ランドネット<2991> 豊富な中古マンション等のデータとその活用に特徴がある

2021/08/04

築古ワンルームマンションを中心とした買取販売や賃貸管理等を展開
豊富な中古マンション等のデータとその活用に特徴がある

業種: 不動産業
アナリスト: 大間知 淳

◆ 築古ワンルームマンション等の買取販売や賃貸管理等を展開
ランドネット(以下、同社)は、投資用中古不動産の買取と不動産業者や個人投資家等への販売を主力とする不動産売買事業と、不動産の賃貸管理業務や家賃滞納保証業務等を担う不動産賃貸管理事業を展開している。不動産売買事業においては、中古マンションを中心に取扱っているが、タイプ別ではワンルーム、築年数別では築年数20年超の築古が過半を占めている。中古マンションの流通ビジネスにおいて、買取・仲介から、リフォーム、販売・仲介、物件管理、入居者管理に至るまで、ワンストップ体制を構築している点に特徴がある。

同社グループは、同社と連結子会社3社で構成されている。連結子会社は、国内不動産を海外投資家に販売する会社である日商朗透房屋股份有限公司(香港)と日昇房屋有限公司(台湾)、家賃保証業務を行うランドインシュアから成る。20/7期の連単倍率は、売上高、営業利益共に1.0倍であり、子会社の収益貢献は小さい。

同社は東京都豊島区に本社を置くほか、横浜市と大阪市に支店を開設している。取扱エリアは、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)、関西圏(大阪府、京都府、兵庫県)を中心としている。

創業者である榮章博代表取締役社長は、資産管理会社を通じた保有分を含め、21年5月末時点で同社の発行済株式の全てを保有していた。上場時では株式数の75.0%を保有している。

同社グループは、各事業において複数のサービスを提供している。その担当区分は図表1の通りである。20/7期において、売上高構成比(外部顧客売上高ベース)は、不動産売買事業98.5%、不動産賃貸管理事業1.5%である。セグメント利益率(全社費用等のセグメント利益の調整額の配賦前)を見ると、不動産賃貸管理事業が16.8%と高水準である一方、土地原価や建
物原価の負担が大きい不動産売買事業は6.6%にとどまっている。

21 年5 月末時点の連結従業員数は381 名(単体379 名)であるが、セグメント別では、不動産売買事業217 名、不動産賃貸管理事業35 名、全社(共通)129 名である。18/7 期末の177 名(単体)から大幅な増加となっており、単体における平均勤続年数は3.5 年と短く、平均年齢は31.0 歳と若い。

また、同社は「最新のテクノロジーを活用して不動産流通業を革新する世界No.1 企業」という企業目標の下、不動産の資産運用コンサルティングを行う総合不動産商社を標榜している。全社(共通)に含まれる情報システム部には、70 名を超える従業員がシステム開発やデータ入力等を行っており、同社のテクノロジー重視の経営姿勢が表れている。

◆ 不動産売買事業
不動産売買事業は、不動産買取販売事業、不動産仲介事業、リフォーム・リノベーション事業によって構成される。

同社は、買取販売する区分所有マンションについて、各住戸の専有面積が30 ㎡未満のものをワンルームタイプ、30 ㎡以上のものをファミリータイプと定義している。また、竣工後20 年以内の物件を築浅、20 年超の物件を築古と定義している。20/7 期の販売件数では、ワンルームタイプが67%、ファミリータイプが33%であった一方、築古が69%、築浅が31%であった。

不動産の仕入においては、データベースに登録されている不動産所有者に定期的にDM を出して、反応があった相手からの直接買取を主体としているが、相手のニーズや交渉条件等により仲介形態をとる場合もある。買取った不動産については、必要に応じてリノベーション(部屋の再生、内装工事、ユニットバス・システムキッチン等の設備類の刷新、間取りの変更等)を行っている。

販売においては、不動産仲介会社に対し、仲介(媒介または代理)もしくは買取を依頼する形態と、同社の販売部門が、セミナーや雑誌、ソーシャルメディア等を通じて集客した実需層の一般購入者、個人投資家に直接販売する形態、不動産業者に直接販売する形態がある。また、台湾と香港の連結子会社は現地の投資家に日本の不動産を販売している。20/7期の不動産売上高について、販売先の属性別構成比をみると、不動産業者向け53%、個人向け42%、一般法人向け5%であった。なお、開示対象となる売上高の1割以上を占める相手先は存在していない。

不動産売買事業については、販売件数(20/7期2,771件)と仲介取扱件数(同1,017件)がKPIとして開示されており、売上高の大半は不動産販売によるものと推測される。20/7期のセグメント利益率が6.6%と低いのは、不動産販売の売上総利益率が低いことや、販売部門の人件費や広告宣伝費の負担が重いことが要因と推測される(図表2)。

◆ 不動産賃貸管理事業
不動産賃貸管理事業は、賃貸管理事業、家賃保証事業、賃貸事業によって構成される。

賃貸管理事業では、同社が不動産売買事業で取引した顧客を中心に賃貸管理業務を受託している。賃貸管理戸数は毎期着実に増加している。家賃保証事業は、連結子会社のランドインシュアが賃貸管理物件に対する家賃保証を行っている。家賃保証業務に係る債務保証については、全額、他社から再保証を受けている。

賃貸事業では、同社が東京23区内を中心に賃貸マンションを所有して、賃借人から賃貸料を受領している。20/7期の賃貸損益は18百万円であった(図表3)。賃貸用不動産については、20/7期末の貸借対照表計上額は694百万円である。時価評価額との差額である税引前含み益は29百万円と試算される。同社は、保有物件の入れ替えを毎期実施しており、20/7 期の取 得額は346 百万円、売却額は100 百万円、売却益(特別利益)は31 百万 円であった。

不動産賃貸管理事業については、売上高の大半は賃貸管理事業と賃貸事業によるものと推測される。20/7 期のセグメント利益率は16.8%と高い水準を確保している。

◆ フロー型のビジネスモデルであるが、資産効率は高い
不動産賃貸管理事業で手掛けている賃貸管理事業や賃貸事業はストック型収益であるが、同社の売上高の大半を占める中古マンションの販売は、フロー型収益であるため、事業全体としてはフロー型のビジネスモデルである。単体の売上原価明細書を見ると、売上原価の9 割強はマンション販売の土地原価と建物原価で占められており、変動費が大半を占めている。販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給料手当及び賞与や、広告宣伝費等、固定費が中心を占めている。

同業他社に対する差別化要因として、同社は、不動産データを活用した物件オーナーからの直接買取が仕入の約7 割を占めていることや、築古物件の仕入、販売で高いノウハウを持っていることを挙げている。

また、同社は、築古物件のワンルームマンションを中心に取扱うため、仕入から販売までの期間が短い。20/7 期の棚卸資産回転率(売上原価÷期中平均棚卸資産)は7.6 回、総資産回転率(売上高÷期中平均総資産)は4.3 回であり、資産効率が高い。結果、20/7 期の経常利益率は2.3%と低水準であるものの、総資産経常利益率は10.0%、自己資本利益率(ROE)は18.6% と良好な水準を確保している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。