来週の金融市場見通し(2021年8月30日~2021年9月3日)

■来週の見通し

27日のジャクソンホール会議でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、米国債などを買い入れる量的緩和の縮小(テーパリング)に前向きな姿勢を示し、来週末発表の8月の米雇用統計で雇用者数が大幅な伸びとなった場合には、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、テーパリング開始を決定するとの見方が強まる可能性があります。他方、東京都では新型コロナウイルスの感染拡大にピークアウトの兆しも出てきています。引き続き、コロナの動向に加え、アフガニスタン情勢にも注意が必要です。

◆株価 :やや軟調な展開か

日本株は、やや軟調な展開が予想されます。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による内外景気の先行き不透明感などが、株価を圧迫する見通しです。そうした中、米国や中国などで重要な経済指標の発表が相次ぐことから、それらの結果次第で株価が上下に変動しそうです。また、アフガニスタンをめぐる緊張がさらに高まった場合には、リスク回避の動きから株価が一時的に下落する可能性もあるため、その情勢に対しても注意を要します。

◆長期金利 :米金利にらみ

前週末に0.005%まで低下した長期金利ですが、米国での新型コロナのワクチン接種進展や巨額の財政支出への思わくから米長期金利が上昇したことを受け、0.025%程度まで上昇しました。ただ、20年国債入札は順調な結果で、良好な需給は継続しています。テーパリングをめぐる思わくに振らされる展開になりそうですが、米雇用統計を見極めようと、様子見姿勢が広がることも想定されます。2日の10年国債入札も確認したいところです。

◆為替 :方向感乏しい

ドル円は、足元、110円を挟んだ水準で一進一退の動きが続いています。年内にFRBのテーパリング開始を見込む市場参加者が多いものの、世界的な新型コロナ変異株の感染拡大や中国経済の減速懸念などを受け、米長期金利の上昇余地は限定的とみられます。また、来週末に発表の米雇用統計が今後の米金融政策を左右する可能性が高いとみられることから、それまでは110円を挟んだ狭いレンジ内で方向感の乏しい展開が続きそうです。

◆Jリート : 高値圏での底堅い動きが継続

東証REIT指数は、利益確定売りに加え、公募増資による需給悪化を警戒した売りから、25日まで5日続落し、2,100ポイントを割り込みました。ただ、その後は値ごろ感からの買いも入り、上昇に転じました。東京都の新型コロナの新規感染者数が連続で前週の同じ曜日を下回るなど、ピークアウトの兆しも出てきています。緊急事態宣言は重しながら、コロナ後の経済活動正常化への期待なども根強く、高値圏での底堅い動きが続きそうです。

来週の注目点

鉱工業生産指数(7月、速報値) 8月31日(火)午前8時50分発表

鉱工業生産指数は5月に前月比6.5%の低下となった後、6月は同6.5%上昇し99.6(2015年=100)となりました。5月に減少した自動車工業や生産用機械工業などの生産が、大幅な反動増を示しました。

7月の鉱工業生産指数は、前月比で小幅な低下が見込まれます。特に世界的な半導体不足が、自動車工業の生産を抑制している模様です。ただ、半導体不足については同製造装置の生産増を促す面もあるため、鉱工業生産全体の減少は当面、小幅なものにとどまる見通しです。

米雇用統計(8月) 9月3日(金)午後9時30分発表

7月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数は前月比94万3,000人増と約1年ぶりの大幅な増加となり、市場予想を上回りました。また、失業率も5.4%と市場予想を上回る低下となりました。新型コロナ変異株の感染拡大が続く中でも、労働市場の順調な回復が継続しているとみられます。

変異株の感染拡大は依然懸念されるものの、飲食・娯楽等ホスピタリティー分野を中心に労働需要は堅調な状況が続いており、労働市場の回復の流れは継続するものとみられます。8月の非農業部門雇用者数は前月比79万人増程度、失業率は5.2%程度を想定しています。

 

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