株式会社キャンバス(4575 Growth)
金メダルシナリオで臨床第3相試験入りの可能性高まる

2022/09/27

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

金メダルシナリオ実現
キャンバスは、免疫チェックポイント阻害抗体が効きにくい「すい臓がん」のなかでも、極めて予後の悪い3次治療を対象とした抗がん剤CBP501の臨床第2相試験(Ph2)のステージ1部分(4群×各9例)の途中経過とそれに基づく判断可能なポイントを公表した(9月20日)。内容は、かねてより期待されてきた「金メダルシナリオ」に沿ったもので、3剤併用群のうち一つの群で、主要評価項目(3カ月無増悪期間)達成が、9例中3例で実現され、ステージ2を実施することなく、臨床第3相試験(Ph3)にステップ・アップできる可能性が高まってきた。ただ、2剤併用群のうちの一つの群でも、主要評価項目達成例が2例出現し、さらに積みあがる可能性があるため、ステージ2が必要となる可能性がある。この場合、2剤併用群の主要評価項目達成が2例以上あった群についてのみの1群で、ステージ2が行われることになろうが、この群での無増悪生存期間の中央値(m-PFS)や全生存期間の中央値(m-OS)は、過去に行われたさまざまな試験の中央値と差異が小さく、倫理的意義等を鑑みると、わざわざステージ2を必要とする蓋然性は低いと考えるのが自然であろう。

臨床第3相試験の規模と費用
最終決定は、全例の結果が判明し、科学顧問会議(SAB)への諮問を経て、キャンバスが取締役会を開催する晩秋となる見込みだが、前述のように、Ph2ステージ2を実施することなく、3剤併用群を中心としたPh3に進む公算が高い。この場合、ステージ1で奏効例が3例出現した3剤併用群と医師選択療法群の2群によるPh3がデザインされ、各群の規模は、統計的優位性と安全性確認の双方から、各群100~125例で合計200~250例の(2群)比較試験になると考えられる。2022年末〜2023年前半にPh3を開始し、2024年内には完了するものと想定され、患者1例あたりのコストは平均1600万円程度とし、施設管理費やデータベース整備費用なども勘案すると、Ph3の費用は42~55億円程度と見積もられる。

主体的に、より高い峰を目指す
現在残存する第17回新株予約権の行使は順調に進行している。9月20日時点での行使率は78.5%に到達し、月間10%程度の行使率が継続すればあと2カ月程度で行使が完了、調達金額も、当初予定額20億円を達成できる見込みである。キャンバスは、この一部を使って、Ph3の準備(1.6億円)とPh3の入り口部分の実行(8.17億円)を賄う計画である。現状ではPh3全体の費用(42~50億円)はカバーできていないが、Ph2が金メダルシナリオで通過することが確実視されるため、キャンバスの提携活動が再び本格化することが期待される。
ただし、製薬業界では、一部の注目を集めるモダリティあるいは後期開発段階終盤の収益化が見えている分野以外での提携に製薬企業等が消極的な傾向が強まっており、前人未到の分野(膵臓がんの3次治療)かつ開発の中期段階にあるCBP501に関して、金メダルシナリオでも、大型導出契約が浮上するかどうか楽観視はできない。このため、キャンバスは、単なる開発・販売権の導出という形態だけではなく、さまざまな形態での提携も模索していくことも視野に入れている。単に開発・販売権の導出では、虎の子のCBP501はキャンバスの手を離れ、提携相手の意向で、その後の運命が左右されてしまう。相手から免疫チェックポイント阻害剤の無償提供や開発資金の提供を受けて、キャンバスが主体となって開発を推進し、企業価値の拡大を目指す途も想定しておきたい。早ければ2022年内にも、開発方針と資金計画の方向性が浮上する可能性がある。

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