(9616:東証1部) 共立メンテナンス 自然災害の影響克服し増収増益

2019/03/14

Kyoritsu

今回のポイント
・19/3期3Q累計は、前年同期比13.9%増収、17.7%経常増益。寮事業では期初稼働率は前期比減となったが、一時的な要因によるもので、期中に取り戻している。3Qは学生寮事業・社員寮事業共に増加傾向。ホテル事業では、7~9月に自然災害の影響を受けたものの、RevPARについてはドーミーインは回復が早く上昇基調が続いている。リゾートホテルも立ち直りに時間を要したが、3Qには上昇に転じた。・通期予想に修正はなく19/3期は8.3%増収、7.5%経常増益を見込む。尚、11月の上期決算発表時には自然災害による影響を克服し、主力事業である寮事業、ホテル事業が安定的に成長したことに加え、不動産流動化の推進も寄与した結果、各利益を上方修正した。配当は年43.0円(うち上期20.0円)を予定しているが、通期の結果をもって、増配の余地があると思われる。

・上期11.7%増収、11.5%営業増益から3Qは13.9%増収、17.9%営業増益と、自然災害の影響も軽微となり、成長の勢いは増している印象。また、3Q累計の通期予想に対する進捗率は売上高で75.3%、経常利益で84.6%。前年同期実績ベースのそれぞれ71.5%、77.2%を大きく上回っており、通期予想は明らかに保守的。来期は、ホテル事業において今期発生した自然災害の反動も考えられる。中長期的には2020年の東京オリンピックに加えて2025年には大阪万博が決定、見通しもより明るくなった。

会社概要
“ライフステージにおける様々な場面での「食」と「住」さらに「癒し」のサービスを通じて、広く社会の発展に寄与する”と言う経営方針の下、「現代版下宿屋」(食事付きの寮の運営)を中心にした寮事業、「温泉感覚を取り入れた大浴場」と「美味しい朝食」といった寮事業のノウハウを活かしたホスピタリティ重視のビジネスホテルや「リーズナブルで質の高いリゾートライフ空間の創造と提供」をテーマに掲げたリゾートホテルのホテル事業、オフィス(事務所)・レジデンス(住居)のビルメンテナンス、ビル賃貸及び賃貸代行、駐車場運営等の総合ビルマネジメント事業、外食やレストラン運営受託のフーズ事業等を展開。知名度と実績で他社を凌駕する主力の寮事業を安定収益源とし、ホテル事業の育成により成長を加速している。
事業の種類別セグメントと売上構成(18/3期)は次の通りである。

【沿革】
設立は1979年9月。食の世界に長く携わった創業者 石塚晴久氏が調理人として企業の給食施設の運営受託を開始した。翌80年には千葉県佐倉市に、木造2階建て(四畳半が28室)の民間学生寮「学生会館」第一号棟が誕生。「食」を第一として、「学生の健康と元気こそが親の安心」との考えのもと、提携先の学校名を冠した学生会館事業を展開。東京・神奈川地区、名古屋地区、大阪地区へとエリアを拡大した。85年4月には、「一室から借りる事ができ、朝夕2食付き」を特徴とし、ゆっくり身体を癒せる「大浴場」も重視した社員寮事業を開始。87年5月には、学生寮、社会人寮、給食施設等の受託事業で培った「賄いのノウハウ」を活かし外食事業に展開。93年6月に本社移転(東京都千代田区)を経て、同年7月に長野県でリゾートホテル事業に、8月に埼玉県でビジネスホテル事業に参入した。翌94年9月、現在のJASDAQ市場へ上場(店頭登録)、99年3月の東証二部上場を経て、01年9月に東証一部上場となった。

中期経営計画「Kyoritsu Jump Up Plan」 :18/3期~22/3期の5ヶ年計画
18/3期からスタートした新中期経営計画「Kyoritsu Jump Up Plan」 は初年度から好調に推移している。計画を大きく上回って進捗しているため、いくつかの軌道修正をしながら進展している。(1)「Kyoritsu Jump Up Plan」骨子
名称「Kyoritsu Jump Up Plan」

基本方針
Ⅰ.顧客満足度の向上
顧客満足度向上に繋がる商品・サービスを創造し、 顧客からの当社への評価を高め、さらなる信頼を得る。
II.開発の先行的実施
事業拠点を拡大し、盤石な基盤を構築する。

期間 2017年4月~2022年3月

定量目標 年平均10%以上の利益成長

将来の環境変化に打ち勝つ強固な事業基盤を早期に構築するため「顧客第一」を再認識し、顧客からのさらなる信頼を得ながら、「先行的開発」を実施する方針。

(2)顧客満足度向上のための重点施策
1.人材育成強化
事業の拡大スピードに応じた人材確保を図る。
積極的に新卒採用をするとともに、顧客の気持ちに応えることのできる、能力の高い人材の安定確保に取り組む。

*人材の安定的確保・・・採用力の更なる強化に加え、定着(離職防止)の促進。

18/3期は留学生38名を採用。外国籍の採用人数に制限はなく、優秀な人材なら積極的に採用する。
採用ルート・・・寮事業で培った学校との良好な関係を活用し、学校からの紹介がある。尚、18/3期に採用した寮利用校出身者は全採用者の47%に相当する145名であった。


*研修プログラムの充実・・・サービスレベルの維持・向上、階層別研修制度の充実

*多様な人材の活用・・・グローバル化へ対応すべく、多様な人材の確保と活用

*顧客満足度の向上

2.寮事業
商品ラインナップの拡充と付加価値の向上

3.ホテル事業
ドーミーインRevPARが当初予定以上の伸び

訪日外客数は16年2,404万人、17年2,869万人、18年は3,119万人と、政府が目指す20年4,000万人も射程圏内に入ってきた。こうしたことを背景に稼働率、客室単価とも好調に推移しており、RevPARは中期計画の想定を上回って推移している。
(注)RevPARは客室単価×稼働率を指す、ホテル事業のKPI(Key Performance Indicatorの略で、企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標)として重視される。

その他施策
■「総合顧客ネットワーク室」の活動
■ポイントプログラム開始
■自社サイトの刷新

(3)開発計画
持続的な成長に向けた開発計画
開発予定室数は寮事業で7,000室、ドーミーインで9,000室、リゾートで1,400を計画する。
19/3期上期段階での進捗率は57.6%、ドーミーインで進捗率98.0%、リゾートでは96.6%に達している。

(4)定量目標の見通し
飛躍のための「開発先行型」プラン
18/3期~19/3期を「開発先行期」と位置付け、20/3期~22/3期に加速した成長を目指す考え。
尚、下図予想は当初の見通しから軌道修正されている。

(5)財務方針
開発投資は5年間で総額1,400億円が見込まれる。
当初計画ではキャッシュ・フロー700億円、オフバランス(セール&リースバック)300億円、外部資金調達400億円で賄う考えとなっていた。
これまでと同様にネットD/Eレシオ1.0倍以下で財務健全性を維持させる。
尚、三井住友ファイナンス&リースと14物件650億円の流動化が具体化するなど不動産の流動化が想定以上に進展しているため、
当初計画のオフバランス300億円が上振れる見込みである。

(6)目標配当性向
13/3期以降連続して増配しつつも10%台にとどまる配当性向は、22/3期までに20%超を目指す。

(7)自社サイトを活性化させ、チャネルコストの削減を目指す
自社サイトの使い勝手があまり良くないためか、同社への宿泊に際して、予約は楽天トラベルなどを通じたものが多い。
こうしたことを受けて、自社サイトからの予約の誘導を進め、チャネルコスト(支払手数料)の削減を目指す。
自社サイト比率を15.2%に高めることで、約4.5億円のコスト削減を目指す。

2019年3月期第3四半期決算
前年同期比13.9%の増収、同17.7%の経常増益
売上高は前年同期比13.9%増の1,238億86百万円。
当第3四半期累計期間における同社を取り巻く環境は、大学への進学率の上昇や訪日外国人旅行者数が18年に3,000万人を突破し需要の続伸などが見られた一方で、6月以降大阪府北部地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震のほか、相次ぐ大型台風の発生など予期せぬ自然災害に見舞われた。こうした中、全社を挙げて自然災害を早期に克服し、中期経営計画の骨子である「顧客満足度の向上」及び「開発の先行的実施」を着実に推進した。
利益面では、開業準備費用等約13億20百万円や、お客様満足度向上のための大規模リニューアル費用約2億40百万円の発生などがあったものの、不動産流動化による利益もあり増収・増益となった。営業利益は前年同期比17.9%増の120億44百万円、経常利益は同17.7%増の117億56百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同19.7%増の79億73百万円と過去最高益を更新した。

営業利益率は前年同期比0.3ポイント上昇し9.7%。寮事業、ホテル事業とも低下した半面、その他の事業におけるデベロップメント事業の不動産流動化に伴う大幅増益が利益率向上に貢献した。

寮事業
売上高は前年同期比4.0%増の357億50百万円、営業利益は同0.1%増の51億71百万円。
期初稼働率前年比0.6ポイント減の97.7%となったが、これは新規の学校専用寮の竣工時期に伴う一時的な空室発生等によるもの。学生寮事業において契約数が従来の増加傾向に戻ったことに加え、社員寮事業においても新たに寮制度を導入する企業が増加したことなどにより契約数は増加した。尚、費用面では、新規事業所オープンに伴う開業準備費用等約1億30百万円と、既存事業所の大規模リニューアル費用約1億円が発生した。

ホテル事業
売上高は前年同期比12.3%増の595億45百万円、営業利益は同11.7%増の74億96百万円。今後オープン予定の新規事業所分を含めた開業準備費用等11億80百万円や、既存事業所の大規模リニューアル費用約1億40百万円に加え、自然災害の影響をも吸収して確かな成長を継続した。

ドーミーイン(ビジネスホテル)事業
3Q累計期間中に「天然温泉 南部の湯 ドーミーイン本八戸」、「天然温泉 白糸の湯 ドーミーイン大分」、「天然温泉 浪華の湯 ドーミーイン大阪谷町」、「春日の湯 ドーミーイン後楽園」、「ドーミーイン・global cabin 浜松」、「天然温泉 玉藻の湯 ドーミーイン高松中央公園前」、「global cabin 横浜中華街」、「天然温泉 朝霧の湯 ドーミーインPREMIUMなんばANNEX」の8事業所がオープンした。自然災害による影響もあったが、インバウンド顧客が各月とも前期を上回って大幅に増加したほか、多くの国内の顧客が利用したことも寄与し、短期間にて回復し、運営上重要な指標となるRevPAR(客室稼働率×平均客室単価)も上昇した。

リゾート(リゾートホテル)事業
昨年12月22日に「ラビスタ霧島ヒルズ」が九州地方第1号としてオープンした。相次ぐ自然災害の影響により一時的に稼働率が低下し、立ち直りに若干時間を要したが、顧客満足度向上の推進により、3Q(18年10月~12月)においては、客室単価の上昇と共にRevPARも上昇に転じている。

その他の事業
その他の事業全体(総合ビルマネジメント+フーズ+デベロップメント+報告セグメントに含まれない事業)は、売上高は前年同期比0.3%増の394億53百万円、営業利益は同127.1%増の16億49百万円。
総合ビルマネジメント事業は売上高が前年同期比6.0%増の109億3百万円、営業利益は同91.6%減の18百万円。建設案件の増加に伴い増収となったが、ビル管理部門における契約の一部終了などにより減益となった。
フーズ事業は売上高が前年同期比3.0%増の52億46百万円、営業利益は同27.9%減の84百万円。ホテルレストラン受託事業の案件増加に伴い増収となったものの、外食事業の開業準備費用等により減益となった。
デベロップメント事業は売上高が前年同期比7.3%減の140億5百万円、営業利益は同162.8%増の16億3百万円。建設案件の減少に伴い減収となったが、不動産流動化等により大幅な増益となった。
シニアライフ事業(高齢者向け住宅の管理運営事業)、PKP事業(自治体向け業務受託事業)、単身生活者支援事業、保険代理店事業、総合人材サービス事業、融資事業及び事務代行業が属するその他事業は、売上高が前年同期比5.0%増の92億96百万円、営業損失57百万円(前年同期は営業損失2億26百万円)。

第3四半期末の総資産は前期末比15億83百万円減の1,893億45百万円となった。主な要因は、現預金及び建設仮勘定の減少などによるもの。負債は同77億21百万円減の1,113億68万円となった。主な要因は、仕入債務、社債の減少などによるもの。純資産は同61億38百万円増の779億77百万円となった。主な要因は、利益剰余金の増加などによるもの。
自己資本比率は41.2%となり、前期末比3.6ポイントの増加となった。

2019年3月期業績予想
前期比8.3%の増収、同7.5%の経常増益予想
通期予想に修正はなく、売上高が前期比8.3%増の1,646億円、経常利益は同7.5%増の139億円を計画する。尚、自然災害による影響を克服し、主力事業である寮事業、ホテル事業が安定的に成長したことに加え、不動産流動化の推進も寄与する結果、11月の上期決算発表時に各利益を上方修正している。
寮事業では、期初稼働率が前年比0.6 ポイント減の97.7%となったが、これは新規学校の専用寮の竣工時期に伴う一時的な空室発生等によるものであり、期中に契約数が増加している。
ホテル事業では、中期経営計画達成に向け開発を加速させる。
配当は年43.0円(うち上期20.0円)を予定している。尚、通期予想を達成すれば配当性向は17.6%にとどまる。通期の結果をもって、増配の余地があると思われる。

今後の注目点
自然災害が相次いだにもかかわらず克服し、上期業績は会社予想を上回り、通期予想を上方修正した。上期11.7%増収、11.5%営業増益から3Qは13.9%増収、17.9%営業増益と増収増益率が上昇している。自然災害の影響も軽微となり、3Qには成長の勢いが増している。また、3Q累計の通期予想に対する進捗率は売上高で75.3%、経常利益で84.6%。前年同期実績ベースのそれぞれ71.5%、77.2%を大きく上回っており、通期予想は明らかに保守的。来期を見据えると、寮事業では期初稼働率の見通しが98.0%と高水準、加えてホテル事業では施設の増加が寄与するだけでなく、今期の自然災害の反動も考えられる。中長期的には2020年の東京オリンピックに加えて2025年には大阪万博が決定、見通しもより明るくなった。PERは20倍を超えているものの、足元の業績の勢いと中長期の成長性を加味すると株価には見直し余地があるといえるだろう。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書更新日:2018年12月25日
<基本的な考え方>
当社は、創業以来「顧客第一を会社の心とする」を経営理念として、「食と住のサービスを通じ、広く社会の発展に寄与する」ことを経営方針としております。また、永続的発展と長期的な株主利益の最大化を目指すため、コーポレート・ガバナンスの充実が不可欠と考え、経営の意思決定の迅速化、経営の監督機能の強化、説明責任の重視・徹底、迅速かつ適切な情報開示等を行っており、透明性、健全性等を確保することが重要な経営課題であると認識しております。
また、当社は会社法に基づく機関として、株主総会、取締役会、監査等委員会、会計監査人を設置しており、これらの機関のほかに、コンプライアンス委員会、グループ経営情報交換会を設置しております。

<コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について>

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