高市首相が世界的経済学者に質問したこと
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◆第3回経済財政諮問会議の議事要旨が公表される
今週、3月26日に開催された第3回経済財政諮問会議の議事要旨が公表されました。2人の大物ゲストを招いた「特別セッション」で、いつも以上に注目された会議でした。招かれたのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のオリヴィエ・ブランシャール名誉教授と、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授です。2氏ともMITで経済学博士号(Ph.D.)を取得し、IMF(国際通貨基金)でチーフエコノミストを務めた世界的マクロ経済学者です。ちなみに、植田和男日銀総裁も、ロゴフ氏と同じ1980年にMITからPh.D.を取得しています。
◆2氏の主張
まずブランシャール氏とロゴフ氏が順番に高市政権の「責任ある積極財政」に対する見解を述べました。ブランシャール氏は「そう遠くない将来のある時点でプライマリーバランス(PB)の均衡を目指す必要がある」「“危機管理投資”は、おそらく明確な財政的収益が見込めるとは言いにくい。国債を財源とすることを正当化できない。財源のかなりの部分を税にすることを試みるべき」等と述べました。質疑応答では「現在の日本には構造調整が必要。今の優先課題は、1年や2年だけ消費税を下げることではない」との発言もありました。ロゴフ氏は「言うべきことはすべてブランシャール氏に言われた」と笑いを誘いつつ、「低金利は永遠ではない」「重要なのは中央銀行の独立性」などと訴えました。
かねてから財政規律の重要性を発信しているロゴフ氏だけでなく、ブランシャール氏もそれを厳しく訴える内容になりました。現在の諮問会議の中に多くいる積極財政支持派にとっては、やや耳の痛い話だったかもしれません。
◆高市首相の質問は2点とも「市場との対話」について
これに対して、出席者が質問をしました。高市首相の質問は、ブランシャール氏に対して「ご提案いただいた取組を進めていく際に、「マーケットとの対話」を通じて、市場関係者にその趣旨を正しく理解してもらうために気をつけるべき点についてアドバイスをいただきたい」。ロゴフ氏に対しては「財政の持続可能性に関する「シグナル」として、あらかじめ留意しておくべきマーケットが意識する「メルクマール」とは」でした。質問が2つとも「市場との対話」に関する内容で、首相がそれを気にかけている様子が垣間見えました。
◆「市場との対話」安定化か
高市首相のこうした姿勢は、債券・為替市場に好感されるとみられます。昨秋の首相就任以降、「市場との対話」の不安定さが度々指摘されてきたからです。例えば、1月19日に「消費税減税の財源は検討中」と発言し、翌日に長期金利が2.380%と約27年ぶりの高水準に急騰したことがありました。前週末に鈴木俊一自民党幹事長がテレビ番組で消費税減税の可能性に言及し、債券市場で「財源は本当にあるのか?」との疑念が広がっていた最中での発言でした。疑念に対してまさかの「ゼロ回答」だったことが戸惑いに繋がったのでした。
1月31日の演説で「外為特会は円安でほくほく」と述べたこともありました。1月23日に米当局がレートチェックに動いた直後の発言でした。首相自身は「為替変動にも強い経済構造を作りたいとの趣旨」だったと釈明投稿しましたが、なぜそのタイミングで円安容認ととれるキャッチーなワードを選んだのか疑問が残りました。また、首相の釈明にしたがって演説全文や釈明投稿を読んだ経済学者・市場関係者からは、「むしろ論旨が不明瞭になった」「やや前時代的」など厳しめの声が多くあり、発言の伝わり方に課題が残った印象でした。
高市首相は「間違ったら正す柔軟性が私の長所」と述べたことがありました。今回の2つの質問から垣間見えたような姿勢が今後も堅持されれば、「市場との対話」は今後しっかり噛み合っていくでしょう。
(シニアストラテジスト 稲留 克俊)
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