ブリッジレポート:(4709)ID ホールディングス 増収増益の着地を目指す

2019/09/12

 

 

舩越 真樹 社長

株式会社 IDホールディングス(4709)

 

 

会社情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

舩越 真樹

所在地

東京都千代田区五番町12-1 番町会館

決算月

3月末日

HP

https://www.idnet-hd.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,225円

11,082,832株

13,576百万円

12.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

50.00円

4.1%

95.64円

12.8倍

749.58円

1.9倍

*株価は8/9終値。発行済株式数は前期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

20,082

970

964

548

50.73

23.33

2017年3月(実)

21,554

1,105

1,133

654

60.13

37.00

2018年3月(実)

23,207

1,254

1,274

622

56.84

40.00

2019年3月(実)

26,515

1,667

1,724

1,028

93.15

40.00

2020年3月(予)

26,800

1,670

1,710

1,060

95.64

50.00

※単位:百万円
※予想は会社予想。
※当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益
※2017年1月1日付で1:1.5の株式分割を実施。DPSとEPSは2015年3月期まで遡及して再計算。

 

 

IDホールディングスの2020年3月期第1四半期決算概要等についてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画
3.2020年3月期第1四半期決算概要
4.2020年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20/3期第1四半期の売上高は前年同期比1.1%減の65億62百万円。サイバーセキュリティ及びコンサルティングは堅調に推移したものの、システム運営管理およびソフトウェア開発において一部の大型プロジェクト収束による受注の減少があった。営業利益は同27.9%増の5億7百万円。プロジェクト管理体制の強化や、積極的な営業活動の推進、高付加価値分野への技術者のシフトなど、各種施策が奏功した。
  • 20/3期の会社計画は、売上高が前期比1.1%増の268億円、営業利益が同0.2%増の16億70百万円の期初予想から変更なし。引き続き顧客のIT投資が拡大する見込みであるものの、一部の金融機関のシステム統合が完了したことに加え、エネルギー企業向けの大型ソフトウエア開発案件の終了が影響する。1株当たり配当予想は、前期比10円増額の50円を計画。
  • 同社の今期業績は、一部大手金融機関におけるシステム統合の完了とエネルギー企業向け大型ソフトウエア開発案件の終了が重なり、楽な事業環境とは言えない。こうした環境下、同社ではグループ技術者のスキルシフト(DX)によるDX関連やサイバーセキュリティ関連やITコンサルティング関連の売上高拡大に加えて、より一層の収益性の向上を通じて、増収増益での着地を目指している。その鍵を握るであろう続く第2四半期のDX関連やサイバーセキュリティ関連やITコンサルティング関連の売上高の動向が注目される。

1.会社概要

金融向けITアウトソーシングに強みを持つ独立系の情報サービス会社である株式会社インフォメーション・ディベロプメントを中核とする持株会社。システム運営管理とソフトウエア開発・保守を二本柱とし、一つの顧客に対し、コンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理等の複数のサービスを提供するBusiness Operations Outsourcing(BOO)戦略を推進しており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に業績の変動が小さく、高配当を継続している。尚、2013年12月17日、JASDAQから東証2部に市場変更。2014年9月8日、東証1部に上場し。2019年4月1日、持株会社体制に移行した。

 

【IDグループの強み】

ストックビジネスであるシステム運営管理が6割前後と高いことから、業績が安定している。
IT投資の積極的なグローバル大手企業との取引高が7割前後と高いことから、今後も安定的な取引が見込める。
直接契約が8割弱と高いことから、顧客ニーズが直接把握でき、的確な提案を行うことができる。

 

【IDグループのサービスの特徴- i-Bos24®(ID’s Business Operations-Outsourcing Service 24) -】

同社は、コンサルティングからシステム基盤、ソフトウエア開発、システム運営管理、クラウド・サイバーセキュリティまで、トータルなITアウトソーシングサービス「i-Bos24®」を提供している。
ソフトウエア開発では、500名を超える技術者が、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。グループ内にオフショア(海外子会社に委託開発)、ニアショア(地方事業所での開発)体制を構築しており、多数の高度な専門技術者が高品質なサービスを実現し、金融機関、エネルギー、運輸をはじめとする幅広い分野の顧客へ、多くの開発実績を築いている。

 

 

システム運営管理とシステム基盤では、1,600名規模の技術者を擁する専門部隊がサービスを提供している。システム運営管理においては、ミドルウェアのカスタマイズからハードウェアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値なソリューションを提供している。金融機関をはじめ、情報、通信、製造など、さまざまな業種に対応し、顧客からの高い信頼を長年にわたり獲得している。システム基盤においては、システム基盤環境(メインフレーム、オープン系)の設計・構築から運用・保守までをワンストップのサービスとして提供している。

 

更に、クラウド・サイバーセキュリティでは、海外の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。

 

 

(同社HPより)

 

【これまでの業績推移と今後のイメージ】

 

 

【IDグループと持株会社制への移行】

従来、国内外の連結子会社は7社であった。このうち国内(3社)は、情報システム・コンサルティング等の(株)プライド、システムマネジメントサービスやITSMコンサルを手掛ける(株)フェス、障がい者雇用を促進するための特定子会社愛ファクトリー(株)。また、海外(4社)は、中国でソフトウエア開発、システム運営管理等を手掛ける艾迪系統開発(武漢)有限公司(ID武漢)、シンガポールでシステム運用コンサルティングやセキュリティサービス等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT SINGAPORE PTE. LTD.(IDシンガポール)、及びアメリカで人財採用・育成、現地市場調査・情報収集、ソフトウェア開発等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT AMERICA INC. (IDアメリカ)。更に、ミャンマーでITトレーニングアカデミーの運営等を行うIDM INFORMATION DEVELOPMENT MYANMAR CO., LTD. (IDミャンマー)。
同社は、2019年4月より持株会社制へ移行した。更なる持続的成長とグループ全体の企業価値の最大化を図るため、 「グループ経営」と「事業執行」を分離する新たなグループ経営体制を構築することとなった。(株)IDホールティングスの傘下に、(株)ID、(株)フェス、(株)フェス、愛ファクトリー(株)が入り、(株)IDの傘下に、ID武漢、IDアメリカ、IDシンガポール、IDミャンマーが入る組織形態となった。

 

持株会社制への移行により、下記の効果を期待している。
1.グループ全体での成長の実現
全体最適の視点から、経営資源の分配と、成長市場における投資(M&Aを含む)を実行する。
2.スピーディな意思決定
事業戦略策定と推進における権限をあわせて委譲し、 スピーディな意思決定が可能となる。
3.次世代の経営者育成
事業会社に権限を委譲し、次世代の経営幹部を育成する。

 

(同社決算説明資料より)

 

【ESGの取り組み】

同社は、社会インフラを支える情報サービス企業の一員として、環境(E)・社会 (S)・ガバナンス(G)のさまざまな課題に積極的に取り組んでいる。
(同社のESGの例)
◇特例子会社「愛ファクトリ―」

愛ファクトリ―は、障がい者雇用促進を目的に、2014年にIDのグループ会社として設立。 2016年には、特例子会社の認定を受け、葉物野菜栽培を行っている。2019年6月にはJGAP認証を取得。

◇協賛・支援による社会貢献

イノベーションを推進するコミュニティ 「VENTURE CAFÉ TOKYO」の協賛
日本セーリング連盟「日の丸セーラーズ」の協賛支援
地雷除去活動のサポート  など

◇芸術文化活動の支援

新内浄瑠璃の継承者・重要無形文化財保持者(人間国宝)である鶴賀流第11代家元鶴賀若狭掾師匠、日本スペインギター協会等への支援
協賛支援コンサート:2018年度 10回
華中科技大学において奨学金制度を運営
湖北経済学院において日本語講座基金を運営
江漢大学において日本語学習奨学金制度を運営
社員寮への留学生の受け入れ
次世代育成のための研究助成 島根大学教授(臨床心理士)岩宮恵子氏の研究を支援  など

 

【情報サービス業の動向】

 

(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」を基に(株)インベストメントブリッジ作成)

 

内閣府が8月9日に発表した19年4-6月の国内総生産(GDP、季節調整済み)1次速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%増(年率換算で1.8%増)と3四半期連続でプラス成長となった。米中貿易摩擦などに伴う海外経済の減速が響いて輸出が振るわなかったものの、4月下旬からの10連休効果で個人消費が拡大。設備投資も堅調だった。また、情報サービス産業との関連性が深い民間企業設備(実質)は前期比+1.5%と、事前の市場予想を上回る結果とまった。更に、経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(19年8月8日発表。6月分速報値)によると、6月の情報サービス産業売上高は前年同月比4.8%増と好環境が継続している他、同社と関連性の高い受託ソフトウエアとシステム等管理運営受託の売上高も前年同期比プラス圏での推移が確認された。同社を取り巻く事業環境が、今後急速に悪化するリスクは小さそうである。

 

2.中期経営計画

【中期経営計画「Next 50 EpisodeⅠ覚醒(Awakening)!」(2020年3月期~2022年3月期)】

1.概要
近年、情報サービス業界において、RPA・AIなどのデジタル技術を活用した既存ビジネスの変革(DX【Digital Transformation】)の急速な進展や、システムの「所有」から「利用」への転換、IoT機器の急激な増加、高度化するサイバー攻撃など、ITをとりまく顧客ニーズが多様化し、経営環境が大きく変動している。このような市場の変化を成長機会ととらえ、更なる事業拡大に取り組みべく、同社グループでは、新中期経営計画「Next 50 Episode Ⅰ覚醒 (Awakening)!」を策定した。
「Next 50 Episode Ⅰ覚醒 (Awakening)!」は、3つの基本方針【「未来志向型企業文化の醸成」「デジタルトランスフォーメーション(DX、注1)によるUP-GradeされたBusiness Modelの展開」「ESG(注2)の推進」】からなり、新中期経営計画の3年間を、新たな50年の飛躍の基盤を作るための期間と位置づけ、将来の成長を見据えた戦略を実行し、企業価値の向上をさせながら、安定的かつ継続的な株主還元を実施する方針。
また、最終年度である2022年3月期の重点数値目標は、売上高300億円、売上高営業利益18億50百万円、営業利益6.2%。

 

19/3期 実績

22/3期 目標

売上高

26,515

30,000

営業利益

1,667

1,850

売上高営業利益率

6.3%

6.2%

※単位:百万円

 

(注1):Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)とは、既存のサービスソリューションに、RPAやAI、IoTなどアドバンスト・テクノロジー(先端技術)を組み合わせることで、既存ビジネスを変革すること。
(注2)ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字。各分野への適切な対応が企業の長期的成長の原動力となり、持続可能な社会の形成に役立つという考え方。

 

2.基本方針と取組み状況

 

(同社中期経営計画より)

 

①未来志向型企業文化の醸成
持続的な成長には、人材の多様性およびイノベーションの創出が欠かせないとの考えのもと、多様な人材の採用・育成に取り組むとともに、各自が能力を最大限発揮できるよう、引き続き組織・制度・環境を整備する。また、未来に向けて挑戦する風土の醸成およびイノベーションの創出を進める。

 

【取組み実績】

適材適所な人員配置を行うため、ソフトウェア開発部門において事業本部制を廃止し、要員の流動化を促進
人事面、品質管理面において組織横断的な対応を行うため、人材統括担当役員および品質担当役員を配置
国内外の拠点間でのさらなる連携強化を図るため、グローバル推進部を設置
人財(注)のダイバーシティの推進(女性管理職比率 15%、社員に占める外国籍社員の割合 10%)

 

(注):同社は、社員が会社の重要な財産のひとつであるとの考えから、「人材」を「人財」と表記している。

 

②デジタルトランスフォーメーション( DX )によるUP-GradeされたBusiness Modelの展開
近年の急激なデジタル化の流れを受けて、顧客企業は新たなテクノロジーの導入・活用を積極的に進めているす。同社グループは、長年蓄積してきた顧客システムに関する業務知識やノウハウをもとに、既存のサービスソリューションにアドバンスト・テクノロジーを組み合わせることで、顧客ニーズにあった付加価値の高い、UP-Grade されたサービスモデルを提供する。
こうしたサービスモデルの実現に向けて、この3か年は技術者育成に重点をおき、積極的に教育投資を行う。また、従来のサービスをより上流工程へとシフトすることで、人月型ビジネスから成果報酬型ビジネスへ転換を図る。更に、既存事業の拡大に加え、新規領域への積極的な投資を行い、競争優位性を高め、収益性向上を図る方針。

 

【取組み実績】

株式会社インフォメーション・ディベロプメント(以下ID社)がUiPath社と開発リソースパートナー契約を締結
既存ビジネスの変革を目的としたDX戦略タスクチームを設置し、担当役員にID社の社長自らが就任
RPAサービスであるUiPathおよびWinActorの研修環境を社内に整備し、社員100人に対し研修を実施
遠隔作業支援システム「IDEye」が、米国RealWear社のISVパートナーに認定
同社が協賛するベンチャー・カフェ東京(注)にて「Cyber Technology & Fusion of Startup/EnterpriseNight」を慶應義塾大学と共同開催

 

(注):ベンチャー・カフェ東京は”Connecting innovators to make things happen”をミッションに掲げ、各種プログラミング・イベントを通じてベンチャー企業・起業家・投資家を繋げることで、世界の変革を促すイノベーションの創出を狙いとする組織。協賛企業は、同社、日本たばこ産業株式会社、森ビル株式会社、SOMPOホールディングス株式会社、TEPCO i-フロンティアズ株式会社等。

 

③ESGの推進
同社は情報サービスの提供を通じて社会課題の解決に取り組むとともに、持続的な成長および社会価値の創造を目指している。ESGの各分野での取組みを強化することで、顧客、株主、従業員などすべてのステークホルダーとともに成長・発展していけるよう努める。

 

【取組み実績】

ISO26000(組織の社会的責任に関する国際規格)に基づき、当社グループのESGの取組みを整理
コーポレートガバナンス体制の強化を目的として、グループ監査役会、経営委員会、グループリスク管理委員会を設置
テレワークを拡大し、働き方の多様化を推進
同社特例子会社である愛ファクトリー株式会社がJGAP認証(注)を取得
メセナ活動の一環として、サントリーホールにおいて七夕コンサートを主催
「禁煙推進企業コンソーシアム」に参画

 

(注):JGAP認証は、適切な農場管理の基準に則した「食の安全」や「環境保全」への取組みが、第三者機関の審査により確認された農場に与えられる認証。審査項目は、農場運営、食品安全、環境保全、労働安全、人権・福祉の5つ。同社は、この認証取得を通じて、消費者からの信頼獲得および持続的な農業経営の確立を目指す。

 

 

3.2020年3月期第1四半期決算概要

(1)連結業績

19/3期 第1四半期

構成比

20/3期 第1四半期

構成比

前年同期比

売上高

6,634

100.0%

6,562

100.0%

-1.1%

売上総利益

1,376

20.7%

1,587

24.2%

+15.4%

販管費

979

14.8%

1,080

16.5%

+10.3%

営業利益

396

6.0%

507

7.7%

+27.9%

経常利益

424

6.4%

514

7.8%

+21.3%

当期純利益

210

3.2%

324

5.0%

+54.5%

※単位:百万円
※当期純利益は、親会社株主に帰属する四半期期純利益

 

前期比1.1%の減収、同27.9%の営業増益。
売上高は前年同期比1.1%減の65億62百万円。サイバーセキュリティ及びコンサルティングは堅調に推移したものの、システム運営管理およびソフトウェア開発における一部の大型プロジェクト収束による受注の減少があった。
営業利益は前年同期比27.9%増5億円7百万円。プロジェクト管理体制の強化や、積極的な営業活動の推進、高付加価値分野への技術者のシフトなど、各種施策が効果を発揮した。売上高総利益率は、前年同期比3.5ポイント上昇の24.2%、売上高販管費比率は、1.7ポイント上昇の16.5%となった。また、経常利益は同21.3%増の5億14百万円。親会社株主に帰属する四半期純利益は同54.5%増の3億24万円。投資有価証券売却益が増加したことに加え、前期に計上した移転損失引当金繰入額がなくなったことなどが寄与した。

 

サービスごとの業績動向(20/3期第1四半期)

19/3期

第1四半期

20/3期

第1四半期

前年同期比

増減額

増減率(%)

システム運営管理 売上高

3,134

3,009

-124

-4.0

売上総利益

699

709

10

+1.5

利上総利益率

22.3

23.6

1.3P

ソフトウェア開発 売上高

2,331

2,250

-80

-3.5

売上総利益

508

565

56

+11.2

利上総利益率

21.8

25.1

3.3P

システム基盤 売上高

574

570

-4

-0.7

売上総利益

113

167

53

+47.5

利上総利益率

19.8

29.4

9.6P

サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育 売上高

307

422

114

+37.1

売上総利益

63

105

41

+64.5

利上総利益率

20.8

24.9

4.2P

その他 売上高

287

310

23

+8.0

売上総利益

-9

39

49

利上総利益率

12.9

16.1P

単位:百万円
※同社は、従来「システム運営管理」および「ソフトウェア開発」を報告セグメントとして区分し、報告セグメントに含まれない事業セグメントを「その他」の区分に集約していたが、当第1四半期連結会計期間より報告セグメントを単一セグメント「情報サービス事業」に変更した。その一方で、サービスごとの業績動向が開示されることとなった。

 

システム運営管理の売上高は前年同期比4.0%減の30億9百万円。金融系既存顧客ならびに公共系新規顧客の案件獲得があったものの、一部の金融系大型プロジェクトの収束による受注の減少が影響した。一方、売上総利益は同1.5%増加した。

 

ソフトウエア開発の売上高は前年同期比3.5%減の22億50百万円。公共系において、一部受注が拡大したものの、前期大型プロジェクト完了にともなう反動減が影響した。一方、売上総利益は同11.2%増加した。

 

システム基盤の売上高は前年同期比0.7%減の5億70百万円。公共系の売上が増加したものの、運輸系および金融系の売上が減少した。一方、売上総利益は同47.5%増加した。

 

サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育の売上高は前年同期比37.1%増の4億22百万円。サイバーセキュリティ製品の販売増加に加え、コンサルティングの受注も増加した。売上総利益も同64.5%増加した。

 

その他売上高は前年同期比8.0%増の3億10百万円。製品販売において大口の受注があった。売上総利益も49百万円増加した(前年同期は9百万円の赤字)。

 

第1四半期(4-6月)の業績推移.

 

 

20/3期第1四半期(4-6月)は、売上高が若干減少したものの、営業利益はプロジェクト管理体制の強化などの取り組みが効果を発揮し高水準であった前年同期を上回った。

 

(2)財政状態

財政状態

19年3月

19年6月

19年3月

19年6月

現預金

3,797

4,026

短期有利子負債

1,859

1,359

売上債権

5,232

4,102

賞与・役員賞与引当金

977

402

たな卸資産

19

40

長期有利子負債

749

624

流動資産

9,298

8,509

退職給付に係る負債

29

29

有形固定資産

1,781

1,759

負債

6,258

5,539

無形固定資産

1,513

1,444

純資産

8,342

8,110

投資その他

2,006

1,936

負債・純資産合計

14,600

13,649

固定資産

5,301

5,140

有利子負債合計

2,609

1,984

※単位:百万円

 

19/6末の総資産は前期末比9億51百万円減少の136億49百万円。資産面では売上債権やのれんなどが、負債・純資産面では短期借入金、賞与引当金、長期借入金などが主な減少要因。自己資本比率は59.2%と前期末比2.3ポイント上昇した。

 

(3)最近の主なトピックス

◎コーポレート・ガバナンス体制の強化

同社は、持株会社への移行を契機に、コーポレートガバナンス体制の強化を目的に、経営委員会とグループリスク管理委員会の2つの委員会を新設した。これら2つの委員会は取締役会においてより深い議論を行うための準備段階の委員会である。経営委員会は、投資案件やM&Aや中期経営計画等を検討する委員会であり、グループリスク管理委員会はグループに想定される各種のリスクを分析・対応を検討するための委員会である。今後取締役会の機能強化に通じるものと期待される。

 

(同社決算説明資料より)

 

◎従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引
同社は、中長期的な業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識を高めることを目的として、同社グループの取締役および執行役員を対象にした業績連動型株式報酬制度「株式給付信託(BBT)」を、株価および業績向上への従業員の意欲や士気を高めることを目的として、同社グループの従業員を対象にした業績連動型株式報酬制度「株式給付信託(J-ESOP)」を導入。この株式給付信託(J-ESOP)は、予め同社グループが定めた株式給付規程に基づき、グループの従業員が一定の条件を満たした場合に当該従業員に対し同社株式を給付する仕組み。従業員の勤続年数や昇格に応じてポイントを付与し、従業員に付与ポイントに相当する同社株式を給付する。従業員に対し給付する株式については、予め信託設定した金銭により将来分も含め取得し、信託財産として分別管理する。

 

4.2020年3月期業績予想

(1)連結業績

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

売上高

26,515

100.0%

26,800

100.0%

+1.1%

営業利益

1,667

6.3%

1,670

6.2%

+0.2%

経常利益

1,724

6.5%

1,710

6.4%

-0.8%

当期純利益

1,028

3.9%

1,060

4.0%

+3.1%

※単位:百万円
※当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益

 

前期比1.1%の増収、同0.8%の経常減益の計画
第1四半期が終了し、期初の会社計画から売上、利益ともに修正なし。売上高は前期比1.1%増の268億円の計画。一部大手金融機関におけるシステム統合の完了やエネルギー企業向け大型ソフトウエア開発案件の終了があるものの、顧客企業のDX推進に関する旺盛なニーズに対応し同社グループ技術者のスキルシフト(DX)を行うことによる売上高の増加やITコンサルティングやサイバーセキュリティに対する顧客投資額の増加に対応した売上高の増加が見込まれる。
営業利益は同0.2%増の16億70百万円。従来型サービスからデジタル技術を活用したサービスへの移行の中で、DX技術者の教育に関連した費用の増加が避けられないものの、より一層の収益性の向上のための取組みやプロジェクト管理の強化による生産性の向上に努める計画。また、大型プロジェクトの終了に伴う外注費の抑制も想定される。売上高営業利益率は、同0.1ポイント低下の6.2%の計画。
1株当たりの配当は、6月21日に前期から10円増加の50円(上期25円と下期25円)に修正された。

 

(2)同社取り巻く環境と今後の方向性

プラス要素

マイナス要素

・DX推進に関する顧客企業の旺盛なニーズ

・技術者のDXへのスキルシフトによる売上高への貢献

・ITコンサルティングやサイバーセキュリティに対する顧客投資額の増加

・一部の大手金融機関におけるシステム統合の完了

・エネルギー企業向け大型ソフトウェア開発案件の終了

・DXサービス提供への体制整備に向けた移行期間

今後の方向性

DXを活用した新たなビジネスモデルの構築に向けて積極的に投資を行う。

教育研修費

システム投資

ファンド投資

・AI技術者、高度サイバーセキュリティ技術者、ITIL技術者、RPA技術者など ・人財マネジメントシステムの構築・導入など ・最先端IT技術の情報収集および同社事業への応用

・先端技術を持つベンチャー企業との提携を探る

 

5.今後の注目点

20年3月期第1四半期決算は、前年同期比1.1%減収、同27.9%営業増益となった。サービス別では、一部大手金融機関におけるシステム統合の完了とエネルギー企業向け大型ソフトウエア開発案件の終了が重なりシステム運営管理とソフトウェア開発並びにシステム基盤で売上高が減少した。その一方で、収益性の改善が進みこれら3サービスにおいていずれも売上総利益が増加した。プロジェクト管理体制の強化や、積極的な営業活動の推進、高付加価値分野への技術者のシフトなど、近年積極的に実施してきた各種施策の成果であり、同社の収益基盤が強まってきたと評価すべきであろう。また、この数年販売拡大を強化してきたサイバーセキュリティ製品とITコンサルティングの売上高も拡大傾向にあることが確認された。同社の今期業績は、一部大手金融機関におけるシステム統合の完了とエネルギー企業向け大型ソフトウエア開発案件の終了が重なり、楽な事業環境とは言えない。こうした環境下、同社ではグループ技術者のスキルシフト(DX)によるDX関連やサイバーセキュリティ関連やITコンサルティング関連の売上高拡大に加えて、より一層の収益性の向上を通じて、増収増益での着地を目指している。今期会社計画の達成に向けて、どこまで積み上げることができるのか、続く第2四半期の業績動向が注目される。
また、新たにスタートした新中期経営計画「Next 50 Episode Ⅰ覚醒 (Awakening)!」では、次の50年に向けた成長基盤の構築に向け、DX技術者の教育投資が積極的に実施される。DX関連など高付加価値サービスの増加は、売上総利益の拡大など収益性の向上をもたらすものと期待される。今後の教育研修費や人財マネジメントシステムへの投資が、今後いかに同社の収益性の向上に結び付くのか、期待を込めて注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成>

組織形態 監査役設置会社
取締役 6名、うち社外3名
監査役 4名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日: 2019年6月24日

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

補充原則1-2-4「議決権行使のための環境整備、および招集通知の英訳」

補充原則3-1-2「英語での情報の開示・提供」

議決権の電子行使、および招集通知の英訳については、現時点で、海外投資家の比率が低いため、業務効率面から未実施であるが、持株数が20%を超えた段階で実施を検討する。

なお、ガイドライン第2章第10条もあわせてご参照ください。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4 いわゆる政策保有株式】 (1)事業上の関係を維持・強化し、当社の中長期的な企業価値の向上を目的として当社の取引先等である会社等の株式を保有することがある。こうした保有に関して、当社は毎年、取締役会で主要な政策保有株式について、①株価下落リスクをはじめとする当該株式を保有することにともなうリスクと、②事業上の関係の維持・強化をはじめとする保有の中長期的な経済合理性を検証する。当該検証の結果、中長期的な経済合理性が認められない政策保有株式については、当該株式売却その他の方法による当該政策保有の解消を検討する。

(2)当社が保有する政策保有株式に係る議決権の行使については、当社の株主の皆様に対する責任を全うする観点から、当社と投資先企業双方の持続的成長と中長期的な企業価値向上に適うか否かを基準に、議決権を行使することを基本方針とする。基準判断においては必要に応じ、投資先企業から提出された議案について当該投資先企業に対して説明を求め、協議を行うこととする。また、投資先企業から提出された議案に関して、当社と投資企業(ひいてはその株主の皆様)の利益が相反するおそれがあると認められる場合には、当社の独立社外取締役その他の第三者から意見を聴取するなどの方法により、当該利益相反のおそれを解消するための措置を講じるように努める。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】 (1)当社は、経営理念に掲げる精神のもと、株主との実りある対話を実現するため、双方向のコミュニケーションの充実に努める。

(2)当社は、株主との対話に資するため、以下の情報を開示する。

・中長期の戦略シナリオ、ビジネスモデル、企業価値向上の方策

・経営上重視している財務経営指標

・リスク情報

・環境、社会、ガバナンス情報

(3)当社は、株主とのコミュニケーションの充実を図るため、問い合わせ窓口を社長室内に設置し、株主との信頼関係を醸成する。

(4)当社は、次の通り「株主との建設的な対話を促進するための方針」を定め、実践する。

 

【株主との建設的な対話を促進するための方針】

当社は、株主との建設的な対話が、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう

①株主からの対話(面談)の申し込みに対しては、株主の希望と面談の主な関心事を踏まえたうえで、合理的な範囲で社外取締役を含む取締役または経営幹部が臨むことを基本とする。

②IR担当役員は、社内部門と協力し、建設的な対話の実現に努力する。

③IR担当役員は、個別面談のほか、経営説明会等を開催し、IR活動の充実を図る。

④IR担当役員は、自社の考えを対話により株主に伝え、株主からの意見・要望について取締役または経営幹部へフィードバックするとともに、社外役員にもフィードバックを適時適切に行い、独立・客観的視点からの課題認識を共有する。

⑤IR担当役員は、未公表の重要な内部情報(インサイダー情報)が外部に漏洩することを防止するため、当社セキュリティーポリシーに基づき、情報管理責任者と連携を図り、情報管理を徹底する。

⑥IR担当役員は、総務所管部門、株式管理会社、IR支援会社と積極的に連携し、当社の株主構造の把握に努める。

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