AIの光と影

2024/11/29

・AIは誰でも使うようになりつつある。今やソフトウェアがGPTを使って、システム開発をスピードアップしている。一般的な外部データではなく、組織内にある特定のデータの活用こそ、AIのナレッジを上げて、差別化することに役立つ。

・AIインダストリーとどう関わっていくか。NVIDIAの半導体、AWSのクラウド、OpenAIのテクノロジーツールの上に、AIアプリケーションがある。このアプリでいかにオリジナルな開発を行い、AIを利用するか。ここに多くの企業にとってのビジネスチャンスがある。

・NTTの島田社長はAIのつながりに注目し、連鎖型AIのビジネス展開を目指す。サプライチェーンやバリューチェーンにおいて、部門や企業を越えて、AIの最適化を図っていく必要がある。それによって、生産性が一層高まる。

・個別AIは、さまざまな場面で使われるようになっているが、それをどうつなぐか。例えば、ダイナミックな流行のサプライチェーンにおいて、AIチェーンによって、在庫の全体最適化や配送の効率化を図ることができる。

・DC(データセンター)は膨大な電力を使用するが、例えば、九州地域の太陽光発電は使いきれずに余剰となることもある。それをAPN(オールフォトニクス・ネットワーク:All-Photonics Network)でつないで、関東圏でも使うことができるようになれば、効率性は大幅に向上する。

・DCも1か所ではなく、10㎞離れていても、100㎞離れていても、1つのDCのようにコントロールして使うことができれば効率は高まる。こうしたコントロールをIOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)で実現していく。

・IOWNによる光電融合は、IOWN 1.0から2.0(2025年、デバイス)、3.0(2028年、チップ間)、4.0(2032年、チップ内)へとレベルを上げ、電力消費量を100分の1に下げることを目標とする。

・日本IBMの山口社長は、AIのオープン化を強調する。社会の課題を解決していくには、やはりテクノロジーの利用がカギを握る。その中で、AIは不可欠となっている。熱エネルギーの活用、災害対応情報システム、食品ロスの削減、難病情報照合システム、IT障害復旧システムなどにおいて、AIの活用を実践し、成果を上げている。

・生成AIは企業の5割で、何らかの形ですでに使われている。外部にある公開データは、ほぼ読み込まれている。一方で、企業内データ活用はまだ十分でない。

・これをビジネス拡張のためのAIとして、開発が進もう。AI教育を進めて、ガバナンスを確立していく必要がある。AIの活用を広げるためのオープン化(ソフトウェア、モデルの公開、データセットの共有など)も重要である。

・AIの普及で、計算量が指数関数的に増大する。DCでの電力使用も膨張しよう。これにどう対応するか。ビットレベルでは、ラピダスが目指す2ナノの回路線幅で高性能化を図る。1つのチップに500億個のトランジスターが入っているレベルとなる。

・ニューロン化という点では、メモリーと演算(CPU、GPU)の処理を一体化して、ここでのやりとりの効率アップを図る。

・さらに、量子ビット(キュービット)の利用を進める。IBMでは2030年に向けて実用化を逐次進めていく。開発は計画通りであるという。量子ビットの暗号化にも取り組んでいる。

・量子コンピュータは、いわば3次元の計算方式なので、空を飛ぶスピードである。従来のコンピュータは、高性能化して、リニアモーターカーレベルに到達している。2次元の計算はこれからも残り、3次元の量子コンピュータと住み分けていくと、山口社長はみている。

・もう1つ、山口社長は重要な指摘をしている。今の社会課題に、テクノロジーをもっていかに立ち向かうか、という姿勢には注意を要するという。テクノロジーには進化と革新を伴う。社会課題も、先をみると変容する可能性がある。

・よって、ソリューション・プロジェクトを推進する時、将来社会と将来テクノロジーを想定して、バックキャストせよ。その上でプロジェクトの遂行を具体化することが必須である、と話した。

・確かに、将来は不確定である。現状の延長線上にはない。シナリオとシミュレーションを持った上で、自らのリソースの充実を図る必要がある。さもないと、プロジェクトの途中で足元をすくわれてしまうかもしれない。

・では、AIテクノロジーは楽観できるのか。第4次産業革命をもたらすとすると、それが定着するまでに、社会はかなり混乱しよう。1つは、AIの利用において、フェイク情報やでっち上げで、不正取引がまん延するかもしれない。これに対して、何らかの規制、ガバナンスを働かせるとしても、それは常に後追いになりかねない。

・もう1つは、新たな産業革命とすると、光と影が人々の生活基盤に大きな影響をもたらす。AIをリードする人々は新たな富裕層となり、一方で、AIアプリの浸透で自らの職を失い、うまくリスキリングできない人々にとっては、苦しい先行きとなる。

・産業構造の転換に30年を要するとすると、AI革命がもたらす良さに対して、それに乗り切れない人々を救済していく必要がある。その仕組み作りが国際社会、各国、各企業において問われよう。

・それでも、イノベーションは止められないし、止めてはならない。活用すれば良き社会が築けるはずである。AIを活用して、社会課題のソリューションに、ビジネスとして取り組む企業に大いに投資したい。但し、ブームに惑わされず、本物の企業にじっくり参画していきたい。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所   株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。

このページのトップへ