ブリッジレポート:(4634)東洋インキSCホールディングス 市場の低調により減収減益

2019/09/19
 

北川 克己 社長

東洋インキSCホールディングス株式会社(4634)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

化学(製造業)

代表取締役社長

北川 克己

所在地

東京都中央区京橋2-2-1

決算月

12月末日

HP

https://schd.toyoinkgroup.com/ja/index.html

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,268円

60,621,744株

137,490百万円

5.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

90.00円

4.0%

205.51円

11.0倍

3,712.20円

0.6倍

*株価は9/6終値。発行済株式数19年12月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

283,208

18,470

18,697

12,190

40.87

15.50

2017年3月(実)

268,484

19,222

19,257

12,687

42.95

16.00

2017年12月(実)

240,344

16,823

17,528

10,424

35.71

16.00

2018年12月(実)

290,208

15,337

15,508

11,899

203.81

85.00

2019年12月(予)

300,000

17,500

18,000

12,000

205.51

90.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。I当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。2017年12月期は9カ月決算。
2018年7月1日付で株式併合(5株を1株)を実施。遡及修正はしていない。

 

 

東洋インキSCホールディングス株式会社の2019年12月期第2四半期決算概要などをご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年12月期第2四半期決算概要
3.2019年12月期業績見通し
4.今後の注目点
<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度-2020年度)>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 2019年12月期第2四半期の売上高は前年同期比1.1%減の1,393億円。ポリマー・塗加工、パッケージは堅調だったが、スマートフォン市場等の低調と為替の影響により減収。営業利益は同22.2%減の60億円。価格改定(+11億円)のプラス要因はあったが、ナフサ価格上昇に伴う溶剤など原材料価格高騰(-10億円)、メディア材料の販売数量減(-8億円)や販売価格下落(‐5億円)などが影響した。 
  • 業績予想に変更はない。19年12月期通期の売上高は前期比3.4%増の3,000億円、営業利益は同14.1%増の175億円の予想。ただ、売上、利益とも進捗率は低水準。米中貿易摩擦による影響など、先行きは非常に不透明と認識している。計画達成のためには、メディア材料やパッケージ用インキ等における価格改定(+7億円)、メディア材料(中国・台湾市場)や機能性フィルムの拡販(+17億円)、固定費の削減・原材料代替、処方見しなどトータルコストダウンの推進(+16億円)などが必要と考えている。配当は5円増配の90.00円/株を予定。予想配当性向は43.8%。 
  • 通期業績予想は据え置いたが、米中、日韓など先行きを見通すのが極めて難しいと認識しており、第3四半期時点で見極めていくとのことだ。価格改定、拡販、トータルコストダウンの推進により営業利益175億円達成を目指しており、特に上期は唯一の利益押上げ要因であった価格改定が下期も想定通り進めることができるのかを原材料価格動向と共に注目したい。中期的な視点としては、引き続きモビリティ、ヘルスケア、環境といった成長キーワードに関連する製品をどれだけスピーディーに市場投入していくことができるのかを注目したい。 

1.会社概要

国内印刷インキ首位。インキ製造の原材料である顔料や樹脂加工技術を活かし、液晶用カラーフィルター材料、電磁波シールドフィルムなど多角的に製品を展開。国内外66社の連結子会社、9社の持分法適用関連会社でグループを構成。世界22か国の拠点を基盤に様々な国や地域で事業を展開(2018年12月末)。
社員一人一人が革新的に発想し、科学的に実行、加えてそれぞれの活動を連鎖させることで生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していくことをコンセプトとした長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、2027年に向け持続的成長を可能にする企業体質への変革を目指している。

 

【1-1 沿革】

1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。

 

当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。

 

印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶フィルム部材など他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。

 

【1-2 経営理念など】

企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念」を、1993年4月に制定した。2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指してゆく。

 

<東洋インキ経営理念>

経営哲学 人間尊重の経営
   
経営理念 私たち東洋インキグループは世界に広がる生活文化創造企業を目指します。

◇ 世界の人々の豊かさと文化に貢献します。

◇ 新しい時代の生活の価値を創造します。

◇ 先端の技術と品質を提供します。

   
行動指針 ◇ 顧客の信頼と満足を高める知恵を提供しよう。

◇ 多様な個の夢の実現を尊重しよう。

◇ 地球や社会と共生し、よき市民として活動しよう。

◇ 株主権を尊重し、株主価値向上に努め市場の評価を高めよう。

 

この理念体系は理念カード(クレド)として全社員が常に携帯し、毎週部単位で行われる5分間ミーティングで読み合わせ、ディスカッションを行うなどして繰り返し確認し、より深い理解、実践を図っている。
また、海外も含めたグループ企業一体化のためにグローバル社内報を発行しているが、そのトップページには必ず「東洋インキグループ経営理念」を掲載。上記クレドも、「日・英」版に加え、「中・英」版もあり、経営理念の全世界的な共有・浸透に注力している。

 

【1-3 市場環境】

◎概要
(市場動向)
日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。
一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2018年までのCAGR(年平均成長率)は+2.1%と堅調に拡大している。

 

 

一方、海外、特に新興国では、紙を対象物とした印刷(オフセット印刷)、食品パッケージなど主にフィルムを対象物とした印刷(グラビア印刷・フレキソ印刷)、共に今後の成長が予想されており、同社もその需要取り込みに注力している。
印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるという事だ。

 

(印刷会社と印刷インキ会社)
経済産業省「平成30年工業統計表・産業別統計表データ」によれば、2017年の印刷・同関連業の事業所数は全国で22,210だが、うち98.1%にあたる21,798事業所は従業員数100人未満の中小企業である。

 

 

同社の顧客である印刷会社は印刷インキを購入して印刷を行うが、単純に印刷インキと紙をセットして機械を動かせば印刷できるというものではない。印刷会社が直面する「初めての紙を使用する際のインキの選択」、「特別な色を出す」、「今まで以上の高級感を出す」といったニーズや、印刷効率の向上や環境対策といった課題に対し、印刷インキ会社は顧客ニーズに合致した新製品の紹介や、様々なアドバイスを印刷会社に提供している。
国内約22,000社のうち、殆どの印刷会社は、こうしたソリューション無しにはスムーズに業務を進める事は難しく、印刷産業において印刷インキ会社は極めて重要な役割を担っている。
このため顧客である印刷会社は同社との直接取引を求めており、その結果、同社国内売上の8割近くが顧客への直接販売となっている。こうした顧客との強固な関係性は同社の大きな特徴となっている。

 

◎同業他社
インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。
(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、同社は国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは3位にランキングされている(2位は欧州企業)。(4633)サカタインクスは同社の第2位株主で、主に物流面での相互補完を図り2000年に資本業務提携契約を締結している。

 

   

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

4116

大日精化工業

169,000

-0.8%

9,000

+3.2%

5.3%

50,757

8.1

0.5

4.1

4631

DIC

790,000

-1.9%

43,000

-11.1%

5.4%

264,536

8.8

0.9

10.4

4633

サカタインクス

170,000

+4.9%

6,800

+33.0%

4.0%

56,466

10.0

0.7

6.3

4634

東洋インキSCHLD

300,000

+3.4%

17,500

+14.1%

5.8%

130,397

10.5

0.6

5.4

4635

東京インキ

47,000

+5.3%

1,250

+0.9%

2.7%

6,460

6.4

0.3

5.1

4636

T&K TOKA

52,770

+6.3%

1,270

+244..8%

2.4%

22,199

13.5

0.5

1.4

*売上高、営業利益は各社の今期予想。ROE、PBRは前期実績。単位:百万円、倍。時価総額は2019年9月2日終値ベース。

 

【1-4 事業内容】

◎「印刷インキ」について
同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。

 

<印刷インキの構成要素>

顔料(有機顔料、無機顔料など)

水、油に不溶の着色に用いる粉末。

ワニス(合成樹脂、油脂類、溶剤など)

油脂類、天然樹脂、合成樹脂等を溶剤に溶かしたもので、顔料を分散し、印刷素材に転移、固着させる。

添加剤(滑剤、硬化剤など)

乾燥性や流動性等いわゆる印刷適性や印刷効果を調整する。

 

この3つの原材料を混ぜ合わせて各種インキを製造する際に高度な分散技術が必要となる。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。

 

<主な印刷インキの種類と用途>

種類

特徴・用途

平版インキ

対象物を紙とする代表的な印刷インキ。雑誌、ポスター、チラシなど。

グラビアインキ

微細な濃淡が表現できるので、写真画像の印刷等に適している。現在では主に食品包装材などフィルムへの印刷に使用される。

スクリーンインキ

他の印刷方式では印刷が困難な被印刷物を中心に、自動車の計器類、基板回路形成、CD・DVDといった工業製品などで使用される。

フレキソインキ

ダンボールやフィルム、布などの表面印刷に利用される。

UV硬化型インキ

乾燥工程で、熱風ドライヤーを使用せずに瞬間乾燥することから、CO2を直接発生させないUV硬化印刷に用いられる。VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を発生しない環境調和型インキである。

 

◎事業セグメント
「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。
このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。

 

 

☆色材・機能材関連事業

 

18/12期

売上高

74,660

営業利益

5,390

利益率

7.2%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

化成品

顔料、高機能顔料、CF(カラーフィルター)ペースト

表示材料

液晶カラーフィルター用レジストインキ

着色剤

着色剤、機能性着色剤

その他色材・機能材

記録材塗料、開発品

 

 

印刷インキの主たる原材料である有機顔料を母体として、色材技術、有機化学合成技術、高度な分散技術との融合によって様々な分野で使用される材料を提供している。中でもインキや塗料の製造で蓄積された技術の結集によるナノレベルの分散加工技術から、さらに機能を高めた液晶カラーフィルター材料を生み出した。
さらに分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業

 

18/12期

売上高

66,099

営業利益

6,035

利益率

9.1%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

塗工材料

粘着テープ、接着テープ、マーキングフィルム、電磁波シールドフィルム

接着剤

粘着剤、接着剤、ラミネート接着剤、ホットメルト

塗料・樹脂

製缶塗料、樹脂、機能性ハードコート

その他ポリマー・塗加工

メディカル製品、天然材料、開発品

 

 

中核素材の機能性樹脂にさまざまな機能を付与した製品を開発している。長年にわたって培われた独自技術を用いて新たな機能を創造し、エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア関連などの分野において、新たな需要の開拓、市場の創造を目指している。

 

☆パッケージ関連事業

 

18/12期

売上高

68,047

営業利益

1,491

利益率

2.2%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

リキッドインキ

グラビアインキ、フレキソインキ、グラビア溶剤

グラビア機器製版

グラビア機器・製版

 

 

グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの、パッケージ向け印刷用インキおよび機器を取り扱っている。
食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。

 

☆印刷・情報関連事業

 

18/12期

売上高

79,378

営業利益

931

利益率

1.2%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

オフセットインキ

オフセットインキ、新聞インキ、UV(紫外線硬化型)インキ、金属インキ、スクリーンインキ

印刷材料機器

印刷機械・機器、印刷材料

インクジェット・その他

インクジェットインキ、その他開発品など

 

 

創業以来の中心セグメント。紙への印刷に使用する印刷インキが中心製品。

 

印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。

 

◎海外展開
大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取組んでいる。
海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。
2018年12月末現在、約50の海外連結対象子会社、50ヶ所の生産拠点を有し、幅広い国や地域で事業を展開している。

 

 

売上高

前期比

営業利益

前期比

日本

1,817

+1.0%

96

-27.9%

アジア・オセアニア

1,065

+10.6%

55

-11.2%

ヨーロッパ

202

+1.1%

4

-60.5%

北米・中南米

143

+8.4%

-1

調整

-324

-0

連結計

2,902

+3.6%

153

-25.3%

*単位:億円

 

<地域別セグメント動向:2018年12月期>

 

 

【1-5 ROE分析】

 

13/3期

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

17/12期

18/12期

ROE (%)

5.8

7.3

6.9

5.9

6.0

4.8

5.4

 売上高当期純利益率(%)

3.50

4.39

4.64

4.30

4.93

4.34

4.10

 総資産回転率(回)

0.85

0.88

0.82

0.78

0.74

0.65

0.77

 レバレッジ(倍)

1.94

1.88

1.80

1.75

1.73

1.70

1.71

*17年12月期は12カ月換算値では6.8%。

 

一般的に日本企業が目標とすべきと言われている8%へ達するために一段の収益性および効率性の改善が望まれる。

 

【1-6 特徴と強み】

①高い技術力
前述の様に、同社は印刷インキの原材料である顔料や樹脂も自社で生産を続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルター材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。

 

②優れた課題解決能力
同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。
印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。

 

③環境に対する取り組み
同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。

 

④経営戦略の独自性
M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。ただ、単にボリュームアップを目的としたM&Aは志向していない。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。

 

2.2019年12月期第2四半期決算概要

(1)業績概要

 

18/12期2Q

構成比

19/12月期2Q

構成比

前年同期比

売上高

140,950

100.0%

139,376

100.0%

-1.1%

売上総利益

31,174

22.1%

30,238

21.7%

-3.0%

販管費

23,420

16.6%

24,208

17.4%

+3.4%

営業利益

7,753

5.5%

6,030

4.3%

-22.2%

経常利益

7,532

5.3%

6,282

4.5%

-16.6%

当期純利益

5,357

3.8%

2,707

1.9%

-49.5%

*単位:百万円

 

減収減益
売上高は前年同期比1.1%減の1,393億円。ポリマー・塗加工、パッケージは堅調だったが、スマートフォン市場等の低調と為替の影響により減収。
営業利益は同22.2%減の60億円。価格改定(+11億円)のプラス要因はあったが、ナフサ価格上昇に伴う溶剤など原材料価格高騰(-10億円)、メディア材料の販売数量減(-8億円)や販売価格下落(‐5億円)などが影響した。

 

(2)セグメント別動向

売上高

18/12期2Q

構成比

19/12月期2Q

構成比

前年同期比

色材・機能材

36,554

25.9%

34,620

24.8%

-5.3%

ポリマー・塗加工

31,874

22.6%

32,701

23.5%

+2.6%

パッケージ

32,938

23.4%

33,434

24.0%

+1.5%

印刷・情報

38,756

27.5%

37,633

27.0%

-2.9%

その他

3,341

2.4%

3,652

2.6%

+9.3%

調整

-2,514

-2,667

合計

140,950

100.0%

139,376

100.0%

-1.1%

営業利益

         

色材・機能材

2,711

7.4%

1,868

5.4%

-31.1%

ポリマー・塗加工

2,893

9.1%

2,789

8.5%

-3.6%

パッケージ

747

2.3%

1,148

3.4%

+53.7%

印刷・情報

699

1.8%

37

0.1%

-94.7%

その他

688

20.6%

193

5.3%

-71.9%

調整

12

-8

合計

7,753

5.5%

6,030

4.3%

-22.2%

*単位:百万円。利益の構成比は売上高利益率。

 

☆色材・機能材関連事業
減収減益。

 

(高機能顔料・液晶ディスプレイカラーフィルター用材料)
スマートフォンやテレビ需要の低調により、特に高品位品を扱う国内の顧客での稼働が悪化した。売上が伸び悩むとともに、中国や台湾での部材へのコストダウン要請が一層厳しくなり、利益も圧迫された。

 

(汎用顔料)
印刷インキ用の低調が続き自動車塗料用も伸び悩む。環境規制に伴う供給不足などによる原材料価格の高騰が続き、販売価格への一部転嫁を進めたが、利益の減少を補えなかった。

 

(着色剤)
容器用は引き続き伸長したが、自動車や建材、太陽電池向けなどの高機能製品は低調だった。

 

(機能性 分散体)
中国電池メーカーに対してLiB用CNT分散体の実績が上がった。
高透明無機顔料分散体の実績化に目途がたった。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業
増収減益。

 

(塗工材料)
高速通信対応の電磁波シールドフィルムなどの開発や拡販が進んだが、中国や韓国でのスマートフォン市場の低調により、全般的には売上、営業利益とも伸び悩んだ。

 

(接着剤)
国内では包装用が堅調に推移。リチウムイオン電池用が自動車向けを中心に伸長した。
海外では、中国や東南アジア、トルコなどでの拡販が進んだ。粘着剤は、ラベル用の需要が回復。液晶ディスプレイの偏光板向けの拡販も進んだ。

 

(缶用塗料)
北米で環境対応製品の拡販が進んだが、国内ではコーヒー缶用が低調だった。

 

☆パッケージ関連事業
増収増益。

 

(軟包装材)
国内は堅調な需要に支えられ順調に推移した。昨年から展開するバイオマスインキなど環境調和型製品の拡販も進んだ。 海外は東南アジア、インドなどで、ミドルグレードインキが販売を伸ばした。原材料は高騰したが価格改定が進んだ。

 

(建材)
薄紙用インキの売上は前年並に推移した。

 

(段ボール)
印刷面積減少の中、プレプリント用インキ、バイオマスインキ、紙袋用インキ等の販売が伸長した。価格改定の進捗は限定的だった。

 

☆印刷・情報関連事業
減収減益。

 

(オフセットインキ)
国内はチラシ、出版、新聞の減少傾向が続く中で、生産拠点集約、外部アライアンス検討を推進した。
原料価高騰により利益が圧迫され、価格改定を打ち出した。

 

(機能材インキ)
インクジェットは、欧米でラベル、段ボール市場展開が加速し、中国、日本では新規市場への拡大が進んだ。
UVインキは、印刷機メーカーとの連携強化もあり増収となったが、原材料価高騰により利益が圧迫された。
金属インキは、東南アジアでの現地生産化を推進した。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

18年12月末

19年6月末

 

18年12月末

19年6月末

流動資産

203,787

195,698

流動負債

99,122

105,265

 現預金

52,706

52,442

 買入債務

62,117

56,210

 売上債権

95,553

89,356

 短期借入金

19,219

29,317

 たな卸資産

49,503

49,966

固定負債

49,679

38,545

固定資産

168,824

167,721

 長期借入金

38,845

26,557

 有形固定資産

94,290

97,669

負債合計

148,801

143,810

 無形固定資産

4,649

4,527

純資産

223,809

219,610

 投資その他の資産

69,883

65,524

 株主資本

205,319

205,418

資産合計

372,611

363,420

負債純資産合計

372,611

363,420

     

自己資本比率

58.2%

58.6%

*単位:百万円

 

売上債権の減少などで流動資産は前期末に比べ80億円減少。投資その他の資産の減少で固定資産は同11億円減少し、資産合計は同91億円減少の3,634億円となった。長期借入金の減少等で負債合計は同49億円減少の1,438億円。円高により為替換算調整勘定のマイナスが拡大し純資産は同41億円減少の2,196億円となった。
この結果、自己資本比率は前期末の58.2%から0.4ポイント上昇し、58.6%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

18/12月期2Q

19/12月期2Q

増減

営業CF

11,634

10,177

-1,457

投資CF

-4,595

-4,848

-253

フリーCF

7,039

5,329

-1,710

財務CF

-2,210

-4,668

-2,458

現金同等物残高

52,991

51,149

-1,842

*単位:百万円

 

税金等調整前四半期純利益の減少で営業CF、フリーCFのプラス幅は縮小。
借入金の減少で財務CFのマイナス幅は拡大。
キャッシュポジションは低下した。

 

3.2019年12月期業績見通し

(1)業績見通し

 

18/12月期

対売上比

19/12月期(予)

対売上比

前期比

進捗率

売上高

290,208

100.0%

300,000

100.0%

+3.4%

46.5%

営業利益

15,337

5.3%

17,500

5.8%

+14.1%

34.5%

経常利益

15,508

5.3%

18,000

6.0%

+16.1%

34.9%

当期純利益

11,899

4.1%

12,000

4.0%

+0.8%

22.6%

*単位:百万円。予想は会社側発表。

 

業績予想は据え置き。増収増益を目指す。
業績予想に変更はない。売上高は前期比3.4%増の3,000億円、営業利益は同14.1%増の175億円の予想。
ただ、売上、利益とも進捗率は低水準で米中貿易摩擦による影響など、先行きは非常に不透明と認識している。
計画達成のためには、メディア材料 やパッケージ用インキ等における価格改定(+7億円)、メディア材料(中国・台湾市場)や機能性フィルムの拡販(+17億円)、固定費の削減・原材料代替、処方見しなどトータルコストダウンの推進(+16億円)などが必要と考えている。
配当は5円増配の90.00円/株を予定。予想配当性向は43.8%。

 

(2)セグメント別動向

売上高

18/12月期

19/12月期(予)

前期比

進捗率

色材・機能材

747

780

+4.4%

44.4%

ポリマー・塗加工

661

700

+5.9%

46.7%

パッケージ

680

730

+7.4%

45.8%

印刷・情報

794

785

-1.1%

47.9%

その他・調整

20

5

合計

2,902

3,000

+3.4%

46.5%

営業利益

       

色材・機能材

54

60

+11.1%

31.7%

ポリマー・塗加工

60

70

+16.7%

40.0%

パッケージ

15

25

+66.7%

44.0%

印刷・情報

9

16

+77.8%

0.0%

その他・調整

15

4

合計

153

175

+14.4%

34.3%

*単位:億円。2018年度よりコーティング材料の一部は印刷・情報関連事業からポリマー・塗加工関連事業にセグメントを変更している。

 

(19年12月期下期の主要施策)

色材・機能材 (顔料)

顔料の生産効率向上と固定費削減

IJ用途の顔料分散体の拡販

 

(メディア材料)

最大中国市場での更なるシェア拡大

高品位品の開発スピードアップによる新規案件の獲得

センサー用材料の開発強化

 

(着色剤)

グローバル拠点での収益拡大

リキッド着色剤の実績化とグローバル展開既存市場シェア拡大

 

(機能性分散体)

中国拠点での現地生産開始

高透明無機顔料分散体の実績化

ポリマー・塗加工 (塗工材料)

機能性フィルム群の拡販と開発品(半導体関連部材/低誘電シート等)の立上げ

 

(接着剤)

ディスプレイ、ライフサイエンス用粘着剤の開発・拡販強化

環境対応グレードの品揃え拡充

 

(塗料樹脂)

環境対応塗料の国内外の展開強化

高付加価値樹脂の拡販推進

機能性ハードコートの新規開拓

パッケージ (軟包装材)

水性グラビアインキ、バイオマスインキ、フィルム用フレキソインキの品質確立と拡販

品種統合などコストダウン推進と全品種における価格改定の浸透

 

(建材)

UVトップコート等、拡販を進める

 

(段ボール)

プレプリント用インキ等の高付加価値製品の販売強化

価格改定の浸透

印刷・情報 (オフセットインキ)

事業スリム化と人材・生産能力などの経営資源のシフトを継続、短期での完了目指す。

価格改定活動を本格化。

固定費削減、原材料代替に注力

 

(機能材インキ)

欧州、中国での生産設備増強、軟包装、パッケージ市場向け水性インキ実績拡大

印刷機メーカー連携推進によるグローバル展開と価格改定推進

印刷機メーカー、ランプメーカー連携による、3ピース缶向けUV/LEDインキ拡販を中国、東南アジアで展開

 

(3)全社課題

次世代中核事業育成に向け、ライフサイエンス・環境対応・エレクトロニクス等の成長市場で、コア技術を複合させた高機能ニッチ製品で事業領域を開拓・拡大する。
また、データサイエンス活用による生産や管理体制を進め、グループ全体でサイエンス・カンパニーとしての飛躍を目指す。

 

主要個別テーマについての取り組みや目標は以下の通り。

 

①モビリティー市場の開拓
「事業方針」
急速に変化するモビリティー市場において、多様化する材料ニーズを事業機会と捉え、分散体、コンパウンド、フィルム等の機能性素材を軸に新たな製品・販路を開発・開拓していく。

 

「定量目標」
2020年度の売上目標は50億円。
SIC -II中計終了までに130億円の事業規模を目指している。

 

「代表製品例」
樹脂技術、分散技術、塗加工技術等のコア技術を活かし、「ノイズ:電磁波シールド用コンパウンド、電磁波シールドフィルム」、「熱:熱伝導接着シート、熱伝導コンパウンド」、「安全:イメージセンサー用レジスト」、「接合:内装材用ソリッド接着剤」などの製品化に取り組んでいる。

 

②メディカル・ヘルスケア市場の開拓
「事業方針」
経皮吸収製剤や、スポーツテープ・検査キットなどの材料となるポリマー製品、医療包装向け遮光用途の色材製品などの開発を通して、メディカル・ヘルスケア市場を開拓していく。

 

「定量目標」
2020年度の売上目標は30億円。
SIC -II中計終了までに45億円の事業規模を目指している。

 

「事業概要」
*経皮吸収製剤は新投与経路とジェネリックの両方の開発を進める。
*中国ではスポーツテープやサージカルテープ用の粘着剤の拡販が進んでいる。さらに新製品を投入してシェア拡大を図る。 *国内では検査キット用の粘着製品のほか、タンパク質非吸着などの機能を持ったポリマーの開発が進んでいる。
*色素・樹脂合成技術を基に、輸液バッグや薬品容器などの内容物を保護する目的の遮光剤を開発している。
*その他、グループ各社でメディカル・ヘルスケア周辺市場への材料提供を進めている。

 

③インクジェットインキ製品群の拡大
「事業方針」
インクジェットインキの需要は、環境対応と小ロット多品種対応のニーズから急拡大している。
伸長する欧米のパッケージ市場向けには、現在トップシェアを有するUVラベルインキに加え、特に耐久性に優れ、強みである水性インキを展開する。
新興国を中心としたサイン市場向けには溶剤・UVインキを拡充し、事業拡大を図る。

 

「定量目標」
2020年度の売上目標は52億円。
SIC -II中計終了までに100億円の事業規模を目指している。

 

「注力する事業概要」
インクジェットインキ需要増の背景には、小ロット多品種ニーズの高まりや熟練度の必要なコンベンショナル印刷から、操作が簡便なデジタル印刷への移行がある。
こうしたニーズに対応した製品の開発・拡販に取り組む。

 

④環境調和材料の開発
「事業方針」
世界的な化学物質規制や廃プラスチック問題等の社会課題に対して、正面から取り組んでいく。
環境対応製缶塗料・プラスチックの削減やリサイクルを可能にする製品やシステム・バイオマス製品・LiB用接着剤等の開発・拡販を進める。

 

「想定される事業規模」
中期的に80億円

 

「事業概要:社会的な課題と対応製品」
*特定化学物質規制
環境対応製缶塗料:米国販売を起点に各国で展開を開始する。

 

*廃プラスチック問題
耐油紙コート剤・生分解インキと接着剤(リデュース)・インキ接着剤脱離システム(リサイクル)など:ポリエチレン代替の耐油紙コート剤(製品名:フィルハーモ)は、ニーズを捉えた開発が進んでいる。

 

*CO2削減
バイオマス製品(粘接着剤・各種パッケージ用インキ)・水性パッケージ用インキ・パッケージ用無溶剤接着剤(ラミネート接着剤・ホットメルト) など:印刷方式に応じた各種バイオマスインキの他、粘着剤・接着剤を販売開始、さらにバイオマス度を上げた開発を推進していく。

 

*再生可能エネルギー促進
LiB材料関連製品:ラミネート接着剤、分離膜・電極エマルジョンの開発・実績化が拡大中である。

 

⑤グローバル展開 (投資計画)
次期中期経営計画および長期構想SIC27に向けた投資として引き続き積極的なグローバル展開を推進し、海外売上高比率60%、営業利益における海外事業比率50%を目指す。

 

国・地域

内容

欧州 *IJインキ

需要増に対応し生産設備を増強する。

インド *グラビアインキ

需要増対応と生産効率化を図る。生産設備を増強する。

 

*粘接着剤

需要の増加に伴い設備を増強する。

ASEAN *ミャンマー

需要の増加に伴いパッケージ用インキおよび接着剤の現地生産稼働を予定している。

 

*タイ

接着剤の現地生産開始により競争力を強化する。

米国 *粘着剤

需要の増加に伴い他拠点での供給体制を構築する。

中国 *上海、珠海

需要増に対応する粘着剤生産設備を増強する。

*江門

新工場を建設する。パッケージ関連のエコ製品の生産を強化する。

 

*珠海

LiB用材料の現地生産を開始する。

モロッコ 2019年5月に販売会社を設立した。

各種インキ、パッケージ用ケミカル製品の販売、アフリカでのマーケティング活動を開始した。

トルコ 株式追加取得し100%子会社とした。

アフリカ、東欧のマーケティングを強化する。

パッケージにおいては大手顧客獲得など販売増を支える新工場の検討を継続する。

 

4.今後の注目点

18年12月期の期初における営業利益増減要因予測では、原材料価格高騰による影響はマイナス20億円という予想であったが、実際にはマイナス55億円と前期減益の最大の要因となってしまった。
販売数量の増大や価格改定の浸透は堅調に進めることができているだけに、短期的には今期はマイナス16億円と見込んでいる原材料価格高騰をどうやって吸収していくのかをウォッチしていきたい。
一方中期的には、前期十分に実行できなかった各種投資を積極的に進め、IoT、5G、環境といった成長キーワードに関連する製品をどれだけスピーディーに市場投入していくことができるのかを注目したい。

 

<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)>

持続的な成長を実現する2027年に向けた10年の長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、3年ごと3段階の中期経営計画に落とし込み、課題と役割を明確にし、目指す未来に向けて着実に行動していこうと考えている同社は、第1段階である「中期経営計画SIC-Ⅰ(2018-2020年度)」を2018年1月にスタートさせた。

 

<基本方針>

テーマは「挑戦を繰り返す。」
更なる100年レンジでの持続的成長の礎を創り上げる期間と位置付け、変革のための施策を立て続けに打つ。
①成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
②持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
③経営基盤の刷新

 

<数値目標>

◎全社

 

2017年12月期

(12カ月換算値)

2020年12月期

(計画)

変化率

売上高

2,801

3,500

+7.7%

営業利益

205

280

+11.0%

ROE

6.8%

7.2%

+0.4p

営業利益率

7.3%

8.0%

+0.7p

海外売上高比率

44.2%

50.0%

+5.8p

*単位:億円。変化率は同社資料を基にインベストメントブリッジが計算。売上高、営業利益の変化率は年平均成長率。

 

◎セグメント

 

2017年12月期

(12カ月換算)

2020年12月期

(計画)

変化率

色材・機能材

     

売上高

719

930

+9.0%

営業利益

65

82

+8.1%

営業利益率

9.0%

8.8%

-0.2p

ポリマー・塗加工

     

売上高

616

840

+10.9%

営業利益

69

96

+11.6%

営業利益率

11.2%

11.4%

+0.2p

パッケージ

     

売上高

650

805

+7.4%

営業利益

24

50

+27.7%

営業利益率

3.7%

6.2%

+2.5p

印刷・情報

     

売上高

809

925

+4.6%

営業利益

35

48

+11.1%

営業利益率

4.3%

5.2%

+0.9p

*単位:億円。変化率は同社資料を基にインベストメントブリッジが計算。売上高、営業利益の変化率は年平均成長率。
2018年度よりコーティング材料の一部は印刷・情報関連事業からポリマー・塗加工関連事業にセグメントを変更した。

 

(セグメント別主要課題)

色材・機能材 ◆独自顔料とナノ分散技術を活かした製品群の開発・拡販

*LiB関連材料:EV化の加速を追い風に、カーボン分散体をはじめとしたLiB関連材料の拡大をはかる。

*高機能製品:独自素材とナノ分散技術を活かし、これまでにない光学・絶縁機能を有する製品の開発を進める。

 

◆カラーフィルター材料・センサー材料のさらなる拡大

*拡大する中国市場の需要を確実に取り込み、パネル向けカラーフィルター材料の拡販を進める。

*トリリオン・センサー時代の到来に向けた開発強化

ポリマー・塗加工 ◆モノづくりを基点としたソリューション提案型マーケティングによる新規市場の創出

*エレクトロニクス:オープンイノベーションを活用し、熱や電磁波の制御を核とした新素材の開発を加速する。

*包装・工業材:環境・省力化に寄与する安心安全な材料の提案。

 

◆メディカルサイエンス事業を次の成長の柱に育てる

*貼付型医薬品の開発強化。

*細胞培養コーティング剤や医療用テープに使用する粘着剤など、ヘルスケア関連製品の拡販を進める。

パッケージ ◆市場の変化に応じた製品開発の加速

*顧客視点での評価技術環境整備を進め、待ち受け型新製品開発を推進

*インクジェットインキ:市場の裾野拡大に対応した製品開発加速

*金属インキ:海外市場展開加速

 

◆環境に配慮した製品群の強化

*バイオマス:バイオマス製品群ラインナップの拡充

*水性:パッケージ製品群高機能化によるグローバル展開加速

*UV:パッケージ分野へのグローバル展開推進

 

◆地域ごとのニーズに応じた生産体制の構築

*グローバル生産体制再構築による供給基盤強化、及びCS向上

*海外技術センター、技術サービス強化によるCS向上

*国内成熟事業における抜本的構造改革の推進による事業基盤強化

印刷・情報

*2018年度よりコーティング材料の一部は印刷・情報関連事業からポリマー・塗加工関連事業にセグメントを変更した。

 

◎投資計画
重点ドメイン拡大や新規事業創出のために振り向ける投資枠として、戦略的投資枠を従来の設備投資枠とは別に設定し、計画達成に向けた積極的な投資を行う。

 

設備投資枠

400億円

戦略的投資枠

200億円

SIC-I 投資枠計

600億円

 

戦略的投資枠とは、後述する重点ドメイン拡大や新規事業創出のための変革に向けた投資枠で、計画達成に向けた、人材・技術投資など各種取組みをこの枠内で実行していく。

 

<主要施策>

①成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
【1-1既存事業の変革】
■グローバル展開
海外市場での成長力を高めるため、これまでに進出した拠点の複合化・製品の拡充を進め、多彩なビジネスを展開していく。
インクジェットインキ・インキ用顔料分散体では、環境対応製品の生産を中国(珠海)で着手するほか、日米仏で品目を拡充する。
ラミネート接着剤では、食品パッケージ市場に対して、リキッドインキビジネスを展開するグローバル拠点と連携して拡販を図る。
2017年度比で530億円の増収を目指す。

 

■新製品の拡大
顔料・樹脂を核に新規素材の開発を進め、コア技術である合成・分散・成膜技術と組み合わせることで新しい価値を創造し、新市場・新規エリアでの拡大をはかる。
中でも、ポリマー・塗加工関連事業においてエレクトロニクス関連材料やメディカルヘルスケアに注力する。
2017年度比で160億円の増収を目指す。

 

【1-2新事業への挑戦】
SIC-Iで注力する6つの重点ドメインを設定した。持続的成長に向け、単なる製品の提供にとどまらないソリューション提案を中心とした新しいビジネスモデルの開発に挑戦し、「SIC-Ⅱ」、「SIC-Ⅲ」に繋げていく。

 

フィールド

ドメイン

Life *パッケージ

*モビリティ

*メディカルヘルスケア

Communication *IoT
Sustainability *天然材料

*エネルギー

 

以下、4つのビジネスに注力する。

 

[センサー関連ビジネス]
ドメインは、モビリティ、メディカルヘルスケア、IoT。
成長著しいIoT市場において、急速に増加する「センサー」に着目。ケミカルを軸とした「モノづくり」に加え、新しいテクノロジーを取り入れて「情報・システム」までを提供するセンサー関連ビジネスの開発に挑戦する。
(主要製品・サービス)
イメージセンサー材料、センサーデバイスなど。「SIC-Ⅱ」、「SIC-Ⅲ」ではセンシングデータに基づくデータビジネスの展開も視野に入れている。

 

[生活余熱関連ビジネス]
ドメインは、モビリティ、IoT、エネルギー。
生活周辺で未利用となっている「生活余熱」に着目し、これを高効率で無駄なく再生・利用する技術開発を進め、エネルギーの循環利用ソリューションを提供するビジネスに取り組む。
(主要製品・サービス)
耐熱接着シート、超耐熱絶縁・熱伝導シート、高耐熱マネジメント部材群など。

 

[ヘルスケア関連ビジネス]
ドメインは、メディカルヘルスケア。
貼付型医薬品事業プラットフォームをベースに、医薬事業基盤を着実に拡大し、周辺のヘルスケア関連材料の開発・拡販も強化していく。
(主要製品・サービス)
血糖値検査チップ用テープ、医療用粘着剤、生体適合ポリマー、次世貼付型医薬品など。

 

[天然素材関連ビジネス]
ドメインは、天然素材。
可食色素や笹関連製品の事業プラットフォームを活かした新たな機能性天然素材のビジネス化や、バイオマス製品の拡充を進め、低炭素社会への一層の貢献を目指す。
(主要製品・サービス)
可食色素製品、クマザサ関連製品、バイオマスインキ、機能性食品素材など。

 

②持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
同社ではこれまで、積極的な海外拠点拡大によるモノづくりネットワーク構築、環境に配慮した安心・安全なモノづくりの構築、グローバルでの化学物質管理・貿易管理体制の整備に取り組んできた。
SIC-Iでは、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献するため、自らの持続的成長も見据えたモノづくり革新に取り組み、持続可能性への貢献と収益確保の両立を目指す。

 

(取り組み例)
*パートナーとの共存共栄によるグローバル・サプライチェーンの構築
*デジタル技術融合による生産プロセス革新
*地球環境と共生するモノづくり(省エネ、CO2排出量削減等)の推進

 

③経営基盤の刷新
既存事業の変革、新規事業の創出、モノづくりの変革に向け、業務システムのグローバル統合推進や、変革に向けた人材採用、制度改革(確定拠出年金制度への完全移行、65歳定年制開始)などの経営基盤強化を進めるとともに、経営と一体となったCSR活動を推進し、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していく。
イノベーションを立て続けに創出するための基盤を強化する。

 

(取組み例)
*グローバルでのERP統合推進、AI活用による業務効率化推進
*変革に必要な人材の積極採用、イノベーションを促す人事制度への刷新
*東洋インキグループの重要課題(マテリアリティ)の達成に向けた積極的なCSR活動の推進

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態 監査役会設置会社
取締役 14名、うち社外4名
監査役 5名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日: 2019年4月4日

 

<基本的な考え方>
当社グループは、2011年4月1日をもって持株会社体制へ移行いたしました。持株会社体制のもと、グループ戦略機能を強

 

化し、スピード経営を推進し、グループ全体最適と各事業最適をバランスさせることを通じてグループ全体としての価値向上を目指しております。

 

当社グループにおける経営の枠組みは、グループ企業経営における基本的な考え方を体系化した経営哲学及び経営理念ならびに行動指針からなる「東洋インキグループ理念体系」と、社会的責任への取組み姿勢を明確にしたCSR憲章及びCSR行動指針からなる「CSR価値体系」で構成されております。
当社グループは、「東洋インキグループ理念体系」と「CSR価値体系」を実践することにより、サイエンスに基づくモノづくりを通して、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献し、経営理念に掲げる「世界にひろがる生活文化創造企業」を目指してまいります。
そのためにはステークホルダーと同じ視点で自身の企業活動を評価し、経済、社会、人、環境においてバランスの取れた経営を遂行することこそが、企業としての有形、無形の価値を形成し、社会的責任を果たすための最重要課題として位置付けております。

 

この実現のために、

事業執行機能を各事業会社に委譲するとともに、コーポレート・ガバナンスを強化するため、グループ各社に適用される稟議規程及び関係会社管理規程の適切な運用
内部統制システムの整備
株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人など法律上の機能制度の強化による指導・モニタリング機能の向上
迅速かつ正確、広範な情報開示による経営の透明性の向上
コンプライアンス体制の強化・充実
地球規模の環境保全の推進

などを進め、株主や取引先、地域社会、社員などの各ステークホルダーと良好な関係を構築し、コーポレート・ガバナンスを充実させております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。

 

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

原則1-4. 当社は、政策保有上場株式について、毎年、取締役会において、経済合理性を検証しております。資本コストと比較した保有に伴う便益や取引状況などを個別銘柄毎に検証し、保有が適切ではないと判断した銘柄は、当該企業の状況や市場動向を勘案した上で縮減を進めてまいります。なお、前期は3銘柄の全量売却を実施いたしました。

政策保有上場株式の議決権行使については、各議案が発行会社の中長期的な企業価値の向上に資するものであるか否か、当社を含む株主共同の利益に資するものであるか否か、また当社グループの経営や事業に与える影響等を定性的かつ総合的に勘案したうえで、議案毎に適切に行使いたします。なお、発行会社において企業価値の著しい毀損、重大なコンプライアンス違反の発生等、特別な事情がある場合や、株主としての当社の企業価値を損なうことが懸念される場合は、発行会社との対話等により十分に情報収集したうえで、慎重に賛否を判断いたします。

原則5-1. 当社では株主・投資家を重要なステークホルダーと考えており、行動指針の一つとして「株主様満足度の向上」(SHS:ShareHolder Satisfaction)を掲げ、株主権の尊重と株主価値の向上に取り組んでおります。その中でも株主や投資家との建設的な対話は重要なファクターと位置付けております。財務・総務・IR担当の取締役を指定し、関係各部門の有機的連携により情報共有を確実に行い、株主にはグループ総務部、投資家にはグループ広報室が窓口となって対話の促進を図っており、対話を通じて把握した意見のうち重要性が高いと判断したものについては担当取締役に適宜報告しております。

インサイダー情報の管理については、インサイダー取引防止管理規程、情報保護管理規程などを定めているほか、ビジネス行動基準に具体的な行動指針として定め、ガイドブックを全グループ社員に配布するとともに、定期的な教育を行うことで周知徹底を図っております。

株式会社インベストメントブリッジ
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