シンバイオ製薬株式会社(4582 JASDAQ)
見えてきた2021年の黒字化

2020/11/04

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

第2の創業期に入る
シンバイオは 、自社で創薬研究を行うのではなく、世界中の創薬企業とのネットワークと目利き力を活かして有望な新薬を導入し開発してきた。開発のターゲットは、医療ニーズが高いにも拘わらず、大手があまり参入して来ない希少疾患(がん、血液を中心とする希少疾患)に絞るニッチ戦略で、高シェア・高収益が狙える。また、導入する新薬候補は原則として既に有効性・安全性が確立されたもののため、開発リスクは低く抑制されている。第一号品はトレアキシン®で、導入後5年で承認・上市され、2018年には標準療法の一つに採用された。また、2019年10月、第三の品目として、ブリンシドフォビルの導入と独占的グローバルライセンス権利開発製造販売の取得を発表した。日本だけでなく、中国を含むアジアを手始めに欧米も含むグローバル展開できるライセンサーへ変身を達成した。現在は、トレアキシン®のさらなる適応拡大とライフサイクル・マネジメントの一環として の剤型変更が順調に進行中である。さらに、2021年 からスタートする予定の自販体制の整備もほぼ完了し、血液分野に特化したスペシャリティ・ファーマとして第2の創業期に入っている。

パイプライン戦略の見直しが進む
シンバイオは、ブリンシドフォビル(BCV)の特性を活かして、導入当初、予後が悪く致死性が高い、しかもアンメット・メディカルニーズの強い領域である、造血幹細胞移植後のウイルス性出血性膀胱炎を、最初の対象疾患領域として、注射剤の開発を推進することを表明していた。しかし、2020年2月に開催されたグローバル・アドバイザリー・ボードの諮問を受けて、2020年8月、新たなグローバル開発戦略が発表された。すなわち、他の治療薬がなく、医療ニーズが高い分野で、成功が確実視される分野での開発を最優先とすることとし、造血幹細胞移植時(HSCT)の小児及び成人のアデノウイルス感染症としての開発を先行させることとした。自社単独で、海外のCROも活用してグローバルな開発を推進する予定である。また、リゴセルチブについては、 国際第Ⅲ相臨床試験(INSPIRE試験)で医師選択療法と有意差が示せなかったが 、ゲノム解析とのクロス解析や日本人のみの解析結果を踏まえ、来春にも新しい方針を立てる予定である。

2021年の黒字化は視野に
フェアリサーチでは、2021年の黒字化とその後の10~20%の営業黒字率へ向けた軌道は見えてきていると考えている。2021年は、自社直販化による売上の水準訂正がある一方、トレアキシン®のRTD製剤への切り替えが始まり、原価率の低減が見込める。また、研究開発費も、トレアキシン®の開発費のピークアウト、剤型変更に伴うマイルストーン支払いの剥落、リゴセルチブの開発の一時見直しとBVCの開発計画の見直しにより、抑制されたものになる。2022年以降は、r/rDLBCLへの適応拡大が奏功し、売上は徐々に2倍の規模へ膨らんでいく。また、剤型変更による原価率の低減もさらに進行することとなろう。ただし、一方で BCV の開発対象の拡大やリゴセルチブの開発再開も想定されるうえ、 長期的な成長機会を確保するための新規ライセンス導入やM&A等の投資が浮上する蓋然性は高い。シンバイオは、利益とのバランスを勘案して、経営計画を立案していくものと考えられる。

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