「原油価格」の反発は限定的(グローバル)

<今日のキーワード> 「原油価格」の反発は限定的(グローバル)

原油価格は7月以降軟調に推移し、代表的な指標であるWTI原油先物価格は8月24日、約6年半ぶりとなる37米ドル台をつけました。原油安の理由として、中国の景気減速で原油需要が減少するとの見方や、米国の石油リグ(掘削装置)稼働数が減少せず需給が悪化するとの懸念が強いことが挙げられます。ただし、石油輸出国機構(OPEC)による原油安をけん制するコメントなどをきっかけに足元では反発傾向にあります。

【ポイント1】中国の利下げ、OPECの月報で反発

「他の全ての生産国と交渉する用意がある」
■OPECが8月31日にウェブサイトに公表した月報で、今後のエネルギー業界の見通し改善にむけ、「他の全ての生産国と交渉する用意がある」と記されました。市場では、このことが、原油安をけん制するコメントと受け止められ、原油価格の上昇要因となりました。
■それに先立つ25日、中国当局が、政策金利の引き下げなどの金融緩和措置を決めたことで、27日には中国株式市場が底入れ、原油市場でも需要の悪化要因が緩和したとして、価格の反発につながりました。

【ポイント2】 原油の需給環境は不変、低位での推移が見込まれる

中国の景気が上向けば上昇圧力に
■OPECによる原油安けん制や、中国の金融緩和はあっても、当面の原油の需給環境は大きく変化していません。OPECの生産量はこれまでのところ大きく変わっていないことに加え、米国の石油リグ稼働数は6月以降ほぼ横ばい、イランの核協議合意で来年以降供給が増える見通し、中国の需要への懸念、などいずれも状況に変化はうかがわれません。
■当面の需給改善の要因として、中国の景気減速に歯止めがかかる兆しが見えるかに注目が集まります。

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【今後の展開】原油安は世界全体では緩やかな経済成長を支える方向

■原油安は全体としては恩恵が大きい
原油安により、原油輸入依存度の高いインドなどが大きな恩恵を受けると考えられます。経常赤字の縮小、インフレ低下による利下げ余地の拡大、燃料補助金削減による財政改善など、実体経済にとってプラスの効果が期待されます。

■日米の個人消費にとっても追い風に
また米国や日本でも、原油安はガソリン価格等の低下を通じて家計の実質所得を押し上げるため、消費の追い風となります。原油価格は当面低位で推移すると予想され、世界全体でみれば緩やかな経済成長を支える方向に作用すると思われます。

(2015年9月8日)

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