ライトアップ<6580> 19 年 3 月期は減益計画も「J エンジン」が成長牽引役であることは不変

2018/07/02

中小企業を黒字にするための経営支援サービスをクラウドで提供
19 年 3 月期は減益計画も「J エンジン」が成長牽引役であることは不変

業種: サービス業
アナリスト: 藤野敬太

◆ クラウドを用いた中小企業向け経営支援サービスを展開
・ライトアップ(以下、同社)は、中小企業を黒字にするための経営支援サー ビスを提供する企業である。現在は、中小企業向けの経営改善ツールであ る「J エンジン」、共同仕入れネットワークを介した IT ツールの仕入・開発サ ービスである「JD ネット」が成長の主軸となっている。

同社の事業は、クラウドソリューション事業とコンテンツ事業の 2 つの報告セ グメントから構成される(図表 1)。クラウドソリューション事業には、「J エンジ ン」と「JD ネット」の 2 つのサービスが含まれ、全体の売上高の 76.1%を占め る主力事業となっている。

◆ クラウドソリューション事業~「Jエンジン」
・同社が提供する「経営課題解決エンジン(J エンジン)」は、クラウド型の中小 企業向けの経営コンサルティングサービスとして開発され、14年4月にサー ビスが開始された。

「J エンジン」に会員企業が自社の抱える経営課題を入力すると、経営課題 を解決するために適した商材やサービスが提案され、詳細情報を請求する ことができる仕組みとなっている。経営課題は、生産性向上に資する「業務 の IT 化」と「人材の採用・研修」、資金繰り改善に関連する「営業支援・販促 ツール」と「資金手段(士業活用)」の 4 領域に分類される。

上記の提案はシステムにより自動で行われ、「J エンジン」を利用すること自 体は無料である。しかし、詳細な提案を受けたい場合には、同社の事務局 スタッフであるコンサルタントによる支援(経営コンサルティングサービス)を 利用することができる。その場合は、約 2~3 カ月の利用で約 30 万円がかか る。

集客は、ウェブ上でのマーケティングのほか、リアルな経営勉強会の開催を 通じて行われるが、同社では後者を重視している。勉強会の開催は、自社 開催、共催を含めて全国 47 都道府県で年間約 600 回となり、約 20,000 社 の経営層に対して説明を行っている。その結果、18/3 期末時点で、登録会 員は累計で、ウェブ経由 12,650 社、勉強会経由 42,533 社となった(両者は 一部重複がある)。また、経営コンサルティングサービスや企業内研修等の 有料サービスの提供先は 18/3 期末時点で 1,517 社となった。

◆ クラウドソリューション事業~「JD ネット」
・「JDネット」は、共同仕入れネットワークを介したITツールやサービス等の商 材の仕入・開発サービスである。

このサービスに関わるのは、仕入先となるサービス提供企業と、販売パート ナーに相当する参加パートナー企業であり、サービス提供企業から仕入れ た商材を参加パートナー企業が販売するという商流となる。サービス提供企 業にとっては、自社で開発した商材の販売チャネルを広げることができ、参 加パートナー企業にとっては、中小企業の顧客の需要にあった経営支援関 連の商材の品揃えを拡充することで収益をあげることができるというメリットが ある。別の言い方をすれば、「JD ネット」は、サービス提供企業及び参加パ ートナー企業に対する経営支援のツールになっている。

また、同社にとっても、(1)自社で開発した高粗利益の商材の拡販、(2)他 社商材の一括仕入れによる高マージンの確保、(3)参加パートナーへの営 業支援サービスを通じた「J エンジン」の提供先の拡大といった効果が期待 できる。

代表的な商材として、月額9,800円から利用できる「SEO対策支援ツール」、 ソニー(6758 東証一部)が開発した経営者育成研修ツールの「MG 研修(オ ンライン版)」、スカイプ連動のオンライン語学学習システムの「WTE」等が挙げられる。なお、「J エンジン」も「JD ネット」内で開発された IT サービスの一 つであった。18/3 期末時点で 66 商材が提供されている。

同社の収益は、参加パートナーからもたらされる、「JD ネット」登録料(初回 50万円)、営業支援サービス利用料(月5万円)、商材売上時の販売マージ ンの 3 種類から構成される。

販売パートナーは 808 社で、そのうち約 19%にあたる 155 社が営業支援サ ービスを利用している。

◆ コンテンツ事業
・同社は02年にサイバーエージェント(4751東証一部)のコンテンツ部門のメ ンバーが中心となって設立された会社で、設立当初はメールマガジンの編 集代行を行っていた。これが現在のコンテンツ事業の前身となっている。現 在、コンテンツ事業は、企業のメールマーケティングやウェブマーケティング 等の企画制作開発を請け負う、クラウドソーシング型受託サービスとして展 開されている。

顧客は企業のウェブ担当部門等であり、同社はメールマガジンの制作、顧 客のSNSコミュニティの活性化、ウェブコンテンツの企画・制作等を受託して いる。顧客より請け負った受託案件は、同社の事務局により、ネットワーク化 されたクリエイターやブロガーに発注される。クリエイターやブロガーによっ て制作された成果物は、事務局での品質チェックを経て、顧客へ納品され る。案件はあくまで同社が顧客から受託する形をとるため、顧客からの受注 額が売上高、クリエイターやブロガーへの対価が原価となる。

17年12月末時点で、同社によりネットワーク化されているクリエイターやブロ ガーは 11,800 名にのぼる。この規模のおかげで、たいていの種類の案件を 受託することが可能となっている。コンテンツ事業において、同社は案件を 選り好みしない。同社にとって、コンテンツ事業は企画・開発ノウハウの蓄積 の役割も担っており、コンテンツ事業で得られたノウハウやリソースは、クラウ ドソリューション事業でも活用されている。

◆ 事業ごとの強み 
・クラウドソリューション事業における同社の特色及び強みとして、(1)コンサ ルティング及び商材提案を大量にこなすことができる自動化された「J エンジ ン」の仕組み、(2)「J エンジン」の集客過程での中小企業経営者との接点、 (3)「JD ネット」を通じて、中小企業向けの経営支援関連の商材が集まる仕 組み、(4)「JD ネット」の全国販売ネットワークの規模が挙げられる。

コンテンツ事業における同社の特色及び強みとして、(1)創業来 17 年にわ たって継続してきたことによって実績とノウハウが蓄積されていること、(2)11,800 名に及ぶクリエイター・ブロガーのネットワークが構築されていること、(3)案件を選り好みしないことで新しいトレンドへの対応が可能なことが挙げ られる。

 

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。