フツパー(478A)課題発見/分析/AIモデル構築/実装/運用・改善を一気通貫で提供

2025/12/29

AI技術で日本の製造業の課題を解決
課題発見/分析/AIモデル構築/実装/運用・改善を一気通貫で提供

業種:情報・通信業
アナリスト:髙木伸行

◆ AI技術で製造業の課題を解決
フツパー(以下、同社)は、外観検査自動化AI「メキキバイト」をはじめとする『画像認識AIサービス』、顧客のビッグデータのAI分析サービスである「カスタムHutzperAI」などの『分析AIサービス』などを提供している。24/12期の売上構成比は画像認識AIサービスが61.0%、分析AIサービスが37.4%、残りはAIによる人材配置最適化システム「スキルパズル」及び、インターネット接続不要の生成AIソリューション「ラクラグ」を提供する『その他AIサービス』である(図表1)。

同社は、広島大学出身の大西社長が製造業の最大の課題である人手不足をテクノロジーで解決したいという想いから、同じく広島大学出身の弓場取締役、黒瀬取締役とともに20年に創業した。社名のフツパー(Hutzper)は「大胆さや図太さ」を表すヘブライ語のchutzpahに由来し、起業を夢見て滞在していたイスラエルで出会った、その言葉の精神をいつまでも忘れずにいたいという大西氏の想いが込められている。

◆ 画像認識AIサービス
画像認識AIサービスの主力プロダクトであるメキキバイトは、顧客企業の製造ラインや検査対象に適した照明・カメラなどの選定から設置までの光学設計をはじめ、検査対象の不良検出のための最適なAIモデル構築並びに不良品の排除機構連携までを一気通貫で提供している。

AI判定は現場にあるPCに搭載したエッジAI注1として提供し、高速処理を可能にしている。また、システムの継続的な運用に向けてはクラウドシステムであるHutzper Insightを管理アプリケーションとして提供し、顧客自身によるAIモデルの精度の向上、品質管理を支援している。

ハードウェアのスポット販売に加えて、初年度はAI構築を20万円/月で、クラウド管理機能であるHutzper Insightのライセンスを98,000円/月で提供している。2年目以降はHutzper Insightのライセンス収入をサブスクリプションで得ている(一部、Hutzper Insightを伴わないソフトウェアだけの販売もある)。

メキキバイトは、「目利き能力を備えたアルバイト」として、気軽に利用してもらいたいという想いがサービス名に込められているように、利用者にとっては初期投資リスクを最小化でき、負担の少ない月額制での利用が可能となっている。従来のAI検査システムを自前で構築すると、設備投資やモデル構築費などで3千万円から1億円といった費用が必要となるケースと比較すると、同社のシステムは利用に向けてのハードルが極めて低い。

24/12期は72社に利用され、売上高は367百万円(前期比39.0%増)であった。また、メキキバイトのサブスクリプション契約における1ライン当たりの平均単価注2は20,356千円となった。内訳は、ハードウェア5,932千円、初年度のAI構築及びライセンス利用料3,819千円、2年目以降のライセンス利用料注310,604千円である。

◆ 分析AIサービス
顧客が保有するビッグデータを活用し、高度な分析力を活かして顧客のAI構築を支援するカスタムHutzperAIなどの分析AIサービスを提供している。24/12期は22社が利用し、売上高は225百万円(前期比5.6倍)であった。

現場データをもとにした在庫予測や故障予測等の分析サービスをスポット販売している。同社にとっては分析サービスを入口に次のビジネスにつながる可能性をもたらしてくれるとともに、ノウハウの蓄積にもつながる事業となっている。

◆ その他AIサービス
その他AIサービスとしては、製造工程における各人のスキルに応じたAIによる人材配置最適化システムであるスキルパズル及び、蓄積された社内ナレッジをインターネット接続不要で活用できるローカル生成AIソリューションであるラクラグを提供している。ラクラグは25年6月にリリースされた新サービスである。24/12期において、その他AIサービスは27社が利用し、売上高は9百万円であった。

スキルパズルは、生産計画に基づき、社員の能力や出退勤情報等から最適なシフト配置を瞬時に提案し、顧客企業の業務負担を軽減し、多能工化やスキルアップを促進できるサービスである。利用人数に応じた従量課金によるサブスクリプション型で提供されている。

ラクラグは、人手不足や世代交代に伴う経験値の希薄化という製造業共通の課題に対し、情報管理されたオンプレミス環境で安全にナレッジを循環させる仕組みをつくり、ベテランの知見を組織全体で活用できる形に変換し、生産性と品質の向上を支援している。

◆ 顧客の流入経路と主要販売先
顧客の流入経路については、凡その内訳としては展示会経由が4割、金融機関や商社といったパートナー経由が3割、残りがWebサイト経由を始めとしたインバウンド問合せなどである。

導入時の投資金額が相対的には大きくなるため、主要販売先は毎期異なるが、サブスクリプション型の事業モデルであるため、安定して取引がある先が多い(図表2)。

なお、製造業向けのサービスを提供しているにもかかわらず、24/12期の主要販売先に三菱総合研究所(3636東証プライム)が挙がっているのは、デジタル庁が三菱総合研究所に委託した「テクノロジーマップの整備に向けた調査研究」の実証事業者の1社となり、「センサー、AI解析などを活用した設備の状態の定期点検の実証」を担当したためである。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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