株式会社キャンバス(4575 Growth)
CBP501少なくとも500億円のパイプライン価値

2023/03/15

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

CBP501まもなくPhase3開始
がんを取り巻く微小環境の解明が進展し、2010年以降、がん治療は、オプジーボなどの免疫チェックポイント抗体出現というパラダイムシフトが発生した。しかし、免疫チェックポイント抗体の有効性は、がん種によって高低があることがわかっている。CBP501は、免疫着火剤として、免疫チェックポイント抗体の有効性を高める作用があり、免疫チェックポイント阻害剤が効きにくいすい臓がんで、しかも3次治療を対象としたPhase2は、前半部分のみの解析で良好な結果が得られた。このため、後半部分をスキップし、Phase3へステージアップすることが決定されている(2022年11月)。また、2023年1月には米国FDAから、すい臓がんを対象としたオーファンドラックの指定を受領した。現在、Phase3のデザインなどは未定だが、2023年中に開始される予定であり、Phase3が成功すれば、2026年ごろには新薬申請に至るものとみられる。

CBP501の現在価値(税前)は500億円以上
米国で3次治療のすい臓がん患者で薬物治療を選択する患者数は2万人程度と想定される。現在、2次治療薬として承認されているオニバイド®の薬価を参考に、CBP501の市場規模を試算すると、ピーク時900億円程度の売り上げが期待できる。一方、今後の開発費用は、Phase3のデザインなどが未定のため、さまざまな仮定を置かなければならないが、仮にPhase3が2群(各群150例)と比較的小規模なものに留まっても、100億円程度は必要になる可能性がある。さらに、自前の開発か共同開発か、共同開発の場合の利益配分などによってパイプライン価値は変動する。また、成功確率なども考慮しなければならない。これまで、キャンバスの株価はPhase2までの結果とともに上昇し、時価総額は200億円台にあるが、これら様々な前提を置いたうえでの試算ではあるが、CBP501の現在価値(税前)は、少なくとも500億円以上はあると推察される。(ただし、開発資金の調達が必要となる蓋然性は高い。)

提携への視座
CBP501の開発は、これから最後の山場であるPhase3に入るところである。過去の歴史を見ると、バイオベンチャーが手塩にかけた虎の子を大手製薬会社へ導出に成功したものの、流行中のモダリティや後期開発品に重きを置く大手製薬会社の戦略上の都合で、開発が中止される例は多い。キャンバスでは、少なくとも開発の主導権の面で、CBP501を大手製薬会社に導出して相手にその運命を委ねるのではなく、自前で育てる方針である。もちろん、費用負担を申し出る相手が出現すれば、共同開発の形態も視野に入っている。投資家サイドは、提携への期待で一喜一憂するのではなく、冷静にCBP501の試験の結果を評価したうえで、その価値を考察し、開発のための資金調達への対応を考える段階にあると言えよう。

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