中国・アジア株式市場の見通し 米中貿易摩擦の進展に注目

中国・アジア株式市場の見通し 米中貿易摩擦の進展に注目

 

【ポイント1】大幅調整となったアジア株式市場

相対的に戻りが鈍い、中国、アセアン

■MSCI AC アジア(除く日本)(以下、アジア株価指数、米ドルベース)は、2018年1月26日に史上最高値を更新した後、調整局面に入っています。2月は米国の長期金利上昇を受けた世界的な株式市場の調整の影響により下落しました。続く3月は米中貿易摩擦の激化懸念が株価下落の主因です。

■足元では、株式市場は概ね落ち着きつつあります。安値からの戻りを見るとアジア(除く日本)は+1.3%となっています。米国の同+2.5%や日本の同+2.1%に比べると、やや出遅れ感があります。これは、韓国、台湾市場が回復傾向を強めている一方、中国の戻りが相対的に小さく、アセアンが引き続き調整気味で推移しているためです。米中貿易摩擦が中国、そして中国がサプライチェーンを展開している東南アジア諸国の経済悪化懸念に結び付いているためと考えられます。

 

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【ポイント2】米中貿易戦争に発展するリスクは高くない

<米中貿易摩擦は最終的には「管理された貿易摩擦」へ>

■3月の相場調整の主因である米中間の貿易摩擦について現状を確認します。米国は4月3日に中国に対する制裁関税25%の対象候補として1,333品目(約500億ドル相当)のリストを公表しました。これに対し、中国は「同規模で対抗措置を講じる」とした上で、4日に米国からの輸入品106品目に対する25%の追加関税賦課の方針を発表するなど、両国間での緊張が高まりを見せています。米国は中国からの輸入品目のうちハイテク製品をターゲットとし、中国は米国からの輸入品目のうち大豆や自動車関連、航空機等をターゲットとするなど、貿易取引における中核に及び始めています。

■もっとも、米国は手続きの期間として60日を設け、中国も「関税適用の時期は別途発表する」とするなど、お互いにカードを見せ合う段階であることから、外交面での動きを注視する必要がありそうです。仮に貿易戦争へと発展すれば両国にとってだけでなく、アジアを含め世界経済にマイナスの影響を与えることは明白であり、こうした事態には至らないと考えられます。最終的には、(1)中国の貿易黒字減らし策と、(2)知的財産やIT関連サービスを巡る貿易ルールをターゲットとした「管理された貿易摩擦」になってくると思われます。

<アセアンへの影響>

■貿易摩擦の高まりは、中国の経済成長の恩恵を貿易で享受するアセアン諸国にとっても懸念材料です。アセアンの輸出に占める中国のウエイトは12.9%、対中貿易依存度は名目GDP比で4.6%と比較的高くなっています。ちなみに対米輸出のウエイトは13.1%、対米貿易依存度は4.7%と、米中貿易摩擦の成り行きには神経質にならざるを得ないと考えられます。

<続く「情報技術」の需要>

■17年のアジア各国の好調な輸出は半導体関連市場の伸びがけん引役でしたが、スマホ需要の一巡から18年は拡大にブレーキがかかる可能性があります。ただ、高速通信の普及に伴う使用データ量の増加を背景にデータセンターなどの「ストレージ・サーバー」や自動運転技術などで半導体搭載量が増えている「自動車」の2分野は中長期的な視点から需要の拡大は続く見込みです。

■また、今回の輸入関税の対象は米国が中国から輸入している額の多くても10%程度であり、中国側の被害はあまり大きくないと思われます。したがって、今回の輸入関税の発表に込められた米政権から中国へのメッセージは、『貿易戦争を始めるつもりはなく、米政権の焦点はこれ以上の知的財産の侵害を食い止めること』と考えることができそうです。今後の米中の交渉を待つ必要がありますが、中国も技術開発を進めてきており、現実的な落とし所が見つかると期待されます。

 

 

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【今後の展開】アジア株式市場の見通し

 

<中国株式市場は引き続き「情報技術」セクターが主導>

■中国の株式市場は、米国の保護主義措置に端を発した米中貿易摩擦が激化する懸念により、当面変動性の高い展開が予想されます。6月初旬にかけて米国の対中関税に関する大枠の第一弾が設定される見通しですが、品目リスト、中国の対応、米中間の交渉過程などによって、市場へのインパクトは変化すると思われます。

■しかしながら、ハイテク産業の生産上振れが続くなど、中国景気は底堅く、企業業績も「情報技術」や「一般消費・サービス」を中心に堅調さを維持しています。中国には13億人の消費市場があり、2020年まで見渡しても2桁の増益が続く見通しに変化はなく、中長期的に業績の伸びに支えられた株価上昇が期待できそうです。

<アセアン市場は企業業績の見極めが必要に>

■アセアン市場(MSCI AC アセアン)のセクター別時価総額の分布を見ると、「情報技術」は0.3%と低い一方、「金融」が37%、「資本財・サービス」が11%と高くなっており、米国の利上げや米国・中国の経済動向に影響を受けやすくなっています。現時点では、(1)米中貿易摩擦問題は軟着陸が可能、(2)米国・中国の景気減速のリスクは低い、など、アセアンの景気と企業業績が大きく下振れするリスクは小さいと見られます。加えて、各国とも内需が総じて堅調です。アセアン市場の企業業績を見極める必要がありますが、年後半に向けて下値を固める展開となりそうです。

<アジア株式市場は割高感は解消、業績見合いの成長を期待>

■中国が業績をけん引し、上昇基調を支えると期待されます。アジア通貨インデックスは堅調に推移しており、資本流出のリスクは限定されそうです。予想株価収益率は2006年以来の平均値に回帰しており、割高感はありません。株価は200日線も割れておらず、株価の上昇モメンタムは続いていると考えられます。

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(2018年 4月 5日)

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