の整備を中心に、重要な課題として取り組んでまいります。

 

ステークホルダーの皆様におかれましては引き続き温かいご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

3.課題・マテリアリティと取り組み

オプテックスグループが現状認識している課題・マテリアリティは以下のとおりである。
マテリアリティの選定に際しては、社外へのヒアリングも行っている。

 

課題

マテリアリティ

環境 温室効果ガス排出抑制
安全な水の確保
再生可能エネルギーの利用
社会資本 製品の品質・安全性の担保
安全なデータ管理
地理的資本の活用/地域社会との連携
人的資本 従業員の働き甲斐醸成
教育・育成制度
多様性を尊重する企業文化
ビジネスモデル&イノベーション ビジネスモデルの変革
適切なサプライチェーン管理
原材料・部品調達
競争力・ガバナンス 競争力強化に向けた研究/製品開発体制
コーポレートガバナンス体制の拡充
リスク管理

 

*SASB Materiality Mapなどを参考に作成。

 

【3‐1 「環境」課題におけるマテリアリティ】

(1)温室効果ガス排出削減
主に小型のセンサー、およびソフトウェアの開発・販売を行っているため、一般的な製造メーカーに比べて温室効果ガス排出など、環境負荷は低い。
ただ、環境問題に対する企業の役割については強く認識しており、生産工程における温室効果ガス排出削減に取り組むのに加え、センサーの利用により、「人や物を検知し必要なときだけ機械やシステムを動かす」、「工場ラインの効率化・高品質化を図る」など、同社製品自体が環境負荷低減に貢献している。

 

主要事業子会社オプテックス株式会社では、「使用時」のCO2低減を積極的に図るため、全ての新たな製品企画において「環境アセスメント評価」を継続して実施している。
また、同社製品の利用を通じた顧客のCO2削減に貢献する活動を2019年度よりスタートしている。
2021年には、「お客様のCO2削減につながる貢献量の総和」を「同社事業活動で排出する全CO2」の4倍以上にするという目標を掲げている。
また、オプテックス・エフエー株式会社、シーシーエス株式会社においても環境配慮型産業用センサー、環境配慮型LED照明の販売に注力している。

 

なおグループ全体でのCO2削減についてのデータ整備については現在、実施体制を構築中であり、可能な限り早期に開示する予定である。

 

(同社HPより)

 

(2)安全な水の確保
SDGs(持続可能な開発目標)が目標6に「安全な水とトイレを世界中に」を掲げているように、「安全な水の確保」は世界的な課題である。

 

同社が開発した簡易水質測定機器・システム「WATER it」は、採取した水を専用試薬(テストキット)で反応させ、持ち運び可能な測定器(マルチメーター)にセットするだけで、採取した水に含まれている物質の含有量をその場で測定することができる。
測定データはブルートゥースを使ってスマートフォンに転送し、さらにスマートフォンの専用アプリからクラウドに自動的にアップロードされる。
水質測定にかかる手間や時間、コストを大幅に削減し、管理者は、測定結果をすぐに閲覧・管理することができる。
「安全な水の確保」が重要な課題となっているアジア各国への供給を目指しており、現在は国際協力機構(JICA)の委託を受け、ベトナムの流域水環境調査の実証実験を進めている。1年間の実証実験後、本格的にベトナム全土での活用を予定している。

 

(同社HPより)

 

(3)再生可能エネルギーの利用
現在はオプテックス株式会社の本社建屋西館屋上にソーラーパネルを設置している。
2019年の発電量は約2.2万kwhで、西館の総電力消費量約64.6万kwhの3.3%をカバーしている。
今後は生産拠点における再生可能エネルギーの利用も検討している。

 

また、製品開発にあたっても再生可能エネルギーの利用を取り入れている。
東日本大震災以降、ソーラータイプのセンサー照明を開発した。センサーにより人がいない時は消灯し、人を検知すると明るく点灯する。また、ソーラーパネル(太陽電池)により、日中に太陽エネルギーを電気に変換し、バッテリーに充電、夜間はバッテリーに充電されたエネルギーで点灯する。商用電源を必要としないため配線工事は不要であり、送電が困難な場所や停電時でも明かりが確保できる。災害発生時の防災対策や病院などでの医療救護活動のサポートとして貢献する。

 

【3‐2 「社会資本」課題におけるマテリアリティ】

(1)製品の品質・安全性の担保
すべての製品に絶対的な価値を与える信頼を提供するため、最高水準の国際規格をクリアするなど、長期間にわたり安心して使用できる安全性を備えている。また、製品化に際しては顧客の要求を満たす性能を考え、高機能のみでなく、設置環境、使用目的、コストバランスなどを考慮している

 

(主な取り組み)

ノイズ対策技術 数々のノイズを極小化するハードウエア設計、独自に定めた幾多の環境評価を行ない、クリアしたもののみ製品化している。
光学設計 光学シミュレーションを駆使し、抜けの無い高密度センサー検知エリアを実現、小型化を追求するためのパッケージング化技術を有している。
公的規格の遵守 あらゆるグローバルスタンダードに適合、及び準拠し、各業界で定めた規格、ガイドラインへ適合、及び準拠している。(CEマーキング、EN規格[TUV認定]、ANSI規格、JIS規格など)
環境配慮設計 使用制限物質15種、自主管理物質10種を定め、全構成部品の無害化を実現しているほか、RoHS指令適合、無鉛はんだ化、使用時のCO2の影響を最小化する設計を行っている。
安心、安全制御 システムの機能をダウンさせない為のセンサーの異常時や故障時の自己診断、及びフェールセーフ機能を採用している。機能を維持する為の、予防保全策を提案している。

 

(2)安全なデータ管理
事業経営に関わる多岐にわたる重要機密情報の管理を徹底するため、情報セキュリティ管理規程において情報セキュリティ環境を実現するための管理方針、対策標準、実施手順に関する要件を規定し、従業員に対する教育を徹底している。

 

(3)地理的資本の活用/地域社会との連携
~琵琶湖を活かした貢献活動~
主要事業子会社オプテックス株式会社が滋賀県・琵琶湖畔に位置するという同社ならではの地理的条件を活かし、琵琶湖に関連する各種イベントへの協賛をはじめ、地域のスポーツや文化振興への支援活動など、地域社会と交流を図り、様々な社会貢献活動に取り組んでいる。

 

その中心的な活動が琵琶湖畔のオプテックス株式会社社屋およびオーパルオプテックス株式会社の施設を拠点に2002年より本格的に展開している「琵琶湖体験学習」である。
子どもたちに、琵琶湖畔での体験学習の機会の提供と活動支援を目的に実施しているもので、活動内容は、スポーツ体験学習(カヌー、ドラゴンボート、いかだづくりなど)、水環境体験学習(湖畔の生き物しらべ、ヨシ紙を使った笛づくり、湖畔の水環境しらべ、外来魚しらべ、プランクトン観察)など。
特に、学校の教科学習(理科・社会・体育など)、修学旅行、校外学習などに向けて、こうした活動支援を行い、子どもたちに貴重な感動体験を提供している。同活動は有料であるが、滋賀県に限らず近畿圏を中心に他府県からの参加もあり、年々参加人数は増加している。

 

カヌー体験学習

生き物しらべ体験学習

 

 

 

(同社HPより)

 

この他、オーパルオプテックスカヌーチームへの協賛、ペーロン大会、ドラゴンボート大会への協賛なども行っている。

 

~大学で協定講座を実施~
京都の大学において同社経営陣が協定講座を実施している。
2018年には、立命館大学経営学部で「組織とマネジメント」というテーマで同社を事例とした企業経営の実績について15回の講座を実施。毎回約400名の学生が聴講した。
現在は立命館大学に加え、龍谷大学でも実施している。
ステークホルダーとなりうる学生や大学関係者に対する認知度向上を通じて、企業価値向上やリクルーティングに繋がるものと期待している。

 

【3‐3 「人的資本」課題におけるマテリアリティ】

(1)従業員の意識・働き甲斐醸成
同社は創業以来、「世界一、自己実現ができる会社でありたい」という気持ちを抱き続けている。

 

会社とは、従業員にとっての「舞台」であり、その舞台でどう演じるか、どう踊るかは、その従業員次第。
「主役」である従業員一人ひとりが会社という舞台をうまく活用して、各自のステージを変化に富んだ感動的なものにしてほしいと考えており、そのための環境作りに注力している。

(同社資料より)

 

(2)教育・育成制度
創業以来重視してきた、オプテックスグループの経営哲学の一つが「チャレンジ」の尊重である。

 

一番評価される人は『チャレンジをして成功した人』、二番目は『チャレンジをして失敗した人』、三番目は『チャレンジをサポートした人』で、評価が一番低い人は『チャレンジをしない人』というもの。

 

目指す姿は、社員一人ひとりの多様性を尊重し、同時に一人ひとりが主体性を発揮する会社である。
「小國社長」ではなく「小國さん」と役職名を付けずに呼ぶ「さん付け文化」や、携わる社員全員で協力して進む「電車型経営」は、その象徴である。

 

一方、オープンでフラットであるがゆえ働きやすいと同時に、「ぶら下がりを許さない」という厳しさを併せ持っている。
主体的に能力を発揮することが求められることに加えて、常に「挑戦する姿勢」が要求される。
何かに挑戦し、たとえ失敗したとしても、それは前述のように評価としては二番目にあたり、その敗北感を跳ね返してさらなる挑戦を続けることが求められている。

 

 

 

 

(同社資料より)

 

「世界一、自己実現ができる会社」を目指し、従業員一人ひとりが自主性・創造性を発揮し、仕事への誇りとやりがいを持って働くために、さまざまな制度を運営している。

 

教育研修制度 入社時研修、若手社員研修、中堅社員研修、マネージャー基礎研修、新任管理職研修。
オプテックスビジネススクール(OBS) 各グループ会社より管理職候補性を選抜し、年間を通じてドラッカーのマネジメント論について学ぶ。
ドリームデザインシート 全ての社員が年に1度自分のありたい姿や夢を考え、上司や会社と共有し、キャリアパスの実現を目指す。
目標管理制度 会社の方針や方向性を元に各個人の業務目標を設定。上司と定期的に目標に対する振り返りを行い、目標達成を目指す。
社内公募制度 各部署が新たに人材が必要なポジションにおいて、必要なスキルを保有している社員を公募する。応募社員と募集部署が面談を行い、異動を決定する。
社内異動宣言(FA)制度 自身が挑戦したい職種・部署に対して応募する。応募社員と受入部署が面談を行い、異動を決定する。
発明報奨金 発明者の事業貢献を評価しその貢献度に応じた褒賞金を支給する。

 

オプテックスビジネススクールで講義する小林取締役相談役

 

 

(3)多様性を尊重する企業文化
オプテックスグループで大切にされている価値観が「多様性への理解」である。
「多様な選択肢こそが豊かな社会の証し」との考え方の下、まだ世の中にない新しい製品、差別化した製品を開発し、社会の多様性に貢献することがオプテックスグループの役割であると考えている。

 

「オプテックス流三方良し」の相手に「競合他社」を含むのも、「競合他社の製品に追随し、不毛な価格競争をすることは新しいものを産み出さないだけでなく、自社も競合他社も疲弊してしまうだけ」との考えからである。

 

多様性の理解・尊重は、製品開発だけでなく、グローバルな事業展開やPMI(Post Merger Integration)においても活かされており、社員一人ひとりが持つ能力を最大限発揮できる企業風土創りを通じて、競争力を高めている。

 

【3‐4 「ビジネスモデル&イノベーション」課題におけるマテリアリティ】

(1)ビジネスモデルの変革
2020 年度を初年度とする3カ年の中期経営計画における最大のポイントを、各事業分野における「ビジネスモデル変革への挑戦」とした。
SS事業では、従来のセンサー販売主体の「モノ売り」から、お客様課題を解決する「ソリューション提供型事業(=コト売り)」への転換、FA事業においては高付加価値製品の強化による成長、MVL事業では「トータルソリューションベンダー」への変革をそれぞれ目指す。
特にSS事業においては、米国ベンチャー企業とのアライアンスによるサブスクリプションモデルの構築を目指しており、巨大な北米市場開拓を本格的に開始する。

 

(2)適切なサプライチェーン管理
オプテックスグループのサプライチェーンは、全世界に広がっている。
世界80か国以上の顧客へ、高品質の製品を迅速に届けるために、安心できる原材料を安定的に調達し、計画的な生産、迅速に届けるロジスティクスの一連の活動を一体的に構築している。
また、海外売上高比率が50%を超える同社は、世界中の顧客へ製品供給を迅速かつスムーズに行うために、世界4極にハブ倉庫(欧州・香港・日本・北米)を設置し、柔軟性と拡張性の高い独自のサプライチェーンを構築している。
リードタイムの短縮、物流コストの削減による信頼性の向上を実現し、グローバルなビジネスフィールドで、顧客に高い付加価値を提供している。

 

(3)原材料・部品調達
オプテックスグループの生産機能の多くは、オプテックス株式会社とオプテックス・エフエー株式会社の生産機能を分離・集約することで製造力を強化し、グループ事業の発展に貢献することを目的として設立されたオプテックス・エムエフジー株式会社が担っている。

 

オプテックス・エムエフジーは、製品QCDの目標を早期に達成するためには、開発・設計段階からの取り組みが必要だと考えており、国内生産拠点にマザー工場機能を持ち、企画開発から製品の機能や特徴、生産数量、物流コストなどの条件を考慮し、最適な生産拠点を決定することにより、一貫したモノづくりを提供している。
マザー工場では、量産技術の研究、管理技術のシステム化、生産現場の見える化などを推進し、グローバルに展開する生産拠点を「生んで育てる」役割を担っている。
さらに、中国に生産拠点を構え、コストを考慮したモノづくりを実現する一方で、カントリーリスクを考慮し、ベトナムでのモノづくりも開始している。

(同社HPより)

 

部品調達にあたっては、持続可能な調達を推進するため、同社グループの基本理念である「三方よし」を土台とし、以下の方針の下、購買活動を行っている。

グリーン調達の推進 国内外の化学物質規制に関する法令に順守した部品調達を行っている。
信頼関係の構築 サプライヤー含め関係する取引先との信頼関係を構築、相互発展(WIN-WIN)をめざしている。
グローバル調達の推進 QCDを考慮した世界レベルでの最適調達を目指している。 現地調達も含め、部品供給全体のサプライチェーンを最適化しトータルコストの低減を図っている。

 

基本性能を左右する光学部品やセンサー部品類は特注品が多く、技術面などでサプライヤーとの連携が欠かせない。
技術動向などを話し合うミーティングやエンジニア同士が集まる技術交流会を実施するなど、製品性能や品質向上に向けた取り組みを通じ「WIN-WIN」の関係を構築している。

 

(同社HPより)

 

また、製品・サービスのライフサイクル全般を通じて、サプライヤーや製造委託先とともに環境負荷低減に取り組んでいる。
開発された製品の品質を設計どおりに生産し、安定した品質を守るために工場内の環境整備、専門スキルや高いモラルを培う人材教育・訓練のシステムを設け、安全かつ効率的な生産体制を整えている。
加えて、生産技術力をEMS事業としても展開し、開発・設計・調達から量産まで、顧客のモノづくりをトータルでサポートしている。

 

【3‐5 「競争力・ガバナンス」課題におけるマテリアリティ】

(1)競争力強化に向けた研究/製品開発体制
①顧客の視点に立った発想(人間中心設計)でのモノづくり
~開発のフィロソフィー「オプテックスのかたち」~
主要事業会社の一つオプテックス株式会社では、信頼される製品をぶれることなく生みだしていくために、『オプテックスのかたち』として、モノづくりへの想い・考え方を共通の軸となる言葉で明確に表現している。

 

「使うひとになりきる」「0.1mmの気配り」「ムダがない」「粋なはからい」「変わるけど、変わらない」の5つで構成される「オプテックスのかたち」は、実際の現場状況の把握と顧客も気づかない課題の把握、隅々までこだわった品質感、洗練された形状、顧客に感動を与える工夫、ニーズや市場の変化に対応しつつセンサーメーカーとしての変わらない技術力の追求など、過去から継承されてきた同社のモノづくりに対するフィロソフィーであり、開発・企画・営業・生産・品質管理・管理部門など、全社員での共有を図っている。

 

~人間中心設計によるモノづくり~
オプテックス株式会社ではユニークでありながら長く愛される製品を生み出すために、製品に関わるさまざまな顧客の視点に立った発想(人間中心設計)でモノづくりに取り組んでいる。

 

製品化に向け、具体的には以下のようなプロセスを踏んでいる。

1:(調査)利用状況の理解と共感 開発や営業が一体となって世界中の設置現場を訪問し、どのような人が、どんな状況で、どのように使われているかを確認したり、顧客からの生の声をヒアリングしたりしている。

これらのプロセスを通じて、顧客や現場の状況を正しく認識し、「本当のニーズを満たすもの」は何かを探り出している。

2:(分析)顧客の課題やニーズの明確化 顧客が同社の製品を知り、選択、利用されるまでの各フェーズでどのような感情をもち、どのような行動を取るかなどを理解・可視化することで、課題発見や、メンバーでの認識の共有を行っている。

また、顧客への提供価値、要求品質の明確化・整理を行い、製品開発に展開している。

3:(設計)プロトタイピングによる解決案の具現化 デザインを具現化した試作品を繰り返し作成することで、客観視し「思考」を深め、仮説と検証のサイクルを回して、より良いモノづくりへ繋げていく。
4:(評価)要求事項に対する設計の評価 社内で被験者(顧客になりきる)を設定し、実際にその製品を設置した時の操作の様子や発した言葉から、製品の“使いにくい・わかりにくい”や“要求を満たしているか”を見つけ出すための評価を行っている。

開発者や営業をはじめとした関係者で実施し、定量・定性的な評価結果を分析し、製品開発にフィードバックしている。

 

 

②「信頼性」と「性能」を実現するための製品評価テスト
オプテックスグループは、すべての製品に絶対的な価値を与える「信頼性」と顧客の要求を満たす「性能」を実現するために、さまざまな製品評価テストを実施している。

 

同社のセンサーが利用される屋外環境では、雨や風、気温の変化、雷、小動物など、日々想定外の現象が多くの影響を与えることになる。
信頼感の高いセンサーを作り上げるには、そうした現象を一つ一つクリアすることが不可欠であり、用途に応じて、150を超える製品評価テストを実施している。
また、世界各国に広く販売しているため、各国の法令や公的規格に準拠したグローバルスタンダードをとり入れ、世界中の顧客が安心して利用することのできる製品づくりを目指している。

 

さまざまな環境やシーンにおいて、センシング性能が発揮できるかを、実際に現地に出向いて実験を行ったり、同様の環境をつくって評価テストを実施したりしている。こうした地道な活動ではあるが、的確な性能評価を行うことができることがオプテックスグループの競争力となっている。

 

(主な評価テスト)

豪雪テスト 降雪、吹雪、路面の雪が巻き上げられる地吹雪のように雪の降り方も異なる。実際に製品が設置される屋外の厳しい自然環境の中での実験を行っている。
霧テスト 視界の悪い霧の中でも確実に人を検知するために、山間部でのフィールドテストや人工的に特異環境をつくり、評価を行っている。
長雨テスト 自然環境試験は、屋外に設置されるセンサーでは必須項目として、さまざまな条件下で実施している。一日あたりの降雨量の観測記録を超える長雨テストやレンズに付着する水滴など、悪環境での試験を実施している。
人検知テスト さまざまな人の動きや特性でも確実に人を検知するために、地面を這ったり、回転したり、背丈や髪型、歩くスピードの違いなどあらゆる条件を想定したテストを行っている。
耐久テスト 長く安心して利用してもらうために限界テスト、耐久テスト、衝撃テストなどを実施している。

例えば、スイッチ類のON/OFFの連続試験や破壊行為による負荷を容赦なく加える過酷な「衝撃テスト」を実施している。

ボールテスト 自然環境による評価だけではなく、物体に対してもテストを行っている。

たとえば自動ドアの前で、ボールが転がってもドアが開かないようにするための性能テストを実施している。

 

(2)コーポレートガバナンス
株主、投資家をはじめ、顧客、社会からの信頼を獲得しつつ、継続的に企業価値を向上させることが最大の使命であると認識している。その実践のためにコーポレートガバナンスの充実を経営の最重要課題の一つと位置付けて、経営の透明性向上と、公正かつ迅速な意思決定を伴う経営システムの維持及び経営監視の強化を目指している。
監査・監督機能の強化とコーポレートガバナンスのさらなる充実を図ることを目的として、2016年に監査役設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。

 

現在、取締役・監査等委員11名中、3分の1以上の4名に独立社外取締役(国内大手電機メーカー技術者・役員経験者1名、公認会計士2名、弁護士1名)を選任し、取締役会での活発な議論を通じた意思決定で、戦略の質を高め、更なる企業価値の向上を目指している。

 

(コーポレートガバナンス報告書からの抜粋:2020年3月27日更新)
【原則1-4.政策保有株式】

当社は、当社グループの事業戦略上において、取引関係の強化と企業価値向上に資すると判断した場合に限り、取締役会での審議・決議を経て取得し、保有いたします。また、保有する株式につきましては、毎年取締役会においてその意義について検証を行い、目的とする合理的価値が乏しいと判断した場合には、市場動向等を勘案して売却し、縮減に努めております。

 

現在当社が保有する政策保有上場株式 : 1銘柄 48百万円(貸借対照表計上額)

 

なお、保有する株式の議決権行使については、当該企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に寄与するか、株主価値が大きく毀損されないかを判断基準として個別に精査し、総合的に判断して賛否を決定します。

【補充原則4-11-1.取締役会の全体としてのバランス、多様性及び規模】

 当社の取締役会は、企業経営・経営管理、技術開発、生産、営業販売、海外での勤務経験、会計の専門性等をそれぞれ有効に活用する取締役8名(男性7名、女性1名)(その員数を9名以内としております。)と、豊富な監査経験、弁護士、公認会計士・税理士の資格を有する等、高い見識と知見を有する監査等委員である取締役3名(男性3名)(その員数は4名以内としております。)で構成されており、中長期的な当社の経営戦略を推し進めるうえで、現状、当社及び当社グループの規模等を勘案し、適切な構成バランスであると考えております。

なお、多様性や専門性のバランスについては今後とも引き続き最適化に向けて検討を進めてまいります。

【補充原則4-11-3.取締役会の実効性の分析・評価】

 当社では、取締役会のさらなる実効性の向上を目的に、全ての取締役を対象としたアンケートを年1回実施し、その集計結果をもとに取締役会において建設的な議論を行い分析・評価を実施しております。

 本年2月に実施しましたアンケート(取締役11名 100%回答)の結果、当社の取締役会はその役割・責務に照らし、実効性をもって概ね機能していると評価しております。昨年一部指摘のあった、審議事項への時間配分の適正性や経営戦略の方向性決定へ取締役会の役割は向上しているとの結果となりましたが、一方で、社外取締役同士の意見交換環境の充実並びに持株会社として、経営戦略に対する各事業会社への方針展開や注力分野への整合性について、中長期的な戦略議論の時間をさらに充実させることにより、一層の機能性の向上を図ることができるとの認識を共有しております。

今後はこれら事項の改善に努め、取締役会全体の継続的な実効性確保・強化を図ってまいります。

 

(3)リスク管理
オプテックスグループ株式会社およびその連結対象子会社における役職員に対し、遵法精神に基づく企業活動並びに役職員の行動の徹底を図るため、「オプテックスグループコンプライアンス推進委員会」を組成している。
グループコンプライアンス推進委員長に代表取締役社長、事務局長に専務取締役が就任し、各事業会社から委員を募り、重要事項を共有、検討し、コンプライアンスに関する取り組みへの理解や意識の向上を図るとともに、効果的に各社への展開を図る体制を構築している。

 

実践活動としては、各社リスクマップの作成と更新、内部通報や36協定違反などの報告や各種ハラスメント対策としての勉強会実施や説明資料の配布などを行っているほか、「オプテックスグループ行動規範」を制定し、周知徹底することによりグループ全役職員のコンプライアンスに対する意識の維持向上に努めている。
さらに、リスク情報を早期に収集することを目的とした内部通報制度を整備するとともに、通報をしたことによる不利益な扱いを受けないことを「コンプライアンス規程」に明記し、グループ企業全てに周知徹底している。

 

4.新・中期経営計画

新たに2020年12月期を初年度とする3年間の中期経営計画を打ち出した。
「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!新しいことをやってみよう!」との企業理念の下、各事業において「ビジネスモデル変革への挑戦」に取り組み、以下のような経営目標達成を目指す。

 

【4‐1 テーマ・数値目標】

中期連結経営目標

2022年度売上高営業利益率15%達成を目指す
収益構造変革と一人当たり生産性向上を図る
連結売上高10%成長を持続し、2022年度500億円へ再チャレンジ

 

 

【4‐2 各セグメントにおける取り組み】

Ⅰ.SS事業の挑戦:「モノ売り」から「コト売り」への変革
今までは良い性能・品質・仕様の製品を提供することが中心であったが、顧客・ユーザーは製品が欲しいのではなくその製品を用いた課題解決「ソリューション・サービス」を欲しているとの認識の下、2つの成長戦略を掲げている。

 

【成長戦略1:犯罪を未然に防ぐ屋外事前防犯の普及「画像確認ソリューション」】
(1)アラームモニタリングの市場規模と現状・課題
屋外センサーを用いたアラームモニタリングの契約件数は、全世界で9,000万件以上。うち、北米4,000万件、EMEA2,000万件(うち、英国300万件)と北米と英国でほぼ半数を占めている。

 

ただ、海外では多数導入されているアラームモニタリングではあるが、警備通報の95%は誤報という。ユーザーの機械操作ミスが圧倒的に多いが、屋外センサーの誤動作のケースもある。

 

現在のアラームモニタリングにおいては下記の図のように、センサーからのアラーム信号と監視カメラからのカメラ映像が連動することなくモニタリング会社に送信されている。
このため、モニタリング会社はアラーム信号を受信しても現場の映像を確認することなくユーザーや警察へ通報することとなり、これが誤報の原因となっている。
また、米国では、モニタリング会社から通報を受けるのは警察であるが、誤報による出動の場合はユーザーが罰金を支払う義務があるなど、実際の稼働には様々な課題がある。

 

(同社資料より)

 

(2)画像確認システムの概要
屋外センサーで世界的に高い評価・信頼を得ている同社は、こうした誤報問題が解決できれば屋外アラームモニタリングを普及させ、同市場の拡大に繋がると考え、新たなアラームモニタリングシステムを開発することとした。

 

①仕組み
新たなシステムではアラームモニタリングシステムと監視カメラシステムを連動させるゲートウェイを設置する。
既存システムにゲートウェイとオペレーションソフトを増設することでモニタリング会社は常にアラーム信号とリンクしたカメラ映像を受信できるため、誤報の発生率を大幅に引き下げることができる。

 

(同社資料より)

 

同システムは、戦略的提携先である米国「チェクト社」の画像確認ソリューションを組み入れたゲートウェイ利用することで実現した。
チェクト社は2014年に設立されたベンチャー企業で、CEOは警備会社のオーナー兼CEOでもあるため、警備業界に関する知識が深い。
このため、警備会社の業務経験を元に開発された現場ニーズに適したソリューションを提供することができる。また、高度なITスキルを必要とせず、業界標準規格のネットワークカメラに接続可能なシステムを構築しているほか、無料の使いやすいオペレーションソフトを提供していることも強みである。

 

②ビジネスモデル
オプテックスグループは、北米及び英国で同システムを販売する独占的権利を有しており、ゲートウェイを始めとした単品売りだけではなく、システムの提供によるサブスクリプション型課金ビジネスを展開する。
低コストでの取り付けが可能で誤報の可能性の低い同システムはユーザー、モニタリング会社、警察を含むすべての関係者にメリットがあると考えており、WIN-WINなビジネスモデルの普及を目指していく。

 

③ターゲットと数値目標
北米・EMEA地域において、商業施設・事務所、高級住宅などハイエンド層をターゲットに同システムを提供。
2023年累計で25億円程度の売上高を目指している。

 

【成長戦略2:検知対象は「人」から「モノ」へ:「車両検知用センサー」と「満空管理ソリューション」】
便利で安全な車社会の実現を目指し、2つの製品、ソリューションを提供する。

 

(1)「車両検知用センサー」
コインパーキング向けに地中埋設不要の「車両検知用センサー」を開発・販売した。
埋設が不要なため施工期間を半分に短縮できることに加え、メンテナンスの手間とコストも削減できる。
駐車場機器メーカーとのタイアップにより、駐車場運営会社へ販売する。

 

(2)「満空管理ソリューション」
駐車場の満空情報を把握できる「満空管理ソリューション」を提供する。
ワイヤレス車両検知センサーにより駐車場の混雑状況や空き車室の場所を把握して、満空情報をクラウドで管理。
ドライバーは遠隔地でも状況を知ることができ、利便性は大幅に向上する。

 

(同社資料より)

 

2022年、10億円程度の売上高を目標としている。

 

【成長戦略3:検知対象は「人」から「モノ」へ:「衛生管理ソリューション」】
キッコーマンバイオケミファ株式会社へのOEMにより、衛生状態モニタリングソリューションを提供する。
センサーにより、手指・まな板・調理台等の洗浄度を検査し、結果を確認。食品製造現場等様々な場所に潜むリスクを見える化する。
測ったその場で結果がわかるため、衛生管理者は一括管理・分析に加え、管理コストの低減や時間短縮が可能である。
様々な現場の衛生管理に貢献する。

 

(同社資料より)

 

Ⅱ.FA事業の挑戦:「高機能製品の強化」と「インダストリー4.0対応」
同社の強みである画像センサーおよび変位センサーに注力する。
画像センサーに関しては、ほぼ未着手の海外市場開拓を進める。
変位センサーに関しては、能力増強し今期中に業界最高レベルの新製品を投入する。5Gおよびロボット関連需要の取り込みを図る。

 

「高機能製品の強化」

(同社資料より)

 

「インダストリー4.0対応」
センサーの一元管理を行いインダストリー4.0に対応する「IO-Linkセンサー」と「IO-Linkゲートウェイ」を発売する。
センサーと上位の制御システムとの間で各種データ交換を双方向に行える通信技術であるIO-Linkにより、各種機器の状況を遠隔で把握し、耐久期限を予知したり、故障時に最短で復旧したりできる。
ドイツNo1センサーメーカーであるSICK社との協業を活用し普及を促進する。

 

(同社資料より)

 

Ⅲ.MVL事業の挑戦:「画像検査用照明メーカー」から「トータルソリューションベンダー」へ
今回の中期経営計画においては、同事業を牽引役と位置付けている。
同事業を担うシーシーエス株式会社では、「ユーザーは照明電源が欲しいのではなく「見える!」、「出来る!」が欲しい」との基本アイデアの下、照明、電源に加え、カメラ、レンズを付加したソリューションの提供に加え、更にボード、画像処理ソフト、AI、ロボットを組み合わせたさらに拡張したソリューションの構築、提案ステージの引き上げを目指している。
価格競争に陥らないためにもスピードが重要と考えている。

 

(同社資料より)

 

また、AIやロボットの活用により、2,500億円といわれる目視検査市場の開拓も目指している。

 

5.財務:非財務データ

(1)財務データ

◎BS/PL

 

2015/12期

2016/12期

2017/12期

2018/12期

2019/12期

売上高

27,793

31,027

37,504

40,113

37,517

営業利益

3,161

3,015

4,885

4,989

2,856

経常利益

3,222

3,086

5,036

5,038

2,876

当期純利益

2,051

1,809

3,386

3,775

2,197

EPS(円)

123.96

109.33

97.63

104.85

60.02

ROE(%)

8.7

7.4

12.6

12.3

6.8

ROA(%)

10.6

9.0

12.7

11.9

6.6

総資産

30,861

37,681

41,569

43,291

43,967

純資産

25,603

28,654

32,006

32,345

32,372

自己資本比率(%)

78.0

65.0

70.1

74.5

73.2

*単位:百万円

 

◎CF

 

2015/12期

2016/12期

2017/12期

2018/12期

2019/12期

営業CF

2,355

3,487

4,404

1,955

3,621

投資CF

-1,547

-2,341

-328

-1,588

-992

フリーCF

808

1,146

4,076

367

2,629

財務CF

-438

-565

-2,067

-762

-1,721

現金・現金同等物

9,901

10,000

12,293

11,563

12,396

*単位:百万円

 

(2)非財務データ

①環境関連
◎環境配慮型製品の販売推移(オプテックス・エフエー株式会社)

 

2014

2015

2016

2017

2018

2019

環境配慮型産業用センサー

100

101

146

233

272

228

環境配慮型LED照明

100

131

172

209

268

211

*2014年の販売個数=100

 

◎LED照明によるCO2削減貢献量(シーシーエス株式会社)

 

2014

2015

2016

2017

2018

2019

CO2削減貢献量

5,103

5,122

6,238

7,337

7,431

6,933

*単位:t-CO2

 

②社会資本関連
◎特許・意匠登録件数

地域

特許

意匠

日本

107

32

アメリカ

49

17

ヨーロッパ

82

19

アジア

13

44

その他

4

12

*2019年、オプテックス株式会社

 

③従業員関連
◎国内グループ企業従業員構成(2020年4月1日時点)

 

全従業員数

男性

比率

女性

比率

【合計】

955

724

76%

231

24%

正社員

853

684

80%

169

20%

嘱託社員(定年再雇用)

30

23

77%

7

23%

有期雇用社員(パート除く)

72

17

24%

55

76%

*単位:人

 

◎育児休業取得者

年度

総数

男性

女性

2019

17

0

17

2018

10

0

10

*単位:人

 

◎産前産後休暇・育児休暇後の復職者数

過去3年間の育児休業

からの復職者数(累計)

復職率

14人

100%

**単位:人過去3年間(2017~2019年)実績

 

◎育児短時間勤務者

年度

総数

男性

女性

2019

12

0

12

2018

9

0

9

*単位:人

 

◎定年後再雇用者数

期間

対象期間の定年退職者数

(累計)

対象期間の再雇用者数

(累計)

再雇用者率

2017年~2019年

23

22

96%

2016年~2018年

20

17

85%

*単位:人

 

◎新卒入社者の定着状況

 

2014年4月の

新卒入社数

うち、2017年4月在籍者数

2015年4月の新卒入社数

うち、2018年4月在籍者数

2016年4月の新卒入社数

うち、2019年4月在籍者数

人数

14

13

15

13

15

12

定着率

 

93%

 

87%

 

80%

定着率(3年平均)

87%

*単位:人

 

※:従業員関連データの対象企業:オプテックスグループ㈱、オプテックス㈱、オプテックス・エフエー㈱、シーシーエス㈱、オプテックス・エムエフジー㈱、 ㈱スリーエース、オーパルオプテックス㈱、技研トラステム㈱、㈱ジーニック

 

<参考>

ESG Bridge Reportの発行に際しては、柳 良平氏(京都大学経済学博士、エーザイ株式会社専務執行役CFO、早稲田大学大学院会計研究科客員教授)に多大なご協力を頂いた。
この「参考」のパートでは、ESG Bridge Report発行の趣旨についても述べさせていただくとともに、同氏の提唱する「ROESGモデル」の概要を同氏の著作「CFOポリシー」から引用する形で紹介する。

 

(1)ESG Bridge Reportについて

ESG投資がメインストリーム化する中で、投資家からは日本企業に対し積極的なESG情報開示が求められ、これに呼応する形で統合報告書作成企業数は増加傾向にあります。
ただ、統合報告書の作成にあたっては経営トップの理解・関与が不可欠であることに加え、人的リソースおよび予算負担から多くの企業が踏み出すことができていないのが現状です。
また、統合報告書の作成にあたっては各種データの整理、マテリアリティの特定、指標や目標値の設定など多くのステップが必要ですが、現状の準備不足のために二の足を踏んでいるケースも多いようです。

 

しかし、柳氏が「CFOポリシー」で、「日本企業が潜在的なESGの価値を顕在化すれば、少なくとも英国並みのPBR2倍の国になれるのではないだろうか」「ROESGの実現により日本企業の企業価値は倍増でき、それは投資や雇用、年金リターンの改善を経由して国富の最大化に資する蓋然性が高い」と述べているように、日本企業のESG情報提供は、日本全体にとっても有意で積極的に推進すべき事項であると株式会社インベストメントブリッジは考えています。

 

そこで、一気には統合報告書作成には踏み出せないものの、ESG情報開示の必要性を強く認識している企業向けに、現時点で保有するデータやリソースをベースに、投資家が必要とするESG情報開示に少しでも近づけるべく、弊社がご協力して作成しているのが「ESG Bridge Report」です。
日本企業のESG情報開示を積極的に後押ししている日本取引所グループが発行している「ESG情報開示実践ハンドブック」のP6には「ここで紹介している要素が全て完璧にできていないと情報開示ができないということでもない。自社の状況を踏まえてできるところから着手し、ESG情報の開示を始めることで、投資家との対話が始まり、そこから更なる取組みを進めていく際に、本ハンドブックが手がかりになることを期待している」とありますが、「ESG Bridge Report」は、まさに「できるところから着手し、ESG情報の開示を始める」ためのツールであると考えています。

 

柳氏によれば「ROESG」の本格的な展開のためには、ESGと企業価値の正の相関を示唆する実証研究の積み上げ、企業の社会的貢献が長期的な経済価値に貢献する具体的事例の開示などが必要とあり、実際のハードルは高いのですが、各企業のESGへの取り組みがいかにして企業価値向上に繋がっているかをわかりやすくお伝えしたいと考えています。

 

お読みいただいた多くの投資家からのフィードバックを基に、よりクオリティの高いレポートへと改善してまいりますので、是非忌憚のないご意見を賜りたいと存じます。

 

株式会社インベストメントブリッジ
代表取締役会長 保阪 薫
k-hosaka@cyber-ir.co.jp

 

 

(2)「ROESGモデル」について

(拡大する非財務資本の価値、ESG投資の急増、ESGと企業価値をつなぐ概念フレーム策定)
近年、多数の実証研究において企業価値評価における非財務情報の重要性拡大が証明されており、今や、企業価値の約8割は見えない価値(無形資産)、非財務資本の価値と推察される。
加えて、非財務情報と企業価値の関係を調べた多数の実証研究の結果から、ESGと企業価値は正の相関を持つ蓋然性があると考えられる。
一方、グローバルにESG投資のメインストリーム化が進む中、潜在的なESGの価値にもかかわらず多くのケースでPBRが1倍割れもしくは低位に留まる日本企業は、PBR上昇のために「ROESGモデル」により、非財務資本を将来の財務資本へと転換すること、つまりESGと企業価値をつなぐ概念フレームを策定して開示する必要がある。

 

(「ROESGモデル」の概要)
株主価値のうち、「PBR1倍相当の部分」にあたる株主資本簿価は現在の財務資本・財務価値により構成される。
一方、株主価値のうち「PBR1倍超の部分」にあたる市場付加価値は、(将来の財務資本ともいえる)非財務資本により構成されると同時に、残余利益モデルにおいてはエクイティス・プレッド(ROE-株主資本コスト)の金額流列の現在価値の総和でもある。
このことから柳氏は、非財務戦略の結論として「非財務資本とエクイティ・スプレッドの同期化モデル」=「ROESGモデル」を、ESGと企業価値を同期化する概念フレームワークとして提案している。

 

 

 

「ROESGモデル」においては、「市場価値(MVA)」を通じて残余利益の現在価値の総和としてのエクイティ・スプレッドと非財務資本が相互補完的である、つまり、エクイティ・スプレッドによる価値創造はESGを始めとする非財務資本の価値と市場付加価値創造を経由し、遅延して長期的には整合性を持つ。
そのため、ESG経営は資本効率を求める長期投資家とは市場付加価値を経由して同期化でき、協働が可能であろう。
これを傍証するように、柳氏が実施した投資家サーベイにおいては、世界の投資家の大多数が「ESGとROEの価値関連性を説明してほしい」と要望していると同時に、「ESGの価値の100%あるいは相当部分をPBRに織り込む」と回答しており、「ROESGモデル」は間接的にも長期投資家の大半から支持されていると解釈できよう。
(同氏の「ROESGモデル」の詳細については、柳良平著「CFOポリシー」中央経済社(2020)
をご参照されたい。

株式会社インベストメントブリッジ
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