来週の金融市場見通し(2022年10月3日~2022年10月7日)
■来週の見通し
トラス英政権が大規模な減税策を打ち出したことから、英財政への懸念が広がり、英国債利回りが急上昇、ポンドが急落するなど金融市場が混乱したことを受け、イングランド銀行(英中銀)は市場を安定させるため、英国債の買い入れを発表しました。混乱は一服したものの、警戒は残ったままです。他方、米国では労働市場が堅調に推移する中、米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融引締めへの警戒が続きます。来週は、週末に米雇用統計発表を控え、徐々に様子見姿勢が強まることも想定されます。
◆株価 :上値の重い展開に
日本株は、上値の重い展開が予想されます。米国や欧州などの利上げ、それに伴う世界景気の後退観測が、引き続き内外の株価を圧迫する見通しです。米国では、インフレ率の顕著な低下が確認されない限り、利上げが続く見込みです。米欧のインフレ率は高水準で推移するとみられるため、投資家が積極的な投資を行いにくい環境が続きそうです。日本の景気回復は当面、勢いを欠くと予想されることも、日本株の上値を抑える見通しです。
◆長期金利 :高止まりか
財政懸念から英国債利回りが急上昇したことを受け、長期金利は再び日銀が許容する上限の0.25%まで一時上昇する動きになりました。一時4%を付けた米長期金利の上昇は一服していますが、高止まりしており、国内の長期金利は低下しにくい状況です。ただ、超長期債利回りが一段と低下してくると、長期債にも買いが入る(利回りが低下する)可能性があります。米長期金利にらみが続きますが、10年国債入札も確認したいところです。
◆為替 :堅調推移
ドル円は引き続き堅調な推移が見込まれます。パウエルFRB議長は景気を犠牲にしてもインフレ鎮静化を目指す強い姿勢を示しており、米金融引締めは長期化するとみられます。一方で日銀は金融緩和政策の継続を明言しており、日米の金融政策の方向性の違いを背景にドル円の堅調地合いは継続しそうです。また、相場状況によっては、日銀によるドル売り円買い介入の可能性はあるものの、ドル円の方向を変えるには力不足とみられます。
◆Jリート :値ごろ感
東証REIT指数は、米長期金利の上昇や、英金融市場の混乱を受けて投資家心理が悪化したことから売りに押されました。もっとも、新型コロナの感染拡大が鈍化していることや、政府が新型コロナの水際対策について緩和し、観光支援策の「全国旅行割」も開始する方針であること、また日銀が国内の長期金利の上昇を抑えていることは安心材料です。7月以来の1,900ポイント台半ばまで下落しており、値ごろ感からの買いも入りそうです。
■来週の注目点
日銀短観(9月調査) 10月3日(月)午前8時50分発表
6月調査の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス9、同・非製造業がプラス13となりました。3月調査に比べ、それぞれ5ポイント悪化、4ポイント改善となりました。製造業では部品不足や資源高などが重しとなった一方、非製造業では新型コロナウイルスの感染者が一時減少したことが追い風となりました。
9月調査の業況判断DIは、大企業・製造業は若干の改善、同・非製造業では6月調査並みが見込まれます。製造業は、中国の行動制限緩和に伴う部品供給増などに支えられたとみられる一方、非製造業は国内の感染に圧迫された模様です。今後については、国内外の景気低迷が製造業、非製造業の業況判断改善を抑制しそうです。
米雇用統計(9月) 10月7日(金)午後9時30分発表
8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比31万5,000人増となり、市場予想を上回りました。また、失業率は3.7%と、前月の3.5%から上昇しました。失業率の上昇は労働参加率の改善によるものとみられ、インフレ高進が続き、米景気の減速懸念がある中でも、米国の労働市場が引き続き堅調であることが示されました。
金融政策の引締めの影響や米景気の減速懸念もあり、次第に雇用者数の伸びは鈍化する可能性があります。9月の非農業部門雇用者数は前月比25万人増程度、失業率は3.7%程度を想定しています。
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