Hmcomm(265A)音声認識処理、異音検知、自然言語解析処理を使ったプロダクトを提供
「音×AI」のスペシャリスト
音声認識処理、異音検知、自然言語解析処理を使ったプロダクトを提供
業種:情報・通信業
アナリスト:髙木伸行
◆ 「音」に着目したAIの研究開発を行い、その成果を社会に実装
Hmcomm(以下、同社)は、AIと異音検知、音声認識・自然言語解析といった音声技術を活用して業務効率化や事業革新につながるソリューションを主に提供している。「音」に着目したAIの研究・開発を行い、その成果を社会実装し、社名の由来となる「Human Machine Communication」を実現することにより、新しい社会の創造を目指している。
同社はコールセンター向け音声認識プロダクトなどが中心のAIプロダクト事業とAIを活用した課題解決やDX支援を行うAIソリューション事業を展開している。23/12期の売上構成比はAIプロダクト事業が69.5%、AIソリューション事業が30.5%であった。
AIソリューション事業は個別オーダー型サービスで、顧客の課題に応じてAIの開発受託やコンサルティングを提供している。顧客企業の課題解決を通して顧客が属する業界全体あるいは社会全体の課題解決につながるプロダクトのシーズを発見し標準的な機能としてまとめることでAIプロダクトにおける製品開発に結び付け、ライセンス収入を得ている。
◆ AIプロダクト事業
同事業では、幅広い顧客層に対して汎用的に利用できる、導入のし易さと即効性を重視したパッケージ型のサービスを提供している。音声認識・言語解析プロダクトを開発し、コールセンター向けプロダクトやAI議事録プロダクト、異音検知プロダクトを提供している。
主なプロダクトとしては、AI音声認識プロダクトVoice Contact、AI音声自動応答プロダクトTerryといったコールセンター向けプロダクト、AI議事録プロダクトであるZMEETING、AI異音検知プロダクトであるFAST‐Dが挙げられる。この中では、Voice Contactの売上高が大きく、23/12期の総売上高の30.8%を占めている。
コールセンター向けプロダクトを例にとると、同社の説明によれば、Voice Contactを利用すると、例えば100名のオペレーターを有するコールセンターが1年後には50名程度のオペレーターで運営できるようになり、Terryを利用すると更に効率化され10名程度のオペレーターで運営できるようになるという省力化、自動化を実現するものである。
Voice Contact、Terry、FAST-Dについては提供時に対価を受取り、導入以降は毎月一定額のライセンス収入を得ている。ZMEETINGについては、毎月一定額のライセンス料を受け取っている。23/12期のZMEETINGを除くAIプロダクトのアカウント数は50件、アカウント当たり平均単価は10.6百万円であった(図表1)。21/12期まではアカウント数の増加を優先した結果、アカウント当たり平均単価は低下傾向にあったが、22/12期以降はアカウント当たり平均単価を上げる方針に転換した。
AIプロダクトの販売については同社による直接販売と販売代理店による販売があり、23/12期の販路別構成比は直接販売が81%、販売代理店が19%であった。同社の販売代理店は大手商社系である伊藤忠テクノソリューションズや丸紅情報システムズ、セコム(9735東証プライム)の子会社であるTMJといった大手企業グループに属する先が多く、比較的大型案件が多い。販売代理店については引き続き活用してゆく方針である
◆ AIソリューション事業
AIソリューションの提供を事業として開始したのは21年6月からとなる。顧客企業の持つデータの利活用に関する経営課題を分析し、生成AIを活用した課題解決やDX化推進支援を目的にAIの開発受託やコンサルティング業務を行っている。契約形態としては仕事の完成ではなく一定の事務処理行為を行う準委任契約を中心に、一部は業務の遂行を約する請負契約となっている。
AIソリューション事業の顧客である一部の事業会社との間で共創関係を構築しAIの活用において重要なデータ使用許諾を得て顧客業界の知見活用を進めている。23/12期末時点で共創先は29社、共創プロジェクトは49件に達している。
主な共創プロジェクトとしては、安川電機(6506東証プライム)との「工場における出荷判定(異音検知)の作業の自動化」、ベネッセホールディングス(岡山市北区)との間での「AIが顧客との自然会話による通販受注の受付・完了、受注業務の無人化」、東日本旅客鉄道(9020東証プライム)との「車両や線路などの鉄道事業のアセットにおける不具合判断を異音の観点からシステム化」が挙げられる。
23/12期のプロジェクトの平均単価は5.0百万円(22/12期は6.4百万円)となった。プロジェクト数は年々増加している一方、足元のプロジェクトの平均単価は顧客数の拡がりを受けて低下傾向にある(図表2)。
◆ 事業モデル
研究開発を通して培ったシーズを事業会社のニーズとマッチングさせ、事業会社と共創プロジェクトを組成する。プロジェクトを通して開発に至ったソリューションの中から業界や業態、社会に役立つものを厳選してプロダクト化し、ライセンス収益を上げていくというのが基本の事業モデルとなっている。
研究開発については、同社は、14年8月に国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)により「産総研技術移転ベンチャー」に認定され、24年8月まで産総研による経営支援(産総研より許諾を受けた特許・プログラム実施、産総研主催の展示会への出展など)を受けてきた。また、19年10月と20年2月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の開発促進事業に採択されるなど、音声認識技術や異音検知技術の研究開発を行ってきた。
ソリューションやプロダクトの開発については、自社で行うことを基本としているが、コーディングやソフトウエアの検査といった下流工程や保守の一部については外注先の協力を得ている。
研究開発人材については、8月末の正社員37名のうち25名がエンジニアである。エンジニアの8割が音・音声AIアルゴリズムの開発に従事しており、残りの2割はソフトウエアエンジニアである。