リニカル(2183) 今後急拡大が見込まれる領域に注目

2024/12/19
 

秦野 和浩 社長

株式会社リニカル(2183)

 

 

会社情報

市場

東証スタンダード市場

業種

サービス業

代表取締役社長

秦野 和浩

所在地

大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル

決算月

3月

HP

https://www.linical.com/ja/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

344円

22,586,431株

7,770百万円

4.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

16.00円

4.7%

6.64円

51.8倍

326.90円

1.05倍

*株価は12/3終値。発行済株式数は25年3月期第2四半期決算短信記載の期末の発行済株式数から自己株式を控除。
*ROEは24年3月期実績、BPSは25年3月期第2四半期実績、EPSとDPSは25年3月期予想。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2021年3月(実)

10,279

453

588

539

23.91

14.00

2022年3月(実)

11,555

1,085

1,183

790

35.00

14.00

2023年3月(実)

12,516

1,256

1,283

1,004

44.47

14.00

2024年3月(実)

12,307

725

790

338

14.98

15.00

2025年3月(予)

11,468

250

258

150

6.64

16.00

*単位:百万円、円
*予想は会社予想。

 

リニカルの2025年3月期第2四半期決算概要と2025年3月期業績予想について、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.経営戦略
3.2025年3月期第2四半期決算
4.2025年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 25/3期上期は前年同期比10.5%の減収、1億92百万円の営業損失(前年同期は4億21百万円の営業利益)。売上面では、米国が大幅な増収となったものの、その他の地域が減収となったことにより全体で減収となった。利益面では、米国が大幅な増益となったものの、その他の地域が営業損失となったことにより全体で営業損失となった。 
  • 同社は、11月14日に25/3期の業績下方修正を実施した。新しい会社計画は、前期比6.8%の減収、同65.6%の営業減益の予想。売上面では、米国が既存案件の順調な進捗により計画を上回ったものの、欧州、日本で新規案件の獲得が想定通りに進まない中、日本における開発中止案件の発生が影響している。加えて、韓国で本年2月頃から始まった大規模医療ストライキによる既存案件の進捗遅延と新規案件の商談遅延も影響し、期初の売上計画を下回る見込みとなった。利益面では、全拠点で人員の調整をはじめとした人件費のコントロールと販管費の見直しを行っているものの、日本・アジアでの売上高の減少が大きく影響する見込みである。一方、配当は、前期から1株当たり1円増配の普通配当16円/株の予定を据え置き。 
  • 同社は創業以来、がん、中枢神経(CNS)、免疫領域に注力しており、この3領域で高い競争優位性を有している。今後は、この3領域に加え、高齢化社会でニーズの高まる眼科・皮膚科領域と新規モダリティの再生医療やデジタル医療機器での拡大を計画している。今後急拡大が見込まれるこれら領域において、期待通りの成果をあげることができるのか注目される。 

1.会社概要

同社は、医薬品開発のプロフェッショナルとして、臨床試験の初期段階から製造販売後試験まで一気通貫でサービスを提供する日本発のグローバルCRO(医薬品開発業務受託機関)である。臨床試験(治験)に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を中心に、医薬品のマーケティング業務ならびに製造販売後(以下製販後という)臨床研究・調査の受託などを行う育薬事業を手掛ける。
医薬品は発売前に厚生労働省の承認・認可を受けることが義務づけられており、承認前の薬剤(医薬品候補)を患者に投与して効果や安全性を確かめる必要がある。その臨床試験としての治験を支援する事業がCRO(Contract Research Organization)である。また、医薬品は製販後も調査、臨床研究を行う必要があり、その段階を支援する事業が育薬(Contract Medical Affairs)である。
同社は創業以来、がん・中枢神経系(CNS)など、世界中の人々がその撲滅を願い、新薬開発への強いニーズが存在する疾病領域を中心にCRO事業を展開してきた。これらは非常に難易度が高い領域であり、同社の知識・経験豊富なエキスパートが高度な治験を支えている。また、同社は創薬支援・育薬事業にも力を注ぎ、申請業務支援、承認後のマーケティングや臨床研究、製販後調査支援まで、単なるアウトソーシングを越えてお客様の事業を幅広くコンサルティングする「製薬会社の真のClinical Development Partner(医薬品開発パートナー)」を目指している。更に、国際化・大規模化が進む医薬品開発の流れのなかで、グローバルで大規模なプロジェクトにも同社グループのワンストップで十分な対応を行い、製薬会社とともに新しい時代を開拓していく戦略的ビジネスパートナーとして、顧客の市場競争力の拡充をトータルに支援している。

 

 

 

【経営理念】

経営理念は、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」である。

 

 

青は「差別することなき、誠実さを」
赤は「消えることなき、情熱を」
黄は「飽くことなき、探求心を」
を意味しており、同社のロゴマークには、事業を通して世界中の患者様の幸せを追求していきたいという同社の想いが込められており、「新薬に翼を」という使命を担っている。

 

【沿革】

2005年6月、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬株式会社)で免疫抑制剤等の開発に携わってきたメンバー9名によって設立された。大阪発理想の医薬品開発受託(CRO)事業を目的として、設立当初から、CNS領域やがん領域の育成に取り組み、会社設立後まもなく大塚製薬からCNS領域の案件を受注。その後、人材を補強し事業部として受注活動を強化した。また、がん領域も外資系製薬会社等でがん領域の医薬品開発を手掛けた人材等に恵まれ、足元、受注が拡大している。
SMO(治験施設支援機関)事業進出を念頭に、06年1月に同事業を手掛けるアウローラ(株)を子会社化したが、CRO事業への経営資源集中を図るべく07年5月に全保有株式を売却。08年7月に、国内の製薬会社の米国進出支援を目的に米国カリフォルニア州に全額出資子会社LINICAL USA, INC.を設立。同年10月の東証マザーズ上場を経て、13年3月に東証1部に市場変更となった。13年5月に、台湾と韓国に全額出資子会社LINICAL TAIWAN CO., LTD.とLINICAL KOREA CO., LTD.を設立。14年4月には、LINICAL KOREA CO., LTD.と買収した韓国のCROであるP-pro. Korea Co., Ltd.との統合を完了した。14年10月29日には欧州でCRO事業を展開しているNuvisan CDD Holding GmbHの全株式を取得し子会社化するための株式譲渡契約を、Nuvisan Pharma Holding GmbH との間で締結し、12月1日付けで同社の100%子会社となった。更に、グループとしての一体感の醸成と連携強化を図るため、連結子会社となったNuvisan CDD Germany GmbHの名称をLINICAL Europe GmbHに商号変更した。その他、16年3月にLINICAL U.K. LTD.を、同年10月にLINICAL POLAND Sp.z.o.o.を、17年9月にLINICAL Czech Republic s.r.o.を設立した。また、2018年4月に米国でAccelovance, Inc.を買収し、Linical Accelovance America, Inc.(LAA)に社名変更。その他、19年3月にLinical Hungary Kft.を設立、19年5月にLinical China Co., Ltd.を設立した。更に、2019年12月にLINICAL Europe GmbHへLAA社の欧州子会社を統合し欧州地域の強化を図ったことに加え、20年2月に上海支店を開設し国際共同治験の受託体制が更に強化された。また、20年4月にLinical Benelux B.V. と Linical Accelovance Europe B.V. を合併し、Linical Netherlands B.V.を発足、23年3月末にはLinical China Co., Ltd. とLinical Accelovance China Ltd.の統合を実施した。海外のM&Aにより着実に成長し、22/3期、23/3期は連続して過去最高の売上高を達成した。24/3期は日本と欧州での売上高の減少が影響し利益が減少し、25/3期も、日本とアジアでの売上高の減少の影響が大きく減収減益の見通しとなった。

 

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【強み】

グローバル規模でワンストップ、フルサービス
国際開発体制を整備し、日本を中心としたアジア、欧州、米国でサービスを提供。医薬品開発のプランニングから、

モニタリング、薬事、データマネジメントなどのフルサービスをワンストップで提供している。

創薬から臨床開発、育薬までを一気通貫
医薬品開発のプロフェッショナルとして、新薬開発から承認後のライフサイクルマネジメントまで一気通貫で提供している。
高難度の試験実績
アンメット・メディカル・ニーズが高く、治験難易度の高いがん、中枢神経系、免疫疾患などに注力し、豊富な実績を有している。現在は再生医療や眼科・皮膚科等へ拡大を進めている。

 

【業務内容】

同社は、日本発のグローバルCRO(医薬品開発業務受託機関)として、日本を中心にアジア、欧州、米国に事業を展開し、創薬段階から臨床開発、製造販売後の育薬まで一気通貫でサービスを提供している。医薬品開発のトレンドである、がん、中枢神経系、免疫領域を中心に豊富な経験と実績を有している。
CROとは、製薬会社等から依頼を受け、医薬品の開発段階で行われる臨床試験(治験)に係る業務を代行、支援する機関。治験に関して高い専門性を持つ、医薬品開発のプロフェッショナルである。治験が法規制や治験実施計画書を遵守して行われているかどうかを監視するモニタリング業務をはじめとして、データマネジメント業務、メディカルライティング業務など、業務内容は多岐に亘る。
同社は、主にCRO事業(臨床開発事業)、製造販売後の臨床試験や臨床研究とマーケティング活動支援を担当する育薬事業、創薬支援事業を展開している。非臨床試験段階から臨床開発、製造販売後の育薬まで一気通貫で対応出来る体制をとることで、効率的な新薬開発による上市までの期間の短縮や製品ライフサイクルの延長を可能とし、製薬会社の真のパートナーとして医薬品の価値最大化に貢献している。更に、同社は、製薬会社のみならずバイオベンチャーに対して、ライセンス等の出口戦略まで多面的に支援している。

 

(同社決算説明会資料より)

 

 

CRO事業(臨床開発事業)
CRO事業は、製薬会社が行う治験業務の一部を代行する事業で、モニタリング、データマネジメント、メディカルライティング、ファーマコビジランス、統計解析、品質管理などの業務を行っている。同社では、新薬の迅速な市場投入につながる高品質で高効率な治験の支援を目指して、高い技術と豊富な経験をもつスタッフが担当にあたっている。今後も拡大するグローバルスタディに対応していくため、アジア(韓国、台湾、シンガポール、中国など)と欧州、米国に拠点を開設。臨床開発計画立案から、モニタリング、データマネージメント、統計解析、ファーマコビジランス、薬事申請支援までワンストップで対応。10年から20年近くに及ぶ新薬開発プロジェクトの中でも、3年から7年を要するといわれる治験で特に重要とされる「第Ⅱ相(フェーズⅡ試験)」「第Ⅲ相(フェーズⅢ試験)」のプロセスに注力し、治験の核となる「モニタリング」を「品質管理」「コンサルティング」とともに提供。信頼性の高いデータの収集を行い、迅速、確実な新薬開発の実現を支援している。
また、同社は、スケジュール管理、治験標準業務手順書・GCP遵守、データ・症例報告書の信頼性などの分野におけるサービスクオリティの高さに強みを持っている。

 

*国際共同治験
「国際共同治験」とは、新規の医薬品開発に世界規模で取り組み、早期上市を目指すため、臨床試験を複数の国または地域において同時並行的に行うことをいう。
*GCP(Good Clinical Practice)
「GCP」とは治験を実施する際に守るべきルールで、日本で正しく治験を実施できるように厚生労働省により省令(法律を補う規則)として定められているもの。

 

同社は、設立当初から、難易度が高く、多くの患者が新薬の誕生を待つアンメット・メディカル・ニーズの多い領域の治験を手掛け、がん・免疫・中枢神経へ注力している。

 

(同社決算説明会資料より)

 

育薬事業
育薬事業は、企業・医師主導臨床研究の組織体制構築業務、製造販売後の臨床試験・調査の企画業務・モニタリング業務・監査業務をサポートする事業であり、同社は臨床研究のサポートを実施している。臨床研究法が施行され臨床研究を取り巻く環境は大きく変化している中、情報をタイムリーにキャッチアップし、製薬会社のメディカルアフェアーズ部にとって最良のパートナーとなれるよう、臨床研究のモニタリング・研究事務局業務を中心にデータマネジメント・統計解析などを含めたフルサービスの支援を行っている。開発で培ったノウハウをベースに、最新のレギュレーションに対応し、難易度の高い領域でエビデンス創造に貢献する方針である。

 

創薬支援事業
既存の臨床開発事業と育薬事業に続く、第3の事業である創薬支援事業 (Innovative Drug Development Business) を展開中。創薬支援事業では、日本市場参入を支援するコンサルティングなどの業務を行っている。国内大手製薬会社でライセンス、事業開発、臨床開発、開発薬事、マーケティングといった業務に携わり、開発品の目利きから、導入・導出交渉、臨床開発などで数々の実績と豊富な経験を有している担当者が中心となり、主に①開発品の市場分析・調査、②開発・薬事戦略、規制当局相談のコンサルティング、③戦略パートナー/ライセンスのサポートの3種のサービスを提供している。これらの経験を武器に、現在、国内または国外の製薬会社、バイオテクノロジーカンパニーを、幅広い疾患領域において支援している。

 

【サービス】

医薬品開発戦略

プロトコル作成と

試験デザイン

同社はプロトコル作成と試験デザインにおいてこれまで多くの臨床開発を成功に導いた実績がある。プロジェクトのニーズに合わせた計画を立案し、リスクを軽減しながら高品質で効率的に試験を行うためのロードマップを策定する。
薬事コンサルティング 同社は、グローバルな医薬品開発に精通し、ワールドクラスの薬事コンサルティングサービスを提供している。最適な戦略を提案し、最も費用対効果が高く、最も迅速に薬事プロセスに対応できるよう支援する。
薬事申請 同社の薬事チームは豊富な専門知識と経験を有し、初期から後期フェーズの臨床開発をサポートしている。また、薬事と臨床業務の双方を理解し、薬事申請戦略、規制当局との面談支援、さらに治験開始時のコーディネートなど、包括的に医薬品および医療機器の開発をサポートしている。同社は、米国、ヨーロッパおよびアジアの顧客との豊富な取引実績がある。
品質保証 同社は、品質を最も重視している。SOPの作成からQAコンサルティング、監査まで、世界中でサービスを提供している。
メディカルライティング メディカルライティングは、治験関連文書の作成にあたり、明確なコミュニケーションと一貫性の保持、更には被験者の安全性の確保や規制当局の審査に対応するために必要不可欠である。同社は、高い専門性を活かし、顧客の要求レベルを満たす高品質のメディカルライティングによる、付加価値の提供を目指す。

 

臨床試験

フィジビリティ調査と

試験の立ち上げ

フィジビリティ調査と医療施設の選定を行い、臨床試験をより迅速に立ち上げる。同社は、豊富な現場経験に基づく実践的かつ戦略的アプローチにより、顧客と緊密に連携して目標を理解し、革新的なソリューションを提案し、早期に組み入れが完了するよう臨床試験の立ち上げを行う。
プロジェクトマネジメント 同社の経験豊富なプロジェクトチームは、顧客のパートナーとして、試験が予定通りに予算内で、期待する品質のデータを得るよう完了まで支援する。また、これまでの経験を活かしながら顧客の要望に素早く対応し、ニーズを確実に満たせるよう、プロジェクトに伴走している。
ファーマコビジランス 同社のファーマコビジランスは、専門家からなるグローバルチームである。顧客の安全性情報対応を迅速かつ的確にサポートする。
モニタリング モニタリングは、被験者の人権と安全を保護し、規制遵守、データ品質、および臨床試験結果の完全性を確保するために不可欠である。同社は、創業以来、モニタリングに特に注力し、その品質を顧客に評価されている。
データマネジメント・

統計解析

同社のデータマネジメント・統計解析は、あらゆる段階で、深い考察と効率性の双方の提供を目指している。コンサルティングからフルサービスのデータ管理・統計デザインまで同社のプロフェッショナルが担当する。
被験者募集 臨床試験に適した被験者を見つけることは容易ではなく、症例の組入が臨床試験の成否を分ける最大のポイントであり、試験が大幅に遅れ、大きな損失が生じる可能性にもつながる。臨床試験を成功させるには、被験者募集計画を十分に検討することが不可欠である。
トレーニング 同社のCRAトレーニングは、熟練した専門家や実務に携わっている臨床現場のClinical Trial Manager(CTM)が講義を行うことで、より実践的なトレーニングを提供しており、受講生は優れたモニタリングスキルを持つ優秀な臨床開発モニターになることが可能となる。

 

【グローバル展開】

同社は日本発のグローバルCROとして、日本を中心にアジア、欧州、米国など世界各地に拠点を展開している。同社として約20か国/地域、パートナーを通じてサービスを提供できる国を含めると約30か国/地域において事業を展開している。現地の規制や習慣を熟知した各機能のエキスパートが、グローバルに連携し、一つ一つのプロジェクトに合わせたきめ細かなサービスを提供している。直近では、2024年7月1日に米国のニュージャージーに新オフィスを設立した他、2024年7月9日には南半球初の自社拠点であるLinical Australiaを100%子会社にて設立した。

 

LINICAL Global 拠点 「日本・アジア+米国+欧州」の3極体制

 

(同社決算説明会資料より)

 

(同社決算説明会資料より)

 

24/3期において、海外比率は売上高で63%、従業員数で54%となっている。

 

【地域別受注残高】

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

受注残高は、既に契約を締結済みの受託業務の受注金額の残高である。今後1年から5年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。2024年11月14日時点の受注残高は24/3期末と比較して4.2%減の116億円となった。 しかし、契約未締結の内定案件もあり、2024年9月末と比較して足元では増加基調となっている。日本では今後2本の大型受注が予定されている他、米国は引き続きバイオテックからの引き合いが強い。また、欧州においても欧米の経営一本化によりシナジーを発揮し、新規案件の獲得が進みつつある。

 

<地域別受注残高の状況>

日本・アジア

◆日本は厳しい市場環境が継続しているものの、日本の受注残高は11月14日時点で24/3期末を上回った。

◆韓国では医療ストライキの影響で新規受注が進んでいない。長期化すれば同社への影響の拡大が懸念される。

◆欧米子会社と連携し、海外バイオテックに対して日本・アジア市場への進出を提案するなどの営業活動を粘り強く継続する。

米国

◆新規案件獲得、既存案件における工数増加の契約変更があり、24/3期末対比で受注残高が増加した。

◆バイオテックからの引き合いは多く、受注の積み上げに向け営業強化を継続する。

欧州

◆欧米の経営一本化によりシナジーを発揮し、新規案件の獲得が進みつつある。

◆営業人材を強化し、欧州での新規案件の受注獲得を拡大する。

 

2.経営戦略

「IQVIA The Global Use of Medicines 2024 OUTLOOK TO 2028.」によると、2028年まで、世界の医薬品市場は年平均6~9%で成長見込みとなっている。また、 2028年の世界市場に占める各地域の占有率は、米国45.1%、欧州(ドイツ・フランス・イタリア・イギリス・スペインのみ)13.2%、中国8.8%、日本3.3%と予想されている。同社では、最大市場である米国での事業拡大が必須と考えている。

 

【中長期目標】

 

①日本500人、アジア400人、欧州400人、米国400人、合計1,500人を超える体制の構築
②各極で成長投資(M&Aを含む)を行いつつ黒字を維持し、利益率を向上させる
③世界60ヵ国程度の国へ進出する。

 

(同社決算説明会資料より)

 

 

【収益力の強化に向けた取り組み】

同社は、持続的な売上成長と、利益率の向上に向けた重点課題として、①海外事業の更なる成長、②顧客層の拡大、③疾患領域の拡大、④サービス領域の拡充を掲げ、以下の施策を推進している。また、市場環境の変化を踏まえ、再生医療やアプリなどの新規治療法にもチャレンジを継続する方針である。

 

①海外事業の更なる成長
最重要市場であるアメリカを中心に、世界での自社サービス網を拡充する。

米国
◆要員の拡充とM&A早期実現に向けた検討を加速する。
欧州
◆米国との経営一体化、欧州主要国(ドイツ・イタリア・フランス・UK・スペイン)での体制強化を推進する。

◆未進出だったスカンジナビア半島での開発体制を構築(スウェーデン)済み。

アジア太平洋
◆新規に設立したオーストラリア拠点を中心に、欧米バイオ企業のFIH(First In Human)試験を誘致し、次相以降の国際共同試験受託につなげる。

※オーストラリアの治験環境は、①治験申請から開始までの期間が非常に速い、②世界トップクラスの第Ⅰ相試験センターが複数存在する、③国内で治験を実施する製薬・バイオテックへの優遇税制があるため、欧米のバイオ企業が、豪州で第Ⅰ相を実施し、その後、欧米でⅡ、Ⅲ相を実施するケースも多い。

 

②顧客層の拡大
国内大手製薬中心から海外の製薬、バイオ企業へ拡大する。

欧米の新興バイオ医薬品企業:創薬の主役であり重点ターゲット
◆欧米での事業成長に伴い取引を拡大する。リピート顧客の中にはベンチャーから大きく成長した企業もある。

◆日本市場への誘致も進めており、日本本社の創薬支援事業と欧米営業チームとの連携・活動を強化する。

※創薬支援事業は、海外顧客が47%を占め海外顧客の日本への入口として参入支援の役目も担っている。幅広い疾患領域・製品種別にわたり海外顧客との実績が増加している。

欧海外大手製薬企業
◆早期試験・リアルワールド試験獲得に向け、欧米営業チームの体制を強化する。
日系中堅製薬会社
◆中国市場への関心が高まっており、営業活動を強化する。

 

③疾患領域の拡大
注力3領域に加え、高齢化社会でニーズの高まる眼科・皮膚科領域、新規モダリティの再生医療やデジタル医療機器への拡大を図る。

がん、中枢神経(CNS)、免疫領域に創業以来注力
◆がん領域は海外子会社で受託が拡大中である。CNSは日本・アジアで強みを有している。

◆自己免疫疾患・希少疾患領域は安定的な受注がある。

高齢化社会でニーズの高まる眼科・皮膚科領域の強化
◆日本・アジアにおいて眼科・皮膚科領域の案件獲得を増やす。
新規創薬モダリティへのアプローチ
◆再生医療や治療アプリ・デジタル医療機器の打診は増えつつあり、創薬支援事業に加え、治験の受託実績も着実に進展している。

※福田恵一慶應義塾大学名誉教授が創業したバイオベンチャーであるHeartseed社の国内第I/II相治験を包括的に支援中である。他家iPS細胞由来の心筋細胞の微小組織(心筋球)を心臓に移植する治療法である「心筋再生医療」を確立し、重症心不全患者様への貢献を目的にHS-001を開発中。

 

④サービス領域の拡充
創薬段階からあらゆる相の臨床試験においてフルサービスを提供するための機能を強化する。

創薬支援事業
◆非臨床試験から臨床試験へ移行する際のコンサルテーション案件が増加しており、人員増強を計画する。
データマネジメント・統計解析
◆臨床試験の企画立案で重要なデータマネジメント・統計解析人材の米日韓での採用・育成を強化する。
自社にない機能は協業先を拡大
◆分散型臨床試験(DCT)等に必要となるシステム系パートナー網の構築に加え、再生医療等製品等の開発CMC(治験薬の物性、製造プロセス、品質安定性等)や開発薬事(規制当局相談、治験届提出等)のコンサル機能強化のための外部専門家との協業を推進する。

 

3.2025年3月期第2四半期決算

(1)連結業績

 

24/3期上期

構成比

25/3期上期

構成比

前年同期比

売上高

6,064

100.0%

5,426

100.0%

-10.5%

売上総利益

1,984

32.7%

1,314

24.2%

-33.8%

販管費

1,563

25.8%

1,507

27.8%

-3.6%

営業利益

421

6.9%

-192

-3.6%

経常利益

483

8.0%

-239

-4.4%

親会社株主に帰属する四半期純利益

178

3.0%

-280

-5.2%

※単位:百万円
※数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります。(以下同じ

 

前年同期比10.5%の減収、1億92百万円の営業損失
売上高は前年同期比10.5%減54億26百万円、1億92百万円の営業損失(前年同期4億21百万円の営業利益)。
売上面では、米国が前年同期比で大幅な増収となる一方で、日本・アジア地域が前年同期比で大幅な減収となったことにより、全体として減収となった。
利益面では、売上の好調な米国が大幅な営業増益となった他、欧州でも前年同期比で赤字幅が縮小したものの、日本・アジア地域が大幅な減収により営業赤字となったことから全体として営業損失となった。売上総利益率は24.2%と前年同期比8.5ポイント低下した。全拠点で販管費の見直しを実施したことにより、販管費は前年同期比3.6%の減少となった。その他、営業外費用で為替差損を64百万円(前年同期は為替差益69百万円)計上したことなどにより、経常損失は2億39百万円と営業損失よりも損失が拡大した。また、特別損益の計上はなかった。

 

 

※給与手当等には、給与手当、賞与引当金繰入額、退職給付費用を含む
※株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

セグメント別売上高・利益
CRO事業では、売上高が前年同期比9.3%減の51億55百万円、営業利益が同39.8%減の8億31百万円と減収減益になった。育薬事業では、売上高が前年同期比29.0%減の2億70百万円、24百万円の営業損失(前年同期は1億9百万円の営業利益)と減収減益になった。

 

(2)地域別業績動向

 

24/3期 上期

25/3期 上期

売上高

営業利益

売上高

増減率

営業利益

増減率

日本

2,682

370

1,892

-29.5%

-215

米国

1,998

304

2,513

+25.8%

410

+34.9%

欧州

1,578

-118

1,565

-0.8%

-54

韓国

442

14

375

-15.1%

-73

台湾

50

-16

42

-15.8%

-28

中国

165

1

115

-30.5%

-7

連結調整

-853

-134

-1,077

-223

合計

6,064

421

5,426

-10.5%

-192

※単位:百万円
※のれんの償却費用は連結調整に含めている。売上高は内部取引控除前の数値。

 

※株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【日本】
日本は、前年同期比で減収、営業損失となった。売上面では、受注獲得が想定通りに進まなかったことに加え、前期に複数の既存案件の中止や期間短縮の契約変更が発生したことによる今期売上への影響もあり、前年同期比で大幅な減収となった。また、利益面でも売上高の減少により営業損失となった。日本の製薬業界では各社で早期退職募集が相次ぐなど構造改革が進み厳しい市場環境が続いているものの、同社では欧米及びアジア事業と連携し、海外バイオテックに対して日本市場への進出を提案するなどの営業活動を粘り強く継続している。また、人員稼働率向上のための施策と販管費の徹底した見直しを行い、業績改善に努める。

 

(同社決算説明会資料より)

 

2023年度の治験計画届出件数は過去10年で最低レベルに落ち込むなど、日本では厳しい市場環境が継続している。

 

【韓国】
韓国は、既存案件の契約変更による売上高の減少に加え、複数案件の進捗遅れにより、前年同期比で減収、営業損失となった。韓国で発生している医療ストライキの影響に関しては現在も混乱は継続中であり、臨床試験にも大きな影響を与えている。新規案件の受注や既存案件の進捗にも影響を与えており、その動向を注視している。

 

【中国】
中国は、新規獲得案件の本稼働の遅れや既存案件の終了に伴う売上高の減少等により、前年同期比で減収、営業損失となった。

 

【台湾】
台湾は、新規案件の獲得に苦戦し、前期に発生した既存案件の中止や案件の終了の影響等を穴埋めすることができず、前年同期比で減収、営業損失が拡大した。しかし、台湾のバイオテックからグローバル試験の内諾を得たことや、台湾国内案件の受注を獲得するなど、営業面で改善の兆しがみられる。

 

【米国】
米国は、受注した業務が想定通り進捗し順調に売上高を計上していることに加え、追加作業発生による契約変更等もあり、前年同期比で大幅な増収増益となった。米国のバイオテック企業等からの新規案件を順調に獲得しており、引き続き米国CRO市場の深耕に注力し、持続的な成長を図る。

 

【欧州】
欧州は、米国事業との連携を推し進めたことによる営業面での成果を発揮しつつあるものの、今期の売上高の増加に寄与するまでには至らず、前年同期比で減収となった。利益面ではコスト削減の効果により赤字幅が縮小した。足元では引き合いが増加しつつあり、欧州での営業人員の採用による体制の強化を進めており、受注の拡大に注力する。

 

【のれんの残高と残存償却期間(2024/3期末)】

 

のれん

のれん以外の関連する無形固定資産※2

期末残高

残存償却期間

年間償却額※3

期末残高

残存償却期間

年間償却額※3

韓国

19/3期で償却終了

19/3期で償却終了

欧州※1

1,355

9-10年

148

9

67

3年

6.7年

3

10

米国※1

2,192

10年

217

34

3年

11

合計

3,547

365

111

24

*単位:百万円
※1 Linical Accelovance America, Inc.買収により発生したのれんについて、その欧州子会社分を欧州に按分
※2 のれん以外にPurchase Price Allocationにより認識された無形固定資産
※3 2024年3月期末の為替レートで換算

 

(3)受注残高の推移

 

24/3期 期末

(A)

25/3期中間期末

24年11月14日時点

(B)

前期末比

(B-A)/A

日本

3,877

3,584

3,969

+2.4%

米国

3,221

3,188

3,345

+3.9%

欧州

3,655

3,211

3,092

-15.4%

アジア

1,434

1,317

1,264

-11.8%

受注残高合計

12,188

11,302

11,672

-4.2%

※単位:百万円

 

同社のCRO事業において受託する治験業務では、1年から3年程度の治験実施期間において、症例数や対象疾患に起因する治験の難易度などにより受託総額が決定する。この実施期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生する。育薬事業においても、同程度の期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生する。
受注残高は、既に契約を締結済みの受託業務の受注金額の残高である。これは、今後1年から5年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。

 

2024年11月14日時点の受注残高は、2024年3月期末と比較して4.2%減の116億72百万円となった。
日本は、厳しい市場環境が続いているものの、複数の新規案件の獲得や契約変更により、2024年3月期末から受注残高は増加した。一方、アジアは、韓国で医療ストライキの影響等もあり新規受注獲得が想定通りに進まなかったため、2024年3月期末から受注残高が減少した。日本・アジア事業と欧米事業が連携し、海外バイオテックに対して日本・アジア市場への進出を提案するなどの営業活動を粘り強く継続する。
米国は、新規案件の契約締結や工数増加の契約変更による受注残高の積み上げの結果、2024年3月期末から受注残高が増加した。また、上記受注残高には含まれない複数の契約締結作業中の新規案件がある他、引き続きバイオテックからの引き合いは多く、複数のグローバル案件等の打診を受けており、受注残高を積み上げるべく、営業活動を継続している。欧州は、工数を増加する契約変更等があったものの、既存の受注案件を消化し売上高を計上した結果、2024年3月期末から受注残高が減少した。一方で、米国事業との連携を推し進めたことにより新規案件の受注獲得が進みつつあり、また、上記の受注残高には含まれない契約締結前の案件がある。営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することで、欧州を含む新規案件の受注獲得を拡大する。

 

(4)第2四半期(7-9月)の

業績推移

 

25/3期の第2四半期(7-9月)は、主に日本における売上高の減少により、営業損失となった。

 

(5)財政状態及び

キャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

24年3月

24年9月

 

24年3月

24年9月

現預金

7,465

7,213

短期有利子負債

1,093

1,023

売上債権・契約資産

3,463

2,869

未払金・未払費用

1,196

1,081

立替金

1,265

1,172

前受金

2,521

2,745

流動資産

12,748

11,876

長期有利子負債

1,804

1,554

有形固定資産

518

448

負債

10,304

9,903

無形固定資産

3,665

3,302

純資産

8,235

7,383

投資その他

1,607

1,659

負債・純資産合計

18,539

17,286

固定資産

5,791

5,410

有利子負債合計

2,898

2,578

*単位:百万円
*有利子負債=借入金+リース債務

 

※株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

2024年9月末の総資産は前期末比12億53百万円減の172億86百万円。資産サイドは主に現預金、売上債権、立替金、のれんなどが減少要因となり、流動資産のその他、繰延税金資産などが増加要因となった。負債純資産サイドは、主に短期と長期の借入金、未払法人税等、利益剰余金、為替換算調整勘定などが減少要因となり、前受金、預り金などが増加要因となった。また、2024年9月末の自己資本比率は42.7%と前期末比で1.7ポイント低下した。

 

キャッシュ・フロー      

24/3期上期

25/3期上期

前年同期比

営業キャッシュ・フロー(A)

631

541

-89

-14.3%

投資キャッシュ・フロー(B)

18

-12

-30

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

649

528

-120

-18.6%

財務キャッシュ・フロー

-705

-662

+42

現金及び現金同等物中間期末残高

7,316

7,213

-103

-1.4%

※単位:百万円

 

CF面では、税金等調整前中間純損失の計上や預り金の増加額の減少などにより、営業CFのプラス幅が縮小した。また、無形固定資産の取得による支出の増加や投資事業組合からの分配による収入の減少などにより投資CFがマイナスに転じたことなどにより、フリーCFのプラス幅も縮小した。その他、財務CFはリース債務の返済による支出が減少したことなどによりマイナス幅が縮小した。以上により、24年9月末のキャッシュ・ポジションは、前中間期末比で1.4%減少した。

 

4.2025年3月期業績予想

(1)連結業績

 

24/3期 実績

構成比

25/3期 会社計画

構成比

前期比

売上高

12,307

100.0%

11,468

100.0%

-6.8%

営業利益

725

5.9%

250

2.2%

-65.6%

経常利益

790

6.4%

258

2.2%

-67.3%

親会社に帰属する

当期純利益

338

2.7%

150

1.3%

-55.7%

※単位:百万円

 

前期比6.8%の減収、同65.6%の営業減益
25/3期の会社計画は、売上高が前期比6.8%減の114億68百万円、営業利益が同65.6%減の2億50百万円の予想。
同社は、11月14日に25/3期の業績下方修正を実施した。売上面では、米国が既存案件の順調な進捗により計画を上回った一方、欧州、日本で新規案件の獲得が想定通りに進まず、日本における開発中止案件の発生も影響した。加えて、韓国で本年2月頃から始まった大規模医療ストライキによる既存案件の進捗遅延と新規案件の商談遅延も影響した。
利益面では、全拠点で人員の調整をはじめとした人件費のコントロールと販管費の見直しを行っているものの、日本・アジアでの売上高の減少が大きく影響する。売上高営業利益率は、前期比3.7ポイント低下の2.2%の見込み。
その他、配当は、前期から1株当たり1円増配の普通配当16円/株の予定を据え置き。

 

業績予想の修正

 

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

期初会社予想

12,669

1,009

1,047

697

11/14修正会社予想

11,468

250

258

150

増減額

-1,201

-759

-789

-547

増減率

-9.5%

-75.2%

-75.4%

-78.5%

*単位:百万円

 

(2)下期の業績見通し

※株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

25/3期下期の会社計画は、前年同期比で売上高は若干の減少ながら、営業利益は増加する見通しとなっている。

 

 

(3)地域別の戦略

日本・アジア

◆欧米子会社と連携し、欧米バイオテックに対して日本・アジア市場への進出を提案するなどの営業活動を粘り強く継続する。

◆韓国、台湾など現地のバイオテック企業に対する営業活動を引き続き継続。

 

米国

◆バイオテックからの引き合いは多く、受注の積み上げに向け営業の強化を継続する。

欧州

◆欧米の経営一本化によりシナジーを発揮し、新規案件の獲得が進みつつある。営業人材を強化し、欧州での新規案件の受注獲得に注力する。

 

5.今後の注目点

同社の25/3期上期は、前期比10.5%の減収、1億92百万円の営業損失の厳しい決算となった。上期の状況を踏まえ、同社は11月14日に25/3通期の業績下方修正を実施した。新しい会社計画は、売上高が前期比6.8%減の114億68百万円、営業利益が同65.6%減の2億50百万円である。これは、欧州、日本で新規案件の獲得が想定通りに進まない中、日本で開発案件の中止が発生し売上高が減少したものである。加えて、韓国で本年2月頃から始まった大規模医療ストライキによる既存案件の進捗遅延と新規案件の商談遅延もマイナスに影響した。しかし、大変厳しい上期決算となったものの、下期以降の業績回復に向け明るい話も多数出てきている。今後の成長を牽引すると期待される米国は、上期好調に推移したのみならず、受注残高には含まれない契約締結作業中の新規案件を複数抱えている。加えて、引き続きバイオテックからの引き合いは多く、複数のグローバル案件等の打診を受けている。また、日本は、年明け以降2件の大口受注の獲得が予定されている。更に欧州でも米国事業との連携を推し進めたことにより新規案件の受注獲得が進みつつあり、受注残高には含まれない契約締結前の案件も多数抱えている模様である。2024年11月14日ベースの受注残高は、中間期末から増加に転じたものの前期末よりも低い水準にある。来期以降の業績拡大に向け、今期末の終了時点で受注残高をどこまで増加させることができるのか注目される。特に、米国での大手バイオテックと欧州での大手製薬企業からの大口受注の獲得に期待したい。
また、同社は創業以来、がん、中枢神経(CNS)、免疫領域に注力しており、、この3領域で高い競争優位性を有している。今後は、この3領域に加え、高齢化社会でニーズの高まる眼科・皮膚科領域と新規モダリティの再生医療やデジタル医療機器での拡大も見据えている。今後急拡大が見込まれるこれら領域において順調に受注を獲得することができるのか今後の進捗状況に注目したい。
更に、世界最大の市場である米国の成長ポテンシャルは大きい。同社の成長にとって、米国事業の拡大が最重要課題である。同社は、米国において積極的な人員増強とM&Aを活用した事業拡大を目指している。米国事業が好調に拡大する中、現預金が積み上がり有利子負債も減少してきており、今後米国で新たなM&Aを実施する素地が整っている。今後の米国市場での成長戦略にも引き続き期待を込めて注目していきたい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態および取締役・監査役の構成

組織形態 監査等委員会設置会社
監査等委員でない取締役 6名、うち社外5名
監査等委員である取締役 3名、全員社外取締役

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2024年7月2日
<基本的な考え方>
(1)経営理念
当社は、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」を経営理念として掲げています。役員・従業員の有する知識・経験、
組織としてのノウハウ・システムを持続的に発展・維持し、製薬会社など世界中のヘルスケアカンパニーに提供することで、
新薬を含む新しい治療技術の開発やその発展・浸透、ひいては人類の健康的な生活に貢献することを目指しています。
(2)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
上記経営理念に基づき、当社は、医薬品開発のノウハウ・技術をもって新薬を含む新しい疾患予防・治療技術の誕生・成長に貢献し、国内外のバイオベンチャー、製薬企業、医療機器メーカーなどのヘルスケアカンパニー、医療機関のパートナーとして医療の発展に貢献し、患者様ならびに社会全体の期待に応えてまいります。
当社は、人命に関わる事業活動を行うため、当社の役員ならびに従業員には専門性のみならず高い倫理観が求められることから、コンプライアンスの徹底をはじめとした企業行動規範の遵守を徹底しております。また、内部統制の充実を図り、経営の健全性・透明性を確保することで、事業の発展とあわせて企業価値の向上に努めております。

 

<コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について>
実施をしないコードのおもな原則と理由

原則

実施しない理由

【補充原則4-1② 中期経営計画 当社では、経営会議において中期計画を検討し、各会議において進捗状況の確認・分析を行い、必要に応じて適宜、中期目標や方針の見直しを行うこととしています。取締役会は、経営会議が策定した中期計画を決議するとともに、進捗状況や分析結果について報告を受け、監視・監督することとしています。

当社では、2025年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を2021年12月に公表していますが、今後、進捗状況により必要に応じ目標・方針等の見直しを検討し、ビジョン、経営戦略とともに開示・説明し、株主・投資家との共有認識を醸成できるよう努めます。

【補充原則4-2① 報酬制度】 当社は、当社の業務執行を担う取締役に対して、固定報酬に加え、単年度の業績に連動する金銭報酬である業績連動報酬制度を導入しております。一方、業務執行を担う取締役及び大半の執行役員CXOは当社の創業メンバーであり、既に一定数の当社株式を保有しています。そのため、中長期の業績を反映した株主価値の増減が保有株式の価値の増減と連動しており、実質的に中長期の業績連動報酬と同様のインセンティブを内包し、株主の皆さまとの利害価値共有は実現できているものと考えます。このような観点から、現在は中長期の業績に連動する株式報酬等の非金銭報酬を設定していません。なお、今後創業メンバー以外の業務執行を担う取締役の就任など取締役構成の変化に応じて、中長期の業績連動報酬を含む役員報酬制度について必要な変更を検討してまいります。
【原則4-9 独立社外取締役の独立性

判断基準及び資質】

会社法の要件に加え、東京証券取引所の独立役員の独立性に関する判断基準を実質的にも満たすことを確認した上で、その知識・経験をベースに一般株主と同じ客観的な視点から当社の経営等に対し適切な意見を積極的に述べていただけると考えた候補者を取締役会にて選任しています。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

【補充原則2-4① 中核人材の登用等における多様性の確保】

【補充原則3-1③ サステナビリティについての取組み等】

当社グループは、経営理念のもと「サステナビリティ方針」を策定し、この方針に沿ってサステナビリティ経営を推進しています。サステナビリティに関する取組及び人材の多様性の確保を含む人材育成・社内環境整備の方針等については有価証券報告書「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に開示しております。 なお、中核人材の多様性推進に関する状況については以下の通りです。

女性

日本本社及びグループ全体で女性管理職の登用は進んでおり、今後、経営の中核を担う執行役員以上の女性リーダー育成に向け、さらなる環境の整備やキャリア形成支援を行ってまいります。

【本社(日本)】 2024年3月末 2023年3月末 2022年3月末

女性社員比率     61.5%    62.9%     61.6%

女性管理職比率 42.6%   44.2%     42.6%

女性執行役員比率 16.7%    16.7%     16.7%

【グループ】

女性社員比率 68.1%   68.5%    67.5%

女性管理職比率 58.6%   59.7%     56.9%

女性執行役員比率 27.8%    31.8%     28.6%

(2)外国人当社グループ従業員662名(2024年3月末時点)の約50%が海外に居住する現地採用の社員であり、海外グループ会社の主要なポジションを現地の優秀な人材が担っています。今後も医薬品開発のボーダレス化に伴い、優秀な海外人材の確保を進めてまいります。

(3)中途採用者2024年3月末時点の日本本社の全社員に占める中途採用者比率は48.4%です。また、執行役員の中途採用者比率は100%、管理職の中途採用者比率は70.2%です。グループ全体では、2024年3月末時点の全社員に占める中途採用者比率は71.0%です。また、執行役員の中途採用者比率は88.9%、管理職の中途採用者比率は80.5%です。

【原則3-1 情報開示の充実】 (i)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画

当社は、「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」を経営理念として掲げ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指しています。この実現に向け、2025年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を策定し2021年12月に公表しています。経営戦略、経営計画につきましては、有価証券報告書などの資料にて開示しています。

(ii)本コードのそれぞれの原則を踏まえた、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針

コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方については、本報告書の「1.基本的な考え方」に記載しています。またこれを含めた当社コーポレート・ガバナンスの概要については当社WEBサイトにて開示しています。

(iii)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続

当社の取締役の報酬等は、株主総会で決議された報酬総額の範囲内で支給いたします。また、取締役の個人別の報酬等の決定方針は取締役会で決議します。当該方針の決定・手続きに関し、取締役会からの諮問を受け、社外取締役が過半数を占める3名以上の委員で構成される報酬委員会にて協議・答申を行うことで、客観性、透明性、公正性を確保します。内容の詳細については有価証券報告書「4.コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」にて開示しています。

(iv)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役候補の指名を行うに当たっての方針と手続

当社では、社内取締役及び執行役員候補の選任、指名については、法令及び企業倫理の遵守に関して経営幹部にふさわしい見識や高潔な人格を有すること、的確かつ迅速な意思決定が行えること、そのほか個人の知識・経験・能力等に基づき、社外取締役を含めた取締役会、経営陣全体のバランスを総合的に考慮した上で、取締役会決議にて選任・指名することとしています。また、再任については期待される業績・成果を恒常的に上げているかどうかを判断し、取締役会決議にて再任(非再任)することとしています。監査等委員でない社外取締役候補の選任、再任については、原則4-9に示した基準及び資質に基づき、取締役会決議にて選任、再任することとしています。監査等委員である取締役候補の選任、再任については、原則4-9に示した基準及び資質に加えて、最低1名は財務・会計に関する十分な知見を有したものを加え、適切に経営の監査機能が行えるよう監査等委員会としてのバランスを考慮し、監査等委員会の同意を得た上で、取締役会決議にて選任、再任することとしています。これらの取締役会決議にあたり、社外取締役が過半数を占める3名以上の委員で構成される指名委員会にて、候補者に関する協議・答申を得るプロセスを経ることで、客観性、透明性、公正性を高めていきます。また、取締役会は、代表取締役社長執行役員CEOの選解任について、最も重要な意思決定の一つであることを前提に、経営環境全般の変化への対応、積極的な経営戦略の立案・推進や、継続的な業績の向上ができているか等を総合的に勘案し、指名委員会での協議、答申のプロセスを経て実施いたします。なお、代表取締役社長執行役員CEOの後継候補者育成についても、知識教育や計画的なローテーションなどを通じて、実施しております。

(v)取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取締役候補の指名を行う際の、個々の選解任・指名についての説明

監査等委員でない取締役候補、監査等委員である取締役候補の選任につきましては、株主総会招集通知に個人別の経歴、候補者とした理由を記載しております。<補充原則4-1①経営陣への委任の範囲>当社は、経営の監督と業務執行の分離を進め、業務上の意思決定の迅速化を図るため、執行役員制度を採用し、執行役員CXOを設置しております。経営陣が取締役会に付議する事項及び報告する事項、経営陣に対する委任の範囲については各種社内において規定しております。取締役会が経営上重要な事項についての意思決定を行い、その他の法令上委任可能な業務執行の決定については、代表取締役社長執行役員CEOに委任しております。

【原則5−1 株主との建設的な対話に関する方針】 当社は、株主(潜在株主としての機関投資家や個人投資家を含む)との建設的な対話を通じて、企業と株主との共通目的である企業価値の持続的成長を目指しています。アカウンタビリティの強化に向け、情報開示の充実を継続的に推進し、国内外の投資家との対話の促進に取り組んでいます。具体的には、業績、経営戦略、資本政策、リスク、コーポレート・ガバナンス体制などについて以下の方法により継続的・建設的で透明・公正な対話を実施しています。

・株主との対話は執行役員CFOが統括を行い、面談の目的と効果、株主属性を勘案し、代表取締役社長執行役員CEO、執行役員CFOを中心とした経営幹部により対話者と対話方法を検討のうえ実施しています。

・IRは財務部ならびに広報室が中心となり社内関連部署から必要情報を収集し、分かり易い資料作成や説明により株主との対話を充実させています。

・定時株主総会、決算説明会、個人投資家向け説明会に加え、国内外機関投資家との個別ミーティング、英文を含めたWEBサイトでのIR情報開示、個人投資家様からの電話・メール等による個別対応などを通じて対話の機会を持ち、質問や要望、説明会での参加者情報やアンケート結果などをIR活動へ反映しています。

・株主との対話を通じて把握した株主の関心や懸念は執行役員CFOに集約し、経営分析や情報開示の在り方などの検討に活かしています。

・IR活動や株主との対話においては、社内規程の定めるところに従い、適切にインサイダー情報を管理しております。なお、当社では決算情報に関する対話を控える沈黙期間を四半期決算期日の翌日から決算短信発表日までとしております。

 

【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(検討中)】

当社は1株当たり当期純利益(EPS)を経営指標とし、決算説明会資料及びWEBサイトにて開示しておりますが、方針・目標、取組みについては、現在開示内容を検討しております。

 

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