来週の金融市場見通し(2021年9月6日~2021年9月10日)

■来週の見通し

米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを急がないとの見方や、菅首相が自民党総裁選には出馬せず、辞任の意向を示したことから、首相交代に伴う経済対策への期待が広がり、ややリスクオン(選好)に傾いています。他方、来週の欧州中央銀行(ECB)理事会ではパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)による債券購入の縮小が議論される見込みです。国内では緊急事態宣言が延長されるとみられます。政局の行方やコロナの動向に加え、欧米の金融政策をめぐる思わくに振らされることには注意が必要です。

◆株価 :利益確定売りが優勢に

日本株は、利益確定売りがやや優勢となる見通しです。日経平均は8月20日の終値から約2,100円上昇しており、一旦、高値警戒感が強まりそうです。また、菅首相の自民党総裁選への不出馬表明を受け、3日に株高が進みましたが、直ちに経済政策が大きく変わる可能性は低いため、持続的な株高材料としては力不足とみられます。とはいえ、米国の景気減速懸念がやや和らいでいることなどから、日本株の下落幅は限定的と見込まれます。

◆長期金利 :国内政局や欧米の金利にらみ

FRBのパウエル議長が前週末に利上げに慎重な姿勢を示したものの、ECBがPEPPの縮小を議論するとの観測から欧州主要国の国債利回りが上昇したことや、首相が交代した場合には経済対策が大規模になるとの観測が浮上したことなどを背景に、長期金利は0.035%前後まで上昇しました。緊急事態宣言の延長などに金利の上昇を抑制されながらも、経済対策への思わくや欧米の金利の動向に振らされる展開が続きそうです。

◆為替 :方向感乏しい

ドル円は、足元、米長期金利が1.3%程度の水準で小動きとなる中、110円を挟んだ狭いレンジで一進一退の動きが続いています。来週は、3日発表の米雇用統計の結果を受けた米長期金利の動きに注目ですが、世界的な新型コロナ変異株の感染拡大や中国経済の減速懸念などを背景に、当面、同金利の上昇余地は限定的とみられます。それを受け、ドル円も動意に乏しく、109円から111円のレンジの中で、方向感の乏しい展開が続きそうです。

◆Jリート : 一進一退の動きが継続

東証REIT指数は、週初は続伸も、急ピッチで上昇した反動から、売りが優勢になりました。コロナ禍で収益回復が遅れるとの懸念に加え、公募増資の増加による需給悪化への警戒も重しになりました。緊急事態宣言が再延長されると、投資家心理が悪化する可能性があります。もっとも、新型コロナの感染拡大が一服していることや、政府が新型コロナの感染拡大地域での行動制限の緩和策を検討していることは、市場を支えるとみられます。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(8月) 9月8日(水)午後2時発表

景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、7月に前月差0.8ポイント上昇の48.4となりました。企業動向関連と雇用関連が低下したものの、家計動向関連が上昇し、現状判断指数の上昇に寄与しました。

8月の現状判断指数は、小幅な低下が見込まれます。新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、緊急事態宣言の対象地域拡大や期間延長が決まったことなどが、景況感を圧迫したとみられます。ただし、ワクチン接種の進展などを背景に経済正常化期待も根強いことから、景況感の悪化は限定的なものにとどまっている模様です。

米生産者物価指数(8月) 9月10日(金)午後9時30分発表

米国の生産者物価指数(PPI)は7月、総合で前年比7.8%の上昇となり、また、変動の大きい食料、エネルギーを除くコアPPIも同6.2%の上昇となり、両指数とも市場予想を大きく上回りました。前年比の伸びは総合、コアともに2010年の統計開始後で最大となりました。

米国のワクチン接種進展と経済活動の再開を受け、特にサービス分野の価格が過去最大の伸びとなりました。宿泊業、卸売業、小売業など広範な分野でマージン(利幅)が拡大した模様です。当面、商品コストの上昇や供給面での制約などもあり、両指数とも堅調な推移が見込まれます。

 

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