スタートライン(477A)障害者を支援する力と職域を開発する力が強み
障害者雇用に課題を持つ企業を主な対象とし障害者雇用を支援
障害者を支援する力と職域を開発する力が強み
業種:サービス業
アナリスト:髙木伸行
◆ 障害者雇用支援サービスを提供
スタートライン(以下、同社)の主力事業は25/3期売上高の99.3%を占める「障害者雇用支援サービス事業」で、民間企業等に対して障害者雇用の支援サービスを提供している。また、「障害者福祉事業」として、就労移行・定着支援サービス、就労継続支援B型サービスを提供しているが、25/3期の売上高構成比は.7%にとどまり、今後の事業という位置付けである。東京、神奈川、埼玉、大阪を始め各地で拠点を展開している(図表1)。
◆ 障害者雇用支援サービス事業
同社は、障害者雇用に取り組む民間企業などへ障害者雇用の支援を行っている。
同社が提供しているサービスには、(1)ロースタリー注1型障害者雇用支援サービスBYSN(バイセン)、(2)屋内農園型障害者雇用支援サービスIBUKI(イブキ)、(3)障害者雇用支援サポート付きサテライトオフィスサービスINCLU(インクル)及びINCLU ONE(インクル ワン)、25年4月開始のWOWOWコミュニケーションズ(横浜市西区)と共同開発した(4)応対品質向上型障害者雇用支援サービスRESQWO(レスクオ)、専門家や企業の持つノウハウと同社の持つノウハウを組合せて開発するサービス(5)TASKI(TASKI COFFEE)、及び(6)研修・コンサルティングがある(図表2)。
法定雇用率の引き上げにともない、企業は障害者雇用を拡大しなければならないが、障害者雇用のノウハウがないことや職域開発注2に頭を悩ませている。解決策の一つとして、農園型サービスが普及しているが、同社は障害者の働き方や職種の選択肢を増やすために、ロースタリー型障害者雇用支援サービスBYSN、障害者雇用支援サポート付きサテライトオフィスサービスINCLU、応対品質向上型障害者雇用支援サービスRESQWO、TASKI(TASKI COFFEE)といった職域を開発してきた。
同社は25年9月末時点で345社の企業と取引があり、2,359名の障害者を支援している。顧客企業の65%以上が上場企業並びにその関係会社で、業種に偏りはない。ちなみに25/3期における解約は1社もなかった。
障害者採用についても、創業以来1万名以上の選考を行っており、累計で500事業所以上の福祉施設との連携を行っている実績があり、障害者採用の豊富なノウハウを保有している。
また、同社の特色として、公認心理師、精神保健福祉士、社会福祉士、臨床心理士、産業カウンセラーの有資格者や社内研修を受けた200名以上の支援員が挙げられる。これらの支援員は、BYSN、IBUKI、INCLUの各拠点に常駐し、継続的な支援を行うことで、定着率や業務スキルの向上を図っている。また、同社の拠点以外の各現場でも障害者の継続的な支援を行っている。
(1)ロースタリー型障害者雇用支援サービスBYSN
BYSNは、コーヒーの焙煎業務を通して障害者の職域開発とスキルアップを目的とした障害者雇用支援サービスで、22年4月に新潟県三条市との行政連携により開始された(拠点の開設は同年9月)。25年9月末時点で、契約社数は75社以上、支援している障害者数は401名である。
利用企業に雇用された障害者は、BYSN専用の焙煎機で高品質なコーヒー豆を作り上げ、利用している企業内で飲まれたり、ノベルティとして活用されている。BYSNのロースタリーはカフェ同様の設備を有し、地域と連携したイベントの開催等も可能で、障害者は模擬業務を通じて、業務習得やトレーニングを行えるようにもなっている。
利用企業とは契約締結後に、顧客別に採用を支援する事務局を設置し障害者及び管理者の採用実務並びに初期研修、障害者への定着支援、職業能力開発支援を行っており、障害者の採用から、雇用後の定着、スキルアップ、就業場所の提供をワンストップで提供している。
(2)屋内農園型障害者雇用支援サービスIBUKI
屋内農園型障害者雇用支援サービスIBUKIは屋内型農園として、倉庫等の屋内に植物栽培装置を設置し、ハーブや葉物野菜を栽培している。収穫された作物は二次加工され、各利用企業にて活用されている。
25年9月末で23拠点、契約社数は200社以上、支援している障害者数は1,426名である。また、25/3期の解約は6社で、解約率注3は1.1%であった。なお、IBUKIについては、需要は強いもののエネルギーコストや初期開設費用が上昇していることから、当面は出店を見合わせている。
利用企業とは契約締結後に、顧客別に採用を支援する事務局を設置し障害者及び管理者の採用支援、初期研修、障害者への定着支援を行っている。
(3)障害者雇用支援サポート付きサテライトオフィスサービスINCLU/INCLU ONE
INCLU/INCLU ONEは、「職住接近」をコンセプトに09年の創業時に開始したサービスである。通勤の困難さを緩和するために郊外に完全バリアフリーなサテライトオフィスを開設し、支援員が常駐し、継続的な支援を行うことで、障害者、企業双方の課題解決を目指すサービスである。業務は、各利用企業のオフィス業務(事務作業)を中心に行っている。25年9月末の、契約社数は50社以上、支援している障害者数は464名である。
利用企業との契約締結後に、障害者の採用実務・初期研修・障害者への定着までの支援に加え、就業場所の提供を行うワンストップのサービスである。BYSNやIBUKIと同様に、INCLUの各拠点には、同社の支援員が常駐しており、継続的な支援を行うことで、定着率や業務スキルの向上を図っている。
INCLUは、障害者3名が基本パッケージのサービスだが、顧客からの要望に応え23年9月より障害者1名からでも利用が可能なINCLU ONEの提供を開始した。
利用企業とサービス利用契約を締結したのち、障害者が従事する業務の選定についてのコンサルティングを行い、同時に障害者の採用支援を行う。ただし、BYSNやIBUKIとは異なり、管理者の採用支援は行わない。
採用された障害者は利用企業の担当者による遠隔での指揮命令の下、各社のオフィス業務に従事する。同社の支援員は障害者とは定期的に面談を行うことで、トラブルなどの予兆を把握し、必要に応じて顧客の担当者ともコミュニケーションを取りながら、支援している。
(4)応対品質向上型障害者雇用支援サービスRESQWO
応対品質向上業務とは、コールセンターやコンタクトセンターのオペレーターの応対品質を向上させるための取り組みで、オペレーターの応対を定期的にモニタリングし、評価を行うことで、適切なフィードバックを提供したり、オペレーターのスキル向上を目的としたトレーニングや研修を実施したりするものである。
RESQWOについてはWOWOWコミュニケーションズが初期研修から日々の業務支援を行い、同社の支援員が障害者の体調管理や定着サポートを行うという役割分担となっている。収益モデルは運営サポート料を受け取るというストック型となるが、現時点では利用企業がなく、今後に備えて事業モデルを練り上げている段階である。
(5)TASKI(TASKI COFFEE)
TASKIは、社外のノウハウと、同社が培ってきた障害者雇用支援、就労支援のノウハウを掛け合わせることで、障害者に働く機会を提供していく様々なサービスの総称である。
24年6月より開始したTASKI COFFEEはTASKIシリーズの第1弾として、24年6月より開始された。ウエシマコーヒー(横浜市港北区)との協業で、高品質なコーヒーの抽出と障害者就労支援を掛け合わせて開発した職域である。1名から利用できるサービスで、25年9月末時点の契約社数は12社、支援している障害者数は27名である。
TASKI COFFEEは同社が提供する拠点内で障害者を雇用するのではなく、利用企業の拠点内で障害者を雇用する点が他のサービスと異なっている。同社の支援員は常駐しておらず、オンラインと月1回の定期訪問による支援となっている。
(6)研修・コンサルティング
様々な顧客の課題に合わせたソリューションを提供している。具体的なサービスとしては、障害者採用支援、職域開発、特例子会社設立支援、定着支援、障害者及び管理者向け研修などが挙げられる。
◆ 障害者福祉事業
障害者福祉事業として、就労移行・定着支援サービスFITIME(フィティミー)、就労継続支援B型サービスGOOD THE GOOD(グッド ザ グッド)を提供している。
FITIMEは、従来は一般事務職等への就労を想定した総合型として展開していたが、25年1月に飲食、アパレル、販売などのサービス業の専門スキル特化型にサービス内容を変更した。現在は東京都渋谷区とさいたま市の2拠点を持つが、利用者集客方法や効率的な運営手法の確立を通して、26/3期中の単月黒字化を目指している。
就労継続支援B型サービスとは、病気や障害により一般企業で働くことが難しい人が、雇用契約を結ばず、また最低賃金の保障もないが、自分のペースで就労訓練や生産活動を行うことができる福祉サービスである。GOOD THE GOODは障害者の社会進出の先進的な取組みモデルを海外で提供し高い評価を得ているイスラエルのShekulotov Group(シェクロトブ グループ)とパートナーシップ契約を締結し、同社が25年10月にオープンした、自立した就労を目指すカフェ型の実務訓練センターである。

