「原油安」の影響を考える(グローバル)

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原油価格は7月以降、軟調な動きが続いています。原油価格の代表的な指標であるWTI原油先物価格は8月3日、1バレル=45ドル17セントで取引を終え、終値ベースでは3月19日以来の安値となりました。原油安の理由として、中国の景気減速で原油需要が減少するとの見方や、米国の石油リグ(掘削装置)稼働数の増加が需給悪化につながるとの懸念が強いことなどが挙げられます。

【ポイント1】原油価格は当面低位で推移へ

イランの制裁解除も相場に織り込む
■イラン石油相が8月3日、「制裁解除後1週間以内に原油の増産が可能」と発言したことにも、原油相場は反応しました。実際にイランの経済制裁が解除されるには、国際原子力機関(IAEA)の査察や米議会の承認などの手順を踏まねばならず、直ちにイランの原油輸出が始まる訳ではありません。
■ただこの将来的な需給悪化要因を、先物価格が早々に織り込み始めている可能性があり、また米利上げによる過剰流動性の縮小観測も根強いことなどを勘案すると、原油価格は当面低位で推移することが予想されます。

【ポイント2】原油関連資産は下落が続く

産油国経済にも悪影響の恐れ
■カナダドル、ノルウェークローネ、ロシアルーブルなどの産油国通貨は、対米ドルでの下落傾向が続いています。また原油安は、サウジアラビアやロシアなど、産油国でも原油輸出依存度の大きい国の経済に悪影響を及ぼす恐れがあります。
■さらに株式市場に目を向けると、原油関連業種の年初から足元までの株価指数上昇率は、日米ともに株式市場全体の上昇率を大きく下回って推移しています。

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【今後の展開】原油安は世界全体では緩やかな経済成長を支える方向に作用しよう

■原油安は悪い影響ばかりではない
しかしながら原油安は悪い影響ばかりではありません。アジア諸国では原油輸入依存度の高いタイ、インドなどが大きな恩恵を受けると考えられます。具体的には、経常赤字の縮小、インフレ低下による利下げ余地の拡大、燃料補助金削減による財政改善など、実体経済にとってプラスの効果が期待されます。

■日米の個人消費にとっても追い風に
また米国や日本でも、原油安はガソリン価格等の低下を通じて家計の実質所得を押上げるため、消費の追い風となります。前述の通り、原油価格は当面低位で推移すると予想されますが、短期間で急落するような事態に陥らない限りは、世界全体でみれば緩やかな経済成長を支える方向に作用すると思われます。

(2015年8月5日)

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