(2884)株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 増収 利益は原材料価格高騰で苦戦

2022/12/08

 

 

 

吉村 元久

代表取締役CEO

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

食料品(製造業)

代表取締役CEO

吉村 元久

所在地

東京都千代田区内幸町二丁目2番2号 富国生命ビル18階

決算月

2月

HP

http://y-food-h.com

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

479円

23,810,944株

11,405百万円

8.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

19.72円

24.3倍

265.39円

1.8倍

*株価は11/7終値。発行済株式数、DPS、EPSは23年2月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年2月(実)

23,716

354

420

263

12.04

0.00

2020年2月(実)

29,875

808

740

177

8.02

0.00

2021年2月(実)

29,289

523

787

417

18.59

0.00

2022年2月(実)

29,283

655

993

500

21.03

0.00

2023年2月(予)

30,526

835

783

468

19.72

0.00

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングスの2023年2月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年2月期第2四半期決算概要
3.2023年2月期業績予想
4.吉村CEOに聞く
5.今後の注目点
<参考1:成長戦略>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23年2月期第2四半期決算の売上高は前年同期比10.5%増の163億49百万円。国内・海外とも増収。国内事業はスーパー量販店向けが価格改定等の影響で苦戦も、産業給食向けは回復。今期グループ化した十二堂株式会社も寄与した。海外事業はコロナ規制緩和により大幅に回復傾向にある。営業利益は同54.8%減の1億93百万円。国内事業では、一部企業が原材料価格の高騰により苦戦した。十二堂が貢献し若干の減益。海外事業は、原材料価格や物流費等の高騰の影響を受け減益。経常利益は同28.1%増の7億47百万円。為替差益が同約3.5億円増加した。EBITDAは同15.1%減の7億42百万円。

     

  • 業績予想に変更は無い。23年2月期の売上高は前期比4.2%増の305億26百万円の予想。国内事業は、現状維持を前提とし、十二堂が新たに加わることで増収、海外事業は、緩やかな回復を見込んでいる。営業利益は同27.5%増の8億円の予想。国内事業は、価格改定及び生産効率化等による増益を、海外事業は、売上の回復による増益を見込んでいる。なお、新たなM&Aによる成長は含めていない。

     

  • 吉村CEOに、足元の状況と今後の対応、成長戦略の進捗、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。同社の中心戦略であるM&Aについて、これまでの過程で蓄積したノウハウを自身や関係者の頭の中に堪として留めておくのではなく、会社の資産として残すことで、他社には真似のできない強力な競争優位性を構築できると考えている。「しっかりとした基盤づくりを進め皆様のご期待に沿えるように売上・利益を拡大するとともに、ミッションである『いつまでも、この“おいしい”を楽しめる社会へ ~消費者が多様な食文化を享受できる豊かさの実現~』の実現を目指してまいりますので、引き続き応援していただきたいと思います」とのことだ。

     

  • 原材料価格の高騰、急速な円役の進行などで厳しい上期決算であった。円安もオーバーシュートではないかとの見方も出ているが、今後も不透明要因として認識せざるを得ず、第3四半期以降の収益動向を注視していきたい。

     

  • 一方、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻に伴う経済的苦境から、M&Aの案件は件数増加、大規模化に加え、優良な案件も増加しているとのことだ。同社も9月、11月で2件のM&A成立をリリースしており、追い風が吹いている。また、国分グループとのアライアンスも具体的な案件が動き出した。成長戦略の進捗がどのように売上・利益に寄与していくのか注目していきたい。

     

     

1.会社概要

優れた商品や技術力を有しながらも、事業承継など様々な問題を抱えている全国の中小食品企業をM&Aによりグループ化。中核スキルである「中小企業支援プラットフォーム」により問題を解決し、グループ各社を活性化することで、グループ全体の成長を図っている。投資ファンドや大企業に対する圧倒的な優位性、強固な参入障壁が強み。アライアンスによる成長加速を目指している。2022年10月末時点の主要グループ会社は25社。

 

【1-1 沿革】

大和證券株式会社、モルガン・スタンレー証券株式会社の事業法人部で上場企業の資金調達やM&Aなどを手掛けていた吉村氏は、ある時、経営難に陥っているが買い手の見つからない食品会社を紹介される。
元より、大和證券在籍中の米国MBA留学時から「食」を通じて日本がもっと高く評価されるべきだと強く感じていた吉村氏は、2008年3月、(株)ヨシムラ・フード・ホールディングスの前身となる(株)エルパートナーズを設立し、個人でこの食品会社を引受け、それまでに培ってきた経験やネットワークなどを活用して活性化に取り組んだところ、黒字化に成功。
この評判を聞き、多くの中小食品会社が支援を求めてきたところ、1社ごと個別に手掛けるのではなく、持株会社体制の下で、商品開発、製造、販売などの各機能を相互に補完することにより効率的に成果も上げることができると判断し、2009年8月、商号を(株)ヨシムラ・フード・ホールディングスとした。

 

以降も、事業承継問題を抱えたり、単独での経営に行き詰まったりした企業のグループ化を進めていく。大手食品会社や投資ファンドと競合しない独自のポジショニングや売却しないというポリシーが評価され、日本たばこ産業(JT)などから出資を受けるとともに、業容も拡大。2016年3月に東証マザーズに上場し、2017年3月には東証1部に市場変更した。2022年4月、プライム市場に移行。
日本企業のみでなく、シンガポール、マレーシアなど、海外企業のグループ化も進め、更なる成長を追求している。

 

【1-2 目指す社会像】

企業としての社会的存在意義を改めて『いつまでも、この“おいしい”を楽しめる社会へ ~消費者が多様な食文化を享受できる豊かさの実現~』をミッションとし、ビジョン(果たすべき役割)、バリューズ(大切にする価値観)を改めて示すこととした。

 

 

 

ミッション

いつまでも、この“おいしい”を楽しめる社会へ~消費者が多様な食文化を享受できる豊かさの実現~

*私たちは、人々が、多種多様な選択肢から自分の嗜好に合わせて自由に選択でき、それが尊重される社会こそ、豊かで幸せであると考えます。

*私たちは、世界中の消費者が、多種多様で高品質な“おいしい”を自由に選択し、それを楽しめる豊かな社会を目指してまいります。

ビジョン

地域の“おいしい”を守り、育て、世界へ

*私たちは、「いつまでもこの“おいしい”を楽しめる社会」を実現するため、日本および世界で大切にされてきた“おいしい”を見つけ、守り、育て、世界へと届けてまいります。

*そのために、私たち独自の“おいしい”を見つける目利き力、“おいしい”を守る事業基盤、“おいしい”を育てる支援機能、“おいしい”を世界へと届ける販売網を構築してまいります。

*その結果として、世界の食文化と多様化、地域社会の活性化を推進するグローバルプロデューサーとなります。

バリューズ

「あなた“らしさ”を大切にします」

*私たちは、私たちに関わる全ての方のあなた“らしさ”を大切にします。

*私たちは、私たちのグループで働く社員の“個性”、“新しい発想”、“チャレンジ精神”を大切にします。

*私たちは、私たちのグループ企業が持つ“歴史”、“文化”、“社員”、“取引先”、“地域社会”を大切にします。

*私たちは、私たちのグループ企業が持つ“強み”を伸ばし、“弱み”を補い合い、共に成長してまいります。

*私たちは、私たちに関わる全ての人の“らしさ”を大切にした結果、多様な選択肢のある豊かな社会づくりに貢献します。

 

【1-3 市場環境・設立の背景】

日本全国の中小企業の支援・活性化を目的として設立された同社は、中小食品企業を取り巻く状況について以下のように述べている。
(同社有価証券報告書、同社資料を基にインベストメントブリッジが抜粋・要約・編集)

 

(中小食品企業を取り巻く状況)
*日本食は世界的にも極めて高い評価を受け注目されている分野であると同時に、国内の食品産業は1990年代から一貫して事業所数、雇用者数、GDPの面から最大の業種であり、日本が誇る基幹産業。
*企業数の99%は中小企業で、それぞれが優れた商品や技術力を有している。
*しかし、少子高齢化等により国内の市場規模は縮小し続けており、一部の中小食品企業にとっては、単独での生き残りが難しい経営環境が続いている。
*そのため、多くの企業が事業継続をあきらめて廃業や事業停止を選択せざるを得ない状況となっている。

 

(中小企業の事業承継の状況)
*経営者の平均引退年齢は70歳前後となる中、経営者の平均年齢は60.1歳に達し、今後10年間で約50%の経営者が平均引退年齢を迎えることが予想される。
*そうした中、国内企業の3分の2にあたる65.1%が後継者不在となっており、現時点において事業承継を考えている企業は、全産業合計で34%にとどまるなど、事業承継の準備は進んでいない。
*加えて、2020年の中小企業の休業・廃業件数は49,698件と2007年の約21,000件から13年で急増している。
(中小企業庁「中小企業白書」(2021年版)、㈱帝国データバンク「全国社長年齢分析(2021年)」、㈱帝国データバンク全国「後継者不在企業」動向調査(2020年)、中小企業庁「中小企業実態基本調査」(令和元年確報(平成30年度決算実績))などより。

 

(中小食品企業における事業承継の受け皿の状況)
*中小食品企業における事業承継ニーズが高まる一方で、受け皿となる会社や組織は少ない。
*中小食品企業は大企業が受け皿となるには規模が小さいことが多く、また、投資ファンドは、単独での高い成長と数年以内の売却を主な目的としていることから、成熟市場にある中小食品企業は投資対象になりにくい。
*こうしたことから事業承継の担い手は圧倒的に不足している。

 

【1-4 事業内容】

同社グループは、ヨシムラ・フード・ホールディングスを持株会社として、22年10月末現在、グループ会社25社で構成されている。
ヨシムラ・フード・ホールディングスは、食品の製造および販売をおこなう中小企業の支援・活性化を目的とし、後継者難に直面している中小食品企業をM&Aでグループ化。グループ全社の経営戦略の立案・実行および経営管理をおこなうとともに、グループ会社に対し、セールス・マーケティング、生産管理、購買・物流、商品開発、品質管理、経営管理といった機能ごとに支援および統括を行っている。

 

①ビジネスモデル
同社は食品業界において独自のビジネスモデルを構築しており、2つのエンジンによって成長を追求している。

 

一つはM&Aを通じたグループ企業数の拡大による成長。
2008年の創業以来、同社が受け皿となることで、事業承継や経営難などの問題を抱える中小食品企業が廃業・事業停止に至ることを防ぎ、それらの問題を解決してきた。
2022年10月時点でグループ会社は25社まで拡大。近年は日本企業のみでなく海外企業のグループ化にも注力している。
案件のファインディング(発掘)は、M&A仲介会社、地銀を中心とした地方金融機関、弁護士、会計士からの紹介による「間接的アプローチ」が中心だったが、今後はスピードアップのため、ターゲットリストを作成して自らアプローチして関係を構築したり、アライアンス先である国分グループ本社のネットワークを活用したりする「直接的アプローチ」を強化し、より主体的、積極的に案件を発掘していく考えだ。

 

もう一つが、既存グループ会社の業容拡大による成長。
優れた製品や技術を持ちながらも、販路がない、人手が足りない、経営管理が不十分などの理由で成長できない企業に対し、「中小企業支援プラットフォーム」が各機能別に統括することで、課題を解決し各社の業容拡大を支援している。

 

(同社資料より)

 

 

「中小企業支援プラットフォームとは?」
この独自のビジネスモデルの核となるのが、同社が食品の製造・販売に特化して取り組んできた実績とノウハウの蓄積により構築した「中小企業支援プラットフォーム」だ。

 

持株会社として、グループ全社の経営戦略の立案・実行および経営管理をおこなう同社は、各グループ会社が行う業務(セールス・マーケティング、生産管理、購買・物流、商品開発、品質管理、経営管理、人材確保など)を、同社の統括責任者が会社の壁を超えて横断的に統括し、有機的に結び付けて経営を支援することで、各社経営基盤の強化を図っている。

 

例えば、優れた製品を持っているが売上が伸び悩んでいるA社には、全国的な販売網を有するB社の販路を利用したり、販売ノウハウを活用したりするといったことである。また、上場企業である同社の信用力を活用した資金調達力によって安定した資金繰りを実現している。
統括責任者にはグループ内で最もノウハウを有した人物が就くことにより、こうした連携をより効果的なものとしている。
このように、グループ全体で各グループ会社の優れた商品や技術、販路や製造ノウハウといった「強み」を共有し、人材・資金・販路不足といった「弱み」を補完する仕組みが「中小企業支援プラットフォーム」である。

 

「中小企業支援プラットフォーム」は、現在の体制においても有効に機能し効果をあげているが、今後さらに子会社が増加することにより、新たな強みとなるノウハウが加わりグループの経営資源もさらに蓄積され、それによって既存の子会社にとっても更に業績拡大の機会や生産効率化ノウハウの獲得などを図ることができるという新たなシナジーが生じることとなる。
こうしたプラットフォームの拡張性はヨシムラ・フード・ホールディングスの事業基盤をさらに強固なものとする。

 

(同社資料より)

 

②セグメント
主要なセグメントは、「製造事業セグメント」と「販売事業セグメント」の2つ。2023年2月期よりリース取引による賃貸料収入を計上する「その他事業」が加わった。

 

 

◎製造事業セグメント
それぞれの会社が独自の商品を開発、製造し、国内企業は主に卸売業者を通じて日本全国のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアへ販売し、海外企業は主にシンガポールおよびマレーシアのホテル、飲食店、スーパーマーケット等へ販売している。2022年10月末現在、グループ会社は以下の20社。株式会社丸太太兵衛小林製麺は2022年12月1日子会社化の予定。

 

(製造事業セグメント グループ会社)

会社名

特色

楽陽食品株式会社

(東京都足立区)

国内5カ所の工場で、チルドシウマイおよびチルド餃子を製造販売している。チルドシウマイの生産量は国内トップシェアである。

株式会社ダイショウ

(埼玉県比企郡ときがわ町)

ピーナッツバターのパイオニアであり。独自の製法により作られる「ピーナッツバタークリーミー」は1985年の販売開始以来続くロングセラー商品。

白石興産株式会社

(宮城県白石市)

1886年創業、宮城県白石市特産の白石温麺を主力商品とし、伝統的な製法により製造される乾麺等の製造販売をおこなっている。

株式会社桜顔酒造

(岩手県盛岡市)

1973年、岩手県の地場の10の酒蔵が結集して設立。日本最大の杜氏集団である「南部杜氏」の技により生み出された日本酒は、フルーティな味わいで高い評価。

株式会社オーブン

(愛媛県四国中央市)

供給量が限られた広島県産カキを調達する独自のルートをもち、かきフライを主力商品として、鶏なんこつのから揚げやささみフライ等を製造販売している。

株式会社雄北水産

(神奈川県足柄上郡大井町)

船上で捕獲直後にマイナス50度からマイナス60度で瞬間冷凍される船凍品のマグロ等を使用したねぎとろ、まぐろ切り落としを製造販売。

純和食品株式会社

(埼玉県熊谷市)

埼玉県HACCPを取得するなど、万全な生産管理体制を構築しており、ゼリーの製造においては新興企業ながら、大手GMSに評価されるなど、技術力と商品力には定評がある。

榮川酒造株式会社

(福島県耶麻郡磐梯町)

磐梯の名水を使用した、清らかで柔らかな味わいのある日本酒の製造・販売を行っている。

(株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングスの持ち分は19%)

株式会社エスケーフーズ

(埼玉県大里郡寄居町)

チルド・冷凍とんかつ等の製造販売を主力とし、顧客ニーズに対応する製品を生産している。また、商社等を介さず、直接仕入れ、直接販売もおこなっている。

株式会社ヤマニ野口水産

(北海道留萌市)

半世紀にわたり、北海道特産品である鮭とばや、にしん等を熟練工によって独自の製法により製造販売している。

JSTT SINGAPORE PTE.LTD.

(シンガポール)

シンガポールにおいて、空輸で運ばれた新鮮な日本産の魚介類等を使用し、寿司、巻物、おにぎり等の製造販売を行っている。

株式会社おむすびころりん本舗

(長野県安曇野市)

自社開発のフリーズドライ装置により、製菓原料、非常食等を製造している。「水もどり餅」は、スペースシャトル「エンデバー」に携行されたことで有名。

株式会社まるかわ食品

(静岡県磐田市)

浜松エリアにおける餃子の有名店。こだわりぬいた素材を創業以来秘伝のレシピにより餃子の製造・販売をおこなっている。

PACIFIC SORBY PTE. LTD.

(シンガポール)

シンガポールにおいて、チルド及び冷凍水産品の加工、卸売りをおこなっている。

株式会社森養魚場

(岐阜県大垣市)

養殖鮎の生産量は国内トップクラスであり、採卵・ふ化から育成・出荷まで安定的に生産できる独自のノウハウを蓄積している。また、雄雌を産み分ける技術も有している。

NKR CONTINENTAL PTE. LTD.

(シンガポール)

シンガポールおよび子会社のあるマレーシアにおいて、厨房機器の製造、輸入販売、設計施工、メンテナンスをおこなっている。

株式会社香り芽本舗

(島根県出雲市)

ソフトタイプのわかめふりかけ、ひじきふりかけ、わかめスープ、わかめ茶漬け等の自社商品からОEМ商品まで、高品質かつ多様なラインアップの商品を製造している。

十二堂株式会社

(福岡県太宰府市)

ソフトふりかけ「梅の実ひじき」等を製造、販売。全国に多くのファンを持ち根強い人気を誇る。

株式会社小田喜商店

(茨城県笠間市)

茨城県「岩間の栗」を中心とした製品の製造・販売を行っている。

株式会社細川食品

(香川県観音寺市)

国産野菜を使用したかき揚げ、チヂミなどの冷凍総菜や、赤飯などの冷凍米飯製品を製造している。

株式会社丸太太兵衛小林製麺

(北海道札幌市)

生麺(ラーメン)の製造・販売を中心に、餃子の皮の製造及びたれ等調味料の販売も行っている。

 

◎販売事業セグメント
販売力と企画力を強みとしており、国内企業は主に産業給食事業者、生活協同組合等へ、海外企業は主にスーパーマーケット、ホテル、飲食店等へ販売をおこなっている。2022年10月末現在、グループ会社は以下の3社。

 

(販売事業セグメント グループ会社)

会社名

特色

㈱ヨシムラ・フード

(埼玉県越谷市)

業務用食材の企画・販売を主とし、自社で物流機能を持たず、販売先へ直送するビジネスモデルを構築している。

㈱ジョイ・ダイニング・プロダクツ

(埼玉県越谷市)

冷凍食品の企画・販売をおこなっている。日本全国の生活協同組合に直接口座を有しており、それを活用してグループ商品の販売もおこなっている。

SIN HIN FROZEN FOOD PRIVATE LIMITED(シンガポール)

アジア各地の有力な水産会社から高品質かつ安心・安全な冷凍水産品および冷凍水産加工品を仕入れ販売している。

 

◎その他セグメント

会社名

特色

株式会社ONESTORY

(東京都港区)

イベントビジネス等を実施。地域に眠る「食」や「文化」等を再発掘・再編集し、プレミアムなコンテンツとしてプロデュースしている。

SHARIKAT NATIONAL FOOD

(シンガポール)

シンガポールにおいて食品工場兼食品用定温倉庫を所有し不動産賃貸業を行っている。

*株式会社ONESTORYは22年4月1日に子会社化

 

【1-5 特徴と強み】

①事業承継の受け皿としての優位性
M&Aにおける有力なプレーヤーは、大手食品会社や投資ファンドなどであるが、同社は主として以下の3点で確固たる競合優位性を有している。

 

*受け皿としての広範な受容力
同社ではグループ化した会社の売却を目的としておらず、短期的な業績回復を図るだけでなく、中長期的な視点から会社の持続的な成長の実現を目指している。そのため、事業規模が小さく成長に時間がかかる企業や、成長のための経営資源が不足しているような企業などを含め、幅広い中小企業の受け皿になることができる。
この点で、対象とする企業規模について一定のスケールが必要な大手食品会社、投資ファンドとの大きな差が生まれている。
また、売却してキャピタルゲインを得ることが目的の投資ファンドの場合、中小食品企業のオーナー経営者の信頼を得ることは容易ではなく、この点でも、中期的な視点で持続的成長を目指すグループ一体経営を実践している同社は大きなアドバンテージを有している。

 

*高度なM&A実行力
創業以来、中小の食品関連企業を多数グループ会社化し、その後の再成長を実現してきたため、食品業界の市場環境・商習慣、中小食品企業特有のリスク等を熟知しており、数ある中小企業の中から強みを持つ企業を選ぶ優れた目利き力を有する。
加えて、デューデリジェンスや交渉のノウハウ、知見の蓄積も豊富であり、M&Aの実行力は極めて高い。

 

*幅広いネットワークを通じた豊富かつ良質なM&A情報
都市銀行、地方銀行、信用金庫、証券会社などの金融機関や、M&Aアドバイザリー業務をおこなう企業等との幅広いネットワークを構築しており、豊富な中小食品企業のM&A情報を収集することができる。
また「食品業界に特化」「売却を目的としていない安心感」といった要因により、量のみでなく同社のニーズに則した質の高い情報を得ることもできている。

 

②中核スキル:中小企業支援プラットフォーム
グループ全体で各グループ会社の優れた商品や技術、販路や製造ノウハウといった「強み」を共有し、人材・資金・販路不足といった「弱み」を補完する仕組みである「中小企業支援プラットフォーム」によって、グループ会社の活性化を実現しており、その実績は高く評価されている。

 

③地域活性化への貢献
子会社の株式会社桜顔酒造(岩手県)、白石興産株式会社(宮城県)、株式会社オーブン(愛媛県)をはじめとした、地方の中小食品企業の事業承継等を積極的におこなってきた。
中小企業支援プラットフォームを活用することで、これまで地域を限定して販売されていた魅力ある商品を全国(および一部海外)に展開することや、グループの資金を活用して新たな設備投資を行うことが可能であり、これによって地方の中小食品企業の再成長と地方経済の活性化に貢献している。

 

【1-6 配当政策・株主優待制度】

(配当政策)
株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つと位置付けているが、現在は成長過程にあると考えているため、現金は設備投資等による積極的な事業展開およびプラットフォーム拡充による経営基盤の強化を図るための投資等に充当させることが、株主に対する最大の利益還元に繋がると考えている。
このため設立以来配当は実施しておらず、今後においても当面の間は、事業拡大のための投資および既存事業の必要運転資金とする方針である。将来的には、各事業年度の経営成績および財政状態を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針だ。

 

(株主優待制度)
保有株式数に応じて以下のような株主優待を実施している。

保有株式

優待回数

優待内容

300~499株

年1回(毎年2月末日現在の株主名簿に記載された株主)

800円相当の同社グループ製品を贈呈

500株~2,499株

年1回(毎年2月末日現在の株主名簿に記載された株主)

1,500円相当の同社グループ製品を贈呈

2,500株以上

年2回(毎年2月末日および8月31日現在の株主名簿に記載された株主)

それぞれ4,000円相当の同社グループ製品を贈呈

 

【1-7 ESG経営】

前述した目指す姿「いつまでも、この“おいしい”を楽しめる社会へ ~消費者が多様な食文化を享受できる豊かさの実現~」を基本理念として「ESG経営」に取り組んでいる。

 

項目

主な取り組み

E(環境)

環境に配慮した持続可能な製品製造•

*環境変化に依存しない、もしくは、環境に負荷をかけない持続可能な製品製造技術・ノウハウを保有

*限られた食料資源の有効活用や効率的な生産を実施

 

森養魚場:気候変動、河川の水質汚染等の影響により天然鮎が減少する中、独自技術にて養殖鮎を安定供給

ヤマニ野口水産:端材やサイズ不揃い品を用いた製品開発により食材ロス削減への貢献

雄北水産:原材料の有効活用により、ネギトロや中落ちを効率的に生産・販売

 

製造工程にて発生した産業廃棄物の再利用

*グループ各社:製造工程にて発生した廃棄物を地域の畜産業者などに提供することによる食品廃棄物の有効活用

 

消費電力削減

*グループ各社:工場の使用電力削減を目的とした、LED化、高効率ボイラーの採用などを順次実施

S(社会)

地域に強力なファンを抱える企業を引き受けることにより、事業の存続に貢献

 

地域社会における食の多様性への貢献

*地域の消費者から高いニーズがあり、こだわりを持った原材料・レシピによる製品開発を実施

 

香り芽本舗:地元中国地方のふりかけ市場にてトップクラスのシェア

まるかわ食品:鮮度抜群の豚肉や(主に)地場産キャベツを中心としたこだわりぬいた原料と秘伝のレシピ

おむすびころりん本舗:信州安曇野の立地条件とフリーズドライ技術を生かした地域の特産品開発

榮川酒造:地域が誇る日本名水百選に選定された「龍ヶ沢湧水」を使用した清酒造り

ダイショウ:保存料、着色料不使用。なめらかな食感と飽きのこない味

オーブン:広島の清浄海域、条件付清浄海域に限定したカキの仕入れ

 

*学生等へ昼食の無償支援プロジェクト参画(おむすびころりん本舗)や小学生向け社会見学の場として開放およびプレゼントの提供(森養魚場・純和食品)

 

従業員の多様性

*グループ各社:女性の活躍の場を整備、障害者、外国人の登用など各種取組みを実施

G(ガバナンス)

中小企業支援プラットフォームによる支援

*グループ会社の自律性を担保しつつ、状況に合わせた事業計画立案や進捗管理への関与

*機能別の統括部署を設置し、グループとして事業支援や各種進捗管理などを実施

 

経営リソースのサポート

*グループ会社の資金調達や次世代経営者の育成により、グループ会社経営を支援

 

同社では、後継者不在企業を譲り受け、グループ化して活性化する事業はESG経営そのものと認識している。
また、ESG経営の推進により地域社会への貢献や消費者への価値提供を進め、同社グループに共鳴して参画を希望する優良企業や同社グループに共感して株主として支援する企業・消費者を増やすことが、持続的な成長の実現に繋がると考えている。

 

(同社資料より)

 

2.2023年2月期第2四半期決算概要

【2-1 連結業績概要】

 

22/2期2Q

構成比

23/2期2Q

構成比

前年同期比

売上高

14,790

100.0%

16,349

100.0%

+10.5%

売上総利益

3,310

22.4%

3,216

19.7%

-2.8%

販管費

2,882

19.5%

3,023

18.5%

+4.9%

営業利益

428

2.9%

193

1.2%

-54.8%

経常利益

583

3.9%

747

4.6%

+28.1%

四半期純利益

338

2.3%

406

2.5%

+20.1%

EBITDA

873

5.9%

742

4.5%

-15.1%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。EBITDAは営業利益に償却費(減価償却、のれん)、コロナ関連補助金収入およびM&Aにかかる取得費用を加算して算出。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
費用項目の▲は費用の増加を示す。

 

増収、営業減益
売上高は前年同期比10.5%増の163億49百万円。国内・海外とも増収。国内事業はスーパー量販店向けが価格改定等の影響で苦戦も、産業給食向けは回復。今期グループ化した十二堂株式会社も寄与した。海外事業はコロナ規制緩和により大幅に回復傾向にある。
営業利益は同54.8%減の1億93百万円。国内事業では、一部企業が原材料価格の高騰により苦戦した。十二堂が貢献し若干の減益。海外事業は、原材料価格や物流費等の高騰の影響を受け減益。
経常利益は同28.1%増の7億47百万円。為替差益が同約3.5億円増加した。
EBITDAは同15.1%減の7億42百万円。

 

【2-2 セグメント動向】

 

22/2期2Q

構成比

23/2期2Q

構成比

前年同期比

売上高

 

 

 

 

 

 製造事業

11,064

74.8%

12,098

74.0%

+9.3%

 販売事業

3,725

25.2%

4,143

25.3%

+11.2%

 その他事業

107

0.7%

 合計

14,790

100.0%

16,349

100.0%

+10.5%

営業利益

 

 

 

 

 

 製造事業

463

4.2%

371

3.1%

-19.9%

 販売事業

212

5.7%

173

4.2%

-18.5%

 その他事業

-77

 調整額

-247

-273

 合計

428

2.9%

193

1.2%

-54.8%

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

*製造事業セグメント
増収減益。
国内製造子会社は、スーパー等小売店向けの売上が苦戦に転じたものの、十二堂株式会社をグループ化したことによる増加要因に加え、生産効率化や物流費をはじめとした費用の削減等を推進した結果、増収増益。
海外製造子会社は、新型コロナウイルス感染症による社会経済活動の規制が緩和されたことでホテルや飲食店向けの売上が回復に転じた一方で、原材料価格等の高騰の影響を受け増収減益。

 

*販売事業セグメント
増収減益。
国内販売子会社は、産業給食向けの売上が回復したことに加え、引き続き生協向けの売上が好調に推移し増収増益。
海外販売子会社は、売上は回復傾向にあるものの、一部原料価格が上昇したため増収減益。

 

【2-3 財務状態とキャッシュ・フロー】

◎主要BS

 

22年2月末

22年8月末

増減

 

22年2月末

22年8月末

増減

流動資産

12,545

14,877

+2,331

流動負債

6,367

7,612

+1,244

 現預金

3,293

3,881

+588

 仕入債務

2,338

2,658

+319

 売上債権

4,347

4,943

+596

 短期有利子負債

2,208

2,882

+674

 たな卸資産

4,503

5,229

+725

固定負債

9,060

9,824

+763

固定資産

11,197

12,053

+855

 長期有利子負債

8,354

9,002

+647

 有形固定資産

5,672

6,148

+476

負債

15,428

17,436

+2,007

 無形固定資産

4,160

4,569

+409

純資産

8,314

9,494

+1,179

 投資その他の資産

1,365

1,335

-30

 利益剰余金

3,115

3,552

+406

資産合計

23,743

26,930

+3,187

負債純資産合計

23,743

26,930

+3,187

 

 

 

 

有利子負債合計

10,562

11,884

+1,321

*単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料をもとに作成。

 

現預金、売上債権、たな卸資産が増加し、資産合計は前期末比31億円増加の269億円。
有利子負債の増加等で負債合計は同20億円増加の174億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同11億円増加の94億円。
自己資本比率は前期より0.2ポイント上昇し26.8%。

 

◎キャッシュ・フロー

 

22/2期2Q

23/2期2Q

増減

営業CF

964

-8

-973

投資CF

-309

-459

-149

フリーCF

655

-467

-1,123

財務CF

-1,129

913

2,043

現金同等物残高

4,162

3,419

-743

*単位:百万円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料をもとに作成。

 

営業CF、フリーCFはマイナスに転じた。
キャッシュポジションは低下した。

 

【2-4 トピックス】

(1)株式会社細川食品及び有限会社細川フーズを子会社化
22年9月、国産野菜を使用したかき揚げ、チヂミなどの冷凍総菜や、赤飯などの冷凍米飯製品の製造、野菜加工や野菜原体の販売等を行っている株式会社細川食品及び有限会社細川フーズの株式を取得し、子会社化した。

 

(株式会社細川食品及び有限会社細川フーズ概要)
株式会社細川食品は1963年4月、有限会社細川フーズは2004年9月設立。
株式会社細川食品は香川県三豊市に工場を構え、国産野菜を使用したかき揚げ、チヂミなどの冷凍総菜や、赤飯などの冷凍米飯製品を製造する企業。
同社の主な強みは、「安定した仕入れルート」「技術力」「販売ルート」の3つ。

 

「安定した仕入れルート」
野菜の仕入先である観音寺地方卸売市場とは長年の付き合いがあり、株式を36%保有することで深い関係を築いている。市場は本社及び工場の近くに位置するため、新鮮な国産野菜を仕入れることができ、工場内に野菜加工棟を保有しているため、鮮度を維持した状態での製造が可能。

 

「技術力」
長年にわたり培われてきた高度な製造技術により、野菜本来のおいしさを活かした安定した形状のかき揚げを製造することができる。また、蒸しかき揚げラインを保有し、継続的に既存顧客からの安定した受注を獲得している。

 

「販売ルート」
製品の品質の高さが評価され、テーブルマークをはじめとした大手食品メーカーのPB商品の製造受託をおこなっている。

 

(子会社化の目的)
細川食品が持つ高い商品力、良質な野菜を安定して仕入れることのできる調達力、蒸しかき揚げ製造ラインをはじめとした高度な製造技術・製造設備、それらがもたらす安定した事業基盤に魅力を感じ、株式を取得することとした。
ヨシムラ・フード・ホールディングスのグループ企業であり、愛媛県四国中央市で冷凍カキフライ等を製造する株式会社オーブンは、以前より細川食品が製造する冷凍かき揚げを仕入れている。今後は、株式会社オーブン及び同社グループの販路を活用した売上の増加、及び同社グループが持つ製造効率化ノウハウを活用するなどして、細川食品が持つ強みを活かしながら、ヨシムラ・フード・ホールディングスが持つ経営ノウハウの共有や中小企業支援プラットフォームによる支援体制を構築し、両社のより一層の成長を目指す。なお、今回の株式取得に必要となる資金は、銀行借入により賄う予定である。

 

(2)株式会社丸太太兵衛小林製麺を子会社化
22年11月、生麺(ラーメン)の製造・販売を主な事業内容とし、餃子の皮の製造及びたれ等調味料の販売も行う株式会社丸太太兵衛小林製麺の株式を取得し子会社化すると発表した。
株式取得は2022年12月1日の予定。

 

(株式会社丸太太兵衛小林製麺概要)
1982年3月設立。北海道札幌市に本社及び工場を構え、生麺(ラーメン)の製造・販売を主な事業内容としており、餃子の皮の製造及びたれ等調味料の販売も一部行っている。
主な販売先は北海道内外のラーメン店であり、行列の絶えない人気店において麺の採用がされる等、北海道内外のラーメン業界で一定の知名度を有している。

 

同社の主な強みは、「技術力と製麺ノウハウ」「ブランド力」「整備された工場ライン」の3つ。

 

「技術力と製麺ノウハウ」
長年にわたり培われてきた高度な製造技術により、特徴のある製品を作り上げており、味と品質にこだわった姿勢は既存得意先から高い支持を得ており、競合他社と比較して優位性を確立している。
得意先からの要望に応じて、特注麺の製造も行う等、付加価値のある商品を製造することで安定的な利益率を維持している。

 

「ブランド力」
高品質で味にこだわった麺の製造を行うことから、北海道のラーメン業界において一定の知名度を有している。同社の名前はブランドになっており、得意先ラーメン店ののれんに同社の社名が載せられることもある。ラーメン店ののれんは一度作ると変えにくいことや、スープに続く主役ともいえる麺の変更によりラーメンの味が変わってしまうことから、既存顧客との関係性は深く、安定的な継続取引に繋がっている。

 

「整備された工場ライン」
工場内は衛生管理が徹底され、生産キャパシティは余裕がある。

 

(子会社化の目的)
丸太太兵衛小林製麺が作り上げてきた独自のビジネスモデル、特徴のある製品を作り上げる高度な製造技術とノウハウ、北海道で長年築き上げてきた小林製麺ブランドとその高い知名度に魅力を感じ、株式を取得することとした。
丸太太兵衛小林製麺が持つ強みを活かしながら、ヨシムラ・フード・ホールディングスが持つ経営ノウハウや中小企業支援プラットフォームを活用し、グループの食品メーカー各社との相乗効果を生み出すことで、両社のより一層の成長を目指す。
特に、近隣に位置する楽陽食品株式会社(北海道工場)との協業による、仕入先・販売先の共有や共同での商品開発は大きなシナジーを生み出すと考えている。
なお、今回の株式取得に必要となる資金は、銀行借入により賄う予定である。

 

3.2023年2月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

22/2期

構成比

23/2期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

29,283

100.0%

30,526

100.0%

+4.2%

53.6%

営業利益

655

2.2%

835

2.7%

+27.5%

23.2%

経常利益

993

3.4%

783

2.6%

-21.2%

95.5%

当期純利益

500

1.7%

468

1.5%

-6.2%

87.0%

EBITDA

1,577

5.4%

1,660

5.4%

+5.3%

44.7%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。EBITDAは営業利益に償却費(減価償却費、のれん)およびM&Aにかかる取得費用を加算して算出。

 

業績予想に変更なし、増収、営業増益
業績予想に変更は無い。売上高は前期比4.2%増の305億26百万円の予想。
国内事業は、現状維持を前提とし、十二堂が新たに加わることで増収、海外事業は、緩やかな回復を見込んでいる。
営業利益は同27.5%増の8億35百万円の予想。
国内事業は、価格改定及び生産効率化等による増益を、海外事業は、売上の回復による増益を見込んでいる。
なお、新たなM&Aによる成長は含めていない。

 

【3-2 原材料価格高騰及び為替の影響について】

グローバルなサプライチェーンの混乱や天候不順、エネルギーコストの上昇により、食品原材料価格が世界中で高騰している。グループ各社では価格改定(値上げ)及び規格改定(内容量変更)を順次実施しているが、為替相場の変動により円安がさらに進行する中、さらなる対応が必要な状況である。同時に、より一層の製造合理化、コスト削減を実施することで、利益率の維持・向上を図る。

 

また、為替相場が大きく変動しており、主に同社からシンガポール子会社に対する貸付金等の評価額が変動し、為替差益、もしくは為替差損が発生する可能性がある。シンガポールにおける事業を今後も継続するため、為替予約等によるヘッジは行わない方針である。

4.吉村CEOに聞く

吉村CEOに、足元の状況と今後の対応、成長戦略の進捗、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

◎足元の状況と今後の対応
海外から原材料を輸入して、国内で加工し、国内で販売するというのが当社売上の大半を占めます。そうした中で、原材料価格が大幅に上昇しましたが、販売価格には転嫁するのは容易ではありません。加えて、想定以上に急激に円安が進行しました。この2点が大幅な営業減益の主要因です。

 

こうした状況に対しては、価格改定、規格改定、より一層の製造合理化、全般的なコスト削減などやるべきことは明確ですので、それぞれ可能な限り取り組んで行きます。
価格改定については、やはり競争力のある商品は値上げも可能です。また、世間一般値上げの動きとなっていますので、ある意味いいチャンスでもあるかと考えています。
商品の特性や競争力を見極めて、きめ細かい対応を進めていきます。

 

コロナの影響はまだ残っていますが、これは時間の経過とともに薄れていくと思います。一方でロシアのウクライナ侵攻に伴う物流費、エネルギー価格等の上昇はまだ先行きが不透明であり、これらの対応に加え、新販路の開拓などにこれまで以上に注力する必要があると考えています。

 

◎成長戦略の進捗
当社では成長戦略として、「戦略①:M&A強化」「戦略②:事業モデルの再強化」「戦略③:提携先との協業および不足する機能の内製化」「戦略④:海外販路強化」を掲げています。

 

「戦略①:M&A強化」
既存のグループ会社の収益性を向上させるという面では現在の環境はネガティブと言わざるを得ませんが、新たなM&Aの実行という面では、この半年間を見ると過去にないくらい案件数が増加しています。
やはりコロナに続いてウクライナ問題というこの苦境で、年齢面や後継者不在といった要因もあり、心が折れてしまったオーナー経営者が増えています。
ただ一方で、非常に良い会社、優良案件が増えています。これもコロナ前とは大きな違いです。
加えて、規模の面でも大きな案件が増加しています。小粒で優良な案件はもちろんありますが、現在の30社弱のグループ会社の中でも最大クラスの売上規模の企業の売却案件が出てくるなど、M&Aの世界は極めて活況を呈しています。

 

「戦略②:事業モデルの再強化」
社内での人材育成も重要と認識はしていますが、必ずしも適材がいるとは限らないこと、育成に時間がかかることから、引き続き専門性を持った優秀な人材の採用を行っています。
多方面で若くてキャリアを有し、前向きなエネルギーを持っている人を採用することで各グループ会社の状況も変化が生まれています。

 

一方で、各社責任者の意識改革はなかなか難しいと感じています。
各グループ会社の数値管理及びその責任の所在が曖昧で、事業会社の経営陣も、それを支援するホールディングスの担当者も、目標数値が達成できなかった際にエクスキューズできる余地が残っていましたので、昨年、数値責任の所在を明確にした組織に変更しました。また、同時に業績連動報酬制度も導入し、業績への貢献度合いに応じて報酬が変動する仕組みを取り入れました。
ただ、意識の変革は私が期待したスピードでは進んでおらず、繰り返し繰り返しメッセージを送るとともに、人事にも手を付ける必要があるとも考えています。

 

「戦略③:提携先との協業および不足する機能の内製化」
資本業務提携を結んでいる国分グループとの協業も着実に進展しています。
当社としては国分の強力な販路や商品開発力が大きな魅力なのですが、第1弾として、今春、鮎の養殖を行っている森養魚場が国分と共同で鮎の缶詰を製造し販売を開始しました。
また、国分の営業において、白石興産の乾麺をノベルティとして使ってもらうなど、具体的な動きが出始めています。

 

バリューチェーンごとに最適なパートナーを確保することを目的に、マーケティング分野のピースとしてM&AしたのがONESTORYです。形はできましたので、中身をブラッシュアップしてグループシナジーの発現とバリューチェーンの強化を目指していきます。

 

「戦略④:海外販路強化」
コロナ禍によるシンガポールのロックダウンが厳しかったこともあり、残念ながら大きな進展は見られません。
ただ、お隣のマレーシアでお客様とミーティングしたところ、有名外食チェーンは今後数年でダイナミックな新規店舗出店を計画しているとのことで、当社としても大きなビジネスチャンスがあるということが確認できました。
準備を進めていこうと考えています。

 

 

◎M&Aにおける入口の重要性ついて
当社ではこれまで多数のM&Aを手掛けてきました。その中で、改めて確認できたのは、「入口」が重要ということです。
多くの案件の中には、想定以上に良くなった会社もあれば、思ったほどではなかった案件もあります。
ただ確かに言えることは「良い会社」だと確信できた会社ほどやはり大きく成長しているということです。
ですので、「入口」でしっかりとデューデリジェンスを行う、そのためのビジネスを評価する能力と、きっちりとオーナーと話をしてスムーズにグループに入ってもらうコミュニケーション能力が極めて重要であるということです。

 

当社では実際にM&Aした会社は30社弱ですが、書類ベースを含めると調査した会社は何百件に上ります。
成功も失敗も含めてその過程で蓄積したノウハウをマニュアル化し、「入口」において見極める力をブラッシュアップすることでPMIもより効率的に進めることができ、成功の精度を更に高めていくことができます。
こうしたノウハウを私や関係者の頭の中に堪として留めておくのではなく、会社の資産として残すことで、他社には真似のできない強力な競争優位性を構築できると考えています。

 

◎株主・投資家へのメッセージ
今回の上期決算は大株主の私としても非常に不満足です。ただ、自分ではコントロールできないものもある中ですが、できることはベストを尽くして行かなければならない、見込みと違ったとしても損失ではなく、利益を出すことができる体制を構築すること、事業ドメインを分散することの重要性を改めて認識しました。
当社では業務用とスーパー・小売、国内と海外という分散により、以前よりも収益のボラティリティが低下してきたと感じています。
また、厳しい環境になればなるほどそれを乗り越える原動力として優秀な人材の確保が必要とも感じていますので、良い人材は積極的に採用していきます。

 

このような基盤づくりを進め皆様のご期待に沿えるように売上・利益を拡大するとともに、ミッションである「いつまでも、この“おいしい”を楽しめる社会へ ~消費者が多様な食文化を享受できる豊かさの実現~」の実現を目指してまいりますので、引き続き応援していただきたいと思います。

 

5.今後の注目点

原材料価格の高騰、急速な円安の進行などで厳しい上期決算であった。円安もオーバーシュートではないかとの見方も出ているが、今後も不透明要因として認識せざるを得ず、第3四半期以降の収益動向を注視していきたい。
一方、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻に伴う経済的苦境から、M&Aの案件は件数増加、大規模化に加え、優良な案件も増加しているとのことだ。同社も9月、11月で2件のM&A成立をリリースしており、追い風が吹いている。
また、国分グループとのアライアンスも具体的な案件が動き出した。
成長戦略の進捗がどのように売上・利益に寄与していくのか注目していきたい。

 

 

<参考1:成長戦略>

同社は食品業界において「中小企業支援プラットフォーム」を核とした独自のビジネスモデルを構築し、「M&Aを通じたグループ企業数の拡大による成長」と「既存グループ会社の業容拡大による成長」の2つのエンジンによって成長を追求している。

 

基本的な戦略、道筋に変更は無いものの、M&AからPMI、事業成長支援までの流れを高速化し、より多くのM&A実行、成長支援を実施し、企業価値を向上させるため、「戦略①:M&A強化」「戦略②:事業モデルの再強化」「戦略③:提携先との協業および不足する機能の内製化」「戦略④:海外販路強化」という4つの戦略を掲げている。

 

(同社資料より)

 

そして、各戦略を有機的に結びつけることで、ビジョンの実現やミッションの達成を目指している。

 

 

(同社資料より)

 

【1 戦略①:M&A強化】

「事業ユニット戦略」「地域密着商品・ニッチ市場戦略」「プラットフォーム強化戦略」の3戦略によりM&Aを積極化し、シナジー効果を効果的に発揮し、利益率を向上させる。

 

「事業ユニット戦略」
一定程度の事業規模、市場占有率があり、新たな柱(コア)となる企業を新規にM&Aする。
その後、同分野の企業をロールアップ(M&A)し効率化を進める。
ユニット内でシナジーを創出し利益率を向上させる。

 

「地域密着商品・ニッチ市場戦略」
ニッチ市場で高シェア、商品力があり、利益率が高い企業をM&Aする。
プラットフォームを活用し、売上増加により利益拡大を図る。

 

「プラットフォーム強化戦略」
中小企業支援プラットフォームの強化につながる企業をM&Aする。
特に、商品開発・マーケティング、EC販売分野を強化する。

 

(同社資料より)

 

新型コロナウイルスの影響によりM&A案件紹介件数、実行件数とも一時的に落ち込んだものの、直近は回復傾向にある。今後はM&Aの更なる加速化により、より一層の業績拡大を図る。

 

【2 戦略②:事業モデルの再強化】

専門人材の採用より、「経営支援」「機能別支援」を強化し業績向上を目指す。
「経営支援」においては、経営経験が豊富な人材を採用しグループ企業の社長として配置する。
また、優秀な若手人材を採用し、グループ企業での経営経験を積ませ、経営革新に取り組む。
「機能別支援」においては、中小企業支援プラットフォームを活用した支援を行う。機能別の専門人材を採用し、プラットフォームを強化する。

 

(同社資料より)

 

【3 戦略③:提携先との協業及びM&Aによる機能強化】

バリューチェーンごとに最適なパートナーと提携やM&Aを行うことで、より一層の成長を目指す。

 

(同社資料より)

 

国分グループ本社株式会社との協業
得意先数約35,000社、取引メーカー数約10,000社、グループ会社数54社、商品ラインアップ約60万アイテムに加え、300年を超す業によって培われたノウハウなどを有する、国分グループ本社との協業の進捗は以下のとおりである。

 

 

協業内容

進捗

販売

国分が持つリソースを活用したヨシムラ・フード・ホールディングスグループ商品の販売促進

国分取引先(大手スーパー等)へヨシムラ・フード・ホールディングスグループ商品を提案し、一部で新規採用決定

購買

国分を窓口とした仕入ルートの増加

仕入コスト低減による粗利増加

消耗品の一括購入条件見直し

原材料の一部を国分経由への調達に切替えることで、コスト削減に成功

消耗品の購入についても、国分が運営する集中購買システムへ切り替えを行うことで、グループ全体でコストを削減

商品開発

国分の知見やノウハウを活用した、新商品・国分のPB商品(缶つま等)の共同開発、ヨシムラ・フード・ホールディングスでの製造

国分と協同で、缶つま等の新商品開発により、製品化

国分の持つマーケティング情報のヨシムラ・フード・ホールディングスグループへの共有、営業面における活用

物流

国分の物流ノウハウ・自社倉庫等を活用した物流網の見直し

商品供給(販売)エリアの拡大

グループ子会社毎に、地域性を考慮しながら物流コスト低減に向けた協議を実施中

M&A

国分と協同でM&A案件を発掘、検討

国分と協同でPMIを実施

国分の情報網を活かしM&Aニーズをタイムリーに収集できる体制の構築に向けた取り組みを実施中

具体的に両社で検討できる案件については、協同でのPMIやバリューアップ施策含め、随時検討を実施中

その他

会社対会社の協業推進

中長期的な協業の実現

国分エリアカンパニーへのヨシムラ・フード・ホールディングスグループの紹介、及び共同事業に向けた協議を実施中

国分から常駐の出向者を受け入れ、常時緊密な連携を維持

 

【4 戦略④:海外販売強化】

中小企業支援プラットフォームの一つの機能として、国内グループ企業商品のシンガポール子会社を通した販売を強化する。

 

そのために、シンガポールを中心とし、東南アジアや中国へも販路を拡大する。英語でのコミュニケーション可能な人材の採用も必要である。
また、引き続き、東南アジアを中心に、グループの成長に繋がる会社について随時M&Aを検討する。
自社及び国分などの提携先のリソースを活用した成長を目指す。

 

実例
シンガポール西部で最大のショッピングモールであるJurong Pointにおいて、日本のグループ会社の商品販売強化を目的とした独自の販売コーナーを設置した。

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

4名、うち社外2名(2名とも独立役員に指定)

監査役

3名、うち社外3名(3名とも独立役員に指定)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年5月27日

 

<基本的な考え方>
当社は、株主の皆様をはじめとして、顧客、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーの方々との信頼と協働によってこそ、持続的な成長と中長期的な企業価値を創造できると考えております。
そのため、当社では経営の健全性、透明性、効率性を確保する基盤として、コーポレート・ガバナンスの継続的強化を経営上の最重要課題としており、意思決定の迅速化、業務執行に対する監督機能の強化、取締役に対する経営監視機能の強化、および内部統制システムを整備することで、会社の透明性・公平性を確保し、すべてのステークホルダーへのタイムリーなディスクロージャーに努めてまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>

原則

実施しない理由

(補充原則 2-4-1中核人材の登用等における多様性の確保)

当社は、人材の多様性確保と育成が中長期的な企業価値の向上に繋がるものと考え、性別、年齢、国籍などにかかわらず、能力・実績を重視した公正・公平な人材採用・登用に取り組んでおります。現時点では女性・外国人・中途採用者の管理職への登用に対する測定可能な数値目標を定めてはおりませんが、今後も引き続き多様性の確保に向けた施策を推進するとともに、目標についても検討してまいります。

(補充原則3-1-3 サステナビリティへの取り組み)

当社は、サステナビリティに関する取り組みを当社ウェブサイト(https://www.y-food-h.com/business/sustainability/)にて開示をしておりますので、ご参照ください。人的資本や知的財産への投資等については開示しておりませんが、当社の経営戦略、経営課題との整合性を意識し、開示を検討してまいります。また、気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響については、当社に関するリスク・機会分析により対応課題等を整理したうえで、開示の方法や枠組みについて検討してまいります。

(補充原則4-2-2 サステナビリティの監督)

当社取締役会は、当社のサステナビリティを巡る取り組みについて基本的な方針は策定しておりませんが、中長期的な企業価値向上のため、方針や経営計画の策定・公表について検討してまいります。

(原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表)

当社は、決算説明資料等により中長期的な成長戦略を開示しておりますが、今後、具体的な目標及び実行施策等について株主の皆様に分かりやすい説明の方法を検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>

原則

開示内容

<原則1-4 政策保有株式>

当社は、取引関係の維持・強化等を目的として、限定的かつ戦略的に株式を保有いたします。この場合、取引関係の維持・強化によって得られる利益とリスク、資本コスト等を総合的に勘案し、当社の企業価値の増加に資するか否かの観点から、投資の可否を判断いたします。取締役会は、毎年個別の政策保有株式について、保有に伴う便益、リスクが資本コストに見合っているか、中長期的な観点から当社の企業価値の向上に資するかどうかについて経済合理性等を検証し、保有の意義が必ずしも十分でないと判断される銘柄については、縮減を図ります。また、議決権の行使にあたっては、中長期的な視点で企業価値向上につながるか、または当社の株式保有の意義が損なわれないかを判断基準として、適切に行使いたします。株式価値を毀損するような議案については、会社提案・株主提案にかかわらず、肯定的な判断をおこないません。

<原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針>

 

 

当社は、株主・投資家との建設的な対話やコミュニケーションを図るため、管理本部をIR担当部署として体制を整備しております。株主・投資家からの取材につきましては、主に代表取締役CEOが、合理的な範囲内において積極的に対応し、また、四半期毎に決算説明会を開催し、その内容を動画にて配信しております。株主・投資家との対話で得られたご意見等は、都度、取締役及び経営幹部に対して報告しております。

 

 

株式会社インベストメントブリッジ
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