ククレブ・アドバイザーズ(276A)営業人員拡大と事業用不動産マッチングシステムの顧客拡大で成長を目指す
企業不動産に関するソリューションと業務効率化の不動産テックシステムを提供
営業人員拡大と事業用不動産マッチングシステムの顧客拡大で成長を目指す
業種:不動産業
アナリスト:鎌田良彦
◆ 企業不動産に関するソリューションと不動産テックシステムを提供
ククレブ・アドバイザーズ(以下、同社)グループは、同社と子会社2社からなり、AIを中心とした不動産テックシステムを活用した企業不動産(CRE注1)に関する各種ソリューションの提供と、不動産テックシステムの開発・販売を行っている。子会社のククレブ・マーケティングは、不動産テックの企画、開発、運用を行い、同じく子会社の各務原プロパティは、ソリューションの一環として顧客企業から取得した不動産の賃貸事業を行っている。
同社はCREソリューション事業の単一セグメントであるが、CREソリューションビジネスと不動産テックビジネスに分けて売上高を開示している。24/8期の売上高構成比は、CREソリューションビジネスが88.3%、不動産テックビジネスが11.7%であった(図表1)。
◆ CREソリューションビジネス
CREソリューションビジネスでは、企業が保有する不動産のうち、工場、研究開発施設、物流施設等の不動産に関しての情報量が少ない分野に焦点を当て、大手不動産会社が効率性の観点から手掛けにくい不動産評価額が20億円以下のコンパクトサイズの不動産物件に対して各種のソリューションを提供している。同社の社名のククレブは、上記の同社の戦略を表す「Compact CRE for Re Born」の頭文字を取った「CCReB(ククレブ)」に由来している。
同社では顧客企業の事業内容や経営戦略、財務面への影響等を考慮した、不動産の取得、売却、有効活用等のCRE戦略を実現するために、主に以下のソリューションを提供している。
1) CREアドバイザリー
企業や不動産関連企業に対して、CREに関する売買、賃貸等の実現に向けたアドバイザリーやコンサルティングを提供している。対価として、コンサルティングに関する固定報酬、アドバイザリー報酬等を得ている。
2) CREファンド組成
比較的大型の案件について、同社単独または不動産関連企業とともにCREに関するファンドを組成し、企業から不動産を取得している。アセットマネジメント報酬、プロパティマネジメント報酬、ファンドへの出資金に対する配当収入、保有不動産をREITや私募ファンド等の第三者に売却した際のキャピタルゲイン等を収益としている。
3) プロジェクトマネジメント
企業が保有する遊休地・保有資産の有効活用等のニーズに対して、事業用不動産の開発提案、関係者のアレンジやマネジメント等を提供している。収益はプロジェクトマネジメント報酬等である。
4) バランスシートを活用した不動産投資
不動産の整理・流動化や拠点再編等の顧客のCRE売却ニーズに対して、同社がそれらの不動産を取得し、修繕や改善を行い、REITや私募ファンド等の第三者に売却している。収益は不動産の売却代金となる。
5) バランスシートを活用した不動産賃貸
顧客から事業用不動産を取得し、当該顧客に賃貸するセールアンドリースバック取引等によるソリューションの提供である。収益は取得した案件の賃貸収入である。修繕や改善を行い、最終的には第三者への売却を行う。
6) 不動産仲介
同社が不動産テックシステムとして提供する事業用不動産マッチングシステム「CCReB CREMa(ククレブクレマ)」等を活用し、不動産の売買や賃貸の仲介を行う。収益は媒介手数料収入である。
同社は主要販売先を開示しているが、売上高が1億円を超えるものは、出資したファンドのキャピタルゲイン、バランスシートを活用した不動産投資の不動産売却収入や、バランスシートを活用した不動産賃貸の賃貸収入である(図表2)。
◆ 不動産テックビジネス
不動産テックビジネスでは、不動産売却や購入ニーズ等の把握から、取引の成約までのプロセスをAI等を用いてデジタル化、効率化する不動産テックシステムを開発し、自社で利用するとともに、主にサブスクリプション形態で不動産会社、資産運用会社、金融機関、建設会社、不動産調査会社等の不動産プレイヤーに提供している。主な不動産テックサービスとしては以下のサービスがある。
1) CRE営業支援システム「CCReB AI(ククレブエーアイ)」
CCReB AIは、CRE営業の対象先企業を効率的に抽出するCRE営業支援システムである。上場企業の中期経営計画、有価証券報告書等の開示情報を同社が開発したAIエンジンが解析し、不動産に関連するキーワード等の定性情報や、保有不動産情報、財務データ等の定量情報から、企業の不動産に関するニーズ(売買、資産流動化、有効活用、賃貸、新規出店、工場新設等)をスコアリングして可視化するシステムである。非上場企業に関しても、信用調査会社が提供するデータ等を活用することで、スコアリングが可能となっている。
ユーザーはスコアに従って対象顧客の選定を短時間で効率的に行うことができる。ユーザーは大手不動産会社や金融機関等が多い。23/8期までの不動産テックビジネスの売上高は、CCReB AIによるものであった。
2) 事業用不動産マッチングシステム「CCReB CREMa」
CCReB CREMaは、工場や倉庫等を中心とした事業用不動産に特化した不動産マッチングシステムである。登録された情報のマッチング度がスコアリングされる。20年10月に運用を開始し、ユーザー数、情報登録数拡大のため、当初は無料でシステム提供を行ってきた。ユーザーは物件の登録のみができ、マッチング度のスコアは表示されず、同社がユーザーにマッチング度を伝えて商談に進んでいた。
23年9月からは月額料金型のサブスクリプションサービスの提供を開始し、ユーザー数、情報登録数ともに大幅に増加している(図表3)。
CCReB CREMaのプランは、従来の無料プランに加え、ユーザーがマッチング状況を確認できる月額3万円のプランであるCCReB CREMa+(ククレブクレマプラス)、ユーザーの社内案件情報に限定したマッチング状況が確認できる月額20万円のプランであるCCReB MB(ククレブマッチングボックス)がある。
3) BtoBポータルサイト「CCReB GATEWAY(ククレブゲートウェイ)」
CCReB GATEWAYは、最新の企業経営トレンドや企業経営に必要な情報を発信するBtoBポータルサイトである。同サイトのコンテンツは会員登録したユーザーに対して無償で提供し、会員に対してサービスを提供する企業からのバナー広告による広告収入を得ている。同サイトは将来的な顧客基盤形成のためのプラットフォームとの位置づけになっている。