来週の金融市場見通し(2022年12月12日~2022年12月16日)
■来週の見通し
前週の米雇用統計で労働市場の堅調さが示されたことに加え、11月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数が市場予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの警戒が広がっています。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5%と、前回から利上げ幅が鈍化するとみられます。今回の会合では政策金利見通しの引き上げ幅やパウエル議長の今後の金融政策についての発言が注目されます。FOMCを無難に通過したら、市場に安心感が広がることも想定されます。
◆株価 :底堅い推移に
日本株は、底堅い推移が予想されます。FOMCで0.5%の利上げにとどまった場合、市場では一旦好感されそうです。米国のインフレ鈍化観測も、内外株価を支える見通しです。また、新型コロナウイルス対策の緩和に伴う中国景気の回復期待も好材料となる見込みです。ただ、FRBが政策金利見通しを大きく引き上げた場合や、米消費者物価指数がインフレ率の高止まりを示した場合には、内外株価が不安定になる可能性もあり要注意です。
◆長期金利 :FOMCにらみも動きは鈍いか
来週のFOMCを受け、米長期金利は大きく動く可能性がありますが、国内の長期金利は0.25%付近での動きが続きそうです。物価上昇や円安を受け、日銀が金融緩和策を調整するとの観測もくすぶり、長期金利の低下が抑制されている状況です。一方、日銀は長期金利の上限を0.25%とするイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を堅持しており、この上限を大きく超えることはなさそうです。20年国債入札も確認したいところです。
◆為替 :上値重い
米景気の後退懸念を背景に、市場のリスク心理が悪化する中、米利上げ期待が低下していることから、米長期金利は3.4%台まで低下しています。それを受け、ドル円は上値の重い展開が続きそうです。来週発表の11月の米消費者物価指数やFOMCの結果を確認するまでは、大きな動きは見込まれないものの、市場では米利上げペースの減速観測を織り込んでおり、同指数が市場予想比で大きく上振れなければ、ドルの上値は限られそうです。
◆Jリート :方向感を探る
11月の東京都心のオフィス空室率は2か月連続で低下しました。オフィス空室率の上昇が一服していることは安心材料です。来週のFOMCで金融引締めに積極的なタカ派的な姿勢が示されると、投資家心理が悪化する可能性があります。ただ、米金融引締めが長期化し、米景気を下押しするとの懸念から米金利が低下した場合には、利回り面からの投資妙味が高まることも想定されます。引き続き新型コロナの感染拡大には注意が必要です。
■来週の注目点
日銀短観(12月調査) 12月14日(水)午前8時50分発表
9月調査の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス8、同・非製造業がプラス14と、6月調査に比べ、それぞれ1ポイント悪化、1ポイント改善となりました。製造業は資源高などに圧迫された一方、非製造業では経済の正常化期待に支えられました。
12月調査の業況判断DIでも、大企業・製造業は若干の悪化が見込まれる一方、同・非製造業では小幅な改善が見込まれます。ただ、製造業、非製造業ともに、円安などによるコスト高や、米欧の金融引締めなどによる世界景気の減速を背景に、当面、景況感の伸び悩みが予想されます。
米消費者物価指数(11月) 12月13日(火)午後10時30分発表
10月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比7.7%の上昇となり、市場予想を下回りました。また、変動の大きい食品、エネルギーを除くコアCPIも、同6.3%上昇と市場予想を下回りました。これまで高進が続いていた米国のインフレが、依然高水準とはいえ、ピークアウトする兆候が示されました。
10月は、前月比で食品や住居費・宿泊費が上昇したものの、医療サービスと中古車の価格は低下しました。今後も食品や住居費の上昇は続きそうですが、11月は総合で前年比7.3%程度、コアは同6.1%程度の上昇と、緩やかながら伸びの鈍化が見込まれます。
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