インテリジェント ウェイブ(4847) 増益見込 中期事業計画の達成を目指す

2023/09/16
 

佐藤 邦光 社長

株式会社インテリジェント ウェイブ(4847)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

情報・通信

代表者

佐藤 邦光

所在地

東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー

決算月

6月

HP

https://www.iwi.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

917円

26,340,000株

24,153百万円

13.8%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

40.00円

4.4%

60.50円

15.2倍

334.84円

2.7倍

*株価は8/31終値。各数値は2023年6月期決算短信より。

 

非連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年6月(実)

10,443

921

953

683

25.99

9.00

2020年6月(実)

10,920

1,036

1,074

762

29.00

10.00

2021年6月(実)

11,187

1,130

1,171

840

31.98

13.00

2022年6月(実)

11,493

1,519

1,556

1,055

40.16

17.00

2023年6月(実)

13,374

1,556

1,603

1,165

44.34

20.00

2024年6月(予)

15,000

2,250

2,290

1,590

60.50

40.00

* 予想は会社予想。単位:百万円。

 

 

(株)インテリジェント ウェイブの2023年6月期決算概要などについてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年6月期決算概要
3.2024年6月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:中期事業計画の進捗>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23/6期の売上高は前期比16.4%増の133億74百万円。決済、金融におけるシステム開発、クラウドサービスが大幅に伸長、保守も堅調に増加した。ハードウェア更改、セキュリティ関連も増加して大幅増収となった。顧客別では、上位3社がいずれも増収だが、特に最大手DNP以外の顧客が大幅な増加。月間売上10億円を安定的に計上できる体質に変革。営業利益は同2.4%増の15億56百万円。売上総利益が前期比15.4%増とほぼ目標どおり推移した一方、販管費についてはベースアップを含む人的資本投資、オフィス環境整備、IT投資等が計画外に増加した。販管費の増加を主因に各利益が会社予想を下回った。四半期ベースでは、4Qは前四半期比増収増益。20.00円/株の期末配当を実施。 
  • 24/6期は、売上高が前期比12.2%増の150億円、営業利益は同44.5%増の22億円50百万円の予想。決済事業では事業領域の拡大を図る。クラウドサービス事業は引き続き大幅増収の見込み。セキュリティ事業においてもクラウド化を加速するほか、アジアでの事業展開を推進する。構造改革を推進するが、品質強化、人的資本、ESG課題等に向けて経営資源を積極的に投入しながら、中期事業計画の目標達成を目指す。配当は前期比倍増となる40.00円/株を予定。 
  • 23/6期はクラウドサービスが牽引し大幅な増収となった。販管費の増加を主因に営業利益は小幅な増加にとどまったが、24/6期は2桁増収を維持しつつ、利益率を改善させて大幅な増益を見込んでいる。中期事業計画の目標数値達成を目指すが、大幅な増配を見込んでおり目標達成への自信と受け止めたい。23/6期にやや苦戦したのがセキュリティであった。会社側は巻き返しを図るも受注は伸び悩んでおり、セキュリティの受注動向は注視したいところ。 

     

1.会社概要

クレジットカード決済等のオンラインシステムに利用される金融フロントシステムで国内シェアNo.1のソフトウェア開発会社。
金融フロントシステムは、店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行う。“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“システムを止めないためのノンストップ技術”、及び“高度なセキュリティ技術”を技術基盤とし、カード不正利用検知システムや証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する。
地銀やノンバンク等向けに金融フロントシステムやカード不正利用検知システムのクラウドサービスも伸びている。営業面では、筆頭株主として議決権の50.73%を保有する大日本印刷(株)及びそのグループ企業との連携が強みとなっている。

 

【経営理念】

次代の情報化社会の安全性と

利便性を創出する

ネットワークゲートウェイ専門会社として、社員一人ひとりが、進取の気性を持った技術者集団としてあり続ける事で、次世代の新たなキラーシステムを創出し、次の30年を見据えた成長の軌跡を描いていく。そのためには、性別や国境にとらわれない多様な価値観が生み出すエネルギーが必要不可欠というのが同社の考え。また、常に新しい事に挑戦し、働きがいのある企業風土を作りあげる事で、社会における同社の企業価値も高めていく。
カード決済に不可欠な機能を提供するシステムの開発や運用を担う同社は、どのような事業環境になっても業務の継続が求められる。同社に受け継がれている「止まらないシステム」を追求する思想は、IT基盤の構築やセキュリティ機能の向上を支える技術と深く結びついており、今後、あらゆる業界に幅広く浸透していく、というのが同社の考え。
企業は、社会に貢献する事がなければ存在価値がない。同社は、これまでに培ってきた技術力を進化させ、安全でストレスなく情報を取得できる仕組みを築きあげる事で、ユーザーを通じて社会全体から信頼される会社を目指している。

 

【事業内容】

金融業界を中心とした全業種の企業を主要顧客として、決済を中心に、様々なデータの受渡しに必要なシステム(ITインフラ)を開発するほか、保守、クラウドサービスなどのサービス提供、製品およびハードウェアの販売、データの利活用に係る情報セキュリティ対策、サイバーセキュリティ対策の製品の開発・販売などを手掛けている。
システム開発は、クレジットカードの決済処理を完遂するために必要なネットワーク接続やカードの使用認証等の機能をもつFEP(Front End Processing)システムの開発業務などが中心。

 

なお、これまではクレジットカード会社を主な顧客として、カード決済に不可欠なシステムの開発や関連するサービスを提供する金融システムソリューション事業と一般の事業会社を主な顧客として、情報セキュリティ対策、サイバーセキュリティ対策の製品を販売するプロダクトソリューション事業の二つを報告セグメントとしてきたが、両事業で個別に管理していた顧客の情報を共有し営業活動を強化すると共に、セキュリティ対策技術の開発体制を強化し、新製品、新サービスの開発を促進するために、23/6期より金融業界を中心とした全業種の企業を顧客とする単一セグメントに変更した。

 

また、22/6期より、ストック/フローの類型による売上高の分類をより詳細に表示するために、売上カテゴリを見直し、契約の形態や業務の実態等から判断して、定常的に一定規模の売上高を計上できる案件をストック、そうではないものをフローとして分類して開示することとした。
ストック型売上として典型的なものは、クラウドサービス事業に係るシステムの利用料やシステム運用の対価、または、自社製品や他社製品の保守業務の対価。クラウドサービスの利用料は、「サービス自社」に分類される。
フロー型売上として典型的なものは、受託開発業務の対価や、自社製品、他社製品の販売対価。

 

23/6期はフロー、ストックがほぼ半々だが、今後はクラウドの伸長など、ビジネスモデルの変革に伴いストックが上回っていくと会社側は見ている。

 

◎主要製品およびサービス
「NET+1」
店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行うためのソフトであり(ネットワーク接続機能、決済の前提となるカード認証機能、加盟店の業務を管理する機能等を有する)、専用ハードと共に提供される。この分野で圧倒的なNo.1ブランドであり、大手クレジットカード会社のネットワークへの接続で7割のシェアを有する。

 

*「ACEPlus」
偽造カード・盗難カード利用などクレジットカードや銀行口座の不正利用の検知を目的とした自社開発の不正検知システム。シェア6~7割と、豊富な実績を有する。

 

*クラウドサービス
23/6期は前期比59.2%増収と、近年大幅に伸びているサービス。サービス毎の概要は以下の通り。
■IOASIS(アイオアシス)
加盟店契約(アクワイアリング)業務に必要なすべての機能を提供するASP型サービス。24時間365日の運用を提供。主な導入企業:地銀、ネット銀行、中小カード会社、大手事業会社(通信、小売など)
■IPRETS(アイプレッツ)
決済におけるポイント管理システム。ポイント付与、利用、キャンペーン等に対応したASP型サービス
■IGATES(アイゲイツ)
国内外の各種決済ネットワークの24時間365日接続システムを提供。国内で高いシェアをもつ「NET+1」の機能を継承したASP型サービス。
主な導入企業:大手カード会社、中小カード会社、フィンテックベンチャー(スマートバンクほか)
■IFINDS(アイファインズ)
クレジット決済不正検知システム。国内で高いシェアをもつ「ACEPlus」の機能を継承したASP型サービス。
■FARIS(ファリス)
ACEPlus、IFINDSに機能追加。AIを駆使した高度なアルゴリズムを搭載。

 

*「CWAT(シーワット)」
「NET+1」や「ACEPlus」等で培ったネットワーク技術やセキュリティ技術をベースとした情報漏洩対策システム。
顧客の業務に使用されるPC 端末(エンドポイント)から、コピー、印刷、ネットワーク経由等による情報の内部からの持ち出しを監視する。
「CWAT(シーワット)」を中心に、内部情報漏洩対策、脆弱性対策、及び外部攻撃対策について、監視・検出・診断・認証と防止・阻止の切り口から各種ソリューションも提供している。

2.2023年6月期決算概要

2-1業績概要(非連結)

 

22/6期

構成比

23/6期

構成比

前期比

会社予想

予想比

売上高

11,493

100.0%

13,374

100.0%

+16.4%

13,500

-0.9%

売上総利益

3,698

32.2%

4,269

31.9%

+15.4%

販管費

2,179

19.0%

2,713

20.3%

+24.5%

営業利益

1,519

13.2%

1,556

11.6%

+2.4%

1,800

-13.5%

経常利益

1,556

13.5%

1,603

12.0%

+3.0%

1,840

-12.9%

当期純利益

1,055

9.2%

1,165

8.7%

+10.4%

1,280

-9.0%

* 単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
*費用項目の▲は費用の増加を示す。

 

増収増益、営業利益率は低下
売上高は前期比16.4%増の133億74百万円。決済、金融におけるシステム開発、クラウドサービスが大幅に伸長、保守も堅調に増加した。ハードウェア更改、セキュリティ関連も増加して大幅増収となった。4期連続の増収。
顧客別では、上位3社がいずれも増収だが、特に最大手DNP以外の顧客が大幅な増加。
営業利益は同2.4%増の15億56百万円。売上総利益が前期比15.4%増とほぼ目標どおり推移した一方、販管費についてはベースアップを含む人的資本投資、オフィス環境整備、IT投資等が計画外に増加した。売上総利益率は同0.3ポイント低下に抑えたものの、販管費率が1.3ポイント上昇したことを主因に営業利益率が1.6ポイント低下した。各利益が会社予想を下回ったのも販管費の増加が主因。
四半期ベースでは、4Q(4-6月)は前年同期比減収減益、前四半期比(3Q比)増収増益。月間売上10億円を安定的に計上できる体質に変革。

 

◎ストック/フロー別売上高

 

22/6期

構成比

23/6期

構成比

前期比

ソフトウェア開発

4,288

37.3%

4,846

36.2%

+13.0%

当社製品

392

3.4%

305

2.3%

-22.3%

システムサービス

40

0.4%

20

0.1%

-50.9%

他社製品

1,566

13.6%

1,645

12.3%

+5.0%

フロー売上計

6,288

54.7%

6,817

51.0%

+8.4%

保守

2,639

23.0%

3,173

23.7%

+20.2%

他社製品保守

614

5.4%

725

5.4%

+18.1%

サービス自社

1,434

12.5%

2,112

15.8%

+47.2%

サービス他社

516

4.5%

546

4.1%

+5.9%

ストック売上計

5,204

45.3%

6,557

49.0%

+26.0%

合 計

11,493

100.0%

13,374

100.0%

+16.4%

* 単位:百万円

 

22年6月期よりストック/フローの類型による売上高の分類をより詳細に表示するために、売上カテゴリを細分化して開示することとした。契約の形態や業務の実態等から判断し、定常的に一定規模の売上高を計上できる案件をストック、そうではないものをフローと分類している。
ストック売上が大幅な伸び。クラウドの伸長など、ビジネスモデルの変革に伴いストックが上回っていくと会社側は見ていたが、具現化しつつある。

 

◎製品カテゴリ別売上高

 

22/6期

構成比

23/6期

構成比

前期比

売上高

11,493

100.0%

13,374

100.0%

+16.4%

 決済・金融

9,229

80.3%

10,408

77.8%

+12.8%

  システム開発

5,089

44.3%

6,015

45.0%

+18.2%

  保守

1,497

13.0%

1,638

12.2%

+9.4%

  自社製品・サービス

567

4.9%

505

3.8%

-10.9%

  他社製品(ハードウェア等)

2,073

18.0%

2,249

16.8%

+8.5%

 クラウドサービス

1,173

10.2%

1,867

14.0%

+59.2%

 セキュリティ

1,090

9.5%

1,098

8.2%

+0.7%

* 単位:百万円

 

決済・金融におけるシステム開発、クラウドサービスが大幅に伸長、保守も堅調に増加した。ハードウェア更改、セキュリティ関連も増加した。

 

◎事業領域別売上高

 

22/6期

構成比

23/6期

構成比

前期比

売上高

11,493

100.0%

13,374

100.0%

+16.4%

 決済・金融

9,229

80.3%

10,408

77.8%

+12.8%

  FEP・不正検知

6,241

54.3%

6,787

50.7%

+8.7%

  決済システム等

2,187

19.0%

2,747

20.5%

+25.6%

  金融・その他

799

7.0%

873

6.5%

+9.3%

 クラウドサービス

1,173

10.2%

1,867

14.0%

+59.2%

 セキュリティ

1,090

9.5%

1,098

8.2%

+0.7%

* 単位:百万円

 

クレジットカード会社向けシステム開発の大型案件、クラウドサービス、FEPシステム更改等により大幅増収。

 

2-2 受注動向

 

 

22/6 1Q

2Q

3Q

4Q

23/6 1Q

2Q

3Q

4Q

受注残高

5,912

7,963

9,268

9,563

9,047

9,233

11,548

10,974

うち、クラウド

2,611

4,236

4,210

4,141

4,214

4,589

6,913

6,695

受注高

2,829

4,686

4,252

3,954

3,130

3,329

5,421

2,904

* 単位:百万円

 

受注高・・・クラウドサービスとセキュリティの受注は堅調に推移。決済・金融は、ハードウェアの受注が減少。

(同社資料より)

 

受注残高・・・クラウドサービスを中心に増加し過去最高を更新。

(同社資料より)

 

2-3 クラウドサービスの動向

実績
売上高は、ユーザー数が2年間で13社から27社に倍増し大幅に伸長。直近では、不正検知の 「IFINDS」とネットワーク接続スイッチングサービスの「IGATES」がユーザ―数を拡大。
利益は「IOASIS」のユーザー数拡大に伴い体制強化の費用が増加した。

 

(同社資料より)

 

受注
クレジット業界における、不正検知のニーズが急速に高まった。加えてシステム基盤がモダナイゼーションや費用対効果の向上によるクラウド導入の動きの加速化により、受注高が大幅に伸長。

(同社資料より)

2-4 財政状態及び

キャッシュ・フロー

◎要約BS

 

22年6月

23年6月

増減

 

22年6月

23年6月

増減

流動資産

8,274

7,863

-410

流動負債

4,035

4,165

+129

現預金

3,932

4,694

+761

買入債務

940

473

-467

売上債権

2,723

1,982

-740

前受金

1,885

2,324

+439

固定資産

4,466

5,820

+1,353

固定負債

665

718

+52

有形固定資産

706

1,025

+319

退職関連引当金

574

618

+44

無形固定資産

2,049

2,738

+689

負債合計

4,701

4,883

+182

ソフトウェア

1,640

2,340

+700

純資産

8,039

8,799

+760

投資その他の資産

1,710

2,055

+345

利益剰余金

6,199

6,918

+718

資産合計

12,740

13,683

+942

負債・純資産合計

12,740

13,683

+942

* 単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

売上債権の減少はあったものの、固定資産の増加等で総資産は前期末比9億42百万円増加。
前受金の増加等で負債合計は同1億82百万円増加。
利益剰余金の増加などで純資産は同7億60百万円増加。
自己資本比率は前期末より1.2ポイント上昇し、64.3%となった。

 

◎CF

 

22/6期

23/6期

増減

営業CF

1,486

3,122

+1,635

投資CF

-1,516

-1,913

-396

フリーCF

-30

1,209

+1,239

財務CF

-350

-448

-98

現金・同等物残高

3,932

4,694

+761

* 単位:百万円

 

税引前当期純利益の増加、売上債権の減少等で営業CFのプラス幅は大きく拡大し、フリーCFはプラスに転じた。
キャッシュ・ポジションは上昇した。

 

 

3.2024年6月期業績予想

3-1 業績予想

 

23/6期

構成比

24/6期(予)

構成比

前期比

売上高

13,374

100.0%

15,000

100.0%

+12.2%

営業利益

1,556

11.6%

2,250

15.0%

+44.5%

経常利益

1,603

12.0%

2,290

15.3%

+42.8%

当期純利益

1,165

8.7%

1,590

10.6%

+36.5%

* 単位:百万円

 

24/6期は2桁増収、利益率も大幅に改善見込み、株主還元を強化
24/6期は、売上高が前期比12.2%増の150億円、営業利益は同44.5%増の22億円50百万円の予想。
決済事業では不正検知を加速させるほか、事業領域の拡大を図る。クラウドサービス事業は、22/6期以降受注の拡大が続いており、大幅増収の見込み。利用ユーザー増加を見据えたインフラ環境と運用体制の整備を進めながら、規模拡大を図る。 セキュリティ事業においても CWAT などの主力製品のクラウド化を加速するほか、アジアでの事業展開を推進する。また新規事業では AI を活用した省人店舗向けソリューション、AI による日本語校正ツール等が具体化しており、拡大を目指す。24/6期も構造改革を推進するが、品質強化、人的資本、ESG課題等に向けて経営資源を積極的に投入しながら、中期事業計画最終年度の経営目標達成を目指す。

3-2 カテゴリー別売上高予想

 

23/6期

24/6期(予)

前期比

売上高

13,374

15,000

+12.2%

決済・金融

10,408

11,000

+5.7%

クラウドサービス

1,867

2,500

+33.9%

セキュリティ

1,098

1,500

+36.6%

* 単位:百万円

24/6期から配当性向を4割から5割程度に方針変更。24/6期については創立40周年の記念配当10.00円を加え、中間配当15.00円、期末は25.00円。年間で前期比20.00円/株増配の40.00円/株を予定。予想配当性向は66.1%。

 

3-3 注力施策

(1)不正検知サービス/最先端の取り組み
22年11月に不正対策プラットフォームを発表、順次新サービスを投入していく。
決済フロント(加盟店・決済代行等)も含む、業界横断型の不正対策スキームを目指している。

 

(同社資料より)

 

(2)決済事業における領域拡大/決済DX
クレジットカード業界は、システム基盤のモダナイゼーションや費用対効果の向上のために、内製化に伴う外部からの洗練された開発力やクラウド導入等の動きを加速化。
国内トップシェア(同社調べ)の製品・サービスの開発力と顧客との信頼関係を強みに領域を拡大。

 

(同社資料より)

 

(3)セキュリティ事業における領域拡大/セキュリティクラウドサービス
大手やインフラ企業を中心に展開していた製品をベースに、業種・業界・規模を問わず様々な企業向けにセキュリティクラウドサービスを開始。
アジア展開も開始し、ビジネス領域を拡大。

(同社資料より)

 

(4)人的資本経営の推進
事業戦略と人財戦略の関連性を深め、次世代の成長に向けた人財・共創基盤を形成する。
23年4月には人的資本経営推進室を設置。

 

◎最近の主な活動(詳細はコーポレートサイトに掲載
https://www.iwi.co.jp/

 

●人財資本経営推進室のプロジェクト開始
事業戦略に基づく「組織デザイン」、組織とチームと個人が連動した「キャリアデザイン」の策定をスタート
●インキュベーションプロジェクト発足
起業家マインドと経営感覚を備えた社員の育成と新たな収益事業の創出を目的とし、函館や沖縄などの大学・企業との共創、社内育成塾をスタート
●ヒューマンスキルの向上
管理職を対象としたチームビルディング/ダイバーシティ&インクルージョン/評価スキル研修や、FC東京協力のもとスポーツメンタルヘルスケアを活用した全社員向け研修を実施し、様々な角度から人財育成へアプローチ

 

●共創型オフィス環境
ワーケーションやテレワークなど多様な働き方を推進する一方、部門を越えて人と人がリアルに接する環境を整備。リアルコミュニケーションの価値を高め、新たなイノベーションを生み出す取組みをスタート。
●スポーツを通じた共創
FC東京スポンサー活動を活用した社内プロジェクト「Link」を発足。社内コミュニケーションと健康向上、地域との共創を目的に、全社員参加型で活動をスタート。

 

(5)サステナビリティの推進
事業の信頼性を高め、持続的な社会に貢献することを目指す。
23年5月にサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)を特定。

 

◎最近の主な活動(詳細はコーポレートサイトに掲載
https://www.iwi.co.jp/

●全国山の日協議会スペシャルサポーター
ESG課題の取組みの一つとして、社員の環境意識の向上、同協議会が取り組む活動をともに盛り上げていく目的で特別賛助会員となる。
●沖縄県宮古島市でワーケーションの実証実験を開始
美しい自然景観に囲まれた宮古島にてワーケーションを実施。多様な働き方を推進し、社員のウェルビーイング実現、地域と接する機会創出による環境保全への意識の向上に努める。

●函館高専と連携協定を締結
同社のエンジニアが情報関連の授業の一部に参画し、学生のさらなる学習意欲の向上や教育内容の充実化を図る。
●「働きやすさ」と「自律的なキャリア形成」を支援する休暇制度の拡充
有給休暇の取得促進、育児休暇支援、介護休暇の有給化、自己啓発支援等。
●「障がい者アート」常設展示
障がいのあるアーティストが制作したアー ト作品を本社、函館事業所に多数展示。障がい者の経済的自立支援、多様性を尊重する意識醸成を図る。

 

●文書作成・自動生成の日本語を校正
ChatGPT等AIチャットボットにより自動生成された文章や金融機関等における特有な日本語表現をチェックする「AI日本語校正ツール」開発。
●地域の特産による地方創生を技術で支援
地域の特産物を画像データ化し、商品と紐づける技術を開発。地方の省人店舗にて活用予定。
●省電力電子ペーパーで持続可能な社会へ
電池で稼働するため、電力をほとんど消費しない電子ペーパーを提供。画像表示や切替えに係るデジタルITソリューションを開発。

 

●BCP
社会環境や事業内容の変化に対し、災害や緊急事態に備えたBCPの再構築プロジェクトをスタート。
●コンプライアンス
リスク管理委員会とサステナビリティ委員会の連携強化を図り、網羅的なリスクマネジメントを実行する。

 

4.今後の注目点

23/6期はクラウドサービスが牽引し大幅な増収となった。人的資本投資の増加を主因に販管費が増加して営業利益は小幅な増加にとどまった。ただし、その成果が24/6期には現れてくる見通し。2桁増収を維持しつつ、利益率を改善させて大幅な増益を見込んでいる。24/6期は中期事業計画の目標数値達成を目指す。大幅な増配を見込んでおり、目標達成への自信と受け止めたい。また、25/6期を初年度とする新たな中期事業計画を発表予定であり、注目したい。
クラウドサービスの成長は始まったばかり。受注も増加しており、今後も高成長を持続させるだろう。一方で、23/6期にやや苦戦したのがセキュリティであった。会社側は巻き返しを図り、24/6期は大幅増収を見込んでいる。ただし、これまでの受注は伸び悩んでおり、セキュリティの受注動向は注視したいところ。

 

<参考1:中期事業計画の進捗>

1-1 基本方針

次なる成長を目指すためのミッションは以下のとおり。

 

ミッション ビジネスリライアビリティの実現

 

ビジネスリライアビリティとは、顧客事業の信頼性および同社事業の信頼性を高め続けること(同社の造語)。
3年目の今期、改めてビジネスリライアビリティの実現に取り組んで行く。

 

クレジット決済システムの開発により成長してきたが、今後の成長を見据え、従来の決済、金融、セキュリティ分野にとどまらず、企業のビジネスリライアビリティを支える IT サービス会社になることを目指す。
クラウドを積極活用した高速・安全・高品質で利便性の高いIT基盤の提供により、「企業のビジネスリライアビリティを支えるITサービス会社」として同社事業の信頼性と顧客事業の信頼性を高め続けることで、持続可能な社会への貢献を目指す。

 

ビジネスライアビリティを支える「プロダクト開発」を強みとして、さまざまな顧客のニーズに寄り添い、システム開発、クラウドサービス、インフラ構築・サービス運用、コンサルティング・IT戦略支援など価値あるソリューション、サービスを提供する。
開発は強みではあるものの、保守や運用を含め全方位でソリューションを提供していくという意識改革を明確にするために、従来の「第一システム開発本部」を「第一システム本部」に名称変更した。

 

1-2 数値計画

 

 

22/6期 実績

23/6期 実績

24/6期 予想

25/6期 計画

CAGR

売上高

11,493

13,374

15,000

16,500

+12.8%

決済・金融

9,321

10,408

11,000

11,800

+8.2%

クラウドサービス

1,174

1,867

2,500

3,000

+36.7%

セキュリティ

998

1,098

1,500

1,700

+19.4%

営業利益

1,519

1,556

2,250

2,500

+18.1%

営業利益率

13.2%

11.6%

15.0%

15.2%

ストック比率

45.3%

49.0%

52.0%

53.9%

* 単位:百万円

 

クラウドサービスが強力な牽引役となる。23/6期に続き、24/6期も大幅な増収となる見通し。25/6期についても、クラウドサービス売上高30億円超も可能との考え。
ストック比率の上昇により、より安定した成長を目指す。

 

1-3 25/6期を初年度とする

新たな中期事業計画を発表へ

中期事業計画は例年ローリングされてきたが、24/6期の目標達成を目指すとともに、25/6期を初年度とする新たな中期事業計画を発表の見通し。

 

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役設置会社
取締役 6名、うち社外2名
監査役 5名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年12月20日)
基本的な考え方
当社は、「次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する」ことを経営理念に掲げており、それに則って、「高速、安全、高品質で利便性の高いIT基盤を提供する」事業を推進することによって企業価値を高め、社会に貢献することを経営方針に掲げています。
当社が開発するシステムは、社会にとって必要不可欠なインフラストラクチャー(IT基盤)であり、システムの安定性を必須の条件として、高速かつ安全に取引を完遂するために、高い水準の品質が求められています。当社は、多くの開発実績と安定的な運用実績を有しており、この実績によって顧客から得られる信頼が、当社の事業を支え、発展させる基盤になるものと考えています。
当社は、今後ともより多くの顧客に信頼されるIT基盤の提供を通じて、当社の事業基盤を拡大、発展させていくことで、当社のステークホルダーの期待に応えることを事業の方針にしています。
当社は、独立社外取締役、独立社外監査役を選任し、これら独立役員を主要な構成員とする指名・報酬委員会を取締役会の下に設置し、経営監督機能の強化を進めています。
また、当社の経営と事業の状況を理解するうえで有益な情報を公正かつ速やかに開示し、市場との対話を促進することで、経営の透明性を確保することを基本方針にしています。併せて、社員のコンプライアンス意識を高めるための教育を徹底し、総合的にコーポレート・ガバナンスの充実に努めています。
当社は、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の主旨に則り、環境、社会、ガバナンスに関する課題解決に自律的に取組むことで、当社事業の持続的な成長と、社会の持続可能な発展に貢献します。
当社は、これまでESG課題のうち、当社の従業員を対象にした人的資本の向上に係る取組みを中心に進めており、こうした活動を推進する体制の中心となる機関として、2021年4月にサステナビリティ委員会を設置しました。
サステナビリティ委員会は、代表取締役社長である佐藤邦光を委員長とし、常勤取締役を主な委員として構成しています。当社の企業行動基準が掲げる「社会への貢献」「良い企業風土の構築」「多様性の尊重」「地球環境への配慮」その他の実践に係る方針を定め、全社的な活動推進の継続性を確保するための基幹的な組織として活動しています。クレジットカード決済という、重要な社会インフラを担うシステム開発会社である当社にとって、人的資本である従業員等は最も重要な経営資源であり、その健康増進を進めることは、当社の中期的経営目標や経営理念の実現に極めて有益です。当社は、この基本的な考え方を、従業員等及びすべてのステークホルダーと共有することを目的に、健康経営宣言を策定し、健康増進に対する施策等を進め、2022年3月9日、経済産業省指定の「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定されました。当委員会及び事務局は、2022年より体制をさらに強化し、ESG経営の考えを社内に浸透させると同時にリスク分析、管理を進めるほか、当社の強みを生かした新たなソリューションの創出につなげ、社会に貢献します。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
注) 本報告書は、2021年6月改訂後のコードに基づいて記載しています。
【補充原則3-1③ TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実】
当社は、ESG課題への取組みの成果が、当社事業の持続可能性(サステナビリティ)を高め、企業価値を高めるものと考えています。当社が提供する製品やサービスは、いずれも社会にとっては必要不可欠な機能を担うインフラストラクチャー(IT基盤)です。
特に、当社の社員を対象にした人的資本の向上に係る取組みは、IT基盤の安定的な稼働を保証するだけでなく、単に事業上のリスク管理の枠を超えて、製品やサービスの品質向上にも大きな効果が期待できます。
当社の技術者がもつ技術と知見を最大限に活用して、それを成長させることが当社事業の継続性と成長性に最も重要な要素になります。
この考えのもと、当社は「働きやすさ」と「働きがい」を追求し、自分らしさが活かせる働き方を実現することを方針として、様々な取組みを進めています。社員が新しいことに挑戦し、会社と、社員自らが成長していくためには、自律的な働き方を支える環境づくりが不可欠だと考えています。
取組みの具体例については、当社ウェブサイト上に公開している『サステナビリティレポート 2021』
(https://www.iwi.co.jp/sustainability/sustainability-report/)を参照ください。
一方で、気候変動に係るリスクと収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について、当社は、必要なデータの収集と分析が未だ十分にできていないため、TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示はできません。
なお、2022年6月期において、主に電力使用に由来する当社の二酸化炭素の排出量は、約687t-CO2と推計されます(環境省『事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン』による)。当社は、気候変動に係るリスク及び収益機会、自社の事業等に与える影響について必要なデータ収集を行い、分析を進めており、TCFD等の枠組みに基づく開示について、質と量の充実を検討、開示に向けた準備を進めています。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4 政策保有株式】
<政策保有株式の縮減に関する方針・考え方>
当社は、当社の事業の拡大や関係強化を目的に政策保有株式として上場株式を保有していますが、随時に保有の適否を検証し、保有を継続することが当社及び発行会社の価値向上に貢献しないものと判断される株式については、保有を継続せず順次縮減する方針です。

 

< 政策保有株式の保有の適否の検証内容>
保有する株式については、四半期ごとに発行会社の経営状況を把握し、その将来性や当社事業との関連性を評価し、保有による中長期的な経済合理性について総合的に検証します。保有によるリスクとリターンは、資本コスト等の指標も用いてなるべく具体的に検証するよう努めます。また、保有株式を売却した場合、売却に至る検証の内容を可能な限り開示することとします。

 

< 政策保有株式に係る議決権行使の基準>
当社は、長期的に、当社の事業の拡大と双方の関係強化が見込まれることと、双方の企業価値の向上に資することを基本方針にして、保有株式の議決権行使を行います。また、こうした方針によって各議案についての検討を行うこととしています。
今後、政策保有の上場株式の銘柄数が著しく増加する等の事情が生じた場合は、別途議決権行使の基準を整える等の手段によって、行使の方針に沿った適切な対応をとる予定です。

 

【補充原則2-4① 多様性の確保について】
当社の社員数は事業規模の拡大に伴い5年前と比べ約1.3倍に増加しています。また、性別や国籍、年齢、障がいの有無などの属性の違いを活かし、付加価値を生み出していくため、多様な価値観を有する人材の採用を進めています。こうした多様化する社員に適合する職場環境や制度を構築することは、中長期的な成長のために必要不可欠です。
女性社員の活躍を推進するため、女性管理職、高度専門職の人数を2022年6月期の11名から2025年6月期には23名へ倍増することを目標に 様々な施策の強化に取り組んでいます。女性社員同士で互いに相談しやすい環境が必要である、という考えのもと、女性社員同士によるメンター制度として、「Intelligent Women’sWave」の活動を継続し、女性社員同士が相談できる環境整備に努めています。女性特有のライフイベント時にも将来のキャリア形成をイメージできるよう、先輩社員からのアドバイスや様々な社内制度の活用を促すことで、長期的なキャリア形成やスムーズな 育児休業からの職場復帰を支援しています。
また、海外事業を推進するチームには、若手社員を含め外国籍社員の積極的な登用をしています。彼ら彼女らが海外で培った経験や異なる価 値観から生まれる多様性を活かし、海外ビジネスへの新たなチャレンジを開始しました。 なお、管理職登用については、国籍や採用の形態を判断の基準にしていないため、外国人、中途採用者の管理職登用について、測定可能な目 標を定めていません。
2022年6月末時点で、中途採用者は213名、うち管理職は61名で、全社員に占める割合は、それぞれ47.4%、13.5%です。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
(方針)
当社は、株主、投資家のみなさまをはじめ、すべてのステークホルダーに対して、当社の経営方針、事業戦略や財務情報に関する情報を、(1)正確であること(2)公平であること(3)タイムリーであること(4)わかり易いことを原則として、情報発信を行っています。
また、開示資料、報告資料の英文翻訳を進めており、決算短信、四半期報告書、株主総会招集通知については、日本文による開示と同時に英語翻訳資料を開示しています。主要な適時開示資料についても、日本文資料に併せて英文資料を開示するほか、決算説明会資料も英訳し開示しています。機関投資家向け決算説明会を毎四半期実施しており、日本語と英語で作成された説明会の講演記録を開示しています。有価証券報告書については、翻訳作業に時間がかかるため、作業の完了後速やかに開示しています。
投資家の関心が高いESG課題への当社の取組みについても、日本語と英語による報告書を作成して、当社ウェブサイト等で開示しています。

 

(体制)
(1)当社は、IR業務を兼務する担当者を設置しています。IR活動を行うにあたっては、代表取締役も積極的に対話に臨み、建設的な対話を促進しています。
(具体例)
・個人投資家向けの説明会を定期的に開催
 大阪ほか地方都市で開催される個人投資家向け会社説明会への参加
・機関投資家向けの説明会を定期的に開催 
 四半期決算及び期末決算発表後の説明会の開催
・国内、海外機関投資家との個別面談を随時に実施
・海外で開催されるIRカンファレンスへ出席、現地の機関投資家と個別面談の実施
・情報開示の充実
事業報告書の発行、日/英サステナビリティレポートの制作、当社ウェブサイトを通じた情報開示
・四半期決算短信、決算短信のサマリー、決算説明資料を英文により開示

 

(2)株主等との対話の内容については、必要に応じ、IR担当者から代表取締役に報告することとしています。
(3)当社は、IRポリシーに則り適切な情報開示に努めるとともに、「インサイダー取引防止規程」に従い、インサイダー情報の管理、徹底を図り、漏洩防止に努めています。

 

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