オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
テセントリク®、アバスチン®にテロメライシン®を併用

2020/12/07

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

肝細胞がんを対象とした新たな併用療法開発に着手
オンコリスバイオファーマ社にとって主力候補品であるテロメライシン®の開発は、新型コロナ感染症により若干の遅延が若干あるものの、概ね当初計画ないし半年程度の遅延の範囲内で、順調に進行中である。また、食道がんに関しては、テロメライシン®は日本国内で先駆け指定、米国でオーファンドラッグ指定を受けているが 、世界最大の市場である中国・香港・マカオを対象としたライセンスアウトが期待できる。さらに、今般、肝細胞がん対象に、中外/ロシュ・グループが保有する免疫チェックポイント阻害剤のアテゾリズマブ(テセントリク®)+腫瘍免疫環境を改善する抗 VEGF剤のベバシズマブ(アバスチン®)の2剤併用にテロメライシン®を合わせた3剤併用で、より一層高い治療効果を狙った治験を中外製薬がスタートさせる。

OBP-702の開発も進捗
次世代型テロメライシン (OBP-702)は、テロメライシン®に、がん抑制遺伝子p53を組み込んだものである。従って、p53欠損・変異がんに有効で 、KRAS変異がんにも奏功し、がん性線維芽細胞(CAF)に対する攻撃 能力がある。このため、免疫チェックポイント阻害剤の奏効率が比較的低いがん種でも効果が期待されている。現在の状況は、前臨床試験が進展し今後のスケジュールが見えてきたところである。2021年に米国にて治験申請を行い、Phase1aを開始、 Phase1bを経て Phase2に入るところ(2023~ 2024年)で、日本でも治験 (Phase1/2) 申請を行う予定である。自社開発の対象は、直腸がん等に絞り、開発リスクの高いすい臓がん等は大学と提携して医師主導試験として行う可能性が高い。

「選択と集中」により開発資金を最適化
オンコリスバイオファーマ社は、 新たな疾患領域への応用が期待されるOBP-601、次世代型テロメライシンOBP-702、そして新型コロナウイルス感染症治療薬 OBP-2001と、開発案件が豊富である。ところで、2020年9月時点の保有現預金は20億円ほどで、およそ1年3か月分のキャッシュと考えられる。ただし、この間に、テロメライシン®の開発進展や対象地域拡大等によるマイルストーンの受領が発生する可能性はある。このような状況下、オンコリスバイオファーマ社は、OBP-601の開発を導出先に任せ、 腫瘍溶解ウイルスと感染症の分野に集中する方針である。また、リスクの高い分野では、医師主導治験の活用も考えている。このような「選択と集中」により、バランスの取れた経営を行っていくものと考えられる。

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