ブリッジレポート ヒューマン・アソシエイツHD 減収減益 経営戦略見直しへ

2019/07/25

 

 

渡部 昭彦 社長

ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス株式会社(6575)

 

 

企業情報

市場

東証マザーズ

業種

サービス業

代表者

渡部 昭彦

所在地

東京都港区南青山1-3-3 青山一丁目タワー4階

決算月

3月

HP

https://www.humanassociates.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

904円

2,984,638株

2,698百万円

21.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

352.20円

2.6倍

*株価は07/11終値。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

1,542

183

195

103

37.88

24.30

2017年3月(実)

1,675

203

229

113

41.47

24.30

2018年3月(実)

1,948

255

257

176

64.32

19.29

2019年3月(実)

1,883

147

148

182

61.56

18.36

2020年3月(予)

*業績予想は非開示。単位:百万円、円。
*2018年1月、1株を2株に分割(EPSを遡及修正)。

 

 

ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス株式会社の2019年3月期決算の概要と2020年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年3月期決算概要
3.成長戦略
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 19/3期は前期比3.3%の減収、同42.3%の営業減益。既存顧客の維持及び新規取引先の獲得に加え、フォローアップサービスの強化も成果をあげたメンタルヘルスケア事業の売上が増加したものの、コンサルタントの採用遅延等による人材紹介事業の売上減少をカバーできなかった。利益面では、売上の減少に伴い売上総利益が減少する中、上場に伴うガバナンス強化による全社費用の増加や人材紹介事業における積極的な採用活動等による先行投資が負担になった。 
  • 2019年7月1日に研修事業を展開するサイコム・ブレインズ(株)を100%子会社化した。これにより、3事業体制となる20/3期は、単なるセグメント間のクロスセールスにとどまらず、新商品開発等のシナジー最大化に向けた施策を実施していく考え。また、グループ資源の効率化も図るべく、全社的な経営戦略の見直しも行っているため、20/3期業績予想の開示を見合わせた。合理的な予想数値を算出する事が可能となった時点で速やかに開示する考え。 
  • 業績予想の開示はなかったが、人材紹介事業における前期入社したコンサルタントの貢献、優良顧客の深堀によるメンタルヘルスケア事業の安定成長、更には大手企業中心の顧客基盤と実績を有するサイコム・ブレインズ(株)の寄与もあり、売上・利益の回復が見込まれる。ただ、中期的な同社の成長を考えた場合、注目すべきは目先の売上・利益よりも、人材紹介事業、メンタルヘルスケア事業、及び研修事業の早期のシナジー創出であろう。クロスセールス、研修メニュー等の新商品開発、アセスメント・コーチング領域の拡大、更にはグローバル展開等で取り組みの成果に注目していきたい。

1.会社概要

持株会社である同社の下、エグゼクティブやグローバル人材の紹介を行う人材紹介事業と組織人材向けのカウンセリング、ストレスチェック及びその後のフォローアップサービスを行うメンタルヘルスケア事業を手掛けている。
グループは、持株会社であるヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス(株)の他、会社経営層や高度スペシャリストのエグゼクティブサーチを行うAIMSインターナショナルジャパン(株)、ミドルマネジメントのキャリア開発を手助けする登録型人材紹介会社(株)A・ヒューマン、外資系企業を中心にグローバル人材を紹介するOptia Partners(株)、組織人材のメンタルヘルスケアを行うヒューマン・フロンティア(株)、及び研修事業を展開するサイコム・ブレインズ(株)の100%子会社5社。
尚、大和PIパートナーズ(株)が発行済株式数の36.5%を保有する筆頭株主であり、取締役1名の派遣を受けている。

 

ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス(株) 人材紹介事業 AIMSインターナショナルジャパン(株)
(株)A・ヒューマン
Optia Partners(株)
メンタルヘルスケア事業 ヒューマン・フロンティア(株)
研修事業 サイコム・ブレインズ(株)

 

1-1.経営理念

「企業組織における最も重要な経営資源である人材の価値を高め、企業がより高度な活動を継続していくお手伝いをすること」。
様々な人事機能に関するサービスを当社グループで一括して提供することで、企業を取り巻く様々なリスクや課題を解消するための解決策を総合的に提供し、また、当社グループの特色を活かした事業展開による高付加価値ソリューションの提供を行っております。

 

1-2.事業概要

事業は人材紹介事業とメンタルヘルスケア事業に分かれ、人材紹介事業は、企業の人材ニーズを的確に把握する一方、キャリアコンサルティングを通じ個々の人材に対して最も適した企業を紹介し、企業と人材の橋渡しを行う。一方、メンタルヘルスケア事業は、従業員の日常の悩み事についてカウンセリングを行い、問題解決のサポートや職場環境の改善を支援する。
19/3期の売上構成は、人材紹介事業54%、メンタルヘルスケア事業46%。

 

人材紹介事業
ミドルマネジメント以上の人材紹介に特化して、特色のある事業会社3社が人材サービスを展開している。3社のシナジーを追及する事で、求人企業及び求職者のニーズに沿ったサービス提供を実現している。

 

 
Optia Partners(株)

・外資系企業の人材ニーズ、海外進出企業に求められる国際人材の紹介に注力

・外資系企業の上層部に直接コンタクトを取り、より上位ポジション、高額案件の受注を獲得

・バイリンガルの優秀な日本人求職者を多く保持

(株)A・ヒューマン

・30代~40代を中心としたビジネスパーソンであるミドルマネジメント層に注力

・担当業界の経験豊富なコンサルタント

 
(同社資料を基に作成)

 

ミドルマネジメント以上の人材紹介に特化し、事業会社3社が求人企業及び求職者のニーズに沿ったサービスを提供しつつ、シナジーを追及している。3社とは、会社経営層や高度スペシャリストのエグゼクティブサーチを行うAIMSインターナショナルジャパン(株)、ミドルマネジメントのキャリア開発を手助けする登録型人材紹介会社(株)A・ヒューマン、及びグローバル人材を紹介するOptia Partners(株)である。

 

 

同社グループの強み
各業界で15~20年の勤務経験を持ち業界知識の豊富なコンサルタントを確保している事が強みであり、インターナショナル領域では、Optia Partners(株)の充実したコンサルタント陣に加え、提携先であるAIMS Internationalとの連携が強み。Optia Partners(株)はコンサルタントの9割超が外国人のため外資系企業のトップ(外国人)へアプローチしやすく、的確にニーズをつかむ事ができる。AIMS Internationalとの連携では、世界50ヶ国以上に90ヶ所以上の拠点を構え、350人以上のコンサルタントを擁するエグゼクティブサーチネットワークを活用できる。

 

 

市場動向
同社資料によると、人材紹介市場は2016年度に2,300億円となり、リーマンショック前のピーク時の水準を上回った。「人材不足」を背景に引き続き7~8%前後での成長が見込まれる。

 

(同社資料より)

 

メンタルヘルスケア事業

(同社資料より)

 

事業会社ヒューマン・フロンティア(株)が、カウンセリング、ストレスチェック及びその後のフォローアップサービス、及び各種研修等のメンタルヘルスケアサービスをワンストップで提供。(株)アドバンテッジリスクマネジメント(証券コード8769)に次ぐ業界2位。業界3位のピースマインド・イープ株式会社(東京都中央区、代表取締役社長 荻原 英人)を加えた3社でトップグループを形成している。

 

大企業約480社と年間契約し、全国約80名のカウンセラーが顧客企業の現場に赴いてEAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)を提供しており、EAPカウンセリングを通して培ったノウハウを活かして、管理職向けメンタルヘルスケア研修、パワハラ研修、ワークライフバランス研修等の研修や、ストレスチェック・組織分析、休業者・復職者支援プログラム、CISM(Critical Incident Stress Management)、組織コンサルテーション等のサービスも提供している。

 

ストレスチェックについては、2015年12月の改正労働安全衛生法の施行に伴い、従業員50名以上の事業所で実施が義務化され需要が拡大した。厚生省モデルの質問を使い、従業員の回答を集計し、問題点等を整理・分析して企業に提出する。また、ストレスチェックを通して、組織上の問題が浮き彫りになれば、組織コンサルテーションにより様々なコンサル提案により問題の解決を支援する。

 

 

同社グループの強み
他社では対応が難しい、メンタルヘルス対策の一次予防から三次予防までのワンストップ提供と「現場型」出張カウンセリングを強みとする。メンタルヘルス対策に対するニーズは、企業規模に比例して多様化する傾向があるが、同社のように、多様化する企業ニーズに全国規模かつワンストップで、柔軟に対応できる企業は限られる。

 

「現場型」出張カウンセリングは、連結子会社ヒューマン・フロンティア(株)が擁する全国の専属カウンセラーが可能にしている。「専属カウンセラーは、理論だけでなく、実際に組織で働く社員の気持ちを理解できる人材でなければならない」、という考えから、臨床心理士や産業カウンセラー等の資格保有に加え、企業での勤務経験も採用条件となっている。専属カウンセラーは原則として月1回、東京での集合研修の受講が義務付けられており、常に高い水準の知識が維持されている。同社グループでは、全国津々浦々、Face To Faceで、専属カウンセラーが現場でカウンセリングを行っているが、専属カウンセラーを持つ同業者は少なく(外部委託が多い)、しかも、電話でカウンセリングするケースが多いと言う。

 

加えて、同社においては、カウンセラーだけでなく、従業員スタッフも高い専門知識を有する。このため、ストレスチェック後の職場改善提案や研修等のフォローアップサービスが充実している事に加え、災害・事故時におけるCISM(惨事ストレスマネジメント)にも対応できる。これは、同社が定期的に実施している組織内研修の成果であり、この結果、年間EAP契約(1年契約)の継続率は95%と高い水準を維持している。

 

 

市場動向
シードプランニング「EAP・メンタルヘルス市場の現状と将来展望2017」によると、2016年度のEAP・メンタルヘルス領域の市場規模は166.4億円。2020年度には1.3倍の217.3億円に拡大する見込み。

 

 (同社資料より)

2.2019年3月期決算概要

2-1.連結業績

18/3期

構成比

19/3期

構成比

前年同期比

3Q時予想

予想比

売上高

1,948

100.0%

1,883

100.0%

-3.3%

1,921

-2.0%

売上総利益

1,608

82.6%

1,538

81.7%

-4.3%

 -

販管費

1,352

69.4%

1,391

73.9%

+2.8%

 -

営業利益

255

13.1%

147

7.8%

-42.3%

188

-21.8%

経常利益

257

13.2%

148

7.9%

-42.5%

187

-20.9%

親会社株主帰属利益

176

9.0%

182

9.7%

+3.7%

217

-16.1%

*単位:百万円

 

前期比3.3%の減収、同42.3%の営業減益
売上高は前期比3.3%減の18億83百万円。既存顧客の維持及び新規取引先の獲得に加え、フォローアップサービスの強化も成果をあげたメンタルヘルスケア事業の売上が同5.1%増加したものの、コンサルタントの採用遅延等による人材紹介事業の売上減少(同9.6%減)をカバーできなかった。
利益面では、売上の減少に伴い売上総利益が減少する中、上場に伴うガバナンス強化による全社費用の増加や人材紹介事業における積極的な採用活動(コンサルタントが前期末との比較で11名純増)等の先行投資が負担になり、営業利益が1億47百万円と同42.3%減少。業績が低迷する連結子会社Optia Partners(株)の、のれんの減損損失66百万円や本社移転費用13百万円を特別損失に計上したものの、本社移転に伴う移転補償金3億02百万円を特別利益に計上した事で最終利益は1億82百万円と同3.7%増加した。

 

尚、同社は2016年11月にOptia Partners(株)の全株式を取得し連結子会社化したが、当期業績の低迷を踏まえて投資時点に想定していた計画を修正した。Optia Partners(株)は、前期に退職したコンサルタントの減少部分を前期中に補えず、当期は採用が進んだものの、当期中の本格稼働には至らず、当期の売上が減少した。

 

1株当たり18.36円(配当性向30.0%)の期末配当を実施
同社は、株主との長期的な信頼関係を構築するため利益還元を重要な経営課題に位置付けており、将来の事業展開と経営基盤強化のために必要な内部留保を確保しつつ、連結配当性向30%程度を目安として安定した配当を実施していく考え。

 

 

セグメント別売上高・利益

18/3期

構成比:利益率

19/3期

構成比・利益率

前期比

3Q時予想

予想比

人材紹介事業

1,121

57.6%

1,014

53.9%

-9.6%

1,057

-4.1%

メンタルヘルスケア事業

826

42.4%

869

46.1%

+5.1%

864

+0.6%

連結売上高

1,948

100.0%

1,883

100.0%

-3.3%

1,921

-2.0%

人材紹介事業

218

19.5%

143

14.1%

-34.6%

191

-25.1%

メンタルヘルスケア事業

245

29.7%

260

30.0%

+6.1%

252

+3.2%

調整額

-208

-255

-255

連結営業利益

255

13.1%

147

7.8%

-42.3%

188

-21.5%

*単位:百万円

 

 

四半期業績

18/3-4Q

19/3-1Q

2Q

3Q

4Q(*)

売上高

467

398

523

507

455

売上総利益

393

330

432

405

370

販管費

346

326

345

339

380

営業利益

47

4

87

66

-10

*単位:百万円
*19/3期第4四半期はサイコム・ブレインズ(株)のデユーデリジェンス費用の計上で販管費が増加した。

 

2-2.セグメント別動向

 

18/3-1Q

2Q

3Q

4Q

19/3-1Q

2Q

3Q

4Q

人材紹介事業

294

282

238

306

239

274

236

264

メンタルヘルスケア事業

166

252

247

160

158

249

271

191

連結売上高

460

534

485

467

398

523

507

455

人材紹介事業

71

60

18

69

35

51

19

36

メンタルヘルスケア事業

30

88

88

37

28

91

103

37

調整額

-44

-50

-55

-58

-60

-55

-56

-83

連結営業利益

57

99

51

47

4

87

66

-10

*単位:百万円

 

 

人材紹介事業
通期売上高10億14百万円(前期比9.6%減)、同セグメント利益1億43百万円(同34.6%減)。18/3期第4四半期の売上前倒しにより19/3期第1四半期の売上が減少し、20/3期第1四半期への後ろ倒しで19/3期第4四半期の売上が減少した。利益面では、Optia Partners(株)を中心にコンサルタントの採用が進み、3社合計の期末コンサルタント数が69名と前期末との比較で11名増加した。ただ、上期の純増は5名に留まり当期中の本格稼働には至らず、増員の中心だったOptia Partners(株)が営業赤字になった。事業エリアの拡大を図るべく、2019年3月に(株)A・ヒューマンの大阪支店を開設した。

 

 

Optia Partners(株)は、前期退職によるコンサルタントの減少を前期中に補えず、当期初に積極的に採用を行ったものの当期中の本格稼働には至らず、当期売上が減少。コンサルタントの増加による人件費の増加が負担になった。

 

 

 

メンタルヘルスケア事業
通期売上高8億69百万円(前期比5.1%増)、同セグメント利益2億60百万円(前期比6.1%増)。現場型出張カウンセリング(EAP)では、「現場型」カウンセリングの品質維持向上に取り組むと共に、既存顧客の満足度向上と新規顧客開拓に注力した。ストレスチェックでは、引き続きストレスチェック後のフォローアップサービスの拡大に取り組むと共に、ストレスチェックシステムの全面改修を進めた。この他、研修において、ハラスメント防止研修の受注が大幅増加した他、レジリエンス研修及びワーク・エンゲージメント研修をリリースした。

 

2-3.財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

18年3月

19年3月

 

18年3月

19年3月

現預金

576

808

未払法人税等

28

130

未収入金

2

363

未払金

153

325

流動資産

752

1,310

前受金

110

117

有形固定資産

87

213

有利子負債合計

13

1

無形固定資産

111

38

負債

386

659

投資その他

112

147

純資産

676

1,051

固定資産

311

400

負債・純資産合計

1,063

1,710

*単位:百万円

 

期末総資産は前期末との比較で6億46百万円増の17億10百万円。2018年4月10日の東証マザーズ上場に伴う資金調達と自己株式の処分で約2億円を調達した事等で、現預金と純資産が増加。本社移転に伴い、移転補償金に係る未収入金(3億02百万円)を流動資産に計上する一方、本社移転費用を未払金として流動負債に計上した。この他、Optia Partners(株)の、のれん償却及び減損損失の計上で無形固定資産が減少した。自己資本比率61.5%(前期末63.6%)。

 

 

キャッシュ・フロー(CF)

18/3期

19/3期

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

166

184

+17

+10.7%

投資キャッシュ・フロー(B)

-12

-130

-118

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

154

53

-100

-65.2%

財務キャッシュ・フロー

-73

177

+251

現金及び現金同等物期末残高

576

808

+231

+40.1%

*単位:百万円

 

税引前利益3億70百万円、減価償却費58百万円、税金費用△66百万円等で1億84百万円の営業CFを確保した。投資CFは主に敷金の差入△1億04百万円によるもので、財務CFは株式の発行による収入1億96百万円等。

 

 

参考:ROEの推移

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

ROE

46.07%

23.05%

29.08%

21.14%

売上高当期純利益率

6.71%

6.76%

9.04%

9.70%

総資産回転率

3.55回

1.77回

1.87回

1.36回

レバレッジ

1.93倍

1.93倍

1.72倍

1.61倍

*ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残。

 

3.成長戦略

3-1.20/3期業績予想は非開示

同社は、事業規模の拡大を図るべく既存事業を推進すると共に、人材サービスに起因した積極的なM&A戦略を展開している。この一環として、2016年11月に人材紹介事業を展開するOptia Partners(株)を100%子会社したが、これに次ぐM&Aとして、2019年7月1日に研修事業を展開するサイコム・ブレインズ(株)を100%子会社化した(2019年5月末に70.9%出資済み)。

 

同社グループは、これまで人材紹介事業とメンタルヘルスケア事業の2事業を展開してきたが、サイコム・ブレインズ(株)を子会社化した事で、20/3期は3事業体制となる、単なるセグメント間のクロスセールスにとどまらず、新商品開発等のシナジーの最大化に向けた施策を実施していく考え。また、グループ資源の効率化も図るべく、全社的な経営戦略の見直しも行っている。このため、現状では20/3期業績について合理的な予想数値を算出する事が難しく、20/3期業績予想の開示を見合わせる事とした。合理的な予想数値を算出する事が可能となった時点で速やかに開示する予定である。

 

3-2.サイコム・ブレインズ(株)の株式取得及び簡易株式交換による完全子会社化

サイコム・ブレインズ(株)は、顧客企業の人と組織に関する課題を的確にとらえ、顧客企業毎にカスタマイズしたプログラム策定に定評のある研修サービスを提供している。集合研修を中核としつつ、アセスメント、映像コンテンツ配信、マイクロラーニング等を組み合わせて効果の最大化を図っており、経営リーダー育成、イノベーション、営業組織の強化、ダイバーシティ、グローバル人材育成、アジア諸国における社員教育、更には異文化マネジメント等に強みを持っている。

 

一方、ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス(株)は、「人材紹介事業」及び「メンタルヘルスケア事業」を通じて、グループのミッションとする「企業における人材価値向上」に取り組んできた。今後は、「人材紹介事業」及び「メンタルヘルスケア事業」の拡大・深堀と共に、人材サービスにおけるサービスの幅を広げていく考えで、この一環として、今回、サイコム・ブレインズ(株)を子会社化した。双方のサービスをお互いの顧客企業に展開し、シナジーを追求する事で、双方の顧客企業の人材価値向上に更なる貢献が可能と考えている。

 

尚、2019年5月31日に、サイコム・ブレインズ(株)の発行済株式942株のうち668株を譲受し、残る274株全てを同年7月1日に株式交換により取得し完全子会社化した。発行済株式全株を譲渡により取得せず、274株を株式交換により取得したのは、同社の資金負担の軽減と共に、株式交換により同社の株式を取得する西田氏、鳥居氏、岡本氏、川口氏の4名はサイコム・ブレインズの取締役としての職務を継続するため、彼らが企業価値の向上に努めるためのインセンティブとする事を意図したため(サイコム・ブレインズ(株)の代表取締役社長だった西田氏は、2019年6月27日開催のヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス(株)定時株主総会において、取締役に選任された)。

 

 

サイコム・ブレインズ(株)概要

代表者 西田忠康
所在地 東京都千代田区外神田1-18-13
設立 1996年8月19日(2006年:旧サイコム社・旧ブレインズ社合併)
従業員数 34名(2019年3月末現在)
事業内容 国内外における研修の企画・運営・実施、公開講座、アセスメント、新興国体験、オンライン教育事業、映像メディア制作事業、電子商取引事業、経営アカデミー運営

 

 

業績

 

16/9期

17/9期

18/9期

売上高

800

863

809

営業利益

93

77

62

経常利益

94

74

63

当期純利益

60

50

41

*単位:百万円

 

3-3.サイコム・ブレインズ(株)のグループ入りに伴う成長戦略

 

企業における人材価値向上の実現のため、高付加価値な人事機能サービスを一括して提供する「ソリューション提供型人材サービスの“ワンストップショッピング”」を目指していく。
既存事業である人材紹介事業(外的な能力の適材適所のマッチング)、メンタルヘルスケア事業(内面の環境整備によるモチベーションアップ)、そして子会社化したサイコム・ブレインズ(株)が手掛ける研修事業(社員の能力アップ)の3事業がそろった事で「当面の事業の形はできた」(渡部社長)と言う。今後は、これをどう伸ばしていくか、が課題であり、優先的に取り組んでいく考え。

 

 

3事業それぞれの拡大とシナジーの追求
人材紹介事業においては、企業の経営層等とのリレーションシップの強化、経営上の問題点の発見、及び経営組織レベルの人事サービスノウハウの蓄積に努める事で、メンタルヘルスケア事業においては、組織分析による組織全体の問題点の発見に努める事で、それぞれ事業拡大に取り組んでいく。一方、研修事業では、大企業向け研修サービスの提供をメインビジネスとし、企業毎の課題を把握し研修メニューをカスタマイズする事で「人材育成・組織力強化」領域で幅広い研修メニューを提供していく。また、サイコム・ブレインズ(株)は、顧客が大企業中心である事もあり、早い段階から海外展開しており、アジア地区で現地日系企業向けにサービスを提供している子会社4社を傘下に持つ。

 

3事業それぞれでの事業拡大と共にシナジーも追求していく考えで、その一つがセグメント間のクロスセールスである。人材紹介事業では年間数百社と取引しており、メンタルヘルスケア事業は大企業中心に400~500社の顧客を有するが、こうした既存取引先には研修ニーズがあり、既存事業の販路(取引窓口である人事部)を活かす事ができる。また、メンタルヘルスケア事業では、これまで「内面の環境整備によるモチベーションアップ」を目的とした研修を実施してきたが、今後は、メンタルヘルスケア事業を手掛けるヒューマン・フロンティア(株)とサイコム・ブレインズ(株)が連携して研修メニュー等の新商品開発に取り組んでいく。
この他、同社グループは、既存事業で培ってきたノウハウを活かす事ができ、シナジー(新規事業も人事部門を窓口とする)も期待できる新規事業として、アセスメント事業とコーチング事業の育成に取り組んでいるが、この領域でもサイコム・ブレインズ(株)のノウハウとリソースを活用していく考えだ。また、サイコム・ブレインズ(株)の海外子会社を活かしたメンタルヘルスの海外展開(グローバル展開)も視野に入れている。

4.今後の注目点

20/3期の業績予想の開示はなかったが、人材紹介事業における前期入社したコンサルタントの貢献、優良顧客の拡大・深堀によるメンタルヘルスケア事業の安定成長、更には大手企業中心の顧客基盤と20年を超える実績を有するサイコム・ブレインズ(株)の寄与もあり、売上・利益の回復が期待できる。サイコム・ブレインズ(株)の今期の立ち上がりは順調で、足元の業績回復に貢献していると言う。
筆者は、同社の20/3期を売上高25~26億円、営業利益2.0~2.3億円と予想しているが、中期的な同社の成長を考えた場合、注目すべきは目先の売上・利益よりも、3事業のシナジーの創出であろう。クロスセールス、研修メニュー等の新商品開発、アセスメント・コーチング領域の拡大、更にはグローバル展開等で、早期に取り組みの成果を顕在化させる事ができるか注目していきたい。

 

参考:コーポレート・ガバナンスについて

取締役会の監督機能の強化によるコーポレート・ガバナンスの充実の観点から、2019年6月27日開催の第30回定時株主総会の承認を得て、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。
取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員を取締役会の構成員とする事により、取締役会の監督機能を強化し、更なる監視体制の強化を通じてより一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図る考え。

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 9名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年06月27日)
基本的な考え方
・コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
当社は、事業環境が刻々と変化する人材紹介業界において企業価値の持続的な増大を図るには、経営の効率化を図ると同時に、経営の健全性、透明性及びコンプライアンスを高めて社会的信頼に応えていくことが不可欠であるとの認識のもと、ガバナンス体制の強化・充実を重要課題と位置づけています。
こうした認識のもと、業務分掌の実施や規程の整備等により内部統制を強化するとともに、随時体制の見直しを実施し、企業価値の向上を図ることで、株主や債権者、従業員など企業を取り巻くさまざまなステークホルダーへの利益還元に努めてまいります。
当社は、取締役会の監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンスの移送の充実を図るために、2019年6月27日開催の第30回定時株主総会において、定款一部変更の承認を頂き、同日付で「監査等委員会設置会社」に移行いたしました。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
コーポレートガバナンス・コードの基本原則を実施しております。

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