自民党総裁選の行方と国内金融市場への影響について考える
自民党総裁選の行方と国内金融市場への影響について考える
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- 岸田首相は総裁選不出馬を表明、党内では有力候補の名前が複数あがるが、票読みは難しい。
- 各候補の経済政策の見解は注目だが、市場に一定の配慮か、総裁選後は解散・総選挙も焦点。
- 総裁選後の政策運営が大幅に修正される可能性は低く市場に政局不安が広がる恐れは小さい。
岸田首相は総裁選不出馬を表明、党内では有力候補の名前が複数あがるが、票読みは難しい
岸田文雄首相は8月14日、9月の自民党総裁選への不出馬を表明しました。岸田首相は自民党派閥の政治資金問題を受け、派閥の解消や政治資金規正法の改正などに取り組み、政治の信頼回復を図ってきました。ただ、世論の政権批判が強まり、内閣支持率が低迷するなかで、自民党内からも次期衆院選を見据えて首相交代論が出ていることから、総裁再選は難しいとの判断に至ったとみられます。
自民党総裁選は、9月20日から29日の間に投開票する規定となっていますが、具体的な日程は選挙管理委員会が8月20日に決定します(図表1)。岸田首相の不出馬表明を受け、総裁選をめぐる動きは今後活発になると思われ、すでに自民党内では、現職の党幹部や閣僚の名前が有力候補者としてあがっています(図表2)。総裁選への立候補には20人の推薦人が必要ですが、派閥が解消されたこともあり、票読みが難しい状況となっています。
各候補の経済政策の見解は注目だが、市場に一定の配慮か、総裁選後は解散・総選挙も焦点
国内市場では、各有力候補者の経済政策に関する見解が注目されていますが、とりわけ円相場や金融政策についての発言には敏感な反応が予想されます。河野太郎デジタル大臣、茂木敏充自民党幹事長は7月、日銀に利上げを求める発言をし(河野氏はのちに金融政策は日銀が決めることと釈明)、石破茂元幹事長は先週、日銀の追加利上げの是非は明言を避けたものの、適正な為替水準は「常識的に110円~140円と言われている」と述べました。
ただ、足元で円安は相当程度修正され、その過程で、株価も不安定な動きとなったことから、各候補者とも円相場や金融政策に関するコメントには一定の配慮がなされると思われます。なお、弊社は岸田首相が検討していた秋の経済対策は、次期総裁(新首相)が引き継ぐとみていますが、新首相が新政権の基盤を固めるため、衆議院の解散・総選挙に踏み切った場合、経済対策が大型化することも想定されます。
総裁選後の政策運営が大幅に修正される可能性は低く市場に政局不安が広がる恐れは小さい
新首相の政策方針は十分に見極める必要がありますが、政策運営の基本的な枠組みが大きく変わる可能性は低いと思われ、少なくとも国内市場に政局不安が広がる恐れは小さいとみられます。市場にとって望ましいのは、日銀の独立性の尊重で、適切な金融政策の運営は、国内金融市場の安定につながります。また、資産運用立国を実現するための各種施策の継続も、株式市場の発展には欠かせないと考えます。
円相場の安定には、本邦収支構造の変革が必要であり、具体的な施策としては、国際競争力を持つ国内産業の育成、エネルギーの輸入依存の低減、国内への直接投資および証券投資の呼び込みなどがあげられます。このうち、資産運用立国や収支構造の変革は、実現までにかなりの時間を要し、簡単なことではありませんが、日本経済の中長期的・持続的な成長にとっても重要な施策と思われます。
(2024年8月15日)
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