来週の金融市場見通し(2023年12月11日~2023年12月15日)

■来週の見通し

日銀の氷見野副総裁が、金融緩和が出口を迎えても、家計や企業にとって良い結果につながることは十分可能と述べたのに続き、植田日銀総裁が、年末から来年にかけ一段とチャレンジングな状況になると述べたことを受け、マイナス金利解除などへの思わくが強まっています。他方、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げサイクルが終了したとの見方が広がりそうです。8日の米雇用統計を受けた米金融市場の反応や米消費者物価指数(CPI)、日銀短観(12月調査)なども確認したいところです。

◆株価 :不安定な動きか

日本株は、不安定な動きとなりそうです。来週は、米欧の金融政策に関する会合が注目されます。足元のインフレや雇用の減速を受けて市場の米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)への利下げ期待は高まっていますが、今後の政策についてタカ派的な発信がされると、市場は嫌気しそうです。また、正副総裁が金融緩和解除への前向きな発言をしたことで、日銀の早期政策修正観測が高まっていることも株価の重しとなりそうです。

◆長期金利 :神経質な動き

米金利の低下を受け、国内の長期金利も一時0.62%まで低下しました。ただ、その後は日銀の正副総裁による金融緩和解除への前向きな発言などから、大きく上昇する動きになりました。米利上げサイクル終了も早期の利下げ観測が後退すると、国内金利にも上昇圧力がかかる可能性があります。とはいえ、翌週の18、19日に日銀金融政策決定会合を控え、神経質な状況が続きそうです。5年国債、20年国債入札も確認したいところです。

◆為替下値模索か

ドル円は、下値余地を模索する展開が見込まれます。米インフレの鎮静化傾向や米労働市場の減速を示唆する経済指標が散見される中、利上げサイクルの終了と来年前半の利下げ観測が高まっており、米長期金利は4.1%程度まで低下しています。そのような環境下、足元、日銀の金融政策修正観測がにわかに高まったことから、ドル円は一時141円台に急落しました。ドル円は、来週も引き続き、じりじりと下値余地を模索する展開となりそうです。

◆Jリート :底堅いものの、やや不安定な動きか

東証REIT指数は、週央までは日米の金利低下を受け、利回り面での投資妙味が増すとの見方から続伸したものの、日銀の正副総裁の発言などを受け、長期金利が大きく上昇したことや、株式市場が軟調な動きになり、投資家心理が悪化したことから、上げ幅を縮小しました。11月の東京都心のオフィス空室率が5か月連続で低下したことは安心材料です。下値では値ごろ感からの買いも強まるとみられ、底堅い動きは続きそうです。

来週の注目点

日銀短観(12月調査)  12月13日(水)午前8時50分発表

9月調査の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス9、同・非製造業がプラス27と、6月調査に比べ、ともに4ポイントの改善となりました。製造業は円安や供給網の改善が寄与し、非製造業については訪日外国人の増加が景況感を支えました。

12月調査の業況判断DIは、大企業・製造業、同・非製造業とも9月調査から横ばいとなりそうです。製造業では海外景気の減速が重しとなる一方、円安が続いていることや国内企業の省力化投資などが景況感改善に寄与する見込みです。また、非製造業では、引き続き訪日外国人の増加やレジャー需要の回復が景況感を支えそうです。

米消費者物価指数(11月) 12月12日(火)午後10時30分発表

10月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比3.2%の上昇となり、また、変動の大きい食品、エネルギーを除くコアCPIも前年比4.0%の上昇と、両指数とも前月から伸びが鈍化しました。

米連邦準備理事会(FRB)が進めてきた利上げなどの影響を受け、米インフレは引き続き鈍化傾向にあることが示唆されました。原油価格が下落する中、米労働市場の過熱感が後退していることや、貯蓄の減少などから個人消費も弱含み傾向であり、インフレの低下は今後も続きそうです。11月は総合で前年比3.1%程度、コアは同4.0%程度の伸びを想定しています。

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