すららネット(3998) 業績予想変更なし 独自のポジショニングを確立

2023/09/16
 

 

湯野川 孝彦 社長

株式会社すららネット(3998)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

情報・通信

代表取締役社長

湯野川 孝彦

所在地

東京都千代田区内神田1-14-10 PMO内神田7階

決算月

12月

HP

https://surala.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

622円

6,694,764株

4,164百万円

17.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00

39.83円

15.6倍

303.29円

2.1倍

*株価は8/24終値。発行済株式数、DPS、EPSは23年12月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年12月

1,141

64

65

43

6.94

0.00

2020年12月

1,649

540

548

379

59.67

0.00

2021年12月

1,952

521

552

399

60.09

0.00

2022年12月

2,147

475

501

355

53.10

0.00

2023年12月(予)

2,322

391

392

266

39.83

0.00

*予想は会社予想。単位:百万円、円。22年12月期から連結。

 

 

株式会社すららネットの会社概要、23年12月期第2四半期決算概要、今後の重点施策などをご紹介致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年12月期第2四半期決算概要
3.2023年12月期業績予想
4.今後の重点施策
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 「教育に変革を、子どもたちに生きる力を。」を企業理念とし、AIを活用したアダプティブなICT 教材「すらら」と「すららドリル」を、学校、学習塾等30万人を超す児童生徒に提供。発達障がい、不登校、経済的困窮世帯の児童生徒にも学習の機会を提供している。海外にも市場を拡げ、より多くの教育課題の解決を図ることで成長を追求している。 
  • 同社は、高度なデジタル化教材「すらら」により、偏差値30~60と幅広いレンジを対象に、競合のいない独自のポジショニングを確立している。また、「すらら」の開発・提供にとどまらず、学習塾・学校の経営課題・教務課題に対するソリューション提案と実現に向けたサポートを提供するコンサルテーション力が他社にはない大きな特徴である。最先端企業のAI機能の実装や膨大な学習データを蓄積したビッグデータの活用など、最新技術の導入も競争力の源泉となっている。 
  • 成熟化が進む学習塾市場では「AI」「アダプティブ」「オンライン」を武器に、複数分野で積極的なマーケット拡大を図る。学校の現場では導入した機器やソフトウェアの利活用が課題となっており、そのための提案を行うほか、サポート体制を強化する。高校を対象としたGIGAスクール構想を活用し、公立高校の開拓、新たな収益の柱の創出を図る。BtoC市場においては、発達障がい・学習障がい児や不登校の子ども達でも一から体系的に理解できる唯一のサービスという独自のポジショニングを強化し、社会課題の解決と成長を目指す。学力課題が大きい途上国、新興国においては教育ICT化を推進し、中長期的な成長を目指している。 
  • 23年12月期第2四半期の売上高は前期比1.8%減の10億43百万円。BtoCマーケットは増収も、学習塾マーケットは私塾市場の生徒数減少やEdTech教材の多様化等の影響により減収、学校マーケットもEdTech導入補助金終了の影響を受けて減収。営業利益は同39.2%減の1億83百万円。開発要員の増員及び開発投資にかかる減価償却費等の増加などの売上原価増加で売上総利益が同7.3%減少。人員増加に伴い販管費が同12.7%増加した。 
  • 業績予想に変更はない。23年12月期の売上高は前期比8.1%増の23億22百万円、営業利益は同17.7%減の3億91百万円の予想。eラーニング事業は、前期比7.1%増の22億12百万円の予想。学校、BtoCは増収、塾は減収の見込み。増収も、競合他社との差別化を強化するための開発投資やコンテンツやシステム開発要員の増加、現場での利活用課題の顕在化対応に伴うサポート要員の強化など競争力強化の投資のほか、新機能リリースによる運用・保守費用増加などで減益を見込んでいる。 
  • 上期進捗率は売上高45.0%、営業利益46.9%。売上高は例年に比べ低水準となっている。通期2桁の増収を見込んでいる学校マーケットだが、EdTech導入補助金終了により上期は減収であった。利用ID数は増加する中、GIGAスクール構想後の学校での利活用課題の顕在化を想定通り進めることができるかが、第3四半期以降のポイントとなろう。 

1.会社概要

「教育に変革を、子どもたちに生きる力を。」を企業理念とし、AIを活用したアダプティブなICT 教材「すらら」と「すららドリル」を、国内では 約 2,500校の学校、塾等30万人を超す児童生徒に提供。全国の公立学校、有名私立中高、大手塾での活用が広がる一方で、発達障がい、不登校、経済的困窮世帯の児童生徒に学習の機会を提供している。海外にも市場を拡げ、より多くの教育課題の解決を図ることで成長を追求している。

【1-1沿革】

2004年に株式会社C&I Holdings(旧株式会社ベンチャー・リンク)のグループ会社である株式会社キャッチオンで個別指導塾のフランチャイズ支援及び直営の運営を行っていた湯野川 孝彦氏(現 株式会社すららネット 代表取締役社長)は、生徒募集のマーケティングは順調な一方、特に成績の悪い生徒の学力向上に苦戦していたところ、2005年、同社において理想的なeラーニング教材の開発に取り組むこととした。
開発の過程で、学力の低い生徒の学力向上のための有効なソリューションが世の中にはまだ存在しないことに気が付いた同氏は、そうした生徒の学力向上は社会的な意義が大きいことに加え、大手企業が参入していないブルーオーシャン市場であることから本格的な事業展開を開始する。
2007年に学習塾・学校市場向けに「すらら」中学生版を販売開始。2008年に、eラーニングによる教育サービスの提供、運用支援、マーケティングプロモーション及びホームページの運営等を主な事業目的として株式会社すららネットが設立された。
同年「すらら」高校生版をリリースし、2010年には「すらら」学習者数は1万人を突破。
同じく2010年、株式会社C&I Holdingsから、全国の学習塾と学校向けeラーニング事業「すらら」を吸収分割契約で承継するとともに、株式会社C&I Holdingsの子会社である株式会社FCエデュケーションから湯野川孝彦氏が株式会社すららネットの全株式を譲受け、MBOを実施した。
その後、独立開業者及び家庭学習者向けに「すらら」の販売を開始(2011年、2012年)するほか、2013年には「アダプティブラーニング」機能で特許を取得した。
「すらら」のブラッシュアップを推進し、販売を拡大させるとともに、「すらら」の販売にとどまらず学習塾の開業・独立支援にもドメインを広げたことも成長の加速要因となり、売上・利益は順調に拡大。2017年に東証マザーズに上場した。2022年、市場再編に伴い東証グロース市場に移行。

 

【1-2 企業理念】

「教育に変革を、子どもたちに生きる力を。」を企業理念として掲げ、環境に左右されず、どのような子どもたちにも最適な「教育の機会」を提供することを目指している。

 

貧困や障がいに苦しむ子どもたち、低学力の生徒、世界中の教育格差という社会課題を、最先端技術で解決し、教育格差を根絶することが「すららネット」の使命であり戦略である。

 

【1-3 市場環境】

経済産業省の参考資料(平成30年1月)には、「我が国の(民間)教育産業の市場規模は毎年約2.5兆円前後。全体的に少子化の進行によって、市場は縮小傾向にある」「先進国の教育市場の成長率と比較すると、差が拡大しつつある状況」と記されている。先進国との比較については、「多くの先進国で教育産業の市場規模増加率はGDP増加率を上回り、特に米国、韓国はGDP増加率の約2倍の増加率。これに対し、日本の人口1人当たりの教育市場規模は先進国最低水準で、日本の人口1人当たりの市場規模増加率はGDP増加率より低く、差が開いている」と分析している。

(経済産業省 資料より)

 

一方、同資料では、旧態依然とした教育現場をテクノロジーの力で革新していくことを目指すビジネス領域であるEdTech(「Education(教育)」×「Technology(科学技術)」)の成長性にも言及しており、日本における先進事例を紹介している。

 

そして、競争力強化に向けた日本の教育の在り方の課題を認識しつつ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力をはぐくむための『社会に開かれた教育課程の実現』を目指し、学習指導要領等の改訂ポイントとして具体的に以下3点を挙げている。

 

*何ができるようになるか:新しい時代に必要となる資質・能力の育成と学習評価の充実
*何を学ぶか:新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し
*どのように学ぶか:主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善

 

こうした現状認識を受け、文部科学省は2020年に新学習指導要領「小学校」をスタートさせたのを皮切りに、2021年に「中学校」を、2022年には「高等学校」をスタートさせた。
また、教育のICT化に向けた環境整備5か年計画「GIGAスクール構想」では2020年度中に全国の小中学校に端末及びWiFiを整備したのに続き、対象を全国の高等学校に広げ2022年度から端末及びWiFiの整備を進めている。
加えて、経済産業省においても、EdTechツールを提供する「EdTech事業者」に対して同省が導入費用の一部を補助することで、学校側は ICT を活用した教育サービスを導入実証できる制度「EdTech導入補助金」、学び手自身が自らの学びを設計していく未来の学び「未来の教室」実証実験に取り組んでいる。

 

このように、日本の教育環境・教育市場はICTの積極的な導入による改革・成長を志向している。
特に、上記の「どのように学ぶか:主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善」にはICTが大きな役割を果たすと思われ、少子化が進む一方で日本のEdTech市場は今後も拡大基調が続くと予想される。

(同社資料より)

【1-4 事業内容】

(1)概要
事業セグメントは、eラーニング事業、受託開発事業、アプリ開発事業の3つ。
eラーニング事業において、主に小学生・中学生・高校生を対象に、オンライン学習教材「すらら」「すららドリル」等のサービス提供を行っているほか、サービスを導入する顧客に対して、サービスを活用した教育カリキュラムの提案や独立開業の各種支援、無料勉強会の定期開催等による各種経営支援サービス、他社とのコラボレーションによるコンテンツの提供等を行っている。
受託開発事業では、教育にかかるコンテンツ等受託開発及び関連する保守、メンテナンスサービスの提供を行っている。
アプリ開発事業では、ゲーミフィケーションを活かした学習コンテンツを自社開発し、Apple Store等よりダウンロードをして活用する知育アプリの提供を行っている。

 

*全社売上高・利益の9割以上をeラーニング事業が占め、受託開発及びアプリ開発の割合が僅少で、開示情報としての重要性が乏しいため、同社は開示資料などでセグメント毎の記載を省略している。

 

(2)eラーニング事業
①AI×アダプティブラーニング教材「すらら」
eラーニング事業の中核をなすAI×アダプティブラーニング(※)教材「すらら」の概要、強み・特徴は以下のとおりである。

 

※アダプティブラーニング
一人ひとりに最適な学習内容を提供して、より効率的に学習を進める方法のこと。きめ細かな教育指導が可能になり、学習者の理解度や興味などを考慮した、学習活動の充実にも繋がる。

 

◎概要
AI×アダプティブラーニング教材「すらら」は小学校から高校までの主要5科目(国語、算数/数学、英語、理科、社会)の学習を、先生役のアニメーションキャラクターと一緒に、一人一人の理解度に合わせて進めることができるアダプティブな eラーニング教材。独自の体系カリキュラムで「根本理解」と「基礎学力の定着」を図っている。

 

(同社資料より)

 

「すらら」は、以下5つの機能で構成されており、アダプティブラーニング教材としての特徴・優位性に結び付いている。

01 わかる! 初めて学ぶ分野でも理解できる対話型アニメーション講義(レクチャー)

 

*わかりやすさを最優先した、無学年式の独自体系学習で初めて学ぶ分野でも理解できる。

*アニメーション+著名声優による講義で、学習への興味関心を引き出す。

*先生が生徒をあてるようにクイズ形式で問題を提示するから飽きずに集中できる。

*再生、一時停止、巻き戻し、早送りが自在で自分の理解に合わせて学習ができる。

*一単元15分程度のユニットで構成。詰め込みすぎずスモールステップで学習できる。

*算数・数学のドリル学習では、途中式判定機能により、解法のプロセスが正しいか即座に確認可能。

02 できる! 自動で苦手なところに戻って学び直せる特許取得AI搭載ドリル

 

*難易度コントロール機能により生徒の理解度に合わせ自動的に問題の難易度が変化。

*つまずき分析機能(特許取得)により、苦手な箇所を自動的に判定し、過去に習った単元に遡り学習。

03 続く! モチベーションを向上させるゲーミフィケーション機能

 

*アチーブエッグ機能

学習状況をもとに、学習してほしいユニット箇所を提示したり、適度な学習量をクリアしたりするミッションを与え、ミッション達成に応じポイントを付与

 

*マイページ機能

アチーブエッグ機能で得られるポイントを利用し、アバターの設定、パートナー選び、パートナーの育成、着せ替え、アバターを通じた生徒同士の交流といったアクティビティが可能

04 使える! 実施直後に結果を診断する学力診断テスト

 

*テストの自動作問・自動採点×事前復習登録

テスト結果から1クリックで必要な単元のレクチャー・ドリルが学習可能

*テスト機能の活用により、一人ひとりの弱点に合わせた課題の出題が可能

05 見守る! 生徒一人ひとりにあったサポートを実現する学習管理機能

 

*学習目標の設定

いつまでに、どの範囲を学習すべきかを提示し、教科書対応表から学習範囲を選択

*学習の進捗管理

一人ひとりの学習状況を一元管理し、どの問題をどのように間違ったかまで深堀り

*コミュニケーション機能

児童・生徒からの質問を受けたり、一人ひとりに合わせた励ましのメッセージを送ったりすることができる

*リアルタイムモニター

リアルタイムで児童・生徒の学習状況を把握

*保護者用管理画面

保護者も子どもの学習状況を把握できる

 

レクチャー機能、ドリル機能、テスト機能により、一人一人の習熟度に応じて「理解→定着→活用」のサイクルを繰り返し、学習内容の定着をワンストップで実現する。
初めて学習する分野でも一人で学習を進めることができる特長を生かし、小・中・高校、学習塾をはじめ、放課後等デイサービス等においても活用が広がっている。

 

「すらら」をベースとした、「すららドリル」「ピタドリ」「Surala Ninja!」の提供も行っている。

「すららドリル」「ピタドリ」 アダプティブなドリルと自動作問・採点機能を有するテストからなり、「すらら」の姉妹版として「すららドリル」は主に公立小中学校向け、「ピタドリ」は大手塾向けに提供している。
Surala Ninja! 「すらら」の海外版として小学生向けに開発。インタラクティブなアニメーションを通じて加減乗除の四則計算を中心に算数を楽しく学べる eラーニング教材で、スリランカやインドネシア、エジプトやフィリピンでの学校等で利用されている。

 

◎強み・特徴
業界の中で先行して教材へのICT導入に取り組んできた同社の「すらら」は、多くの強み・特徴を持つが、特に、アダプティブラーニング機能を有し、学習者の状況に応じ個別最適化を図ることができる教材として、他社の商材を大きくリードしている。

(同社資料より)

 

②ビジネスモデル
◎顧客・導入先
「すらら」の提供先は、主に学習塾、学校、BtoC(個人学習者)の3つで構成されている。

導入先

概要

学習塾

 

学習塾の規模や形態などにより様々な形でサービスを提供している。

 

<独立開業型>

独立開業を目指す顧客に対し、「物件や資金調達、内装や生徒募集に関するサポート」「無料勉強会の定期開催による成功事例・塾経営ノウハウの共有」「販売促進チラシ等の無償提供」等、塾の開業や生徒募集まで塾経営自体の提案のほか、教育異業種の教育事業参入を支援する。

 

<ローカル中堅大手>

既存業態の変革プランや新塾業態の提案までを実施している。

 

<放課後等デイサービス>

発達障がいの子どもが通う福祉施設へ学習機会を提供している。

 

<異業種への教育支援>

ハウスメーカーなど異業種の教育産業参入を支援している。

学校

(法人顧客、自治体)

 

 

学力向上や生徒募集等の課題やテスト得点アップ等の目標に対して、「すらら」「すららドリル」の活用方法を提案している。

「すらら」を現場で活用した教育カリキュラムの提案や成功事例・各種ノウハウの提供等の経営支援、サービス教員のICT化教育や啓蒙も行っている。

BtoC 家庭学習者に対して「すらら」を提供している。

 

学習者には不登校、発達障がい、学習障がいなど、悩みの深い家庭が多数含まれており、保護者への包括的なサポートを目指し、「すららコーチ」による保護者向けコーチングや、保護者向け勉強ペアレント・トレーニング、心理・教育アセスメントサービスの提供を行っている。

また、不登校生がICT教材を活用することにより出席認定を得られる制度を活用するためのセミナーやアドバイス活動など、悩みの深い家庭の課題に寄り添い、包括的なサポートを行っている。

 

海外展開にも取り組んでいる。現在、インドネシア、スリランカ、エジプトの小学校に「すらら」の海外版「Surala Ninja!」を提供している。

 

◎収益
学校、学習塾、個人学習者からサービス利用料を収受している。

(同社資料より)

 

*学習塾・学校向け(BtoBtoC)の事業モデル
導入校に対して「すらら」を利用するための管理者用ID(先生ID)を発行し、導入校は導入校に通う生徒向けに生徒IDを発行している。生徒は通学・通塾する導入校を介して「すらら」を利用する。
導入校は「すらら」の各種機能を使って、生徒に対する受講フォローを実施するため、人件費・各種管理コストの発生を抑制することができる。

 

<学習塾>
サービスを契約した1校舎につき課金される月額「サービス利用料」と、導入校がすららシステムに登録した生徒ID1つにつき課金される月額「ID利用料」を主な収益としている。

 

<学校>
契約時に発生する「初期導入料」と、導入校がすららシステムに登録した生徒ID1つにつき課金される月額「ID利用料」を主な収益としている。

 

*個人学習者向け(BtoC)の事業モデル
個人学習者に対して「すらら」を利用するための生徒IDを発行。IDを持つ生徒には、同社と業務協力関係にある「すらら」導入塾の先生(すららコーチ)から、いつまでにどこまで学習するかといった「月1回の目標設定」や、つまずいているところがないか、「週1回程度の電話やメールでの進捗確認等の受講フォロー」が行われる。
生徒ID1つにつき課金される月額「ID利用料」を主な収益としている。また、導入塾の先生に対しては、受講フォロー業務委託料を支払うことにより、エンドユーザーの数が増える度に導入塾の収益も増えるという同社とWin-Winの関係となる事業モデルを構築している。

 

22年12月期の導入校数・ID数および売上高構成比は以下のとおり。今後は、GIGAスクール構想の進捗により学校の割合が上昇すると同社は考えている。

 

 

導入校数

ID数

学習塾

1,204

19,430

学校

1,191

328,882

海外

95

7,819

BtoC

4,161

合計

2,490

360,292

*2022年12月末。

 

(同社資料より)

 

③「すらら」導入効果
地方の公立スタンダード校における「未来の教室 実証事業」として、長野県坂城高等学校において英数国の主要3科目の授業に「すらら」を導入したところ、下記のように顕著な学習効果向上を実現した。

(同社資料より)

 

また、近年、教員の働き方改革も大きな課題となっているが、2020年12月に学校法人浪速学院(大阪府)の教員に対し実施したアンケートによれば、テストにかかる時間は従来の1/6に短縮されたほか、「すらら」を利用している教員の42%が「業務負担が減った/少し減った」と回答した。
「すらら」導入は、基礎学力習得の効率化を通じた教員の働き方改革の実現に加え、教員が、生徒の思考力・判断力・表現力の養成、学びに向かう力・人間性の育成に注力できる環境の提供にも貢献している。

(同社資料より)

 

④「すらら」の成長余地と今後の展開
「1-3 市場環境」で触れたように、少子化が進む一方で日本のEdTech市場は今後も拡大基調が続くと予想される。2022年12月末時点での「すらら」「ピタどり」の市場浸透率は、学習塾向けで2.3%(導入校数1,204校)、学校向けで3.5%(導入校数1,191校)であり、海外市場も含めて、成長余地は大きい。「すらら」「すららドリル」の主要KPIである導入校数、ID数も対前年で伸びてきており、今後が期待できる。

 

⑤アライアンスの積極展開
外部企業とのアライアンスを積極的に展開し、コンテンツ強化を図っている。

提携先

提携内容

概要

アイード株式会社 発音テスト新コンテンツ開発 レクチャー、ドリル、テスト機能により「読む」「聞く」「書く」の3つの技能の学習を提供してきた「すらら」英語に、AIが話者のスピーキングを診断し改善点フィードバックを行うアイード社のスピーキングAI「CHIVOX」を搭載することにより、「話す」を加えた英語4技能対応版「すらら」を開発・提供し、日本の英語教育に貢献する。
NECスペーステクノロジー株式会社 高校生向けの宇宙を題材とした探究学習教材「すららSatellyzer」の共同開発 「すららSatellyzer」はSDGs の実現にむけて宇宙技術を用いた解決策を検討するというもの。生徒たちが解決したいと考える社会課題をグループで協議し、人工衛星を使ってその解決案を模索する。 共同開発では、NEC スペーステクノロジーが保有する衛星等の宇宙技術に関連した知見と、「すらら」や「すららアクティブ・ラーニング」によって蓄積してきた、すららネットの効果的な探究学習内容の考案ノウハウや教材用ソフトウェア開発技術を融合する。
株式会社NTTドコモ 感情認識技術を活用した共同実証実験の実施 学習前の生徒に、学習内容とは無関係に「興奮」「興味」「喜び」の感情を持たせると、学習中の記憶力が有意に向上することを明らかにした。同効果の活用によって、学習前の生徒をより記憶力が高い状態に導くことによる学習効率の向上が期待できることから、感情に寄り添った学習指導・フォローによって学力向上を図るサービスの実現をめざす。
ファンタムスティック株式会社 子ども向け知育アプリや学習コンテンツを開発するファンタムスティック社の子会社化(2022年1月、議決権保有割合52.2%)) 教育機関に向けた受託開発分野における実績・技術力とデザイン分野での知見は、すららネットのサービスのより一層の強化・発展に繋がると考えている。また、国外でのユーザーの新規獲得や顧客基盤の拡大など相乗効果が期待できる。

 

ファンタムスティック社に関しては、すららネットの新規サービス開発への協力のほか、現在増大している受託開発の体制強化に伴う人員拡大、マーケティングとブランディング強化による既存アプリサービスのユーザー数増加、ゲーミフィケーションを活用した新規サービスのリリースなどを目指している。

 

【1-5 特長・強み】

(1)ポジショニング
同社は、高度なデジタル化教材「すらら」により、偏差値30~60と低学力層を含めた幅広いレンジを対象に、競合のいない独自のポジショニングを確立している。

(同社資料より)

 

(2)競争力の源泉
他社教材に対して大きなアドバンテージを有するAI×アダプティブラーニング「すらら」を開発・提供している点が、同社の競争優位性の主要因であるが、それにとどまらず、学習塾・学校の個々に異なる経営課題・教務課題に対するソリューション提案と実現に向けたサポートを提供するコンサルテーション力も他社にはない大きな特徴である。
また、特許取得済の機能を備える「すらら」に、AIチャットボット/AIスピーキング機能といった最先端企業のAI機能を実装しているほか、膨大な学習データを蓄積したビッグデータを活用し、教材の進化・深化に繋げており、こうした最新技術の導入も競争力の源泉となっている。

 

【1-6 ROE分析】

 

17/12期

18/12期

19/12期

20/12期

21/12期

22/12期

ROE(%)

14.8

17.8

5.1

34.9

26.7

17.5

売上高当期純利益率(%)

10.68

14.72

3.85

23.04

20.47

16.55

総資産回転率(回)

1.10

1.00

1.11

1.17

1.00

0.80

レバレッジ(倍)

1.26

1.21

1.19

1.29

1.30

1.32

*ROEは決算短信より。21/12期まで非連結。22/12期は連結。21/12期までは総資産回転率、レバレッジの計算において総資産、自己資本は期首・期末の平均値を使用。22/12期は連結決算への移行に伴い、期末の数値を使用。

 

ICT企業である同社のROEは高水準で推移しているが、収益性、資産効率性、レバレッジの各要素から更なる向上余地があるものと思われる。

 

【1-7 サステナビリティ】

「1-2企業理念」で触れたように、ICTによる「教育格差」という社会問題の解決を自社の社会的存在意義と認識するとともに事業機会と捉え、中長期的な成長に繋げていく。

(同社資料より)

 

社会:国内 一人ひとりの理解に応じて学習が進められるICT「すらら」により幅広い子どもへの学習機会を提供している。

 

*不登校の子どもへの在宅学習・進学機会の提供、文科省「出席扱い」に対応

*発達障がい・学習障がいの子どもへ個別最適化された学びを提供

*離島や山間部の複式学級に個別最適化された自立学習を提供

*NPOと連携し、相対的貧困層の子どもへ学習機会を提供

社会:海外 海外小学生向け算数eラーニング「Surala Ninja!」を、スリランカ、インドネシアなどの発展途上国で提供している。

 

*マイクロファイナンス組織女性銀行と、低所得層の家庭の子どもたちに向けた算数教室「Surala JUKU」を展開

*孤児やDVにあった子ども達などを受け入れているNGO「SOS子どもの村」へIDを無償提供

*現地女性をファシリテーター(講師)として積極的に活用することで雇用機会を創出

環境 *ICT教材の活用により、紙等の資源利用が減少

*業務効率化を随時推進。DX化により、印刷及び付随する資源にかかるコストを削減

ガバナンス *取締役5名(社外取締役3名)のうち、女性取締役1名

*執行役員4名のうち、女性役員が3名

*監査等委員会設置会社、コンプライアンス順守体制の充実に向け、定期的に全社研修を実施

 

同社では、自社の事業がどのような社会課題を解決し、どのような成果(アウトカム)を目指すかについてロジカルに見える化すべく、インパクト評価への取り組みをはじめ「インパクトマネジメントレポート」の発行を始めた。
同レポートでは、自社事業がもたらす社会的インパクトとして「不登校」「発達障がい・学習障がい」「貧困」「低学力」の4つの社会課題を取り上げ、それらに対し定性・定量の両側面から評価を試みている。
インパクト評価へのチャレンジは、ITベンチャー企業としては極めてユニークで新しい取り組みであると、同社では考えている。

インパクトマネジメントレポート 2022  https://surala.jp/img/ir/suralanet_impactreport2022.pdf

2.2023年12月期第2四半期決算概要

【2-1 連結業績概要】

 

22/12期2Q

構成比

23/12期2Q

構成比

前年同期比

売上高

1,062

100.0%

1,043

100.0%

-1.8%

売上総利益

782

73.6%

724

69.4%

-7.3%

販管費

480

45.2%

541

51.9%

+12.7%

営業利益

301

28.4%

183

17.6%

-39.2%

経常利益

311

29.3%

186

17.9%

-40.1%

四半期純利益

206

19.4%

135

13.0%

-34.3%

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益、以下同じ。

 

減収減益
売上高は前年同期比1.8%減の10億43百万円。BtoCマーケットは増収も、学習塾マーケットは私塾市場の生徒数減少やEdTech教材の多様化等の影響により減収、学校マーケットもEdTech導入補助金終了の影響を受けて減収。
営業利益は同39.2%減の1億83百万円。開発要員の増員及び開発投資にかかる減価償却費等の増加などの売上原価増加で売上総利益が同7.3%減少。人員増加に伴い販管費が同12.7%増加した。

【2-2 e-ラーニング事業 マーケット別動向】

(e-ラーニング事業 損益状況)

 

22/12期2Q

構成比

23/12期2Q

構成比

前年同期比

売上高

1,022

100.0%

1,006

100.0%

-1.6%

売上総利益

768

75.1%

716

71.2%

-6.7%

販管費

463

45.3%

505

50.2%

+9.2%

営業利益

305

29.8%

211

21.0%

-30.8%

経常利益

314

30.8%

214

21.3%

-31.9%

四半期純利益

214

21.0%

148

14.7%

-30.9%

*単位:百万円

 

(マーケット別売上高)

 

22/12期2Q

23/12期2Q

前年同期比

塾マーケット

339

307

-9.5%

学校マーケット

479

464

-3.2%

BtoCマーケット

194

219

+12.9%

*単位:百万円

 

(KPI動向)
*すらら・すららドリル導入校数

 

22/12期2Q

23/12期2Q

前年同期比

学習塾

1,229

1,182

-3.8%

学校

784

944

+20.4%

海外

55

95

+72.7%

合計

2,068

2,221

+7.4%

 

*すらら・すららドリルID数

 

22/12期2Q

23/12期2Q

前年同期比

学習塾

20,277

19,564

-3.5%

学校

224,808

237,827

+5.8%

海外

2,276

8,128

+257.1%

BtoC

3,864

4,349

+12.6%

合計

251,225

269,868

+7.4%

 

*すららネット公立学校の導入校数及びID数

 

22/12期2Q

23/12期2Q

前年同期比

公立学校

     

学校数

589

702

+19.2%

ID数

167,031

186,298

+11.5%

       

EdTech導入補助金

     

学校数

28

ID数

4,892

 

(1)塾マーケット
EdTech教材の多様化により、既存導入塾の通塾生徒数は減少傾向にあるが、オンラインの普及、Webマーケティングの改善で引き合いは堅調。放課後デイサービスへの普及は、堅調に伸びている。

 

(2)学校マーケット
EdTech導入補助金終了により減収。
一方、公立高校や自治体等これまで利用がなかった地域での活用が増え、利用ID数は増加した。
専門学校など高等教育機関での実用実績を基に営業販路が拡大している。

 

(3)BtoCマーケット
オンラインでの家庭学習は引き続き伸長している。
不登校市場の増加、出席扱い制度の普及活動に積極的に取り組み独自のポジショニングを確立している。
低学年層における先取学習利用者や海外子女の利用が増加している。

 

(4)海外マーケット
低所得層の中高生を対象とした、フィリピンでの学習支援プロジェクトに3年連続で参画した。
アジア開発銀行研究所(ADBI)との大型パイロット事業がインドネシアで順調に進行中である。
経済危機のスリランカで国際NGOを通じ800人の子どもたちに学習の機会を提供した。

 

【2-3 財政状態と

キャッシュ・フロー】

◎財政状態(連結)

 

22年12月末

23年6月末

増減

 

22年12月末

23年6月末

増減

流動資産

1,738

1,573

-164

流動負債

499

494

-4

現預金

1,333

1,300

-32

未払金

195

129

-66

売掛金

366

243

-122

固定負債

101

-101

固定資産

931

1,004

+72

負債合計

600

494

-106

無形固定資産

816

878

+62

純資産

2,068

2,083

+14

投資その他の資産

84

96

+11

利益剰余金

1,475

1,611

+135

資産合計

2,669

2,577

-91

負債純資産合計

2,669

2,577

-91

*単位:百万円。
23年6月末の自己資本比率は79.6%。

 

◎キャッシュ・フロー(連結)

 

22/12期2Q

23/12期2Q

増減

営業CF

448

388

-59

投資CF

-295

-203

+91

フリーCF

152

184

+32

財務CF

98

-217

-316

現金同等物残高

1,496

1,300

-195

*単位:百万円。

 

キャッシュポジションは低下した。

 

【2-4 トピックス】

(1)「すらら にほんご」を開発、4月よりリリース開始
23年4月、外国にルーツを持つ国内外の人たちが就労・留学・生活に必要なレベルの日本語を楽しみながら習得できる ICT 教材「すらら にほんご」を新たに開発し、4月より提供を開始した。

 

(開発の背景)
現在日本に在留する外国人は約296万人、外国人労働者数は約173万人と過去最高となっており、新たな在留資格として「特定技能」が創設され、日本における就労機会が増大した。また、「日本語教育の推進に関する法律」も施行された結果、国内の日本語教育環境の整備が進んでいくことが予想される。
一方、海外においても、日本語学習者数は増加しており、日本のアニメや文化に対する関心、ビジネスや就職にあたっての必要性など、学習の動機も多様化している。
このような状況下において、国内外の日本語教育は、日本語教師の人材不足や教務力のばらつき、充実した教材や教育機会の不足といった課題を抱えている。
日常会話ができない、学習活動に支障が生じているといった、日本語教育が必要とされる日本在住の外国人児童生徒は 5 万人を超えており、また、日本語指導に必要な受け入れ態勢が整備されている地方自治体は 52.6%で、このうち日本語指導で ICT を活用している自治体は3割のみで、7 割の自治体ではICTを活用していないのが実態である。

 

こうした環境下、同社はこれまでのコンテンツ開発のノウハウを活かし、誰でもどこでも、正しい日本語を体系的に楽しみながら学べる ICT 教材「すらら にほんご」を開発した。「すらら にほんご」は、自分のペースで日本語を学べ、日本での就労・留学・生活に必要な日本語の習得を実現する。第1弾として日本語能力試験(JLPT)のいちばんやさしいN5レベルからリリースを開始した。
開発においては、株式会社 JQC(東京都中央区)、1987年創立で長年の日本語教育の実績をもつ日本語教育専門校アルファ国際学院(東京都千代田区)の協力を得て、専門的知見に基づいたICT教材による日本語学習を可能にした。

 

(「すらら にほんご」の特長)
①日本語の知識ゼロの状態でも、文字・語彙・文法の基本から応用まで一貫した学習が可能
日本語能力試験に対応したコース設計で体系的に知識がつながるように構成されている。自然な会話を通して日本語文法を無理なく学習し、語彙と文法をセットで学習することで、使い方を覚えながら語彙を増やすことができることに加え、文字を書いて練習できるため、一貫した日本語学習が可能である。

 

②スモールステップで「わかった」を積み上げ
「1つ新しい知識を習得したらすぐにアウトプットする」というスモールステップの学習を繰り返すことで、確実に日本語の知識を定着させることができる。また、レクチャーの後に続く練習問題の量も多く、バラエティに富んでいるほか、時間を選ばず、自分の理解度に合わせて学習を進めることができる。また、自分のペースで理解度に合わせて進めることができるので、わからないまま学習を進めてしまうことを防ぐ。

 

③アニメのキャラクターによる正しい日本語でのレクチャー
アニメーションキャラクターによるレクチャー機能は、日本で活躍している声優のナレーションによる授業なので、聞き取りやすく、正しい日本語の発音に触れることができる。

 

④3か国語に対応した翻訳機能で学習者の母語が画面上に表示される
現時点では英語、インドネシア語、カンボジアのクメール語の3か国語に対応している。
画面上には、翻訳機能で母国語が表示されるほか、ドリル機能での学習時には、解説部分も一部母国語で表示されるので、安心して学習を進めることができる。
対応言語は今後状況に応じて増やしていくことも予定している。

 

⑤努力や到達度を可視化、ゲーミフィケーション要素でモチベーションを維持
学習時間や結果でランキングが出たり、学習到達度によって日本のデジタルアイテムを手に入れることができたりするなど、日本語学習に対するモチベーションを維持するためのゲーミフィケーション機能も搭載し、楽しみながら学習を継続できる。
また、学習者の進捗や学習到達度がわかりやすく表示される学習管理画面も搭載し、指導者は、生徒一人ひとりに合わせて適切なアドバイスをすることが可能である。

 

(今後の展開)同社では、「すらら にほんご」の開発により、海外では中等教育機関、送り出し機関など、国内では小中学校、日本語学校、特定技能の資格を持つ外国人を受け入れる企業等、日本語学習市場に参入し、新たなチャネルの開拓を図る。

 

日本語学習機会の需要は海外のみならず日本国内でも高まっているが、日本語教員不足や教育の質が社会問題にもなっている。経済や地域など様々な格差による教育格差をなくすため、事業で社会課題解決に取り組んでいる同社では、「すらら にほんご」を軌道に乗せることで、社会課題の解決につなげていく考えだ。

 

(2)探究学習ICT教材「すらら Satellyzerサテライザー」をリリース
23年4月、探究学習に必要な基礎スキルを活動の中で確実に身につけていく高校生向けの探究学習 ICT 教材「すらら Satellyzer」をリリースした。
同社では「すらら Satellyzer」について、NEC スペーステクノロジー株式会社(東京都府中市)と約 2 年前から共同開発に取り組んできた。宇宙というテーマを通じて、遠い世界と実生活とのつながりなど幅広い視野を持つ機会を生徒に提供する。

 

(開発の背景)
学習指導要領の変化に伴い、2022年度から高校生の必修科目の一つとなった「総合的な探究の時間」の授業について、すららネットの学校チームは学校現場での探究学習実践における課題について多くの相談を受けてきた。また、探究学習教材の開発の過程では、実際に学校でテストマーケティングを実施し、これらの経緯から、同社では、探究学習においては、生徒の「基礎的な探究スキル」が不足している点、「教師の業務負荷」が大きい点が課題であると考えた。

 

そこで同社では、探究学習を進めるにあたり生徒自身に必要な基礎的な探究スキルとして、
「テーマに対する基本知識(課題への興味関心)」
「自分の考えを言語化してまとめる(論理力、語彙力)」
「メンバーと議論し内容を詰めていく(コミュニケーション力、思考フレームワーク)」
の 3 点に着目し、「すらら Satellyzer」では、学習活動を行っていく中で、探究基礎スキルが自然に、確実に身につくプログラムとした。
また教師にとっても、「すらら Satellyzer」を利用することで授業の事前準備の手間を省くことができるほか、評価軸や評価方法の統一、探究学習で習得させるスキルの認識合わせなどが可能である。

 

(「すらら Satellyzer」の特長)
【特長①】ストーリーをなぞってゲーム感覚で進めるコンテンツ
「すらら Satellyzer」は、チームで学習に臨む。学習はユニットごとに進み、1 ユニットは 50 分で学習できる構成となっている。
全体の流れは、「基礎知識の習得」「ミッション選択(解決するべき課題を選び、知識を深める)」「課題解決を目指す」「振り返り」から成り、その過程で基礎的な探究スキルを身につけることができる。学習者は、提示される複数の社会問題の中から興味のあるものを選び、人工衛星や宇宙開発技術を活用して解決方法を考えていく。

 

【特長②】1単元を「レクチャー」「グループワーク」「自己・相互評価」で構成
アニメーションと音声による講義パートでは、基礎知識の説明やグループワークの指示を行う。講義には、インタラクティブ性を取り入れ、理解を深め集中力を保つ工夫を凝らしている。
グループワークでは、思考やアイデアをスムーズに発展・整理させるためのツールを用意し、調べ学習やディスカッションなどを進めることができ、このプロセスを通じて、グループワークの展開方法を学ぶことができる。
自己・相互評価は、評価画面の指示にそって入力し、自身での振り返りに加え、周囲からのフィードバックを得ることで、自分で気付き・改善する力(メタ認知能力)を習得することを目指す。

 

【特長③】授業進行、評価や成績付けなどあらゆる授業運用ツールで教師の業務を軽減
「すらら Satellyzer」は、探究学習運営における教師の業務負担軽減にも寄与する。
授業進行は「すらら satellyzer」に一任できるので、教師は生徒たちのファシリテート役に専念することができる。授業の進行マニュアルをみれば、生徒からの質問などにも対応ができ、事前準備の負担を軽減できる。
評価システムの装備や習得スキル一覧など、様々な授業運用ツールを用意することで、どの教師も均質な探究授業が可能となる。

 

(3)次世代の個別最適化機能をもつ学習プラットフォーム「Neo すらら」開発に着手
グループ会社のファンタムスティック株式会社と共同で、現在提供している「すらら」を大幅にリニューアルした「「Neo すらら」の開発に着手した。
新たなテクノロジーを取り入れ学びの個別最適化を更に進化させるとともに、新コンテンツの開発と最先端機能を搭載し、2025 年のリリースを目指す。
将来的には次世代の個別最適化機能を搭載した学習プラットフォームとして、あらゆる分野、世代、国籍の人々の学びの場を提供することを視野に入れている。

 

3.2023年12月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

22/12期

構成比

23/12期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

2,147

100.0%

2,322

100.0%

+8.1%

45.0%

うち、e-ラーニング事業

2,066

96.2%

2,212

95.3%

+7.1%

45.5%

営業利益

475

22.1%

391

16.8%

-17.7%

46.9%

うち、e-ラーニング事業

498

23.2%

430

18.5%

-13.7%

49.1%

経常利益

501

23.3%

392

16.9%

-21.7%

47.6%

当期純利益

355

16.5%

266

11.5%

-25.0%

51.0%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

業績予想に変更なし、増収減益を予想
業績予想に変更はない。売上高は前期比8.1%増の23億22百万円、営業利益は同17.7%減の3億91百万円の予想。
eラーニング事業は、前期比7.1%増の22億12百万円の予想。学校、BtoCは増収、塾は減収の見込み。
増収も、競合他社との差別化を強化するための開発投資やコンテンツやシステム開発要員の増加、現場での利活用課題の顕在化対応に伴うサポート要員の強化など競争力強化の投資のほか、新機能リリースによる運用・保守費用増加などで減益を見込んでいる。

 

【3-2 取り組み】

eラーニング事業における動向等は以下のとおり。
(分野別売上高)

 

22/12期

23/12期(予)

前期比

進捗率

学習塾

668

655

-1.9%

46.9%

学校

967

1,079

+11.6%

43.0%

BtoC

399

438

+9.8%

50.1%

eラーニング事業

2,066

2,212

+7.1%

45.5%

*単位:百万円

 

(KPI)

 

22/12期

23/12期(予)

前期比

進捗率

導入校数

2,490

2,323

-6.7%

95.6%

ID数

360,292

299,928

-16.8%

90.0%

 

EdTech導入補助金終了に伴い、学校マーケットの校舎数、生徒数は減少するが、GIGAスクール構想後の学校での利活用課題の顕在化に対応すべく、サポートを強化するために営業要員を増員し、学校マーケットにおいては10%以上の増収を目指す。塾、BtoC、海外マーケットは、順調に推移すると見ている。

 

4.今後の重点施策

「教育現場のICT化加速への対応」「ビッグデータの活用・最新技術の導入」「サステナビリティへの取り組み」を事業計画の基本方針とし、各マーケットにおいて以下のような重点施策に取り組む。

 

【4-1学習塾】

少子化傾向ではあるが市場規模は安定的に推移している。ただし、学習塾市場の「成熟化」が進行しており、本格的な「競争と淘汰」により学習塾は選別される時代にあると見ている。

 

こうした中、同社では「AI」「アダプティブ」「オンライン」を武器に、複数分野で積極的な事業拡大を図る。

 

従来の個別指導FC塾の問題点を解決した新業態で他分野への拡大を志向している独立開業に対しては、加盟金及びロイヤリティを0円とするほか、アルバイト講師の採用をゼロにすることで低コスト経営を支援する。個人の小規模開業、学童保育、英会話スクール、不登校児童向け等、様々な分野の塾を支援する。

 

大手塾も合併や統合も相次ぎ競争激化しており、差別化と生徒募集が課題のローカル中堅・大手に対しては、E-teエディターによるオリジナルドリルの提案や、アフターコロナと人口減少時代に適応する生徒募集マーケティングを支援するための戦略提案を行う。また、EdTechを使いこなせる組織への変革を支援する。

 

事業所・利用者が年々増加し競争が激化する中で、差別化が課題である放課後デイサービスに対しては、教科学習できる事業所への変革を支援するほか、ICTを活用するオペレーションの提案を中心とした運営のコンサルティングや、就労まで見据えた提案なども行う。

 

塾マーケットでの導入拡大に向け2023年4月にエリアマネジメント制度を改定した。

 

【4-2 学校】

小中学校を対象としたGIGAスクール構想については、学校の現場では導入した機器やソフトウェアの利活用が課題となっており、そのための提案を行うほか、サポート体制を強化する。

 

一方で、高校を対象としたGIGAスクール構想を活用し、公立高校の開拓、新たな収益の柱の創出を図る。
具体的には、コンテンツ対応とマーケティングに注力するほか、学習データの利活用に向けたeポータルとの連携と接続や、専門学校や通信制高校などの成長分野の事例化とマーケティングの推進を図る。現場での運用を徹底するノウハウ、学力や非認知能力の向上成果などにフォーカスする。また、「成績不振生徒向け学習」に加え、新しい教育観に対応するための個別対応力を強化する。

 

【4-3 BtoC】

学習障がいを含めた発達障がいは、約60万人、不登校は約24万人と言われている。加えて、コロナ禍で、在宅学習需要や海外在住日本人子女の利用も拡大するなど、BtoC市場の特性を捉え、社会の課題を解決することで事業の成長を図る。

 

発達障がい・学習障がい児や不登校の子ども達でも一から体系的に理解できる唯一のサービスという独自のポジショニングを強化する。
「すららコーチ」による保護者向けコーチング、保護者向け勉強ペアレント・トレーニング「ほめビリティ」、心理・教育アセスメントサービスなど、学習に悩みを持つ層に寄り添う包括的なサポートを提供する。

 

【4-4 海外】

人口増加に加え、若年層が高い比率で推移している一方、教育インフラが未整備で、教員の数・質に課題が大きい途上国、新興国の教育ICT化を推進し、中長期的な成長を目指す。

 

具体的には、コンテンツを拡充し、小学校に加え中学校もターゲットとする。
インドネシアにおいて100校の公立中学校での活用と成果創出に取り組む。
スリランカでは、BtoC事業の拡大および国際NGOとの連携強化を図る。
エジプトでは私立学校をターゲットにした事業化が本格的にスタートした。

 

【4-5 その他・全社】

*アライアンス
「1.会社概要」で触れたように、外部企業とのアライアンスを積極的に展開しており、現在も複数案件が進行中である。
「Neoすらら」の開発をはじめとして、子会社ファンタムスティック社とのシナジーの早期発現を目指す。

 

*開発
「2-4 トピックス」で紹介したように、探究学習、日本語コンテンツ等、新しい教育課題・教育観に対応するコンテンツやプラットホームの開発を進めている。
学習の個別最適化の進化に向けて、引き続き積極的な投資を行う。

 

5.今後の注目点

上期進捗率は売上高45.0%、営業利益46.9%。売上高は例年に比べ低水準となっている。通期2桁の増収を見込んでいる学校マーケットだが、EdTech導入補助金終了により上期は減収であった。利用ID数は増加する中、GIGAスクール構想後の学校での利活用課題の顕在化を想定通り進めることができるかが、第3四半期以降のポイントとなろう。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査等委員会設置会社
取締役 5名、うち社外3名(独立役員3名)
監査等委員 3名、うち社外3名(独立役員3名)

 

取締役の指名及び報酬の決定に関する手続の客観性及び透明性を一層高めることにより、コーポレート・ガバナンス体制をより一層充実させるため、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置している。取締役会の決議により選定された委員3名以上で構成し、その半数以上は独立社外取締役から選定する。

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2023年3月28日)
基本的な考え方
当社は、変化の激しい経営環境の中で、企業が継続的な成長・発展を遂げていくためには、経営の効率性と有効性を高めるとともに、公正で透明度の高い経営体制を構築していくことが不可欠であると考えており、コーポレート・ガバナンスの徹底は重要な課題と位置づけております。また、今後も社会環境の変化や法令等の施行に応じて、コーポレート・ガバナンスの実効性を高めるためリスク管理や監督機能の強化等を行う方針であります。

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