日本合成化学工業株式会社(4201 東証一部)
2017 年 3 月期は熊本地震の影響で利益の縮小が見込まれるも本業は堅調

2016/06/15

ベーシックレポート
㈱スクアード・リサーチ&コンサルティング
奥山 智子

EVOH 樹脂「ソアノール」の好調が継続
 2016 年 3 月期の売上は 1,046 億円と前期比微減となったが、営業利益は前期の 112 億円から 136 億円に増加、営業利益率も 10.6%から 13.0%へと大きく改善した。売上が前期並みの着地となった背景には、不採算事業の撤退に伴う売上規模の縮小及び、国産ナフサ価格下落に伴う売価改定があり、コア製品の数量ベースの販売実績は前期を上回った。特に好調だったのが EVOH 樹脂「ソアノール」であり、欧米で食品包装用途向けを中心に需要が堅調に推移し、当期の業績を牽引した。営業利益については「ソアノール」の増収効果に加え、欧州酢酸ビニルモノマー価格高騰の沈静化や国産ナフサ価格下落など原料価格低下が進み、減収ながら、約 24 億円の増益を達成した。
EVOH 樹脂は先進国で食品のシェルフライフ延長ニーズなどを受けバリア需要が増加しているのに加え、新興国でも需要拡大の兆しが見え始めるなど、高成長が見込まれている。偏光板向け光学用 PVOH フィルム「OPL フィルム」については、スマートフォンの有機 EL パネル採用がマイナスに働くとの憶測もあるが
(※)、需要の 7 割程度はテレビ向けであり、スマートフォンの有機 EL パネルへの
シフトの影響は限定されている。
(※)液晶パネルでは 2 枚必要な偏光板が有機 EL パネルの場合 1 枚となる。

2017 年 3 月期は熊本地震により業績悪化も翌期には回復見込
 2017 年 3 月期については、「平成 28 年熊本地震」により熊本工場が被災したため、災害関連損失などとして総額約 30 億円の損失が発生する見込みである。現在、復旧作業を進めており、6 月より順次生産を再開する予定である。なお、2017 年 3 月期より、IFRS の任意適用を決定しているため、災害損失も営業費用として計上されることになる。これらの影響により、営業利益は 2016 年 3 月期の136 億円から 2017 年 3 月期は 92 億円へと縮小し、営業利益率も 13.0%から8.9%へと悪化が予想されている。但し、2017 年 3 月期の業績悪化は一時的なものであり、2018 年 3 月期には営業利益は少なくとも例年並みの水準への回復が見込まれる。

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