来週の金融市場見通し(2021年11月29日~2021年12月3日)

■来週の見通し

米国で景気過熱やインフレ加速が警戒される中、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長に、金融引締めにより慎重なブレイナード氏ではなくパウエル氏が再任される見通しとなり、FRBが米国債などを買い入れる量的緩和の縮小(テーパリング)のペースを速め、利上げを前倒しするとの見方が広がっています。来週は、米金融当局者の発言や週末の米雇用統計などを確認しながら、今後の米金融政策を占うことになりそうです。欧米の新型コロナウイルスの感染拡大や南アフリカの変異株の動向にも注意が必要です。

◆株価 :小幅な上昇か

日本株は、小幅な上昇が予想されます。南アフリカでの新しい変異ウイルスへの懸念から日経平均株価は一旦急落したものの、国内の感染者は依然抑制されているため、買戻しの動きが広がりそうです。また、米国の長期金利上昇が一服していることや、国際的なサプライチェーン(供給網)の混乱が和らぐ兆しがみられることも、株価を支える見込みです。ただ、変異ウイルスについては不明な点が多く、それをめぐる警戒感がくすぶりそうです。

◆長期金利 :国債需給にらみ

次期FRB議長にパウエル氏が再任される見通しとなったことを受け、米長期金利は一旦上昇しましたが、やや落ち着きを取り戻しています。国内では大規模な経済対策に伴う国債増発が22.1兆円に膨らむと伝えられていますが、今年度は利付国債を増発しない方針との報道を受け、需給悪化懸念はやや後退しています。国内の長期金利は、国債発行計画や国債投資家懇談会などを確認しながら、居所を探ることになりそうです。

◆為替 :ドル高地合いも動きは鈍そう

パウエルFRB議長の続投が決定したこと、米国でテーパリングのペース加速と早期利上げ観測が高まっていることなどから、特に米短・中期金利が上昇しており、ドル円は基本的に堅調な推移が見込まれます。ただ、欧米で新型コロナの感染が再び拡大する中、南アフリカでの変異株への懸念も加わり、リスク回避の動きから米長期金利が低下した場合、ドル円は利益確定のドル売りなども加わって、ゆるやかに下落する場面もありそうです。

◆Jリート :方向感を探る

東証REIT指数は、欧州の新型コロナ感染拡大などから、2,040ポイント台前半まで下落したものの、その後は値ごろ感からの買いが入り、持ち直しました。週末は変異株への警戒から売りが優勢も、押し目買いも入り底堅く推移しました。国内では新型コロナの感染が抑制され、行動制限も徐々に緩和される中、経済再開やGoToトラベルなどへの期待は下支え材料です。とはいえ、国債増発により長期金利が上昇することには注意が必要です。

来週の注目点

鉱工業生産指数(10月、速報値) 11月30日(火)午前8時50分発表

鉱工業生産指数は9月に前月比5.4%低下し89.5(2015年=100)となりました。サプライチェーン(供給網)の混乱による部品不足のため、特に自動車工業の生産が同28.2%減と大幅に減少しました。

10月の鉱工業生産指数は、小幅な上昇が見込まれます。ベトナムやマレーシアなどにおける工場再稼働に伴い、サプライチェーンの混乱がやや和らいだとみられます。ただ、半導体不足などは続いていることから、自動車などの生産が正常化するのは来年となる見通しです。

米雇用統計(11月) 12月3日(金)午後10時30分発表

10月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数は前月比53万1,000人増となり、市場予想を上回りました。また、失業率は4.6%と前月の4.8%から低下しました。米国の新型コロナ感染者数は高止まり傾向にあるものの、娯楽・ホスピタリティー分野に加え、製造業分野においても雇用者数は増加しました。

10月に平均時給は前年比4.9%上昇するなど、企業は高い賃金を提示せざるを得ない状況ですが、広範な分野で人材確保が進展している模様です。11月の非農業部門雇用者数は前月比50万人増程度、失業率は4.5%程度を想定しています。

 

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