イーソル<4420> 組込みソフトの中でも高度な技術を要するリアルタイムOS(RTOS)に強みを持つ

2018/10/23

自動車向けの中心とする組込みソフトウェア製商品と関連サービス等を提供
組込みソフトの中でも高度な技術を要するリアルタイムOS(RTOS)に強みを持つ

業種: 情報・通信業
アナリスト: 大間知淳

◆ 自動車向け等の組込みソフト製商品と関連サービス等を提供
イーソル(以下、同社)は、組込みソフトウェア事業とセンシングソリューション事業を展開している。

セグメント別売上高が開示されている16/12期以降を見ると、組込みソフトウェア事業とセンシングソリューション事業の売上高構成比は、概ね9:1で推移しており、75年の設立時からの事業である組込みソフトウェア事業を事業基盤としている。

◆ 組込みソフトウェア事業
組込みソフトウェア事業において、同社グループは、国内外の自動車関連メーカー、デジタル家電メーカー、産業機器メーカー、医療機器メーカー等に対して、(1)組込機器向け「RTOS(リアルタイム・オペレーティング・システム)」の開発・販売や、組込みソフトウェア開発のためのツールの販売(以上、ソフトウェア製商品)、(2)組込みソフトウェアの受託開発としての組込みソフトエンジニアリングサービス、組込みソフトウェア開発にかかわるコンサルティング、組込みソフトウェア開発エンジニアの教育(以上、エンジニアリングサービス等)を行っている。

同社とフランスに設立した連結子会社のeSOL Europe S.A.S.が、RTOSの開発・販売と、エンジニアリングサービスを担当しており、連結子会社のイーソルトリニティが開発支援ツールの販売や、開発支援コンサルティング、エンジニア教育を担当している。

同社のRTOSは個別の応用市場に特化しない産業横断的な技術要素によって開発されているが、特に高い成長が期待される自動車市場に対しては、デンソー(6902東証一部)、日本電気(6701東証一部)の連結子会社の日本電気通信システムと16年に設立したオーバス(出資比率は、デンソー51%、同社35%、日本電気通信システム14%)が事業主体となっている。

RTOSは、組込機器向けに特化したオペレーティング・システムであり、ネットワーク等の通信機能、ハードディスクやSDカード等のストレージデバイスにデータを書き込むためのファイル機能や各種デバイスドライバ等を備えている。RTOSは、コンピュータの中枢部であるCPU(中央演算処理装置)が新しくなれば変更する必要があるため、技術的に大きく進化したCPUが組込み機器に採用される毎に、同社では新たなRTOSを開発している。

高機能な組込機器では、マルチコアプロセッサと呼ばれる、複数のプロセッサコアを一つのCPUパッケージに搭載したものが現在の主流となっている。同社の主力RTOSである「eT-Kernel (イーティーカーネル)」は、このマルチコアまでをサポートしており、自動車や医療機器等の安全が重視される組込み機器の開発において必要となる「機能安全規格」の認証を海外の認証機関から取得している。

将来の高機能組込み機器では、プロセッサコアの数を更に増やしたメニーコアと呼ばれる技術の利用が進むと考えられている。同社の最新RTOSである「eMCOS (エムコス)」は、シングルコアからメニーコアまでをサポートしており、機能安全規格の認証も受けている。

組込みソフトウェア事業におけるソフトウェア製商品とエンジニアリングサービス等の売上高構成比は、数値が開示されている17/12期以降では、概ね20~25% : 75~80%で推移している(図表1)。

◆ センシングソリューション事業
センシングソリューション事業は、(1)車載プリンタやハンディターミナルの販売と、(2)センサーネットワークシステムの構築によって構成されている。ただし、センシングソリューション事業のおけるサービス別売上高は開示されていない(図表2)。

◆ 大手自動車・電機のグループ企業が上位を占める取引先
主要分野の取引先としては、自動車関連では、持分法適用関連会社オーバス、トヨタ自動車(7203東証一部)、日産自動車(7201東証一部)、マツダ(7261東証一部)、ダイハツ工業、デンソー、アイシン精機(7259東証一部)グループ、独Continentalグループ、米Delphi Automotive等が名を連ね、デジタルカメラ関連では、ソニー(6758東証一部)の連結子会社であるソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ、オリンパス(7733東証一部)グループ、リコー(7752東証一部)グループ等が挙げられている。

中でも、オーバスを含めたデンソーグループと、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズを含めたソニーグループへの依存度が高く、その販売高を合計した金額は、売上高の4~5割程度を占めている(図表3)。

◆ ソフト販売とエンジニアリングサービスのシナジー効果を追求
組込みソフトウェア事業の2~3割程度を占めているソフトウェア製商品は、RTOSと開発支援ツールに分けられる。RTOSの収益モデルとしては、顧客に対して開発する使用許諾を与える開発ライセンスと、組込み機器上での使用許諾を与えるロイヤリティ、保守活動のための保守ライセンスが存在し、エンジニア数に直接には依存しない高収益ビジネスである。

同社は、組込みソフトウェアを設計・開発するエンジニアが利用する開発支援ツールを自社製、他社製を問わず販売しており、その収益モデルとしては、開発ライセンスと保守ライセンスが存在する。

ソフトウェア製品を開発、維持するためには、新製品開発のための研究開発投資とリビジョンアップと呼ばれる既存製品に対する投資が必要であり、同社は総売上高の10%程度をその投資額として振り向けている。

一方、エンジニアリングサービス等は、エンジニアリングサービス、エンジニア向けの教育/トレーニング、コンサルティングによって構成されるが、プロジェクトベースで顧客に役務を提供している。同サービスは売上高の拡大がエンジニア数に依存する低収益ビジネスである。

ソフトウェア製商品のユーザーの多くは、同社に個別の機能追加等の要求を寄せてくるため、同社ではエンジニアリングサービスとして案件を受注することで、顧客との取引の継続や、新たなソフトウェア製品の開発に繋げている。実際、同社には10年以上の取引歴を持つ顧客が多数存在しており、ソフトウェアの販売とエンジニアリングサービスのシナジー効果が事業規模の拡大の基盤となっている模様である。

ソフトウェア製商品とエンジニアリングサービス等は、産業横断的に利用される技術基盤であるが、電子化が急速に進展している自動車関連に対しては、持分法適用関連会社オーバスが自動車メーカーや自動車部品メーカーにサービスを提供する体制を敷いている。

同社がオーバスに販売したソフトウェア製品において、決算期末時点でオーバスの在庫として残った金額に対する同社の利益相当分は、未実現利益として同社の売上高及び営業利益から控除され、オーバスにおいて在庫が販売された際に控除されていた未実現利益が同社の売上高及び営業利益に加算される構造となっている。結果として、同社が販売したソフトウェア製品のオーバスにおける販売・在庫の変動が同社の業績に大きな影響を与えている。

一方、センシングソリューション事業の売上高は、物流関連ビジネスとセンサネットワーク関連ビジネスによって構成されている。同事業の中心はハードウェアの販売であるが、同社は製品の企画設計と販売に特化しており、製造は全て外部に委託している。

物流関連ビジネスで取り扱っている常温ハンディターミナルについては、他社製のものを仕入れていることから同社の製品に比べて売上総利益率が低くなっている。18/12 期においてはその取り扱いを縮小したため、18/12 同第1 四半期の同事業の売上高は、207 百万円と前年同期比11.6%減少した。

費用面では、売上原価は人件費と外注費が大きな比重を占めている模様であるが、その内訳は開示されていない。販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、人件費と研究開発費が中心となっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。