オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Growth)
規制環境の変化に対応した申請時期の変更とアルツハイマー病への挑戦

2025/03/10

ベーシック レポート(改訂版)
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

規制環境の変化に対応し申請時期を変更
オンコリスバイオファーマの主力開発品(OBP-301)は、テロメライシンという遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。オンコリスバイオファーマ独力での製品化に向けて、国内においては食道がんに絞って、臨床開発を推進しており、2024年内に、「事前相談」後の承認申請目指して全速力で準備が進められてきた。しかし、2024年に他社の早期承認された再生医療等製品で製造上の問題や市販後臨床試験で効果が確認されないなどの複数の問題が発生したことで規制環境が一変、「事前相談」から「先駆け総合評価」を経て、2025年内に申請する方針へ変更された。オンコリスバイオファーマでは、2025年上期中に「総合評価」相談に入る予定で、そこでの主なポイントは、市販後臨床試験の詳細設計とウイルスの凝集を防ぐ新製剤の有効性・安全性などCMC上の確認になるものと推察される。PMDAによる総合評価は、これまで事前相談を担当してきたチームが担当するものとみられ、「事前相談」段階で申請に影響を及ぼすような重要な指摘事項は無かった模様であり、市販後臨床試験の詳細等で合意できれば、予定通り2025年内の承認申請が可能と考えられる。

OBP-301:本命である化学放射線との併用療法:Phase1(米国)で好成績
2025年1月のASCO-GIにて、米国NRGが行った医師主導治験(Phase1)の結果が報告された。安全性が確認されたほか、症例数が少数ではあるが、Clinical-Complete Response率が100%という好成績を示した。米国では手術不能の食道がんの場合、化学放射線療法が標準治療であり、Clinical-Complete Response率は58%というデータがある。既にNRGは、FDAとEnd of Phase1 Meetingを行っており、さらに大規模な臨床試験(Phase2)で有効性を再確認するため、プロトコル等について話し合っているところである。ただし、症例数が各群150-200例程度が想定されるため、今後の開発を推進するためには、提携パートナーの獲得や米国子会社(Oncolys USA Inc.)での資金調達を模索していくこととなろう。

脳神経変性疾患薬OBP-601 アルツハイマー病を対象にPhase2開始予定
最近の低・中分子創薬における注目モダリティは、タンパク質分解剤、RNA阻害剤、ペプチドの3つである。うちRNA阻害剤は直接RNAを阻害するのではなく、RNAが転写される過程のスプライシングを制御する薬剤に注目が集まっている。近年、ALSやアルツハイマー病などの神経変性疾患の原因は、脳内の神経細胞の選択的スプライシングであることが分かってきた。OBP-601は選択的スプライシングを制御する薬剤であり、2024年10-12月期には、導出先のトランスポゾン社によって、PSPやC9-ALSといった神経変性疾患での安全性と有効性が学会発表された。2025年は、PSPを対象としたPhase3、 C9-ALS以外のALSも含んだALS全般を対象としたPhase2/3、さらにはアルツハイマー病を対象としたPhase2へ戦線を拡大する予定である。学会発表やアルツハイマー病への対象拡大で、トランスポゾン社への注目がさらに高まっており、CNS領域を物色している大手製薬会社のM&Aの対象となることも考えられる。また、トランスポゾン社がIPOによる資金調達で自社開発の途を探る可能性もある。いずれにせよ、オンコリスバイオファーマへ大きなマイルストーン収入が発生する可能性が高まっている。

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