朝日ラバー(5162) 売り上げ回復へ、主力製品に期待

2020/09/03

 

 

渡邉 陽一郎 社長

株式会社 朝日ラバー(5162)

 

企業情報

市場

JASDAQ

業種

ゴム製品(製造業)

代表取締役社長

渡邉 陽一郎

所在地

埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2

決算月

3月

HP

http://www.asahi-rubber.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

635円

4,547,544株

2,887百万円

2.8%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

10円

1.57%

19.57円

32.45倍

979.90円

0.65倍

*株価8/17終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
*EPSとDPSは今期の会社予想。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属する四半期純利益

EPS

配当

2017年3月(実)

6,511

475

490

341

76.09

16.00

2018年3月(実)

7,534

561

589

459

101.98

20.00

2019年3月(実)

7,706

483

508

352

77.97

20.00

2020年3月(実)

7,489

325

346

126

27.91

30.00

2021年3月(予)

6,137

-26

17

89

19.57

10.00

*2020年3月期の内訳は、普通配当20円、記念配当10円。
*単位:百万円、円

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.新中期経営計画
3.2021年3月期第1四半期決算
4.2021年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 21/3期第1四半期は前年同期比20.4%の減収、9百万円の経常損失(前年同期は72百万円の経常黒字)。売上高は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けて自動車向け製品全般、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業で減少した。一方、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を殆ど受けること無く、プレフィルドシリンジガスケット製品や採血用・薬液混注用ゴム製品の受注が堅調に推移した医療・衛生用ゴム事業は増加した。セグメント利益は、売上高の減少を受け工業用ゴム事業で減少したものの、売上高が増加した医療・衛生用ゴム事業は増加した。

     

  • 21/3期の会社計画は、前期比18.1%減収、同95.1%経常減益。会社計画は期初段階で未定とされていたが、第2四半期連結会計期間から徐々に経済活動が回復の兆しを見せはじめてくると見込んでおり、顧客から得られた最新の受注情報を考慮して今回公表に踏み切った。未定とされていた配当予想についても今期の会社計画や内部留保の状況などを総合的に勘案して1株当たり年10円の予想(期末10円)に決定した。

     

  • 同社の上期会社計画によると、第2四半期(7-9月)は第1四半期(4-6月)以上に営業赤字と経常赤字が拡大する予想となっている。本当にここまで業績が悪化するのか疑問ではあるが、将来の不確実性を保守的に織り込んでいるものと推測される。主力のASA COLOR LEDをはじめ、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品など収益性の高い製品の受注が回復傾向を示すのか注目される。

     

1.会社概要

小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

 

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。

 

事業系統図

(同社決算説明会資料より)

 

海外拠点

(同社決算説明会資料より)

 

連結業績の推移

 

【事業内容と主要製品】

事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、20/3期の売上構成比は、それぞれ83.8%、16.2%。 今後は、RFIDタグ用ゴム製品、ASA COLOR LENS、医療回路製品用ゴム部品などの販売拡大が期待される。

 

・ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。青色LEDに蛍光体を配合したシリコーン製キャップを被せることで、自動車内装照明用に10,000色以上の均質な光を提供。顧客に要求される均一な色を実現している。
ASA COLOR LEDのイメージ

同社決算説明会資料より

 

ASA COLOR LEDの採用例

(同社会社説明会資料より)

 

(同社会社説明会資料より)

 

・医療用ゴム製品
点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、薬液混注ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケットなど、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用さる。安全性の高い材料を開発し、独自のコーティング技術で“漏れない”と“滑る”を両立し、注射速度の微妙な調節が可能。素材変性技術による安全性の高い材料と表面改質技術による摺動性の向上により、医療ミス防止などの安全性向上に貢献している。

 

プレフィルドシリンジ向けガスケットのイメージ

(同社決算説明会資料より)

 

・RFIDタグ用ゴム製品
RFIDタグ用ゴム製品は、溶剤を使わずに接着させる“分子接着・接合技術”を応用し、IC チップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のRFIDを提供。取り付ける対象がどのようなものかを記憶し、認識させる機能で、今後成長が期待される認証・認識ビジネスに対応。 ゴムという弾性体の特徴を生かして、RFIDが使用できなかった用途への利用が可能に。さらに応用し市場拡大を進める。

 

RFIDタグ用ゴム製品イメージ

(同社決算説明会資料より)

 

【コア技術と事業領域】

オープンイノベーションで事業領域深耕につながる研究を加速するとともに、製品化に向けた実証研究を強化する。

(同社会社説明会資料より)

 

・色と光のコントロール技術
シリコーンゴムに着色剤や蛍光体を配合し、様々な色と光を出すことのできる色調管理技術を有し、ばらつきを調整し、顧客が望む細かい色調を実現。また、透明なシリコーン樹脂を材料とし、耐熱性、対紫外線性に優れ、集光・拡散といったレンズ機能を実現。ASA COLOR LEDなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、自動車内装、照明分野とコア技術を応用したスイッチ分野の拡大を図る方針。

 

・表面改質及びマイクロ加工技術
接着剤を使わずに、ゴムとゴムや金属、樹脂を接着させる分子接着・接合技術を有する。接着させる表面を改質処理し、化学反応で結合。これにより、有害な溶剤の廃棄処理が不要となり、耐熱性、耐水性もクリア。耐水性、耐候性に優れており、RFIDタグ用ゴム製品やマイクロ流体デバイスでこの技術が生かされている。また、数十ミクロンから数ミクロン単位の表面加工を行うマイクロ加工技術を確立。医療用ゴム製品である薬液混注ゴム栓の薬液注入口の形成と薬液漏れの防止や、充電して使用できる二次電池の内圧管理にもこのマイクロ加工技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、高性能製品や新たな分野を開拓する方針。

 

・素材変性技術
ゴムをはじめとするソフトマテリアルは、素材に添加物を配合することで求める機能を持たせることができる。更に、ナノ・分子レベルで成形することによりその機能をパワーアップすることも可能。卓球ラケット用ラバーなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、医療分野を支える製品を提供する方針。

 

【ESGへの取り組み】

同社は、ESGへも積極的に取り組んでいる。

(同社会社説明会資料より)

 

 

項目

方針と実績

E(エコロジー)環境

環境に対する取り組みが、持続可能性のある社会の実現に寄与すること、また、事業の競争力の向上と持続的な成長を支える視点の一つととらえ、社会の要請の応えられるよう取り組みを行う。

 

●工場電力の削減

白河工場と福島工場に太陽光発電パネルを設置。 また、白河工場と福島工場の照明をLED蛍光灯に置き換え、省電力化を実現。

●廃棄物のリサイクル推進

ゴム屑やポリシート、フィルムなどのプラスチック類に加え、硬質を 含む混合プラスチックの焼却灰をセメント原料として使用する活動を推進。

S(ソーシャル)社会

地域社会の一員としての会社であることから、地域への貢献活動も継続して行い、地域の皆様とのコミュニケーションを深めることで、従業員の責任感とモチベー ションの向上に役立てる。

 

●最寄駅の清掃

福島工場、第二福島工場の最寄駅であるJR東北本線泉崎駅で、毎週火曜日の就業時間前に4~5名の当番制で清掃活動を実施。 活動を開始して2019年で24年目となる。

●卓球大会の開催

福島県の県南地区の中学生を対象にした朝日ラバー杯の卓球大会と、高校生や社会人も含めた卓球大会を主催。

●ケアハウスの清掃

新入社員研修の一環として、地域のケアハウスの清掃を実施。

●地域イベントへの参加

福島県白河市のイベント「まるごと白河」の企業ブースに出展し、地元にある企業の活動の認知を広め、従業員が直接地域の皆様とふれあう機会を創出。

G(ガバナンス)統制

2015年6月に、監査等委員会設置会社に移行。社外取締役を招聘し、社内にない多様な意見を取締役会に反映し、内部統制のしくみとマネジメントの監査・監督のしくみの両輪で、適切なリスクマネジメントを推進。トップダウンによる経営理念・経営方針の伝達と、ボトムアップによる現場の知恵の具現化により事業を成長させる。

 

 

2.新中期経営計画

同社は、中期経営計画を策定するにあたり、「私たちは人を豊かにしてグローバル社会貢献度が高い技術会社になる」ことを未来に通ずる姿とし、朝日ラバーらしい価値を磨き、独自の新製品開発による成長を描くため、2030年を見据えたビジョンを「AR-2030VISION」を定めた。具体的な内容は、以下の通り。
【AR-2030VISION】
弾性無限の創造で持続的な価値向上がつながる社会に貢献する企業へと成長し続ける。弾性無限への挑戦。
【経営基盤】
CSR/ESG経営を重視し、グローバルな社会課題に挑戦する企業へと邁進します。
【行動指針】
ステークホルダー・エンゲージメントを高めること。
【技術基盤】
制御&感性へ -ゴムが有する無限の可能性に感性技術を加えてQOL向上を目指します-
独自の競争力の源泉となるコア技術は、色と光のコントロール技術、素材変性技術、表面改質およびマイクロ加工技術としている。それらコア技術に対して新たに感性技術を融合させ、現実世界・ サイバー空間がシームレスにつながる世界において、それぞれの事業分野における「人と機械(シス テム)のつながり」を成長の視点と捉え、新たな価値の創造をもって社会課題の解決に挑む。
【事業基盤】
重点4事業分野へ -事業価値を高め続けて10年後にありたい姿の実現を目指します-
これまでの重点3事業分野(車載・照明事業、医療・ライフサイエンス事業、その他事業)について社会が求める 2030年の環境から見つめ直すとともに、将来に「実装化」が想定されるテクノロジーを見通しながら、光学事業、医療・ライフサイエンス事業、機能事業、通信事業の重点4事業分野に集中して10年後にありたい姿の実現を目指す。

 

第13次三ヵ年中期経営計画
同社は、AR-2030VISIONの実現に向けて、最初のステージの2023年3月期までの2020年4月~2023年3月を第13次中期三ヵ年として、中期計画および単年度計画を策定した。中期経営方針 として「誠実で機敏な対応力で岩盤を築き質的に成長する」を掲げ、中期経営戦略 として、①事業が貢献する機会を増やして密着し、素早く課題を解決する技術で経験と実績を積み上げる、②CSR/ESG経営へ進化させると定め、最終年度である23/3期に数値目標である、連結売上高80~90億円、連結営業利益率8%以上を目指す。環境の変化による影響を考慮しながら成長を続ける目標とするため、売上高目標は範囲を持って設定するとともに、利益については、売上高に影響を及ぼす市場環境の変化に対応しながらも、質的成長を目指すことから、連結営業利益率を目標指標とした。 また、設備投資計画は、21/3期~23/3期累計で約10億円。20/3期までに進めてきた設備投資や環境整備による生産体制充実と、更に新製品・開発製品に注力し、案件を早期に立ち上げるための開発投資も進める予定である。

 

(1)重点事業分野の取り組み

光学事業(主要製品:ASA COLOR LED、シリコーン製レンズ、白色シリコーンインキ、カラーフィルター、
蛍光体応用製品など)
20/3期の連結売上高約35億円に対し、23/3期の売上高は40億円を計画。「感性、共感」をキーワードに、色と光を制御する技術と感性技術を磨き、自動車の内装照明市場から外装照明、またアンビエント照明※に向けた技術開発と提案を進める。また、海外の顧客へのアプ ローチをさらに進めていくため、自動車産業向けの品質マネジメントシステムである IATF16949の認証を白河工場で2020年12月に取得する予定。
※アンビエント照明とは、室内の環境照明、または全般照明の総称。

(同社中期経営計画資料より)

 

医療、ライフサイエンス(主要製品:採血用・薬液混注用ゴム栓、AR超薄膜シリコーンシート、ARチェックバルブ、プレフィルドシリンジ用ガスケット、マイクロ流体デバイスなど)20/3期の連結売上高約12億円に対し、23/3期の売上高は約15億円を計画。診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨き、世界の医療現場と患者のQOL(Quality of Life)向上に貢献する。また、医療機器産業に向けた提案力を高めるため、医療機器の品質管理システム構築のための国際標準規格であるISO13485の認証について、白河第二工場においてこの中期経営計画中の取得を目指す。

(同社中期経営計画資料より)

 

機能事業(主要製品:車載スイッチ用ラバー、感圧ラバーセンサ、F-TEM※、卓球ラケット用ラバー、
気流制御電極など)
20/3期の連結売上高約18億円に対し、23/3期の売上高は21億円を計画。ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術と触覚・熱・振動・光関連の技術、感性技術を磨き、将来のライフスタイルの実現への貢献に向けて、弾性無限で人に優しい感性価値を提供する。
※F-TEM(Flexible Thermos Electric Module)とは、ゴムならではの柔軟性を持った同社独自のペルチェデバイス。

(同社中期経営計画資料より)

 

通信事業(主要製品:RFIDタグ用ゴム製品、ビーコン、コネクタ、伸縮配線、ラバーファントムなど)
20/3期の連結売上高約9億円に対し、23/3期の売上高は12億円を計画。自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、伝える・伝わるセンシング技術、触覚・ 熱・振動・光関連の技術、感性技術を磨き、ゴムだからこそ実現できる価値を提供する。

(同社中期経営計画資料より)

 

(2)海外展開

同社グループは、顧客の要望に応えるため最適なロケーションとして、アメリカと中国に販売子会社と生産子会社を設置している。 重点事業分野に向けて同社の価値をこれまでよりも広く認知してもらうため、積極的に海外市場へのアプローチを進めて、価格競争ではなく、顧客に密着した活動により独自の価値を提供して、顧客満足度の向上を図り販売拡大に結び付ける方針である。

(同社中期経営計画資料より)

 

その他、同社は新中期経営計画の経営戦略に掲げる「CSR/ESG経営に進化させる」の達成に向け、サステイナビリティビジョン2030を2020年中に策定する予定である。今後もステークホルダーとの対話を通じて企業価値の向上を目指す方針である。

 

3.2021年3月期第1四半期決算

(1)連結業績

 

20/3期

第1四半期

構成比

21/3期

第1四半期

構成比

前年同期比

売上高

1,796

100.0%

1,430

100.0%

-20.4%

売上総利益

405

22.6%

293

20.5%

-27.7%

販管費

333

18.6%

320

22.4%

-3.9%

営業利益

72

4.0%

-27

-1.9%

経常利益

72

4.1%

-9

-0.7%

親会社株主に帰属する四半期純利益

51

2.9%

-20

-1.4%

*単位:百万円 

 

前年同期比20.4%の減収、9百万円の経常損失
売上高は、前年同期比20.4%減の14億30百万円。売上面では、工業用ゴム事業の売上高が同26.8%減少。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けて、自動車向け製品全般、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの売上高が減少した。一方、医療・衛生用ゴム事業の売上高は同12.9%の増加となった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を殆ど受けること無く、プレフィルドシリンジガスケット製品、採血用・薬液混注用ゴム製品ともに受注が堅調に推移した。更に受注力を向上させるため、医療生産エリア拡充に向けた活動も引き続き推進した。9百万円の経常損失(前年同期比は72百万円の経常利益)。売上高が減少した工業用ゴム事業のセグメント利益は前年同期比95.8%の減益となった一方で、売上高が増加した医療・衛生用ゴム事業のセグメント利益は同12.7%の増益となった。売上高営業利益率は、-1.9%と前年同期比5.9ポイントの低下。収益性の高い自動車向け製品やRFIDタグ用ゴム製品の売上高の減少等が影響し、売上総利益率は、20.5%と同2.1ポイント低下した。合理化により販管費の実額は減少したものの、売上高の減少により売上高対販管費率も同3.8ポイント上昇。また、前年同期は発生しなかった補助金収入20百万円の計上があり経常損失額は営業損失額に比べ縮小した。その他、特別損失で有価証券償還損10百万円を計上した影響などにより20百万円の親会社株主に帰属する四半期純損失となった。

 

四半期業績の推移

 

21/3期第1四半期(4-6月)は、。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けて、過去の四半期と比べ売上高、営業利益ともに低い水準にとどまった。
※15/3Qと4Qは、取締役2名逝去による役員退職慰労引当金繰入額等の特殊要因が影響。

 

(2)セグメント別動向

セグメント別売上高・利益

 

20/3期

第1四半期

構成比

21/3期

第1四半期

構成比

前年同期比

工業用ゴム事業

1,508

84.0%

1,105

77.3%

-26.8%

医療・衛生用ゴム事業

287

16.0%

325

22.7%

+12.9%

連結売上高

1,796

100.0%

1,430

100.0%

-20.4%

工業用ゴム事業

105

71.7%

4

8.7%

-95.8%

医療・衛生用ゴム事業

41

28.3%

46

91.3%

+12.7%

全社費用

-74

-78

連結営業利益

72

-27

*単位:百万円 

 

国内・海外別売上高

 

20/3期

第1四半期

構成比

21/3期

第1四半期

構成比

前年同期比

国内

1,484

82.6%

1,094

76.5%

-26.2%

海外

312

17.4%

335

23.5%

+7.2%

アジア

268

14.9%

298

20.9%

+11.4%

北米

40

2.3%

33

2.4%

-15.9%

欧州

4

0.2%

2

0.2%

-37.4%

合計

1,796

100.0%

1,430

100.0%

-20.4%

*単位:百万円 
国内売上高は前年同期比26.2%減少、海外売上高はアジアの増加が寄与し同7.2%増加した。

 

(3)財政状態

 

20年3月

20年6月

 

20年3月

20年6月

現預金

2,259

3,163

仕入債務

413

325

売上債権

1,826

1,440

短期有利子負債

1,019

1,209

たな卸資産

995

1,105

流動負債

2,946

2,961

流動資産

5,305

5,969

長期有利子負債

2,006

2,615

有形固定資産

3,953

3,886

固定負債

2,992

3,601

無形固定資産

99

96

純資産

4,456

4,373

投資その他

1,036

985

負債・純資産合計

10,395

10,937

固定資産・繰延資産

5,089

4、967

有利子負債合計

3,025

3,825

※単位:百万円。有利子負債=借入(リース債務含まず)

 

20年6月末の総資産は20年3月末比5億41百万円増の109億37百万円。資産サイドでは借入金の増加による現預金の増加が、負債・純資産サイドでは、借入金が主な増加要因。純資産は配当金の支払いにより利益剰余金が減少し、同82百万円減少した。20年6月末の自己資本比率は、40.0%と前期末から2.9ポイント減少した。

 

(4)上期(第2四半期累計期間)の会社予想に対する第1四半期累計期間の実績の進捗状況

 

21/3期 第1四半期

21/3期 上期会社予想

進捗率

売上高

1,430

2,779

51.5%

売上総利益

293

501

58.5%

営業利益

-27

-157

経常利益

-9

-111

四半期(当期)純利益

-20

3

*単位:百万円
通期会社計画と同時に上期(第2四半期連結累計期間)の会社計画も公表された。21/3期第1四半期連結累計期間は、上期(第2四半期連結累計期間)の会社計画に対して、売上高で51.5%、売上総利益で58.5%の進捗率となっている。一方で、営業利益と経常利益は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を考慮し第1四半期よりも赤字額が拡大する前提となっている。

 

 

4.2021年3月期業績予想

(1)連結業績

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

売上高

7,489

100.0%

6,137

100.0%

-18.1%

売上総利益

1,755

23.4%

1,304

21.2%

-25.7%

販管費

1,430

19.1%

1,330

21.7%

-7.0%

営業利益

325

4.3%

-26

-0.4%

経常利益

346

4.6%

17

0.3%

-95.1%

親会社株主に帰属する当期純利益

126

1.7%

89

1.5%

-29.8%

*単位:百万円

 

21/3期は、前期比18.1%の減収、同95.1%の経常減益予想
会社計画は期初段階で未定とされていたが、第2四半期連結会計期間から徐々に経済活動が回復の兆しを見せはじめてくると見込んでおり、顧客から得られた最新の受注情報を考慮して今回公表が行われた。
21/3期の会社計画は、売上高が前期比18.1%減の61億37百万円、経常利益が同95.1%減の17百万円。売上面では、今第1四半期同様に、医療・衛生用ゴム事業は堅調に推移する一方で、工業用ゴム事業においては引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続する見込みである。
利益面においても、売上高が増加する医療・衛生用ゴム事業で増加するものの、売上高が減少する工業用ゴム事業の減少の影響を大きく受ける。売上総利益率は、前期比2.2ポイント低下の21.2%、売上高対販管費率は、同2.6ポイント上昇の21.7%の会社前提。この結果、26百万円の営業損失(前期は3億25百万円の営業利益)となる見込み。売上高営業利益率は、前期比4.7ポイント低下の-0.4%の予想。その他、特別利益で投資有価証券売却益
約1億36百万円を計上する予定。
また、未定とされていた配当予想についても今期の会社計画や内部留保の状況などを総合的に勘案して1株当たり年10円の予想(期末10円)に決定した。前期は1株当たり年30円であったことから20円の減配となるが、前期は記念配10円が含まれていた。

 

 

21/3期の経営方針と経営戦略
【経営方針】
さらに好奇心を高めて深化、進化、新化しよう
【経営戦略】
① 事業が貢献する機会を増やして密着する。
② 素早く課題を解決する技術で経験と実績を積み重ねる。
③ CSR/ESG経営へ進化させる。
④ 実効性や有効性を磨き鍛える。

 

(2)最近のトピック

【切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線を開発】
同社は、切り紙構造とゴムを複合することにより低応力で伸長し、耐久性と抵抗値特性に優れた新しい伸縮配線を開発した。ゴムの復元力と立体的な構造により、さまざまな配線として活用が可能となる。
日本の伝統工芸である「切り紙」に着想を得て、立体的に構造変化するよう加工された導電フィルムの周囲を独自のシリコーンゴムで封止することで低応力での伸長と高い絶縁性を可能にし、ゴムの復元力で収縮することで高い耐久性を兼ね備えた配線を実現した。
独自の複合化技術により、100%の伸縮試験でも70万回の伸縮でほとんど抵抗値が変わらず、電気特性の安定した接続が可能な他、市販のFPC(フレキシブルプリント配線板)コネクタに接続が可能。更に配線パターンを変更することにより伸長率や配線の長さ、チャンネル数をコントロールすることができる。
新しい伸縮配線は生体センシングの分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学との共同研究で発表された新しいウェアラブル筋電計測デバイスの一部にも用いられた。今後、様々なスポーツにおける計測に活用される他、ウェアラブルデバイスやロボット、介護などの配線として幅広い分野での活用が見込まれる。

 

<構造イメージ>

 

(同社HPより)

 

(同社HPより)

 

 

【取締役に対する業績連動型株式報酬制度の継続】
同社は、取締役を対象に、取締役の報酬と、同社の業績および株主価値の連動性をより明確にし、中長期的な業績の向上と企業価値の増大への貢献意識を高めることを目的として 2019年度および2020年度を対象として業績連動型株式報酬制度を導入しているが、2023年度までの新たな3事業年度を対象として本制度を継続することとした。本制度は、役員報酬 BIP信託(以下、「本信託」)と称される仕組みを採用しており、本制度の継続にあたり、2020年8月末日に終了予定であった本信託の信託期間を3年間延長し、株式の取得資金等を本信託に確保するため、金銭を追加拠出する。なお、信託期間の延長時に本信託内に残存する同社株式及び金銭は延長後の本信託に承継される。

 

 

 

5.今後の注目点

新型コロナウイルス感染症再拡大の影響が懸念されるものの、緊急事態宣言解除以降、国内の同社の顧客においては徐々に生産が回復しているものと推測される。また、国内よりもより厳しい工場閉鎖を実施した中国や米国においても第2四半期以降は工場の稼働率が上向いているものと予想される。同社の上期会社計画によると、第2四半期(7-9月)は第1四半期(4-6月)以上に営業赤字と経常赤字が拡大する予想となっている。本当にここまで業績が悪化するのか疑問ではあるが、将来の不確実性を保守的に織り込んでいるものと思われる。主力のASA COLOR LEDをはじめ、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品など収益性の高い製品の受注が回復傾向となり、同社の業績回復を牽引できるのか注目される。
その他、新しい中期経営計画において育成を目指している自動車エクステリア照明市場や一般照明市場における新製品に加え、ARチェックバルブやF-TEMモジュールや伸縮配線応用製品など今後販売拡大が期待される製品の進捗状況にも注目したい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

7名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2020年6月30日

 

「当社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記載している。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>

原則

開示内容

【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】

 

年二回行っている社内での方針説明会、また毎月全社員を対象に行っている月例報告会で、健全な事業活動倫理を尊重する精神について、様々な角度と表現で伝えています。また、地域の経済同友会などに加盟し、他企業と交流を深めることで情報収集を行い、社内に展開しております。

特に重視しているのは社内のオープンなコミュニケーションです。いろいろな意見を出せる環境、聞く環境を整えていくことで、ステークホルダーを尊重する企業風土を醸成していけると考えております。

【株主との対話】

 

当社WEBサイトで中期経営計画をわかりやすく公開しています。また、個人投資家向けのページでは、会社の目指す方向やトップメッセージなどを紹介しています。なお、2020年3月期通期決算の説明会は、新型コロナウイルス感染症の感染予防のため中止といたしましたが、当社ホームページにおいて2020年3月期決算と2021年3月期の見通しに関するQ&Aおよび中期経営計画についての動画を掲載しております。

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