来週の金融市場見通し(2021年8月9日~2021年8月13日)

■来週の見通し

新型コロナウイルスの新規感染者数が5日には東京都で初めて5,000人、全国で1万5,000人を超え、過去最多となりました。政府はまん延防止等重点措置の適用地域に8県を追加するなど、厳しい状況が続きます。ただ、ワクチンの2回接種者の割合が30%を超えてきていることは安心材料です。他方、米国ではワクチンを接種済みの人にも感染が広がっており、集団免疫獲得には時間がかかるとの見方も出てきています。来週は、コロナの動向に加え、米消費者物価指数など、内外の経済指標も確認したいところです。

◆株価 :底堅い展開に

日本株は、底堅い展開が予想されます。国内における変異ウイルスの急拡大が懸念されるものの、日米の企業業績への期待が、株価を支える見込みです。特に米国では好決算が相次いでおり、それを受け米国株は高値圏で推移しています。これを背景に、日本市場でもリスク回避姿勢が一旦後退しそうです。ただ、国内景気や米国のインフレをめぐる不透明感が株価の重しとなる可能性もあるため、それらに関する内外の経済指標が注目されます。

◆長期金利 :米長期金利にらみ

米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長が、利上げに必要な条件は2022年末までに満たされると述べるなど、FRB高官から金融政策の正常化に前向きな発言が相次いでいます。新型コロナの感染拡大などは国債の買い材料ながらも、米長期金利の一段の低下は限定的になる可能性があります。一時ゼロ%まで低下した国内の長期金利も、低下し過ぎとの見方も手伝い、僅かながら押し上げられる可能性があります。

◆為替 :米雇用統計次第か

来週のドル円は、今週末発表される米雇用統計(7月)の結果次第となりそうです。FRBがテーパリング(量的緩和の段階的縮小)を開始するには米労働市場の明確な改善が必須であることから、同指標に注目が集まっています。同指標が市場予想を上振れした場合、ドル円は米長期金利の若干の上昇を受けて、110円台に上昇する可能性があります。しかし、市場予想通りか下振れした場合は、再度109円割れを模索する展開が想定されます。

◆Jリート :高値もみ合い

東証REIT指数は新型コロナのインド型(デルタ型)の感染が広がっていることへの警戒が広がる中、3日まで4営業日続落したものの、その後は値ごろ感から買いも入り、持ち直す動きになりました。長期金利が一時ゼロ%まで低下するなど、低位で推移していることは安心材料です。分配金利回りの高さに着目した買いも引き続き期待できます。もっとも、新型コロナの感染拡大が続いていることから、上値は限定的になりそうです。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(7月) 8月10日(火)午後2時発表

景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、6月に前月差9.5ポイント上昇の47.6となりました。東京などに対する緊急事態宣言が6月後半に一旦解除されたことや、新型コロナウイルスのワクチン接種進展などを受け、飲食関連などが顕著に上昇しました。

7月の現状判断DIは、5ポイント前後の低下が見込まれます。感染が急拡大する中、東京などの緊急事態宣言が7月前半に再発令されたことから、飲食関連や小売関連などが低下に転じる見込みです。とはいえ、外出自粛の動きは限定的となっているため、現状判断DIは昨年春に比べると小幅な低下にとどまりそうです。

米消費者物価指数(7月) 8月11日(水)午後9時30分発表

6月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比5.4%の上昇となり、市場予想を上回るとともに、2008年以来の大幅な伸びとなりました。また、変動の大きい食料、エネルギーを除くコアCPIも同4.5%上昇と市場予想を上回り、1991年以来の大幅な伸びとなりました。

米国で経済活動の制限が解除される中、中古車価格が大幅上昇したほか、コロナ禍で打撃を受けた娯楽や飲食、ホテル宿泊などサービス分野での消費回復が価格上昇の要因とみられます。引き続き、7月は総合で前年比5.3%程度の上昇、コアは同4.3%程度の上昇が見込まれます。

 

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