オンデック<7360> 事業承継問題深刻化による需要拡大の恩恵を受けるポジションにある
国内中小企業を対象としたM&Aアドバイザリーファーム
事業承継問題深刻化による需要拡大の恩恵を受けるポジションにある
業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 国内中小企業を対象としたM&Aアドバイザリーサービスを提供
オンデック(以下、同社)は、大阪を本拠として、国内中小企業を対象としたM&Aのアドバイザリーサービスを提供している。05年7月の創業、07年12月の会社設立以来一貫して中小企業のM&Aに特化しており、20年8月までのM&A累計成約数は203件にのぼる。
同社は、中小企業対象のM&Aが売り手と買い手の単なるマッチングに終わる傾向があると分析している。そうした動向から一線を画し、M&A後の事業の成功に焦点を当てた質の高い提案を行うことで差別化を図っている。
◆ 2種類のサービス提供形式
同社のM&Aアドバイザリー事業は、売り手希望者と買い手希望者の仲介を行う仲介形式か、売り手希望者と買い手希望者のどちらか一方に対してフィナンシャルアドバイザーとして助言するFA形式のどちらかで行われている。売上高の大部分は仲介形式によるものである。
仲介形式の案件は、以下の3つのフェーズをたどって進められる。
(1) 売り手希望者のニーズを把握し、M&Aの実現可能性を検討するソーシング・案件化フェーズ(2) 買い手候補者を探索、選定し、売り手希望者と擦り合わせながら買い手候補者を1社に絞り込むマッチングフェーズ
(3) 譲渡条件をまとめて基本合意契約を締結した後、条件調整をしながら最終契約としてまとめ、譲渡を実行するエグゼキューションフェーズ
同社によると、業界平均で見ると、3つのフェーズを経て案件が成約するまでに1 年弱かかるとしている。大手仲介会社の場合は、買い手候補者の情 報が多いためにマッチングフェーズの時間が短くて済む傾向が強いため、1 年弱よりもやや短期間で案件が成約することが多いという。
一方、同社の場合は、提案の質を高めるためにソーシング・案件化フェーズに時間をかけることが多いという。そのため、案件成約までにかかる時間は業界平均並みか、それよりもやや長めになることが多いと推察される。
◆ 収益構造
同社の収益は、(1)ソーシング・案件化フェーズでの売り手希望者から支払われる着手金、(2)マッチングフェーズで買い手候補者から支払われる申込手数料や意向表明のための料金、(3)エグゼキューションフェーズでの成功報酬で構成され。(1)の着手金や(2)の手数料は固定金額であり、収益の大半は(3)の成功報酬からとなる。
成功報酬は、基本合意締結時に成功報酬の10%が、最終契約時に残りが支払われる。成功報酬は時価純資産額(ほぼ譲渡額とおなじ)を基準に算定されるが、規模に応じて最低手数料が設定されている。同社の最低手数料は他社よりも低く抑えられており、小規模な案件まで対応できるひとつの要因となっている。
費用面では、コンサルタントの労務費や経費に加え、案件の紹介元に支払う紹介手数料が原価計上される。案件規模に関係なく一定のコンサルタントの労務費がかかるため、大規模案件である方が案件の利益率は上がる一方、大規模案件は紹介によるものが多いと推察されるため、紹介手数料の分は原価率を押し上げる要因となる。なお、紹介元は広範囲にわたるが、最近は、ファンド経由で同社の大株主となっているAngel Bridge(東京都千代田区)や、業務提携先である野村證券からもたらされる案件の貢献が大きい。
◆ 案件規模
同社が取り扱う案件は、年商3 億円以上10 億円未満のいわゆるスモールキャップの企業が多いものの、年商10 億円以上の企業(ミッドキャップ)や年商3 億円未満の企業(マイクロキャップ)にも対応している。一方、年商数百億円以上の企業(ラージキャップ)は対応していない。
19/11 期の成約案件の規模別分布を見ると、件数ベースではマイクロキャップ案件やスモールキャップ案件が中心である。しかし、件数ベースで12% に過ぎないミッドキャップ案件が金額ベースでは45%を占めており、同社にとって大規模案件と言えるミッドキャップ案件の多寡が業績に大きな影響を与える傾向にある(図表1)。
◆ 成約件数と平均報酬単価
成約件数は18/11期16件、19/11期19件、売上高を成約件数で割った平均報酬単価は、18/11期2,135万円、19/11期3,408万円となった(図表2)。19/11期の平均報酬単価の上昇は、ミドルキャップ案件が複数あったことによるものである。
◆ コンサルタントの数
案件の規模によるが、通常は1つの案件に対して2~3名のコンサルタントで対応しており、売上高の拡大には、コンサルタントの増員が必要である。コンサルタント数は18/11期末13名、19/11期21名、20/11期第3四半期末27名と増加が続いている(図表3)。