ASEAN4の景気と金利 金融政策は中立へ:長期金利は安定的に推移

ASEAN4の景気と金利 金融政策は中立へ:長期金利は安定的に推移

【ポイント1】景気は底堅い動き

物価は低位安定が継続

■2016年の東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要4カ国(ASEAN4=インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン)の経済は、低いインフレ率や緩和的な金融政策を背景に、内需を中心に底堅く推移しました。16年の実質GDPは、インドネシアが前年比+5.0% 、タイが同+ 3.2% 、マレーシアが同+4.2%、フィリピンが同+6.8%と、安定した成長となりました。

■17年は、トランプ米大統領の保護主義的な政策等がリスク要因ですが、中国経済の安定や商品市況の上昇基調から、引き続き緩やかな景気拡大の継続が見込まれます。

■物価動向については、原油価格や資源価格の底入れからやや上向きとなっているものの、16年を通して、低水準が維持されました。大幅な原油高は見込みにくいため、17年も全体としては落ち着いた動きにとどまると見られます。

 

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 【ポイント2】金融政策は中立へ

通貨安圧力を抑制

■低インフレや通貨の安定を背景に、ASEAN4の中央銀行は、15年以降、フィリピンを除き緩和的な金融政策を進めてきました。16年には、利下げの実施が目立ちました。

■マレーシア中央銀行は16年7月に7年ぶりに政策金利を引き下げました。インドネシア中央銀行は16年に6回の利下げを実施しました。タイ中央銀行は15年4月に利下げして以降、金融緩和を維持しています。

■しかし、ここに来てASEAN4の金融政策には変化が見られます。16年に断続的に利下げを進めてきたインドネシアは、16年11月以降は金融政策を据え置きました。他の3カ国の中央銀行も足元で金融政策を現状維持としています。

■各国中央銀行のスタンスが変わった背景は、16年11月の米国の大統領選挙でトランプ氏が勝利したことで、米国の財政支出拡大による景気やインフレの上振れ観測から米長期金利が急上昇し、米ドル高が進行したことです。

■米ドル高に伴い通貨が下落し、米国への資金移動が起こったため、各国とも金融政策を緩和から中立方向へと舵を切ったと見られます。今後の各国の金融政策は現状維持が見込まれます。フィリピンは中央銀行が物価見通しを引き上げたため利上げの可能性があります。

■ただし、ASEAN4の金融政策は、好調な景気の下で物価が低水準で推移する見通しや各国が十分な外貨準備を保有していることから、高インフレや通貨防衛に向けた本格的な引き締めには至らないと見られます。

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【今後の展開】長期金利は安定的に推移

■米大統領選挙後に急落したASEAN各国の債券市場は、16年12月の米利上げ実施を経て落ち着きつつあります。金融政策が中立スタンスで運営されるなか、各国の長期金利は、米長期金利の動向をにらみながら、当面もみ合いが見込まれます。

■各国の長期金利は先進国に比べると相対的に高い水準にあります。世界的な低金利環境の下で投資家が利回りを追求する動きは継続すると考えられ、経済の基礎的条件が比較的良好なASEAN市場には世界から資金が流入する可能性があります。

 

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(2017年 2月 21日)

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