次期FRB議長はハセット氏に決まり?
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◆「ハセットFRB議長」誕生か
来年5月に任期満了を迎えるパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の後任選定プロセスが大詰めを迎えているようです。トランプ米大統領は2日、次期議長人事を来年初めに発表する意向を示しました。同日にホワイトハウスで行われた会合では「ここに将来のFRB議長候補がいる。ありがとう、ケビン」と話し、その場に同席していたNEC(米国家経済会議)のケビン・ハセット委員長の起用を強く示唆しました。
米WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙は3日の記事で、トランプ政権が次期議長候補者の面接プロセスを中止したと報じました。人事が既に固まったためとしています。同紙は別の記事で、トランプ大統領がベッセント財務長官をFRB議長候補に起用する意向も持っているとし、「“ハセットFRB議長”への流れを変えられるのはベッセント氏だけ」と記しました。ベッセント氏自身がFRB議長ポストに関心を持っていないことを、かねてから繰り返していますので、ハセット氏が最有力とみておくのが自然でしょう。
◆トランプ氏との近さが特徴
ハセット氏はもともと、他の候補者と比べて、特にトランプ大統領に近い人物だとみられてきました。第1次トランプ政権でCEA(大統領経済諮問委員会)委員長を務めたことや、トランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏のプライベート・エクイティ投資会社への関与があること等がその理由です。そのため、実際に議長に就任すれば、大統領の望むような緩和的な金融政策運営を進めるとみられ、株式市場のサポートになる可能性があります。
一方、大統領に対する距離の近さを懸念する声も出ており、今後の議会承認プロセスで議論になる可能性はあります。また、3日の英FT(フィナンシャル・タイムズ)紙は、大手債券投資家がこの人事に対して懸念を示したと報じました。債券投資家は、近すぎる関係であるがゆえにFRBの独立性が脅かされ、インフレのコントロールに失敗する可能性を警戒しているようです。
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◆FRBの独立性を巡る懸念
実際、過去には失敗例があります。共和党のニクソン大統領が、1972年の大統領選挙を見据えて、FRBに対して露骨に金融緩和を要求し、当時の議長だったアーサー・バーンズ氏が利下げを進めました。ニクソン氏は利下げによる好景気の影響もあって大差で再選を果たしましたが、その後に大インフレに直面してしまいました。大インフレの理由は1973年の石油ショックやニクソン氏の過剰な財政政策などもあり、バーンズ氏だけのせいとは言えない面もあります。ただ、バーンズ氏は今でも「FRB史上、最も独立性を欠いた議長の1人」とされており、自身も退任後の1987年9月の有名な講演「The Anguish of Central Banking」で政権の意向に沿った政策判断をしてしまったことを認めました。
今年の4月にも、ヒヤリとする場面がありました。トランプ大統領がFRBに対して露骨に金融緩和を求めたことが、FRBの独立性への懸念を強め、米国市場で株価・債券価格・為替が同時に下落する「米国売り」(トリプル安)をもたらしました。トランプ大統領はこうした市場の値動きを見て、パウエル議長の即時解任への言及を止めるなど、過度のFRBへの攻撃を自制するようになったとみられています。
◆今のところ市場は概ね冷静
ハセット氏は政権との過度の近さを警戒する声に対して『誰かがFRB議長となれば、その仕事は独立して、経済指標に基づく形で行われる』などと反論しています。今のところ金融市場では、インフレ予想や長期金利が急騰したり、米ドルが売り込まれたりする事態には至っておらず、ハセット氏の発言を概ね信用して動いている格好です。ただ、金(ゴールド)がこのところ再上昇している背景に、FRBや米ドルへの不安があるとの解説もあります。
FRB議長の任期は4年間と長期にわたり、その間に中間選挙や大統領選挙にも直面します。政権に過度におもねることなく、自らの判断と責任で政策を遂行する力が求められます。
(シニアストラテジスト 稲留 克俊)
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