来週の金融市場見通し(2023年6月5日~2023年6月9日)

■来週の見通し

米国政府の借入金の限度を定めた債務上限の適用を2025年1月まで停止する法案が、米上下院で可決され、近く成立する見込みです。市場はある程度織り込んではいましたが、米国の債務不履行(デフォルト)回避を受け、投資家心理が上向きそうです。他方、米連邦準備理事会(FRB)が6月の会合で追加利上げに踏み切るかについては、市場の見方は一転二転していますが、足元では見送りが優勢です。来週は米ISM非製造業景況指数などを確認しながら、翌週の米利上げの有無を占うことになりそうです。

◆株価 :やや軟調な展開か

日本株は、やや軟調な展開が予想されます。日経平均株価は約33年ぶりの高水準で推移しており、高値警戒感が株価を圧迫する見通しです。また、米国の利上げをめぐる不透明感も株価の重しとなりそうです。ただ、米国株と比べた日本株の割安感などから、海外投資家による日本株への投資意欲は根強いとみられ、日本株の下落は限定的となりそうです。そうした中、2日に発表される米国の雇用統計を受けた市場の動きなどが注目されます。

◆長期金利 :翌週のFOMC待ち

長期金利は、米物価関連指標の上振れを受け、FRBの利上げ継続観測が強まり、米金利とともに一旦上昇したものの、FRB高官が利上げ見送りを示唆したことを受け、低下する動きになりました。米国の利上げの有無に振らされる状況が13、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで続きそうです。米債務上限問題への警戒が払しょくされ、逃避先である国債を買う動きが後退する中、長期金利の低下余地は限定的とみられます。

◆為替一進一退

ドル円は、方向感を欠く中、一進一退の展開が見込まれます。堅調な米景気を背景にインフレが高止まりしており、6月あるいは7月のFOMCにおいて追加利上げが実施される可能性があります。それを受け、ドル円は基本的には底堅い展開が続きそうです。一方で、6月の利上げは見送られるとの観測も出ていることから、ドル円の上値余地も限定的とみられ、ドル円は、米雇用統計の結果を確認しながら、一進一退の展開となりそうです。

◆Jリート :上値を探る

東証REIT指数は、1,880ポイントまで上昇しましたが、その後は上げ幅を縮小しました。もっとも、1,850ポイント割れの水準では値ごろ感からの買いも入り、底堅い地合いが続いています。米債務上限問題への警戒が大きく後退していることは安心材料です。経済再開への期待やインバウンド需要の増加も引き続き市場を下支えするとみられます。しばらくは、米金融政策をめぐる思わくに振らされながら、上値を探ることになりそうです。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(5月) 6月8日(木)午後2時発表

景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、4月に前月差1.3ポイント上昇の54.6となり、緩やかな景気回復基調を示しました。家計動向関連では小売関連などが上昇し、企業動向関連では非製造業が上昇しました。

5月の現状判断指数も、小幅な上昇が見込まれます。新型コロナウイルスによる影響が和らぐ中、家計動向関連の景気回復が見込まれるほか、部品不足の緩和などを受け、企業動向関連の持ち直し傾向が示される見込みです。ただ、物価高や海外景気の減速懸念などを踏まえると、現状判断指数は当面、緩やかな上昇にとどまりそうです。

ISM非製造業景況指数(5月) 6月5日(月)午後11時発表

米供給管理協会(ISM)が発表した4月の非製造業景況指数は、51.9と前月の51.2から改善し、米国のサービス分野の活動は拡大したものの、そのペースは緩やかなものとなりました。同指数は50が活動の拡大縮小の境目とされています。

高止まりが続いているインフレや米連邦準備理事会(FRB)によるこれまでの大幅な金融引締めを受けて、サービス需要は徐々に軟化しており、今後の個人消費の動向には不透明感が高まっています。5月の同指数は52.5程度を想定しています。

 

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