HUMAN MADE(456A)国内における大型店の出店や海外展開により持続的な成長を目指す
「HUMAN MADE」ブランドのアパレル製品や生活雑貨などを製造販売
国内における大型店の出店や海外展開により持続的な成長を目指す
業種:小売業
アナリスト:佐々木加奈
◆ 衣料品や生活雑貨などを製造販売
HUMAN MADE(以下、同社)は、「人間の閃きが生み出し、人間の手が創り出す輝きを、世界へ。」をミッションとし、素材やデザインにこだわった付加価値の高い「HUMAN MADE」ブランドの衣料品や生活雑貨などを企画して委託により製造し、国内外の消費者に販売している。
同社はデザイナーのNIGO(ニゴー)氏(長尾智明氏)により、16年2月に設立された(設立時の社名はオツモ)。翌年12月に初の自社店舗である「HUMAN MADE OFFLINE STORE」を東京都目黒区に出店した(21年7月に渋谷区に移転)。その後、19年5月に京都市にブランドの世界観を表現することを目的としたコンセプト店である「HUMAN MADE 1928」、同年11月にファッションの中心地である渋谷の商業施設内の小型店「HUMAN MADE SHIBUYA PARCO」などを出店していった。
24年5月にブランド名と企業名を一致させ、更なる認知度向上を図ることを目的に社名をHUMAN MADEに変更した。尚、NIGO氏は24年1月に代表取締役CEOを退任し、現在はクリエイティブディレクターとして商品企画やデザインに携わっている。
◆ 「HUMAN MADE」ブランドの概要
「HUMAN MADE」ブランドの商品はアパレル(衣料品)と生活雑貨に区分される。アパレルにはカットソーやTシャツ、ジャケットなど、生活雑貨にはインテリア用品や食器類などが含まれる(図表1)。
商品は、自社で企画・デザインしたものに加え、KAWS(カウズ)氏注1、VERDY(ヴェルディ)氏注2といったクリエイターや、NIKEやLevi’sといった世界的ブランドとのコラボレーションによるものも数多く展開している。
同社は、量販店などとは一線を画す、素材やデザインにこだわった付加価値の高い商品の提供を目指している。製造コストと必要な利益を考慮して価格を設定することを基本としており、他社商品との価格差が生じる場合が多い。
価格に見合う商品価値を顧客に感じてもらうことが重要という考えのもと、大量生産はせずに需要見込みに対して供給を絞り込むことにより、同社のプロパー消化率(販売した商品のうち、定価で売れた商品の比率)は、創業時からほぼ100%を維持している。
広告宣伝については、テレビや雑誌、インターネットの広告枠を購入しての商品広告といった手法は採らず、SNSでの動画発信などにとどめている。一方で、クリエイターやアーティスト、ミュージシャン、俳優などとのコラボレーションを通じた商品情報の発信に注力し、ブランドの認知度向上を図っている。具体的には、ミュージシャンが同ブランドのアイテムをライブで着用すること、アーティストなどが同ブランドのアイテムを使ったコーディネートを自身のSNSに投稿することなどで話題が拡がり、ブランドの認知や商品の人気つながるといった例がある。
◆ 販売チャネル
販売チャネルは、1)自社店舗、2)自社EC、3)卸売、4)その他である。同社は、顧客と直接接点を持つことができる1)自社店舗及び2)自社ECを重視しており、2つのチャネル合計の販売構成比(25/1期実績)は80.9%である(図表2)。また、地域別の販売構成比は、日本71.5%、アジア21.8%、その他6.6%となっている。
1)自社店舗
「HUMAN MADE」ブランドの店舗として、東京に3店(全て渋谷区)、札幌(中央区)、京都(中京区)、大阪(中央区)、福岡(中央区)に1店ずつ展開している。このうち4店(東京の2店、大阪、札幌)がTシャツなど定番商品を中心とした品ぞろえの小型店、2店(東京、福岡)が小型店よりアイテム数が多い標準店、1店(京都)がブランドの世界観を表現することを目的としたコンセプト店である。また、その他に、様々なクリエイターのデザインした商品を扱うコンセプト店「OTSUMO PLAZA」がある(東京都港区の1店のみ)。
2)自社EC
自社ECサイトを運営し、国内外の消費者へ商品を販売している。自社ECの利点は、顧客にとっての利便性が高いこと、SNSを利用したプロモーションの効果を得られやすいこと、低い固定費での運営が可能なことなどである。
同社は、運営者への手数料が発生する大手ECモールへの出店はしない方針である。
3)卸売
海外(欧州、中東、東南アジアなど)の百貨店、セレクトショップ(独自のコンセプトに基づき複数メーカーの商品を取り扱う小売店)に対する卸売を行っている。また、韓国、中国、香港に1店鋪ずつ、現地のパートナー企業が運営する「HUMAN MADE」ブランドのみを取り扱う店舗があり、その店舗への
卸売も行っている。
4)その他
その他として、飲食店舗の運営及び保有するIP(知的財産)の供与を行っている。飲食店舗は、自社ブランドのカレーショップ「CURRY UP」を3店(全て東京都、25年10月末時点)運営している。また、Blue Bottle Coffee Japan(東京都江東区)との協業で「HUMAN MADE OFFLINE STORE」及び「HUMAN MADE 1928」に「BLUE BOTTLE COFFEE」を併設している。IP供与の事例としては、香港において「HUMAN MADE」及び「CURRY UP」の屋号の使用を許諾し、ロイヤリティを得ている。